破壊活動防止法 破壊活動防止法の概要

破壊活動防止法

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/07 03:34 UTC 版)

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破壊活動防止法

日本の法令
法令番号 昭和27年7月21日法律第240号
種類 刑法
効力 現行法
所管 法務省
主な内容 政治目的とする暴力的破壊活動団体の規制
関連法令 組織的犯罪処罰法団体規制法
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概説

沿革

1952年5月に発生した血のメーデー事件をきっかけとして、ポツダム命令の一つ、団体等規正令(昭和21年勅令第101号)の後継立法として同年7月21日に施行された。

1951年秋と1952年秋に発生した二度のメーデー事件直後に、公安保障法案と、「ゼネスト禁止、集会デモ取締、プレスコード(新聞綱領)の立法のほか防諜法案」が準備されていた。このうち、プレスコード法案は単独法としては断念され、団体等規制法案→破壊活動防止法の「せん動」行為処罰として、防諜法案は刑事特別法として成立することになる。残るゼネスト禁止法案と集会デモ取締法案と団体等規制法案が、治安三法と呼ばれていた[3]

1952年、第3次吉田内閣第3次改造内閣によって公安保障法案が提出され、4月17日に衆議院本会議で木村篤太郎法務大臣から趣旨説明が行われた[4]。7月1日の参議院本会議で首相吉田茂は「又暴力行為がどうして発生するか、暴力団体はどうして存在するか。――これは、これを教唆し、又は扇動する人或いは又暴力団体自身に、或る人、或る団体を構成しておる諸君が存在いたすからであります。これを防止するのが法律の目的とするところであります。」と答弁している[5]。吉田内閣と与党自由党は原案そのままの可決を目指し、右派社会党は「煽動」・「文書所持」条項の削除と「濫用の罰則」を追加した修正案を提出した。左派社会党労働者農民党言論表現の自由の観点から、日本共産党は自党が標的にされていることに加え、アメリカ帝国主義に反対の立場から吉田内閣を“米帝の手先であり売国奴である[6]”と非難し、「米帝と吉田政府に反対するすべての国民が、民族解放民主統一戦線に結集し、だんこたる愛国者的行動をおこすならば、かならず破防法は粉砕されるであろう」(平仮名表記も全て原文のまま)と行動を呼びかけた[6]

参議院では自由党は過半数に満たず、緑風会キャスティング・ボートを握った形となった。その結果、緑風会は6月5日に独自案を提出し、「この法律は国民の基本的人権に重大な関係があるから、公共の安全の確保に必要な限度においてのみ適用すべきであって、いやしくもこれを拡張し拡釈して解釈してはならない」などの文言を加えた。しかし、原案の形式的、ぬえ的修正に過ぎないとする批判もあった[7]

参議院法務委員会審議では一度は原案、右派社会党案、緑風会案のいずれも否決されたが、吉田内閣が緑風会に譲歩。緑風会案を呑む形で、7月3日に参議院本会議で自由、緑風(党議拘束がないため一部反対あり)、民主クラブが賛成、改進、右社、左社、労農、共産、第一倶楽部が反対した結果、参議院通過[8]7月4日、衆議院本会議で自由が賛成、改進、右社、左社、共産、労農、第三倶楽部(社会党再建全国連絡会立憲養正會)が反対した結果、賛成多数により可決成立した[9]

破壊活動防止法は、「治安維持法の復活である」として、様々な物議をかもしたが、吉田政権の側にしてみれば、公安保障法案に盛り込まれていた「緊急検束」、「強制捜査」、「雇傭制限」、「政治団体の報告義務」、「解散団体の財産没収」、「煽動文書の保持者の取締り」などを、やむを得ず削除しなければならなかった。しかも、それだけでなく「公安保障法」という名称まで変更するはめになった。その結果、破壊活動防止法は、吉田政権が意図したような左翼に対する有効な武器として機能しなかった[10]

破壊活動防止法に対して、警察当局は賛同していたが、大歓迎するという姿勢ではなく、その取締り効果を冷やかに見ていた。国家地方警察本部調査統計課長兼企画課長であった桐山隆彦の「破壊活動防止法の捜査」(『捜査研究』第9号、1952年8月)では、破防法の審議のために、新警察法の審議がストップしたことを例に挙げて「破防法反対闘争デモに手を焼いたり、血を流したりするやら、とにかく制定に至るまでにも警察とはまことに因縁浅からざる法律である」と皮肉っているほか、

わたくし一個の率直な私見を述べるならば、この法律が団体規制の処分として、共産党を全面的に非合法の線に追いやる含みで作られたのであれば別だが、そこまでは行かないという場合、規制されるべき団体に対して、この法律の本来の目的とされている規制を効果的に加えうるかどうか疑問を持つているということである。 (中略)腹をきめて暴力主義的破壊活動に乗り出して来た団体ともあろうものが、果たしてこの法律による規制を加えられておとなしく引つこむかどうか、あえてそうした規制を無視して平然と執ように同様の活動をくり返す態度に出ることも考えられ、その結果、目ざす団体にはききめがなく、おとなしく規制を受けて引き下がる団体ならば、むしろはじめから遵法的な穏健な団体ばかりといつたことになる虞はないかどうかという点が心配になるのである。 — 桐山隆彦

と指摘しており、破防法の規制が日本共産党に対して有効に働かないだろうと予測している。

一方で、破防法の施行以前から日本共産党などは、特別審査局[11]公安警察による二重監視の対象であったが、破防法の「被疑者及びその団体」とみなされた場合には、それに拍車をかけて、監視を厳重化できることや、これまでは取締り対象にできなかった内乱の「せん動」や、その正当性や必要性を主張する文書の配布などを「予防鎮圧」するために立件することが可能になったことを例に挙げて、破防法に前向きな評価もしている[12]

適用と検討例

適用され初めて有罪になったのは1961年三無事件。他に渋谷暴動事件に対しても適用されている。

なお、1995年には地下鉄サリン事件など一連のオウム真理教事件を起こしたオウム真理教に対して解散を視野にした団体活動規制処罰の適用が検討され、公安調査庁が処分請求を行ったが、公安審査委員会(委員長:弁護士・堀田勝二)は「今後」の危険性という基準を満たさないと判断し、破防法の要件を満たさないとして、適用は見送られることとなった(代わりに団体規制法が制定・適用されることになる)。これについては、オウム真理教にすら適用されないのなら、一体何に適用されるのか、実質的に適用できない法律ではないのかという根強い批判もある。

この法律の規制対象に該当するかどうかの調査と処分請求を行う機関は公安調査庁であり、その処分を審査・決定する機関として公安審査委員会が設置されている(ともに法務省外局)。なお、いわゆる公安警察は破壊活動防止法によって設置された機関ではなく、警察法に基づく政令・規則により設置されているが、情報交換を行うことはあり得る(破壊活動防止法29条)。

この法律には、団体活動規制処分の規定のほか、個人処罰規定が設けられている。先述の三無事件での適用は、個人処罰規定の適用である。

破壊活動防止法を違憲と考え同法の廃止を訴える者も少なくないが、非常に抑制的に運用されているため、現在のところ政治レベルで破壊活動防止法を廃止しようという動きは活発ではない。

調査対象団体

指定年月順。1973年2月の国会質疑では以下16団体[13]、1995年5月23日にオウム真理教が追加された[14]

  1. 日本共産党
  2. 朝鮮総連
  3. 護国団
  4. 全学連
  5. 共産主義青年同盟(共青)
  6. 共産主義者同盟
  7. 大日本愛国党
  8. 大日本愛国青年連盟
  9. 国民同志会
  10. 日本同盟
  11. 関西護国団
  12. 日本塾
  13. 中核派
  14. 革共同
  15. 革労協
  16. 革マル派
  17. オウム真理教

構成

  • 第一章 総則(第一条―第四条)
  • 第二章 破壊的団体の規制(第五条―第十条)
  • 第三章 破壊的団体の規制の手続(第十一条―第二十六条)
  • 第四章 調査(第二十七条―第三十四条)
  • 第五章 雑則(第三十五条―第三十七条)
  • 第六章 罰則(第三十八条―第四十五条)
  • 附則



  1. ^ 日本法令外国語訳データベースシステム; 日本法令外国語訳推進会議 (2011年9月8日). “日本法令外国語訳データベースシステム-破壊活動防止法”. 法務省. p. 1. 2017年6月14日閲覧。
  2. ^ 破防法とはコトバンク
  3. ^ 荻野富士夫 『戦後治安体制の確立』 岩波書店 p.232
  4. ^ 第013回国会 本会議 第32号”. kokkai.ndl.go.jp. 2018年12月20日閲覧。
  5. ^ 第013回国会 本会議 第59号”. kokkai.ndl.go.jp. 2018年12月20日閲覧。
  6. ^ a b 破防法成立にさいしての声明(日本労働年鑑 第26集 1954年版)”. 法政大学大原社会問題研究所 (1953年11月20日). 2010年4月24日閲覧。
  7. ^ 破壊活動防止法の制定(日本労働年鑑 第26集 1954年版)”. 法政大学大原社会問題研究所 (1953年11月20日). 2010年4月24日閲覧。
  8. ^ 第013回国会 本会議 第61号”. kokkai.ndl.go.jp. 2018年12月24日閲覧。
  9. ^ 第013回国会 本会議 第65号”. kokkai.ndl.go.jp. 2018年12月24日閲覧。
  10. ^ ジョン・ダワ―(著) 大窪愿二(訳) 『吉田茂とその時代』 中公文庫 p.122~123
  11. ^ 現・公安調査庁
  12. ^ 荻野富士夫 『戦後治安体制の確立』 岩波書店 p.285~287
  13. ^ 国会議事録 第71回国会 参議院 法務委員会 第3号 昭和48年2月27日
  14. ^ 破壊活動防止法にみる団体規制と結社の自由(鳥居 喜代和) - 立命館法学
  15. ^ 参議院内閣委員会 1967年7月20日
  16. ^ a b c d e f ただし、人事院規則の定める場合を除く。現在の人事院規則では例外は規定されていない。
  17. ^ ただし、最高裁判所規則の定める場合を除く。現在の最高裁判所規則では例外は規定されていない。
  18. ^ ただし、失職については防衛省令の定める場合を除く。現在の防衛省令では例外は規定されていない。
  19. ^ ただし、条例で定める場合を除く。
  20. ^ ただし、設立団体の条例で定める場合を除く。
  21. ^ ただし、日本に特別の功労がある外国人の場合、国会の承認を経て、法務大臣が帰化を許可することは可能。


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