成層不安定時の天気
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/05 05:47 UTC 版)
強い成層不安定の状態が続くと、積乱雲が発達して、短時間強雨、雷、突風、急激な温度・湿度・気圧の変化などの特徴的な気象現象が発生する。これらの多くは局地現象といって、現象は激しく、現象が続く時間は短い。 典型的な成層不安定時の現象である夕立の例を挙げれば、ほんの1~2時間の間に、晴れた状態から急に曇りになり、雷が鳴り始め、冷たい風が吹き、大粒の雨が降り出して急激に雨が強まったかと思えば、降ったり止んだりを繰り返し、やがて曇りになり、次第に晴れてくる。 夕立は不安定成層の範囲が狭いので、雨風などの現象が続くのは数時間である。一方、不安定成層の範囲は大小さまざまであり、細長い前線が長時間かかり続けるなどすると、現象が数日続くこともある。 成層不安定の際には、積雲、積乱雲、乱層雲ができやすく、不安定な状態が強まっているときにはこれらの雲が次第に成長していく。そのため、特別な気象観測の道具などが無くても、こういった空の状態から成層不安定による天候の急変を察知することが可能である。 大気の上下で気温の差が大きいほど、また、(特に下層の)大気に含まれる水蒸気の量が多いほど、成層不安定になりやすい。これは、前節で説明した対流の成長過程に関係している。 条件付不安定の状態では上昇気流は対流を促進するが、上昇気流は普通、空気塊の温度が上昇に伴って周囲と同じ温度まで冷やされるまで上昇し続ける。ここで、空気塊の温度が高いほど、上昇により冷やされる時間が長くかかり、高く上昇する、つまり強い上昇気流になり、より大きな対流を作り出す。また、空気塊の温度が高いと、飽和水蒸気量が多くなるため、含むことができる水分の量も多くなる。含まれる水分が多ければ、空気塊の上昇時に凝結して(雨や雪となって)重力分離する量が増え、その後の下降時に残される潜熱の量も増える。つまり、(上昇→下降という一連の)対流の前後での気温の上昇幅も大きくなり、先に述べた空気塊の温度をさらに高くして、対流をより促進する結果となる。 このような、大きな気温差や多湿の環境を作り出しやすいコンディションは、前線が通過するとき、上空に寒気が流入したとき、湿暖流(湿暖気流)が流入したとき、日差しが強く地上の気温の上昇が著しいときなどである。 また、成層不安定の起こりやすさは地形にも関係している。山沿いでは山谷風で上昇気流が発生するため、対流のきっかけができやすい。また、海陸風の影響で、陸地では日中の特に夕方ぐらいに上昇気流が起こりやすく、海上では夜中に上昇気流が起こりやすい傾向がある。 成層不安定度を示す指標にCAPEやCINなどがあるが、これらは不安定の度合いを示すもので、実際の対流の強弱とは異なる場合があり、これらのみを用いて予報を行うと誤りにつながる。気象予報では、対流や荒天の状態をより実態に近い指標を用いて表現し、予報に利用している。雷雨の有無を判断できるショワルター安定指数(SSIまたはSHOW)、雷雨の度合いを判断できるリフティド指数(LIFT)、雷の発生確率を判断できるK指数(KINX)、雷雨の規模を判断できるトータルトータルズ指数(TOTAL)などがある。
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