天狗
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/07/17 00:44 UTC 版)
鼻高天狗の由来
鼻高天狗の長い鼻について、民俗学者・五来重をはじめとして、伎楽で用いられた伎楽面の中の治道面に起源を考える研究者が多い[6]。
ただし、文学博士かつ日本文学研究者である勝俣隆[17]は、こうした説には文献上の裏付けが無いことから否定的である[18]。天狗の図像的変遷を研究した杉原たく哉も、何故それが天狗と結び付けられたか説明が付かないとして否定的である[19]。彼らの説によれば天狗の高い鼻は図像学的にもともと鳥の嘴を表していたと考えられる[18][19]。鼻の長い天狗の描写は鎌倉時代末期から『天狗草紙』等に見られ[18]、『是害房絵』には人間に化けた天狗が鳥(鳶)の姿に戻る際に鼻が伸びる様子が描かれている(鼻が伸びて上嘴になり下顎が伸びて下嘴になる)[19]。つまり、長い鼻は鳥の嘴の名残であるとの考え方である[18]。
天狗に因む生物名
生物の和名として天狗が登場することがある。動物についていえば鼻、または類似器官が突き出た外見に因むものが多い。
- 哺乳類 - テングザル、テングコウモリ
- 魚類 - テングハギ、ウミテング、ミツクリザメ(別名テングザメ)
- 昆虫類 - テングチョウ
- 植物 - テングクワガタ、テングウチワ
- 菌類 - テングタケ類、テングノムギメシ
- 多足類 - ゲジ目、天狗星が髪を食べるために降りる下食時がゲジゲジの語源とされる。
研究文献
- 井上円了「天狗論」『妖怪玄談』竹村牧男〔監修〕所収(大東出版社、2011.1 ISBN 978-4-500-00745-5)
脚注
注釈
出典
- ^ “正法念処経巻第十九”. 仏教典籍検索. 広済寺. 2010年8月12日閲覧。
- ^ 大正大蔵経 T0721_.17.0111a02:一、T0721_.17.0111a03: 切身分 光焔騰赫 見是相者 皆言憂流迦、T0721_.17.0111a04下 魏言天狗下
- ^ 小松和彦監修『日本怪異妖怪大事典』東京堂出版、2013年、381頁。ISBN 978-4-490-10837-8。
- ^ 『妖怪の本』学研、1999年、66,70頁。
- ^ banbanzai777.blog76.fc2.com/blog-entry-361.html 「江戸のお化け・妖怪」(キャーッツ!)。2011-08-15
- ^ a b 伊藤信博「天狗のイメージ生成について―十二世紀後半までを中心に―」『言語文化論集』第29巻第1号、名古屋大学大学院国際言語文化研究科、2007年11月15日、75 - 92頁、doi:10.18999/stulc.29.1.75、ISSN 0388-6824、2021年1月11日閲覧。
- ^ 天狗草紙絵巻 e国宝
- ^ 東京国立博物館(2巻[7])や個人蔵などに分蔵。また、詞書の古写本が称名寺(金沢文庫寄託)に伝わる。
- ^ 『吾妻鏡』内の脚注より。
- ^ “<お宝発見!> (9)古代ザメの歯:中日新聞Web”. 中日新聞Web. 2022年2月9日閲覧。
- ^ 高山建吉「遠州の天狗囃子」『民間伝承』15巻第2号、民間伝承の会、1951年2月、19頁、NCID AN10219431。
- ^ 大藤時彦他 著、民俗学研究所 編『綜合日本民俗語彙』 第4巻、柳田國男監修、平凡社、1955年、1644頁。 NCID BN05729787。
- ^ 千葉幹夫『全国妖怪事典』小学館〈小学館ライブラリー〉、1995年、116頁。ISBN 978-4-09-460074-2。
- ^ a b c 岩井宏實『妖怪と絵馬と七福神』青春出版社〈プレイブックスインテリジェンス〉、2004年、57-58頁。ISBN 978-4-413-04081-5。
- ^ 倉田一郎「青根村の霊怪」『民間伝承』1巻第20号、民間伝承の会、1936年8月、6頁、NCID AN10219431。
- ^ 『南佐久口碑伝説集南佐久編限定復刻版』発行者長野県佐久市教育委員会 全232P中 99P 昭和53年11月15日発行
- ^ researchmap 勝俣 隆
- ^ a b c d 天狗の古典文学における図像上の変化に関する一考察 : 烏天狗から鼻高天狗ヘ - 勝俣隆、長崎大学教育学部紀要、2005年
- ^ a b c 杉原たく哉『天狗はどこから来たか』大修館書店、2007年、ISBN 978-4-469-23303-2、115-117頁。
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