エレベーター 駆動方式

エレベーター

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/06/07 04:49 UTC 版)

駆動方式

油圧式エレベーターの底部

トラクション式

昇降路の直上や昇降路内に設置された巻上機を用い、ロープで接続されたカゴとバランスウェイトをガイドレールに沿って上下させる。従来のものは巻上機が昇降路上部にあるものが多いが、近年設置されるマシンルームレスと呼ばれるものは部品の小型化が貢献し巻上機が昇降路横に設置されている。これにより機械室のスペースが不要となった。
トラクション式の派生として、かごが2階建てになっているダブルデッキエレベーターもある。カゴは建物の2階分に相当する単位で昇降し、下部は奇数階・上部は偶数階に停止する仕組みになっている。昇降路あたりの輸送力が向上し、建物のフロア面積を効率的に利用できるというメリットがある一方で、奇数・偶数階間の移動ができない、一方の階の利用者が他方の階の利用者の乗降を待つ必要があるといったデメリットもある。
日本では六本木ヒルズ森タワー虎ノ門ヒルズ森タワー東京ガーデンテラス紀尾井町オークラプレステージタワーミッドランドスクエア大阪大林ビルディングのみに導入されている。なお、森タワー・東京ガーデンテラス紀尾井町のものは建物の階高の違いを吸収するためにカゴの上下階の間隔が可変になっている。

巻胴式

4人乗りなどの小型エレベーターでは、さらなる省スペースのためにバランスウェイトを設置しないことがある。この場合はカゴと乗員の負荷全てを巻上機が負担することになる。速度がかなり遅いなどの欠点がある。

油圧式

乗用では機械室を設けるスペースがない、荷物用ではより大きな出力が必要などの理由で設置される。油圧式には2種類あり、カゴにジャッキを繋げる直接式とバランスウェイトをジャッキで押し上げる間接式がある。直接式はロープやバランスウェイトが不要である。マシンルームレスの登場や巻上機の改善により、近年では減少傾向にある。

水圧式

水圧式は油圧式の亜種であり、量産機種ではOTIS社のスペックエコのみで採用されている。直接油圧式と同じ仕組みをとり、油の代わりに水を使用して臭いを解消した。

スクリュー式

かごに取り付けられたナットを高速回転させて昇降路に取り付けられたボルトを利用し昇降する。量産機種では日本エレベーター製造のSC309のみ採用している。

リニアモーター式

ガイドレールと共にリニアモーターを取り付け、その動力でカゴを上下させるもの。摩擦の影響を受けないため高速運転に向くなどの利点があるが、設置コストが非常に高いためほぼ採用されていない。

空圧式

2000年にアルゼンチンで発明された方式で[18]、空気圧を利用した独特の構造になっている。主に家庭用の小型エレベーターに使用されている。

注釈

  1. ^ これはJIS独自のものではなく、国語審議会が審議して内閣が定めた内閣告示に基づいている。外来語の表記は『内閣告示第二号』(平成3年6月28日)によって定められており、その「用例集」には、「エレベーター/エレベータ」の両方が記載されている。JIS C 3408「エレベータ用ケーブル」などのJIS規格では、「エレベータ」を採用している。
  2. ^ 高齢者や障害者の来訪も想定される、公共性の高い施設(病院老人ホーム市・町・村役場ショッピングセンターなど)であれば、2階〜5階建でもエレベーターの設置がほぼ必須となる。
  3. ^ これは日本での話であり、英語版Wikipediaでもdumbwaiter項はそのままである。
  4. ^ 火災発生時に消火活動で放水する水が直接駆動装置等にかかる恐れがあるため。
  5. ^ 平成27年12月28日 国土交通省告示第1274号 特殊な構造又は使用形態のエレベーター及びエスカレーターの構造方法を定める件の一部改正
  6. ^ a b 2016年10月3日から2018年5月31日までは日本オーチス・エレベータの子会社のオーチス・エレベータサービス(2018年6月1日に日本オーチス・エレベータに吸収合併された企業)が行っていた。

出典

  1. ^ 神東エレベータ株式会社 -豆知識-”. shintoh-ev.co.jp. 2024年3月28日閲覧。
  2. ^ JIS Z 8301 「規格票の様式及び作成方法」附属書G(規定)文章の書き方、用字、用語、記述符号及び数字 6.2 c および表G.3
  3. ^ Colosseum killing machine reconstructed after more than 1,500 years” (英語). The Telegraph (2015年6月5日). 2024年3月28日閲覧。
  4. ^ Landau & Condit 1996, p. 35; Abramson 2001, p. 84
  5. ^ a b 平凡社『アメリカを知る辞典』エレベーターp.95
  6. ^ "Skyscrapers," Magical Hystory Tour: The Origins of the Commonplace & Curious in America (September 1, 2010).
  7. ^ Equitable Life Assurance Society of the United States (November 1901). “The Elevator Did It”. The Equitable News: An Agents' Journal (23): 11 2012年1月10日閲覧。.
  8. ^ The History of Elevators From Top to Bottom” (英語). ThoughtCo. 2024年3月28日閲覧。
  9. ^ 川崎ハローブリッジ”. かわさき区の宝物シート. 川崎市川崎区. 2021年8月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年9月2日閲覧。
  10. ^ 一般社団法人 日本エレベーター協会|昇降機百科|エレベーターの歴史・変遷”. www.n-elekyo.or.jp. 2024年3月28日閲覧。
  11. ^ 三井宣夫・前島正裕 2007, pp. 23–32.
  12. ^ 【くらし物語】エレベーター 日本の技の今昔/速さだけじゃない 宇宙へも参ります『日本経済新聞』朝刊2018年3月17日(NIKKEIプラス1)。
  13. ^ ロープ3本が切れてエレベータが落下、目視外観検査の限界が露呈”. 日経BP(日経クロステック) (2012年3月29日). 2020年6月27日閲覧。
  14. ^ a b c d e f g h 国総研プロジェクト研究報告 第37号(第2章)”. 国土技術政策総合研究所. 2018年1月25日閲覧。
  15. ^ 建築基準法施行令第129条の6の解説設計上の留意事項
  16. ^ 野口みな子 (2020年1月14日). “エレベーターで「車いす用」「一般用」を両方押したら起きること”. withnews.jp. 2021年9月30日閲覧。
  17. ^ a b 教えて国土交通省!”. 国土交通省. 2021年10月9日閲覧。
  18. ^ The History of Lifts”. Axess2 (2014年2月3日). 2014年3月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月21日閲覧。
  19. ^ エレベーター計画・セキュリティ 横浜三井ビルディング”. 三井不動産. 2021年12月11日閲覧。
  20. ^ 2005-352660号 セキュリティ評価装置及び方法”. j-platpat. 2021年12月11日閲覧。
  21. ^ エレベーター内にて暴れなどの異常事態が発生した場合、防犯カメラの画像をリアルタイムで解析・検知するサービス「モーションサーチ」を開始” (PDF). 三菱電機ビルテクノサービス (2006年3月9日). 2019年1月15日閲覧。
  22. ^ 世界一速いエレベーターは?ランキングTOP3”. アイニチ株式会社 (2015年12月1日). 2022年10月28日閲覧。
  23. ^ INC, SANKEI DIGITAL. “日立エレベーターギネスに 時速75キロ、中国の高層ビル”. 産経フォト. 2022年12月13日閲覧。
  24. ^ 下り「世界最速」のエレベーターと言えばココ…時速45キロでビューン”. 読売新聞オンライン (2022年4月9日). 2022年10月28日閲覧。
  25. ^ ランドマークタワーのエレベーターが日本最速なのはなぜ?”. はまれぽ.com (2014年4月29日). 2024年6月7日閲覧。
  26. ^ 一般社団法人 日本エレベーター協会|よくあるお問い合わせ”. www.n-elekyo.or.jp. 日本エレベーター協会. 2022年10月28日閲覧。
  27. ^ エレベーターの定員は、1人あたり何kgで計算されている?”. アイニチ株式会社 (2015年5月8日). 2022年10月28日閲覧。
  28. ^ 日立評論1970年EX号:260人乗り日立超大型油圧式乗用エレベータ
  29. ^ さいたま市防犯ガイドブック9頁
  30. ^ エレベーター部品供給停止のお知らせ 三菱電機ウェブサイト
  31. ^ 部品供給停止のお知らせ 日立製作所ウェブサイト
  32. ^ 電力変換器 (Inverter current INVT)東芝エレベータウェブサイト
  33. ^ マシンルームレスタイプの非常用エレベーターの販売について東芝エレベータウェブサイト ニュースリリース
  34. ^ 日立機械室レス非常用エレベーターカタログp.2。
  35. ^ 総合エレベーターメーカーのクマリフト株式会社”. クマリフト株式会社 総合エレベーターメーカー. 2023年2月14日閲覧。
  36. ^ フィンランド・コネ社との昇降機事業における資本提携について”. 東芝エレベータ株式会社. 2023年2月15日閲覧。
  37. ^ フジテック|エレベータ・エスカレータの新規設置、メンテナンス、リニューアル”. www.fujitec.co.jp. 2023年4月26日閲覧。
  38. ^ フジテック|エレベータ・エスカレータの新規設置、メンテナンス、リニューアル”. www.fujitec.co.jp. 2023年4月26日閲覧。
  39. ^ フジテック|エレベータ・エスカレータの新規設置、メンテナンス、リニューアル”. www.fujitec.co.jp. 2023年4月26日閲覧。
  40. ^ 「エレベーターの保守管理等に関する実態調査」の結果について 国土交通省2009年7月7日報道発表資料
  41. ^ メンテナンスに関するご質問”. 2019年7月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2019年11月8日閲覧。
  42. ^ エレベーター所有者の管理義務三菱日立ホームエレベーター公式サイト
  43. ^ ホームエレベーター/小型エレベーター 総合カタログ(新商品1418フォレスト掲載版)
  44. ^ エス・イー・シーエレベーターと昇降機の保守事業で業務提携”. 東芝エレベータ株式会社. 2023年2月15日閲覧。






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