廻し 化粧廻し

廻し

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/14 10:27 UTC 版)

化粧廻し

化粧廻しを締めて土俵入りを行う、大相撲関取達 / 2005年初場所における幕内土俵入り。
弓取式
関取・豊真将紀行の化粧廻し / 筆文字(毛筆書き文字)を基にして白地に黒で「 豊真将」と刺繍されている。
現代の化粧廻しは廻し(締込み)の先端1メートルほどを前垂[* 4]として垂らす[14]。この画像で見られるように、前垂は前褌[* 5]に挟み込んで固定し、前垂の上部は腹を覆っている。江戸時代のもの (cf. ) とは構造的に大きく異なる。

化粧廻し(けしょうまわし)は、大相撲における儀式用の廻しであり、土俵入りを行う関取と、弓取式を行う力士が締める[14]。 現在のものは、博多織もしくは綴れ織(つづれおり)による[14]、長さ約7メートル、幅約67センチメートルの1枚の状の布で[14]、その先端1メートルほどを前に垂らす部分とし、残りは四重に折って腰に三重に巻く[14]前垂/前垂れ(まえだれ)[* 4]の部分には金糸・銀糸・色糸で華やかな図案を刺繍し、下部に金色・朱色・緋色・紫色などのふさ)を垂らす[14]

横綱の場合は、本人の分のほかに太刀持ち役と露払い役の力士の分も含めた三つ揃い(いわゆる三点セット)である。協賛企業や出身校などのスポンサー(後援会、タニマチ)から贈呈されることが多い。

新弟子が前相撲を終え、新序披露される際にも化粧廻しを着けて土俵に上るが、その際には部屋の兄弟子や親方から借りて着用している。

なお、前垂のみで構成され、エプロン状に仕立てられたものが祭用や子供用に作られる。歌舞伎や一部の歌舞伎舞踊でも使われ、これを伊達下がりという。

現在では関取になればすぐに新品の化粧廻しが後援者から贈られるが、1960年代の頃は関取に定着するまで兄弟子のおさがりを使用することがあった。北の富士の場合は兄弟子の佐田の山の化粧廻しをしばらく流用し、元の名前の書いてあるところの刺繍を剥がして自分の名前にして使用していた[22]

化粧廻しの馬簾の色にを使えるのは、横綱大関・元大関、および、横綱土俵入りの太刀持ち・露払いを務める者に限られる。紫以外の馬簾の色については特に制限はない。

化粧廻しの意匠

化粧廻しの意匠(デザイン)に関して、少なくとも戦後第二次世界大戦後)においては自由度が高い。

サブカルチャーなどのキャラクターを採用したものも、意外に多く見られる。 古くは、のちに漫画家に転向した十両・田代岩が手塚治虫漫画鉄腕アトム』の主人公・アトムの化粧廻しを締めていた[23]玄武満は十両昇進を果たした1973年初場所から赤塚不二夫の漫画『天才バカボン』の「バカボンのパパ」の化粧廻しを締めて話題をさらった[23]関脇鷲羽山佳和は、漫画家はらたいらが贈呈した「モンローちゃん」の化粧廻しを締めていた[23]常の山日出男は、1978年夏場所の十両昇進時、ちばてつやの相撲漫画『のたり松太郎』の主人公・荒駒とその相棒・駒田中をあしらった化粧廻しを締めていた[23]前頭戦闘竜は、秋本治の漫画『こちら葛飾区亀有公園前派出所』の主人公・両津勘吉をあしらった化粧廻しを締めていた[23]。関脇・土佐ノ海敏生は、共に高知県出身ということで横山隆一の漫画『フクちゃん』の主人公・フクちゃんをあしらったものを締めていた[23]千代大龍は、ゆでたまごの漫画『キン肉マン』の主人公・キン肉マン(キン肉スグル)が闘志の炎をたぎらせた姿をあしらったものを使用[23]。これは、朱に近い赤と黄色の地色でも闘志を表現したとりわけ目立つ化粧廻しで、作中の台詞「火事場のクソ力」の言葉入りであった[23]は、西原理恵子の漫画『毎日かあさん』の「かあさん」をあしらったものを医師・高須克弥から「高須クリニック」名義で贈呈されて締めていた[23]千代皇は、与論島に別荘がある縁で北見けんいちの漫画『釣りバカ日誌』の主人公・ハマちゃんの化粧廻しを締めていた[23]2017年(平成29年)には、漫画・アニメのキャラクターが史上初めて横綱の化粧廻しに用いられた[23]稀勢の里が横綱昇進を果たした時の話であり、横綱土俵入りを行う3名に対して『北斗の拳』の主要登場人物をあしらった化粧廻しが贈られた[24][25](※2017年5月6日、横綱昇進披露宴にて初公開[24])。横綱・稀勢の里には、生き様に通じるところがあるということで主人公ではなく孤高の強敵であるラオウが、太刀持ち髙安には主人公のケンシロウが、露払い松鳳山にはトキが割り当てられた[25][24]。これらは『北斗の拳』を製作する株式会社コアミックスの漫画製作スタッフがイメージスケッチまで含めて原画を手がけた[25]。稀勢の里の後援会会員でもあるコアミックスの堀江信彦社長がなかなか芽の出ない稀勢の里に「横綱になったら」と約束したもので、「北斗の拳の、ラオウがいい」と希望したのは稀勢の里本人であった[25]。後退することのない孤高の強者であったラオウは、「言い訳をするな」「勝負師は孤独であれ」という先代師匠の教えにも通じるお気に入りであったからという[25]。また、稀勢の里は贈呈された物として『ハローキティ』のキティ・ホワイトの化粧廻しを使用していたこともある。企業マスコットとしては、熊本県出身の佐田の海が2014年5月場所から「くまモン」の化粧廻しを締めていた[26]萌黄色を地色に正面顔のくまモンが最大限の大きさであしらわれていた。同じ時期(2016年7月場所以降)には、奈良県出身の德勝龍が、四股を踏む「せんとくん」をあしらった化粧廻しを締めていた[27][28]


注釈

  1. ^ 一部の通販サイトでの表記に拠ると少年用で自身のウェストサイズの4倍+100cm、成年用で自身のウェストサイズの4倍+160cmが一応の目安との表記あり。
  2. ^ 1990年代より、日本大学相撲部は黒色、2000年代より、埼玉栄高校はスクールカラーの橙色、報徳学園高校は同じくモスグリーンの廻しを大会出場時に使用。
  3. ^ 同じ題名で着衣帯刀の図もある。
  4. ^ a b c d 化粧廻しの「前垂/前垂れ(まえだれ)」とは、見せる目的で前に垂らす部分。
  5. ^ a b c 前褌(まえみつ)とは、褌(みつ、ふんどし)を締めた時に体を横に巻いた部分の前面。相撲で用いる褌は「廻し」であるため、「前廻し(まえまわし)」ともいう。同じ前面でも縦に巻いた部分は、局部を覆う袋のような形になることから「前袋(まえぶくろ)」という。

出典

  1. ^ a b 小学館『デジタル大辞泉』. “回し”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  2. ^ a b 池田雅雄、小学館『日本大百科全書(ニッポニカ)』. “回し”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  3. ^ a b 三省堂大辞林』第3版. “回し・廻し”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  4. ^ 三省堂『大辞林』第3版. “締め込み・締込み”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  5. ^ a b c 佐渡ヶ嶽 (1941), p. 135.
  6. ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “化粧回し”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  7. ^ 三省堂『大辞林』第3版. “化粧回し”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  8. ^ ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』. “化粧まわし”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  9. ^ 平凡社『百科事典マイペディア』. “化粧まわし”. コトバンク. 2020年7月31日閲覧。
  10. ^ 4関取の化粧廻し[リンク切れ]
  11. ^ 『トリビアの泉〜へぇの本〜 4』 2003 [要ページ番号]
  12. ^ 『月刊武道 2010年2月号』 (2010), p. 191.
  13. ^ 北の富士 & 嵐山 (2016), p. 31.
  14. ^ a b c d e f g 化粧回し”. きもの用語大全(公式ウェブサイト). 有限会社 創美苑. 2019年6月13日閲覧。
  15. ^ 日本相撲協会 相撲用語集
  16. ^ 加藤裕一「まわしの「下がり」に個性、白鵬15連勝願い15本」『日刊スポーツ日刊スポーツ新聞社、2019年5月17日。2019年5月19日閲覧。
  17. ^ 『週刊ポスト 2018年3月23日号』 2018 [要ページ番号]
  18. ^ 『週刊ポスト 2018年3月30日号』 2018 [要ページ番号]
  19. ^ 大相撲まわしの前の「ヒラヒラ」 何のためにあるの?調べてみた」『J-CASTニュースジェイ・キャスト、2019年5月24日。2019年12月26日閲覧。
  20. ^ 田中亮『全部わかる大相撲』(2019年11月20日発行、成美堂出版)p.33
  21. ^ a b c 土俵にまわし「前袋」、反則負けに…実は誤審でした」『朝日新聞デジタル朝日新聞社、2017年3月26日。2017年3月26日閲覧。
  22. ^ 北の富士 & 嵐山 (2016), p. 133.
  23. ^ a b c d e f g h i j k 千代大龍は「キン肉マン」/主な漫画化粧まわしメモ」『日刊スポーツ日刊スポーツ新聞社、2017年4月25日。2019年6月12日閲覧。■画像はキン肉マンの化粧廻しのみあり。
  24. ^ a b c 稀勢の里「北斗の拳」三つぞろいの化粧まわし初披露」『日刊スポーツ』日刊スポーツ新聞社、2017年5月7日。2019年6月12日閲覧。
  25. ^ a b c d e お知らせ”. COAMIX(公式ウェブサイト). 株式会社コアミックス (2017年5月1日・6日・7日・10日・12日・14日). 2019年6月12日閲覧。
  26. ^ 佐田の海が「くまモン」の化粧まわし姿披露”. 産経フォト(公式ウェブサイト). 産経新聞社 (2016年5月8日). 2019年6月12日閲覧。
  27. ^ “化粧まわしに「せんとくん」 奈良県、德勝龍関に贈る”. 朝日新聞デジタル (朝日新聞社). (2016年6月25日). https://www.asahi.com/articles/ASJ6S3C23J6SPOMB003.html 2019年6月12日閲覧。 
  28. ^ “德勝龍に「せんとくん」化粧まわし「いい相撲を取ってアピール」”. スポーツニッポン (スポーツニッポン新聞社). (2016年7月1日). https://www.sponichi.co.jp/sports/news/2016/07/01/kiji/K20160701012880580.html 2019年6月12日閲覧。 





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