顔触れ言上
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/10/12 00:53 UTC 版)
顔触れ言上(かおぶれごんじょう)とは、大相撲において翌日の取組を発表する儀式のことである[1][2]。通常、中入の時間に行われる。
概説
翌日の取組を知らせ来場を促す目的での顔触れ言上は江戸時代から行われてきたが[3]、現在の形で行われるようになったのは1970年1月場所からである。
幕内の土俵入りが終わり中入の時間になると呼出の柝の音に合わせて行司(原則は立行司。不在等の場合は三役格行司[注釈 1]が補助役の呼出とともに土俵に上がり、「憚りながら、明日(みょうにち)の取組をご披露つかまつります。」と口上を述べたのち、翌日の幕内取組を一番ずつ読み上げる(言上)。このとき、行司があらかじめ取組の両力士の四股名を和紙に書いたもの(顔触れ)を扇子に乗せて用意し、それを一枚ずつ手に持って四方の観客に見せる[注釈 2]。すべての取組を発表し終えると、「右、相つとめまする間、明日(みょうにち)もにぎにぎしく、お出(ご来場)をお待ち申し上げ奉ります。」[注釈 3]と締めの口上を述べ、行司が退出して儀式を終える[4][1]。
「翌日」の取組を発表するため、千秋楽には行われない。また中入の時点で翌日の幕内取組が決まっていない場合[注釈 4]にも行われない。十両までの取組で進行が遅れ中入の時間を短縮した場合にも行われない[5]。天覧相撲のときも行われない。
NHKのテレビ中継では中入の時間に新十両・新三役力士のインタビューや過去の名勝負の特集などの企画放送を行うため、顔触れ言上が中継されることは少ない。一方、ネット配信では中継されることが多い。
使用した顔触れは、翌日に会場の外(櫓か入口そばの掲示板)に貼り付けられる[1][2]。顔触れ言上が行われなかった場合でも、作成した顔触れの貼り付けは行われる。
脚注
注釈
- ^ 昭和50年代には庄之助・伊之助がともに揃っていながら三役格行司が顔触れ言上を行った記録がある。三役格行司が顔触れ言上を行う場合、誰が担当するかは決まった法則はなく本人同士の相談で決めているとされる(『大相撲の行司と階級色』p.153-154)。
- ^ 行司は東、正面、西の順に見せ、顔触れを受け取った呼出が向正面に見せる。
- ^ 口上の細かな言い回しは担当する行司によって異なる。担当者が先輩の事例を参照に自分でアレンジし、先輩からも特別な指導はないという(『大相撲行司の昇格・口上・持ち物』p.218-219)。
- ^ 通常、取組編成会議は午前中に行われるため、中入の時点で翌日の幕内取組は決定しているが、平成後期以降の傾向として、終盤戦になるとその日の取組結果を見てから翌日の取組を決める事例が増えている。そのため中入の時点で翌日の幕内取組が決まっていない事態がありうる。
出典
- ^ a b c コトバンク-顔ぶれ言上
- ^ a b [知る国技]顔触れ言上読売新聞オンライン2023年5月26日付
- ^ 大相撲の人気呼出し・利樹之丞さんインタビュー!呼出しとはどんな仕事?(前編)和楽Web
- ^ 行司の仕事大相撲.com
- ^ 大相撲、午後6時終了を守る熟練の小技 テレビに映らない「合図」withnews
参考文献
- 根間弘海著『大相撲行司の昇格・口上・持ち物』専修大学出版局、2025年5月7日発行 ISBN 978-4-88125-403-5
- 根間弘海著『大相撲の行司と階級色』専修大学出版局、2022年4月26日発行 ISBN 978-4-88125-369-4
外部リンク
顔触れ言上
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 23:25 UTC 版)
幕内以上の翌日の取り組みを一番ずつ一枚の和紙に相撲文字で書き、明日の取り組みを土俵上で披露する。この儀式は顔触れ言上(かおぶれごんじょう)と呼ばれ、横綱土俵入りの後、中入り取り組みの前に行われ、立行司が扇子の上に半紙に割が書かれた口上を呼び上げる。 「はばかりながら、明日(みょうにち)の取り組みをご披露つかまつります。琴××に○○山、朝△△に□□里、…(中略)…、右、相つとめまするあいだ、明日(みょうにち)もにぎにぎしく、ご来場をお待ち申し上げます」と呼び上げる。
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