吉浜のスネカとは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 文化 > 国指定文化財等データベース > 吉浜のスネカの意味・解説 

吉浜のスネカ

名称: 吉浜のスネカ
ふりがな よしはまのすねか
種別1: 風俗習慣
保護団体名: 吉浜スネカ保存会
指定年月日 2004.02.16(平成16.02.16)
都道府県(列記): 岩手県
市区町村(列記): 大船渡市三陸町吉浜
代表都道府県 岩手県
備考 1月15日
解説文: 吉浜のスネカは、岩手県大船渡おおふなと】市三陸町さんりくちょう】の吉浜地区伝承されている来訪神行事で、奇怪な面を着けなどをまとったスネカ呼ばれる異装の者が小正月夜に地区内の家々訪れて怠け者泣く子戒める行事である。スネカとは、囲炉裏のそばで怠けている者の脛にできるヒガタ(火班)を剥ぐ行為を指すスネカワタグリ(脛皮たぐり)に由来するといわれている。
 三陸町岩手県沿岸部リアス式海岸有名な三陸海岸南部位置するスネカ伝承されている吉浜地区は、町域北部にあり、東は吉浜湾に面し、西は山岳海岸まで迫る地勢で、その間集落展開している。生業半農半漁で、日本屈指のアワビ産地として知られるなど古くから漁業が盛んであり、また、畑作中心とした農業行われてきた。スネカは、吉浜地区中でも農業への依存度が高かった本郷ほんごう】と呼ばれる地区西側の増館【ますたて】、大野【おおの】、上通【うえどおり】、中通なかどおり】、下通しもどおり】、後山うしろやま】の各集落伝承されてきた行事と伝えられている。現在は、吉浜スネカ保存会中心に、扇洞【おうぎほら】、根白東【こんぱくひがし】、根白西【にし】、千歳せんざい】の各集落含めた地区全体行事として行われている。
 行事期日については、昭和三十年代までは旧暦一月十五日に行っていたが、昭和四十年代に入ると新暦で行うようになり、現在に至っている。
 スネカとは、奇怪なもの、得体の知れないものであり、小正月夜に山から里にやって来るものと考えられている。また、スネカ精霊であるともいわれ、里に春を告げ、その年の五穀豊穣豊漁人びともたらす存在とも考えられている。
 スネカ役になれるのは地区内の男性限られ専ら青年層から中年層にかけての男性たちがスネカ扮して行事伝えてきた。かつては集落ごとに各家の男性それぞれの家で自ら扮装してスネカとなり、近隣家々を回るかたちで行われており、一つ集落内で数多くスネカ登場したといわれている。現在は、保存会スネカ役になりたい有志男性たちを地区内から募るなどして調整図り集落ごとに数名スネカ割り当てて行事行っている。また、近年は、子どもスネカ称して小学生スネカ扮して行事参加している。
 スネカ役は、鬼とも獅子とも、龍ともつかないような奇怪な面を着ける。面は、木製で、鼻が大きく突き出た馬面うまづら】と呼ばれる面と平べったい面の二種類があり、原則的に各自製作するもので、その家に古くから伝わる古い面を使用している者もいる。上半身には毛皮手足には手甲ハバキ着けユズケ呼ばれる雪沓を履く。手にはキリハ呼ばれる小刀を持つ。腰にはアワビの殻をいくつも重ねて紐で吊り下げるが、これは鳴り物としてスネカ来訪里人知らせものといわれている。背中には俵が背負われる。俵には靴が取り付けられており、これはスネカ泣く子さらってきたことを表現している。そのほかに干して黒くした海藻を面や体に付けたりもする。
 なお、スネカ身に着ける俵は豊作アワビ豊漁意味しているといわれている。
 行事準備は、一月十五日の午後から吉浜地区共同施設行われるスネカ扮する男性たちが集合して面や衣装などを身に着けまた、スネカ役の各集落への割り振りなどが決められる。このときにスネカ役を初め経験する者には、年輩者からスネカ威嚇仕方歩き方などの所作教えられる。こうして準備整い、日が沈むのを待って行事始められる
 夜になると、各集落ごとにスネカ一軒一軒家々を回って歩く。スネカは、訪問する家の庭先に着くとゴオッ、ゴオッと鼻を鳴らしながら玄関口向かい、戸をガタガタ揺すったり、爪で引っ掻いたりしてから戸を開けて、腰を屈め姿勢家内に入る。そして、上がりかまちに足をかけたり土間から座敷上がり込んだりして、キリハ振り上げて威嚇をする。家々では、家族一同スネカ訪問待って座敷集まっており、小さい子どもたちはスネカ恐ろしい姿を見て泣きわめいたり、逃げ出そうとしたりする。
 スネカは、家人近くににじり寄り、「カバネヤミ(怠け者)いねえが」「泣くワラシいねえが、言うこと聞かねワラシいねえが」などと声を張り上げる家人が「スネカ様、どっから来やした」と聞くと、スネカは、「五葉山から来た」、あるいは「天狗岩から来た」などと答え、しばらく座敷歩き回りながら、恐ろしい形相怠け者を捜す素振りをしたり、親に抱かれ幼児逃げ回る子どもたち威嚇する家人は、「カバネヤミも、泣くワラシもいねえがら、餅あげっから帰ってけらっせん」などと言ってスネカ退散促す

吉浜のスネカ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/28 08:08 UTC 版)

吉浜のスネカ(よしはまのスネカ)は、岩手県大船渡市三陸町吉浜(旧・気仙郡三陸町吉浜)で、毎年1月15日に行われる恒例行事。数年前までは地元青年団有志が行っていたが、後継者不足を懸念して保存会が結成され、2004年平成16年)2月16日には重要無形民俗文化財に指定された。


  1. ^ 村上健司編著『妖怪事典』毎日新聞社、2000年、199頁。ISBN 978-4-620-31428-0 


「吉浜のスネカ」の続きの解説一覧


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「吉浜のスネカ」の関連用語

吉浜のスネカのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



吉浜のスネカのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
文化庁文化庁
Copyright (c) 1997-2024 The Agency for Cultural Affairs, All Rights Reserved.
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの吉浜のスネカ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2024 GRAS Group, Inc.RSS