大気安定度とは? わかりやすく解説

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大気安定度 (たいきあんていど)

 気温下層から上層向かって低い状態にあるとき、下層大気上層移動しやすい。このような状態を「不安定」という。また、温度分布が逆の場合は、下層大気上層移動しにくい。このような状態を「安定」という。例えば、晴れた日の日中は、地表面太陽光線で暖められ、それにより周辺大気暖められるので下層大気の方が上層より気温が高い状態になる。これが夜間になると、地表面放射冷却現象により冷却されそれに伴い周辺大気冷却されることから、下層大気の方が上層より気温が低い状態になる。このような大気の安定性度合いを大気安定度といい、大気安定のときは汚染物質拡散せず汚染進行する

大気安定度

大気安定度は、太陽からの熱射量や夜間における地球からの放熱量と風による気流乱れを表す指標である。 大気安定度の指標は、放射性物質拡散計算上A~Fに分類され、Aはよく拡散する状態を表し(強い不安定)、Fは非常に拡散しにくい状態を表す(安定)。またB~Eはこれらの中間の状態段階的に表す。 大気安定度

大気安定度

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/21 13:53 UTC 版)

大気安定度(たいきあんていど)とは、気象学における概念で、力学的・熱力学的に平衡状態にある大気に微小擾乱を発生させたときの、その大気の振る舞いを表す。擾乱が弱まってもとの平衡状態に戻る場合は安定、擾乱が強まって元の状態に戻らない場合は不安定という。また、不安定の度合いについて考えるときは不安定度とも呼ぶ。

気象予報では、多くの場合大気の安定度といえば静的安定度、特に対流不安定のことを指す。これを一般には「大気の状態が不安定」と言い換え、一般向けの天気予報などではより分かりやすい「不安定な天気」または単に「不安定」と言い換えることが多い。

概説

擾乱とは、例えば厚みのある(平衡状態の)大気の中で空気の塊を持ち上げることであり、これが起こると、空気は上昇し続けるかもとの場所に下降しようとする。大気の状態により、その空気の上昇幅・下降幅が異なってくる。また擾乱とは、例えば偏西風のよう南北に波打つ気流に別の波を発生させることであり、これが起こると、この波は増幅するか減衰して元の状態に戻ろうとする。大気の状態により、その気流の波の増幅度・減衰度が異なってくる。

前者の例えは静的安定度せいてきあんていどまたは静力学的安定度、後者の例えは動的安定度どうてきあんていどまたは動力学的安定度にあたる。静的安定度は、静止した成層安定の大気での安定度を指す。動的安定度は、平衡運動をしている大気での安定度を指す。

静的安定度

大気の安定度を考える上で、静的安定度 (static stability) という考え方がある[1]

静水圧平衡の状態にある大気の中で、空気塊を鉛直方向に変位させる(物理学的に安定し静止した大気の中で、空気を上下に移動させる)と、元の位置に戻ろうとするか、そのまま変位し続けるかのどちらかとなる。前者を静的安定、後者を静的不安定な大気と呼ぶ。ここで、静的安定度は以下のように定義される:

成層不安定時の典型的な気象、雷雨

強い成層不安定の状態が続くと、積乱雲が発達して、短時間強雨、雷、突風、急激な温度・湿度・気圧の変化などの特徴的な気象現象が発生する。これらの多くは局地現象といって、現象は激しく、現象が続く時間は短い。

典型的な成層不安定時の現象である夕立の例を挙げれば、ほんの1 - 2時間の間に、晴れた状態から急に曇りになり、雷が鳴り始め、冷たい風が吹き、大粒の雨が降り出して急激に雨が強まったかと思えば、降ったり止んだりを繰り返し、やがて曇りになり、次第に晴れてくる。

夕立は不安定成層の範囲が狭いので、雨風などの現象が続くのは数時間である。一方、不安定成層の範囲は大小さまざまであり、細長い前線が長時間かかり続けるなどすると、現象が数日続くこともある。

成層不安定の際には、積雲積乱雲乱層雲ができやすく、不安定な状態が強まっているときにはこれらの雲が次第に成長していく。そのため、特別な気象観測の道具などが無くても、こういった空の状態から成層不安定による天候の急変を察知することが可能である。

大気の上下で気温の差が大きいほど、また、(特に下層の)大気に含まれる水蒸気の量が多いほど、成層不安定になりやすい。これは、前節で説明した対流の成長過程に関係している。

条件付不安定の状態では上昇気流は対流を促進するが、上昇気流は普通、空気塊の温度が上昇に伴って周囲と同じ温度まで冷やされるまで上昇し続ける。ここで、空気塊の温度が高いほど、上昇により冷やされる時間が長くかかり、高く上昇する、つまり強い上昇気流になり、より大きな対流を作り出す。また、空気塊の温度が高いと、飽和水蒸気量が多くなるため、含むことができる水分の量も多くなる。含まれる水分が多ければ、空気塊の上昇時に凝結して(雨や雪となって)重力分離する量が増え、その後の下降時に残される潜熱の量も増える。つまり、(上昇→下降という一連の)対流の前後での気温の上昇幅も大きくなり、先に述べた空気塊の温度をさらに高くして、対流をより促進する結果となる。

このような、大きな気温差や多湿の環境を作り出しやすいコンディションは、前線が通過するとき、上空に寒気が流入したとき、湿暖流(湿暖気流)が流入したとき、日差しが強く地上の気温の上昇が著しいときなどである。

また、成層不安定の起こりやすさは地形にも関係している。山沿いでは山谷風で上昇気流が発生するため、対流のきっかけができやすい。また、海陸風の影響で、陸地では日中の特に夕方ぐらいに上昇気流が起こりやすく、海上では夜中に上昇気流が起こりやすい傾向がある。

成層不安定度を示す指標にCAPEやCINなどがあるが、これらは不安定の度合いを示すもので、実際の対流の強弱とは異なる場合があり、これらのみを用いて予報を行うと誤りにつながる。気象予報では、対流や荒天の状態をより実態に近い指標を用いて表現し、予報に利用している。雷雨の有無を判断できるショワルター安定指数(SSIまたはSHOW)、雷雨の度合いを判断できるリフティド指数 (LIFT)、雷の発生確率を判断できるK指数 (KINX)、雷雨の規模を判断できるトータルトータルズ指数 (TOTAL) などがある。

動的不安定

流れのある大気中では、場所によって風速に差(シアー、ウインドシア)ができることがある。これがあると、常に不安定であるが、シアーが大きくなければ顕在化しない。

傾圧の大気では、温度風主体の風の鉛直シアーが大きいと擾乱が発達するため、これを傾圧不安定という。

順圧の大気では、鉛直シアーはないが、風の水平分布において絶対渦度に極小値があるとき擾乱が発達するため、これを順圧不安定という。

また、密度差のある2つの成層した大気層があり、その間で水平シアーがあるとき、2層の間で擾乱が発達する。これをケルビン・ヘルムホルツ不安定という。

温帯低気圧は傾圧不安定により発生すると考えられている。

脚注

  1. ^ 静的安定”. 中川用語集. 立正大学 地球環境科学部 環境システム学科 中川清隆研究室. 2008年8月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2009年2月10日閲覧。

出典

関連項目



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