三柱臣(トリニティ)
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創造神“祭礼の蛇”の眷属たる三人の“王”。「守り」「謀り」「起動する」、創造神のための「システム」の具現化。討滅される、生贄になるなどで死亡した場合でも存在が消滅することはなく、創造神の許で眠りにつき、機が熟すればまた復活するという特殊な存在。それぞれの意志や事情・目的によって組織に属する他の“徒”達とは違い、成り立ちから盟主に属することを宿命付けられ、古代から付き従っている特異な存在である。強烈なカリスマを持ち、通常束ねることが困難な“徒”をこれ程までに束ねているのは、『三柱臣』が重ねてきた長年の実績と、彼らと対面した際に抱かされる感情によるものである。基本的には全員が人間に近い姿をしている。 なお、“祭礼の蛇”は自身が生み出した彼らを「息子」「娘」と認識している部分があるが、彼ら自身にとって“祭礼の蛇”はあくまで自身が仕える「主」であり、生みの親と言う認識はなく、また互いを兄弟姉妹とも考えていない。 “千変(せんぺん)”シュドナイ[Sydonay] 声 - 三宅健太 男性の“紅世の王”。炎の色は濁った紫。初登場はIII巻。[仮装舞踏会]『三柱臣(トリニティ)』の将軍。絶大な戦闘力を誇り、古来より数え切れないほどのフレイムヘイズを倒してきた強大極まる“王”。作中で倒したフレイムヘイズの数も最も多く、“祭礼の蛇”を除けば最強の強さを誇る(センターヒルをして「最悪の敵」と称されていた)。 かつての中国での古い通名は蚩尤。 他の“徒”とは異なり、その真名が示す本質から生まれる『変化』の力を持っているため姿は不特定であり、必要に応じて姿形を自在に変えることができる。普段は人間型をしており、プラチナブロンドをオールバックにし、サングラスを掛け、ダークスーツを着た長身の男性の姿をとる。しかし戦闘時や「食事」の時には、頭や腕や口を様々な場所に複数作ったり、全身や腕や口などの体の一部を巨大化させたり、切り離したり、蝙蝠、亀、大蛇、鳥など様々な動物(虎が比較的多い)に変えたり、高層ビルの内部を全て埋め尽くすほどに分裂したりなどと、自由自在に変化する(アニメでは、鵺のような一本角のライオンの体に鳥の脚、蝙蝠の翼、爬虫類の尾、という姿で一定している)。『大戦』に出陣した際は、黒い全身甲冑にマントを身に着けた騎士のような出で立ちだったが、これもまた『変化』のうちらしく、鎧ごと体を変化させていた。 “祭礼の蛇”の眷属であり、盟主“祭礼の蛇”により「主を守る」使命を課せられた存在。彼の『変化』の力は主を守るため、あらゆる攻撃の全てに同時に対処すべく与えられたものである。しかし“祭礼の蛇”が『久遠の陥穽』に放逐されて以降は本来の使命を果たせなくなり、代替行為として長年、依頼を受けて依頼者である“徒”を護衛してきた。そのため周囲からは「他者の護衛を趣味とする変わり者」「護衛と言う道楽にかまけて[仮装舞踏会]の職務を怠けている」と見られがちだが、“祭礼の蛇”に対しては他の『三柱臣』同様、非常に忠実である。 普段は飄々として部下にも寛大な性格で、敵であるフレイムヘイズに対してすらも友人に接するかのような態度を取る事も多い。 戦闘時には「本質そのままの姿」へと姿をとる戦闘スタイルからか、人間の文化に憧れるあまり本質そのままの姿を陳腐とする最近の“徒”の風潮を、内心で寂しく思っている。一方で、人間の姿をとる際には当代の流行文化をいち早く取り入れる洒落者の面も持つことから、人間の文化そのものには好意的と言える。特に煙草が大好きで、いつも吸っている。 “頂の座”ヘカテーに好意を持っており「俺のヘカテー」と公言して憚らない。特にヘカテーの身に僅かでも危険が及ぶと、飄々とした態度から一転して怒り狂い、その原因を作った相手を攻撃、幾人もの名のある“徒”や“王”を葬ってきた。さらにその怒りはヘカテーを守れなかった味方の護衛にも向けられ、味方ですら真剣に自分の身命を危ぶむ事態となるため、周りは敵の襲撃以上に、ヘカテーに危険が及ぶことと、それがシュドナイに知れることを恐れている。本人曰く、ヘカテーを愛しているのであって、決してロリコン|そういう趣味ではないとの事。 一方で“逆理の裁者”ベルペオルのことは公然と「ババア」呼ばわりしてこき下ろし、ベルペオルの方もいちいち皮肉たっぷりに接しているが、両者とも特に嫌い合っているわけではなく、単に両者の性格の反りが合わないだけであり、互いにその実力を認め合っている。 坂井悠二の事は盟主の代行体という事柄以外でも個人的に助力したいと思うほど気に入っている模様で、新世界『無何有鏡』完成後も『無何有鏡』へ渡らず、理由を作ってまで最後まで付き従った。 “祭礼の蛇”の眷属であるため、他の“徒”とは比較にならない絶大な戦闘力を誇る。単純なパワーだけでも抜きん出ているが、『変化』の能力によって他の“徒”では不可能な変幻自在の戦術を取り、想定外の攻撃で不意を撃ち敵を圧倒する。しかし「主を守る」性質からか望んで攻勢に出る場面は少なく、多くの場合「敵の攻撃から味方を守るために先手を打って」攻撃に出ている。なお、死亡しても“祭礼の蛇”が生きている限り完全に消滅はせず、祭礼の蛇かヘカテーが「守ってほしい」と望むことで復活する。 『大命』遂行に際しては、障害となるであろうフレイムヘイズの外界宿を予め掃討する役目を与えられていたが、道楽にかまけて一つもこなしていなかった。 『三柱臣』として大命遂行の際にのみその行使を許される宝具は剛槍『神鉄如意』。持ち主の体型変化に応じて大きさや形を変える槍であり、『変化』と合わせることで城の尖塔ほどにも巨大化させることや、穂先を数十に分裂・変形させたり、シュドナイが分裂した数に合わせて『神鉄如意』そのものを数千という数に増やすことも出来るなど、自由自在に変形させられる。本人が手を離した状態でも形状を自在に変化させられ、巨大化も維持できる。素の状態でさえ非常に強力な力の持ち主だが、この剛槍の使用によってさらに圧倒的な戦闘力を発揮する。その強大な戦闘力で、名の知られた強力なフレイムヘイズを幾十人も葬り去っている。 軍の指揮官としても練達にして無類の将帥である。しかし職務に対しては怠慢で、本拠地である『星黎殿』にも長らく立ち寄っていなかったが、そんな態度にもかかわらず[仮装舞踏会]の“徒”たちからの尊崇の念は絶大で、その強さ・将軍としての能力にも全幅の信頼を寄せられている。 三千年前の『大縛鎖』の儀式の際は、儀式に必要不可欠なヘカテーを守るために動くことができず、そのため盟主の放逐を許してしまった模様(XX巻より)。 16世紀初頭の『大戦』で[とむらいの鐘]を受けて参戦した際は、フレイムヘイズ兵団の副将『極光の射手』カール・ベルワルドを(カールが油断していたとは言え)わずか二撃で葬った(X巻)。 本編では“愛染の兄妹”の護衛をしている際に悠二と遭遇。“ミステス”と気づいて中の宝具を奪い取ろうとしたが、『零時迷子』に掛けられた『戒禁』(防御用の自在法)によって、右腕と本質の一部を失った(その後、再構成した)。その事と、大した力も持たずに“封絶”の中で動ける事から、悠二の宿す宝具が『零時迷子』だと察知し、それを[仮装舞踏会]へと知らせる(IV巻)。以降は「[仮装舞踏会]の将軍」という本来の職務に急に本腰を入れるようになり、軍勢を率いて世界各地の重要な外界宿(アウトロー)を襲撃・陥落させ、同時に幾十人もの名高いフレイムヘイズを倒してきた。上海外界宿総本部の一大会戦にて東アジアの討ち手らを一掃し職務を果たした後(XVI巻)、『星黎殿』へと帰還する。 その後、現在の盟主の在り様に懸念を抱きながらも、『大命』の第二段階として“祭礼の蛇”坂井悠二に付き従って『久遠の陥穽』へ出立(XVII巻)。『詣道』を踏破して最奥部の『祭殿』に到達し、“祭礼の蛇”神体の覚醒と復活を見届ける。そして『詣道』をこの世へと遡る途中でシャナたちに遭遇するものの、彼女らの妨害を撥ね退けて、“祭礼の蛇”神体と共に無事この世に帰還した(XIX巻)。 帰還後は[仮装舞踏会]全軍の総司令官として、フレイムヘイズ兵団に対する包囲殲滅戦を開始。兵団の前線基地である『天道宮』の探索と破壊のため自らも前線に出るが、シャナとヴィルヘルミナによって足止めを食らい、センターヒルやマージョリーの加勢で手こずるうちに、彼女らを救出に来たキアラの『ゾリャー』の一撃をくらい、そのままシャナたちを逃がしてしまう。足止めとして戦場に残ったセンターヒルは十分程で討ち取るが、シュドナイとしては画竜点睛を欠いた感じとなった(XX巻)。 御崎市決戦では、生贄となるヘカテーを見送った後に『真宰社』を狙い攻め込んできたシャナとヴィルヘルミナを“祭礼の蛇”坂井悠二と共に迎撃し、激しい戦闘を繰り広げる。カムシンによって『真宰社』が倒壊の危機に陥った際には、巨大化させた『神鉄如意』で『真宰社』の中心を貫き芯柱とすることで倒壊を防いだ(XXI巻)。『真宰社』の修復後は、再び悠二と共にシャナ、ヴィルヘルミナ、マージョリーを迎撃。新世界『無何有鏡』完成後も『無何有鏡』へ渡らず、悠二と共に御崎大橋の頂上でシャナたちを待ち構え、マージョリーと死闘を繰り広げるも、フレイムヘイズ数万人分の力を結集した『屠殺の即興詩』により死亡し、ヘカテーと共に一時の眠りに入った(XXII巻)。この時は周囲の“存在の力”を一切使わず自前の力のみで戦った半ば自殺であったが、多少なりとも消耗した上でマージョリーを限界まで疲労させたことから、その力の規模は作中でも最強の部類に入る。 アスモデウスの別名をもつ同名の悪魔が存在する。蚩尤は、黄帝(別名・帝鴻氏)に処刑された中国神話の怪神。 なお、アニメの番外編『頂のヘカテーたん』では、パロディであるがヘカテーの傍にいることに快感を得ており、また悠二に対して怪しい口調で話すシーンがある。その際にヘカテーから「変態」呼ばわりされている(後に「親父臭い」とも言われて、ショックを受けていた)。 “頂の座(いただきのくら)”ヘカテー[Hecate] 声 - 能登麻美子 女性の“紅世の王”。炎の色は明るすぎる水色。初登場はIV巻。[仮装舞踏会]『三柱臣(トリニティ)』の巫女。[仮装舞踏会]構成員からは大御巫(おおみかんなぎ)の尊称で呼ばれている。 かつての中国での古い通名は女媧。 大きな帽子とマントに着られている印象の、表情に乏しい小柄な美少女。そんな見た目に反する強大な“王”だが、姿を見せることは極めて稀で、その真意や性向、能力などはほとんど知られていない。 “祭礼の蛇”の眷属であり、盟主“祭礼の蛇”の活動の先触れとなる存在。創造神“祭礼の蛇”は“紅世の徒”の願いを叶えることを権能としており、神が“徒”の願いを聞き届けた証、“徒”の願いの結晶としてヘカテーを生み出す。すなわち彼女の存在そのものが“徒”の願いが実現する予兆であり、そのため“徒”からは絶大な敬意を払われ、[仮装舞踏会]に属する“徒”たちからは最も尊崇され、『三柱臣』の中でも特異な存在として知られている。 他人の言動を字面どおりに受け止める生真面目で淡白な性格で、杓子定規な物言いが特徴。 自らに言い寄るシュドナイを相手にしないなど、基本的に他人に対して無関心で感情もほとんど示さないが、盟主たる“祭礼の蛇”のことは文字通り「彼女の神」とまでされるほどに崇拝し、“祭礼の蛇”に関する事柄に対してだけは喜怒哀楽を示し、感情的にもなる。しかし、代行体である『坂井悠二』に協力することには消極的である模様。その他、なぜか誰もが扱いに困る変人“探耽求究”ダンタリオンのことを「おじさま」と呼んで慕って(?)おり、彼の勝手な行動によってトラブルが起きても、庇ったりしている(しかし『大命』や“祭礼の蛇”に関することには限度がある)。これは彼の『素材』を生み出す能力が創造神に似ているため。 その真名の故か、“祭礼の蛇”の不在に耐える為に高い山の山頂で過ごす事が趣味。山を汚す登山家を嫌っており、過去に何度か出くわした際は例外無くその登山家の関係者ともども惨殺してきた。 神である“祭礼の蛇”が“徒”たちの願いを叶える際に行われる『神威召喚』の儀式で生贄となる役目を持つ。しかし生贄となり死亡しても“祭礼の蛇”が生きている限り完全に消滅はせず、願いを叶えた“祭礼の蛇”が眠りについた後、新たな願いが結実した時にそれを構成要素として復活する。 『大命』遂行に際しては、主に盟主の意思と『大命詩篇』を受け取る役割を担っており、『大命詩篇』の扱いも一手に担っている。通常は『星黎殿』の内部にある祭壇の間『星辰楼』にその身を置き、この世に渡り着いたばかりの“徒”たちに、この世で生きるための訓令を与えている。実際の遂行に当たっては、『大命詩篇』の起動と盟主の声を世界中に伝播させる役割を担った。 『三柱臣』として大命遂行の際にのみその行使を許される宝具は、三角形の遊環を持った大錫杖『トライゴン』。その具体的な能力や効果は不明であるが、作中の描写からすると“祭礼の蛇”の意志や声、力を受信・伝播するアンテナのようなものだと思われる。他にも教授に十六回も改造された笛型の宝具『トラヴェルソ』を所持している。この具体的な効果は不明だが、鳴らした後に竜の形をした強力な炎を無数に放つ他、『星黎殿』の停泊時間の終了などを伝える役目もある。固有の自在法として、自身の炎と同じ色の光弾を流星の如く飛ばす自在法『星(アステル)』を使う。一度に数十発飛ばす事も可能。華奢な外観とは裏腹に強靭な膂力と体術の持ち主で、シャナとも互角に渡り合える程である。その他、マージョリーが幾十重も張り巡らせた防御の自在法を一瞬で容易く破壊してもいる。 16世紀初頭、[とむらいの鐘]の要請に応じて[仮装舞踏会]が『大戦』に参戦。参戦の本来の目的である、“探耽求究”ダンタリオンが勝手に持ち出した『大命詩篇』の断片を探索・破壊すべく、最前線に設営された本陣に自らも赴く。そして“棺の織手”アシズの手に渡っていた『大命詩篇』の断片と共振している最中、他者では破壊不可能なはずの『大命詩篇』を“天壌の劫火”アラストールに破壊された影響で危機に陥ったところを、“逆理の裁者”ベルペオルに救われた(X巻)。このことから、「神をも殺す神」たるアラストールに対し強い警戒感を抱いている。 本編では、文化祭の騒動の際、“彩飄”フィレスが『零時迷子』を活性化させ出現させた“銀”を鎮めるため、“嵐蹄”フェコルーを伴ってシャナたちの前に出現。“銀”を鎮めると共に『零時迷子』に在り処を探知するための『刻印』を施し立ち去った(XIII巻)。彼女の出現は、[仮装舞踏会]が『零時迷子』を必要としていること、そして“ミステス”坂井悠二を破壊することはフレイムヘイズ側にとって不利になることを、シャナたちに知らしめる結果となった。 “祭礼の蛇”坂井悠二がシャナを捕らえた時には、盟主への忠義とアラストールの神力への警戒心から、盟主のためにその命に背き彼女を密殺しようとしたが、シャナの機転で“祭礼の蛇”坂井悠二に介入され未遂に終わる。その際に“祭礼の蛇”坂井悠二にシャナを殺す方が危険となることを説かれ、諭されたものの、なお納得しきってはいない模様。 『大命』の第二段階として、“祭礼の蛇”坂井悠二に付き従い『久遠の陥穽』に出立し、『詣道』にて自身の感知能力で両界の狭間との隔離が完全な場所と不完全な場所を見分けながら、盟主たちを“祭礼の蛇”の神体へと導いていく。そして遂に『詣道』の最奥部にある『祭殿』へと到達し、ベルペオルが黒い蛇骨の“祭礼の蛇”神体を覚醒させた後に『大命詩篇』を稼動させて、『祭殿』を形成していた青銅塊を力の結晶に戻した後、それを“祭礼の蛇”神体へ戻して、かつての豪壮な姿と莫大な力を取り戻させた。そして『詣道』を遡る途中で追いついて来たシャナたちの妨害を撥ね退けて、ついに“祭礼の蛇”神体と共にこの世に帰還する。 そして、この世に帰還した直後に自身の巫女としての能力を使って、盟主“祭礼の蛇”の一度目の大命宣布を全世界の“徒”やフレイムヘイズに伝達した。その後、『星黎殿』秘匿区画にある『吟詠炉』にある『大命詩篇』のバックアップを使って“祭礼の蛇”神体の顕現安定化を図る作業を行い、中国南西部の決戦が終わるころには五割方安定した模様。 二月に、全世界の“徒”やフレイムヘイズへ向けた“祭礼の蛇”の二度に渡る大命宣布を伝達した後、御崎市決戦においては『真宰社』頂上部の『星辰楼』上空で『大命詩篇』の繭に取り巻かれて、神威召喚の儀式を進め、新世界『無何有鏡』完成と共にその生贄となって死亡し、マージョリーに討滅されたシュドナイと共に一時の眠りに入った。 アニメでの設定では、膨大な器の持ち主で自分の器が満たされる事が望みだった。他者の器に自分の器を合わせるという能力をもっており、今まで様々な者に器を合わせてきたが満たされたことはなかった。また、性格も原作と多少異なる。第二期では自らの偽りの器である近衛史菜を作り出し、悠二の元へ送り込んでいる。 ギリシャ神話で呪術を司るヘカテーという同名の女神が登場する。女媧は、古代中国神話に登場する土と縄で人類を創造したとされる女神。 “逆理の裁者(ぎゃくりのさいしゃ)”ベルペオル[Bel-Peol] 声 - 大原さやか 女性の“紅世の王”。炎の色は金色。初登場はVII巻。[仮装舞踏会]『三柱臣(トリニティ)』の審神者(さにわ)→軍師→参謀。狡猾で智略に長けており、およそ彼女を知る者からは「この世で最も敵に回したくない」とまでに恐れられる鬼謀の“王”。 かつての中国での古い通名は西母。 右目に眼帯をした、妙齢の三つ目の美女。 眼帯の下の失われた右目は、かつて秘法『久遠の陥穽』が発動する際に“祭礼の蛇”へ託された。この右目が『旗標』として、“祭礼の蛇”が創造した『大命詩篇』を受信者であるヘカテーへと正確に届ける為の磁針であると同時に、『祭殿』にて黒い蛇骨の姿で休眠していた“祭礼の蛇”神体の統括管理という副次的な役割も宛がわれていた。この『旗標』こそが不帰の秘法『久遠の陥穽』を根底から覆す元凶となった。 “祭礼の蛇”の眷属であり、盟主“祭礼の蛇”により「あらゆる事態に対処する」使命を課せられた存在。非常に用心深く、ありのままの現実を認めた上であらゆる状況を予測し、策略を立て、その読みを誤る事態が滅多にないがゆえに、この世のあらゆる陰謀に手が届くとまで謳われる。「思うままに生きる」ことを好む他の“徒”とは違い、その使命ゆえに「思うままにならない事にこそ挑む甲斐を感じる」という特質を持つ。 [仮装舞踏会]構成員らから絶大な尊崇の念を向けられているが、彼女自身は目的のためには他者を簡単に利用し、切り捨てることができる冷酷な性格でもある。だが“祭礼の蛇”に対しては非常に忠実で、彼を慕い、絶大な信奉を寄せている(その彼からは「寂しがりの娘」と形容されている。なおベルペオルは妹に当たる)。常から不在がちだった盟主と、託宣に明け暮れる巫女“頂の座”ヘカテー、不真面目な将軍“千変”シュドナイに代わり、実質的に組織を運営しており、盟主が帰還してからもそれは変わっていない。 三千年前の『大縛鎖』の儀式の際、フレイムヘイズたちの結束力により儀式を阻止され盟主を失った反省から(XX巻より)、「組織であるがゆえの強さ」を重んじ、数千年という単位で唱えている。 『星黎殿』の司令室である『祀竃閣』にいることが多いが、大命遂行のために外出する事も多い。 [仮装舞踏会]は、桁違いの規模の大軍勢に、『三柱臣』を始め強大な“王”達が数多く在籍しており、いざ動いた時の脅威やベルペオルの智謀への評価から、対峙する者は事あるごとに「彼女の陰謀の一環ではないか」と疑心暗鬼に駆られてその勢いを押し留められることになり、本人もそういった評価を時に煽りながら有効に活用している。 『三柱臣』として大命遂行の際にのみその行使を許される宝具は拘鎖『タルタロス』。変幻自在に動く鎖であり、能力の詳細は不明だが、特定現象を切り離す能力や、鎖の環の一つ一つから存在を封じていた“燐子”を出現させる能力を持つ。『大戦』では、共振していた『大命詩篇』が砕かれた影響で苦しむヘカテーを救助するために鎖の一部を切り離し囲むことで共振を遮断し、シャナに鎖の一部を取り付けた際には、フレイムヘイズとしての能力を全て封じていた。一巡して結節させることで、その内にあるものを外部から完全に隔離し、攻撃を無効化し弾き返すこともできる。 「教授」ことダンタリオンを比較的上手くコントロールできる数少ない人物であり、彼から自在式を込める事のできる金塊『デミゴールド』をせしめ、それを使って『非常手段(ゴルディアン・ノット)』などの宝具を製造している。 三千年前の『大縛鎖』の儀式の際、フレイムヘイズたちの「反逆」をある程度予想していたものの、対策はあまり考慮していなかったようで、そのために盟主の放逐を許してしまった(XX巻)。 シュドナイから『零時迷子』の発見の報を受けた後は、協力者たる“徒”を集め『大命』成就に向け準備を進める。『大命』第一段階の成就たる盟主の仮帰還後は、来るフレイムヘイズ陣営との史上最大の戦いに備え、世界中に散らばっていた[仮装舞踏会]の全軍・全構成員を『星黎殿』に集結させ、万全の戦備を整えている。そして『大命』の第二段階として、“祭礼の蛇”坂井悠二に付き従って『久遠の陥穽』に出立し、『詣道』を突き進んでいき、ついに『詣道』の最奥部にある『祭殿』に到達する。そして自身の右目である『旗標』によって黒い蛇骨の“祭礼の蛇”神体を覚醒させると同時に、『旗標』はその役割を終えて数千年ぶりにベルペオルの許に戻った。そしてヘカテーが『大命詩篇』を稼動させて“祭礼の蛇”神体にかつての豪壮な姿と莫大な力を取り戻させた後、『詣道』を遡る途中で追いついて来たシャナの姿とその決意を見聞きしたことで、シャナを自身の許容範囲外の危険因子と判断し、盟主の意向に背いてでもシャナを排除する決意をし、ヘカテーとシュドナイにシャナの抹殺を声なき声で暗に促した。そしてシャナたちの妨害を撥ね退けて、ついに“祭礼の蛇”神体と共にこの世に帰還する。 そして『祀竃閣』でヘカテーや教授たちの作業を監督しつつ、フェコルーの遺言である侵入路の捜索に当たる。中国南西部の決戦が終わった後に“祭礼の蛇”坂井悠二に状況を報告した。 二月の大命最終段階では、御崎市全体を包む封絶を張った後に“祭礼の蛇”坂井悠二の命令で『タルタロス』によって封絶内部の人間たちを存在の力として消滅させた直後に、悠二が連れてきた吉田一美にも『タルタロス』の一部をかけて彼女の所持する『ヒラルダ』の封絶内で動く以外の機能を封した。その後、変形した『真宰社』の中央制御室から儀式を監督した。 シャナやマージョリーによって『大命詩篇』や『吟詠炉』に収められたバックアップが書き換えられても動揺することはなかったが、それは『大命』の真の計画が、“祭礼の蛇”の「他者から望まれたことしか出来ない」制約を超えた、“祭礼の蛇”の自由意志による新世界『無何有鏡』の創造であり、シャナやマージョリーによる『大命詩篇』の書き換えも無効化できるためであった。しかし完成した新世界『無何有鏡』にシャナが望んだ「人を喰らえない理」が組み入れられたことに激しく動揺し、それが“祭礼の蛇”の望んだものと知って大笑いしたが、結局は納得した(XXII巻)。 新世界『無何有鏡』完成後は『タルタロス』で“祭礼の蛇”の仮装意思総体を坂井悠二から切り離し、坂井悠二に『タルタロス』の制御キーを渡し、“祭礼の蛇”と共に新世界『無何有鏡』へ旅立った(XXII巻)。新世界においては「策略家」「神算鬼謀」の悪名を、悠二に持っていかれた形となっている。新世界へ渡り来てから数年後に、“珠漣の清韻”センティアの運営する外界宿『ピエトロの食堂』でフレイムヘイズ側の代表として派遣されたシャナと新世界での初顔合わせし、『色盗人』への対策などを協議した(短編『クイディティ』)。 原作では最後まで直接戦闘を行う描写は無かったが、第1期アニメでは終盤にヴィルヘルミナと激突していた。『頂のヘカテーたん』では眼帯にハートマークが描かれた他、女子高生の制服を身に着けていた。 ベルフェゴールの別名をもつ同名の悪魔が存在する。
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