石鹸 石鹸の概要

石鹸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/07/22 17:44 UTC 版)

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店舗に並ぶ石鹸の数々
マルセイユ石鹸フランス語版(サヴォン・ド・マルセイユ)

概要

分類

さまざまな分類法がある。

ナトリウム・カリウムなどのアルカリ金属塩のアルカリ石鹸と、アルカリ金属以外の金属塩の金属石鹸に分類され、狭義では前者を指す。

アルカリ石鹸は水溶性で表面活性が著しく、起泡力をもち洗浄力がすぐれる。

硬/軟という性質で、硬石鹸軟石鹸に分類される。

固形/液体で、「固形石鹸」と「液体石鹸」に分類することもできる。

用途で分類すると「身体用石鹸」「身体以外用石鹸」「工業用石鹸」に3分類される[2]。(身体用石鹸は人の身体に使うので、(各国の)薬事法などの規制を受けるので、別扱いなのである[2]。)

そのうち「身体用石鹸」はさらに細かく見ると(下位分類を見ると)、浴用石鹸(ボディーソープ)、洗顔用石鹸手洗い用石鹸(ハンドソープ)、薬用石鹸などがある[2]

「身体以外用石鹸」は、台所用石鹸洗濯用石鹸 等々に下位分類される。

石鹸は基本的に動植物の油脂から製造されるのだが、特に「純石鹸(じゅんせっけん)」と呼ぶ場合は、脂肪酸ナトリウムや脂肪酸カリウムだけで、添加物を含まない石鹸を指す。多くの石鹸は純石鹸ではなく、炭酸塩香料などの添加物を含む。

一般には溶媒として溶かして使用するものであるが、水なしで使えるよう工夫されたドライシャンプーという種類もあり、介護災害時宇宙ステーションでも使用されている[3]

分類についての詳細は#分類・種類の節にて解説。

作用
石鹸がつくるミセルの構造。石鹸の分子は、そのひとつひとつの両端に親油基と親水基を持ち、汚れ(≒油)があると、そこに多数の石鹸の分子の親油基の側が次々と着き、結果として内側に親油基を向け外側に親水基を向けた状態で多数の分子の向きが揃い、包み込むようにして球状のミセルとなり、水とともに流れてゆく状態になる。

界面活性剤であり、や油を含む汚れを水に分散させる作用により洗浄能力を持つ。細菌やウイルスを洗い落とすことで物理的に除去する「除菌作用」を持つ。(なお、洗い流す「除菌」と、殺す「殺菌」は別なのだが)全ての石鹸が細菌やウイルスに対する「殺菌作用」があるわけではないが、殺菌を目的とした薬用石鹸や逆性石鹸は殺菌作用も持つ。(逆性石鹸も参照)。

製造、作り方

一般的には、牛脂・羊脂・豚脂・硬化油・ヤシ油・綿実油などを適当に配合した油脂を水酸化ナトリウム溶液で「鹸化(けんか)」することでつくる。市販品のほとんどはいわゆる「石鹸工場」で作られている(#製法)が、古代から作られているわけで、作り方はさほど難しいものではなく、現在でも、家庭で容易に手作りすることもできる(#手作り石鹸)。

歴史

起源

17世紀中頃の石鹸工場を描いた版画

石鹸の歴史は紀元前3000年代に始まるといわれている[4]

古代から水だけで落ちにくい汚れに対し、粘土灰汁、植物の油や種子[5]などが利用されていたが、やがて動物のを焼くときに滴り落ちた脂肪の混合物に雨が降り、アルカリによる油脂鹸化が自然発生して石鹸が発見されたと考えられている。石鹸の「鹸」は「灰汁」や「塩基(アルカリ)」を意味する字であり(鹸性=塩基性、アルカリ性)、石鹸を平たく解釈すれば「固形塩基」「固形アルカリ」となる。

伝説では神への供物として羊を焼いたときの脂と灰で石鹸らしきものが誕生したとされ、それが古代ローマの「サポーの丘英語版」での出来事でありsoapの語源になったとされている[4][6]。一方、シュメール粘土板に薬用石鹸の記述がみられる。中東では現在でも石鹸が地場産業となっている地域(ナーブルスアレッポなど)がある[7]

普及

ヨーロッパではプリニウス博物誌の記載が最初で、ゲルマン人ガリア人が用いていたこと、すでに塩析が行われていたことが記されている。その後いったん廃れるが、アラビア人に伝わり生石灰を使う製造法が広まると8世紀にスペイン経由で再導入され、家内工業として定着していった。12世紀以降、それまでのカリ石鹸に替わりオリーブ油を原料とする固形のソーダ石鹸が地中海沿岸を中心に広まり、特にフランスマルセイユ9世紀以降主要な集散地から生産の中心地となった。

18世紀末には産業革命のもとで原料のアルカリ剤の大量生産が可能となったことで、石鹸も大量生産されるようになり普及した[4]

1916年にはドイツで世界初の合成洗剤が誕生[4]。1933年にはアメリカで世界初の家庭用合成洗剤が発売された[4]

日本

日本には安土桃山時代に西洋人により伝えられたと推測されている[8]。最古の確かな文献は、1596年慶長元年8月)、石田三成博多の豪商神屋宗湛に送ったシャボンの礼状である。

最初に石鹸を製造したのは、江戸時代蘭学者宇田川榛斎宇田川榕菴で、1824年文政7年)のことである。ただし、これは医薬品としてであった。

最初に洗濯用石鹸を商業レベルで製造したのは、横浜磯子堤磯右衛門である。堤磯右衛門石鹸製造所は1873年明治6年)3月、横浜三吉町四丁目(現:南区万世町2丁目25番地付近)で日本最初の石鹸製造所を創業、同年7月洗濯石鹸、翌年には化粧石鹸の製造に成功した。

1877年(明治10年)、第1回内国勧業博覧会で花紋賞を受賞。その後、香港上海へも輸出され、明治10年代の前半に石鹸製造事業は最盛期を迎えた。1890年(明治23年)、時事新報主催の優良国産石鹸の大衆投票で第1位になったが、全国的な不況のなかで経営規模を縮小した。翌年創業者の磯右衛門が死去。その2年後の1893年(明治26年)、廃業した。彼の門下が花王資生堂などで製造を続けた。

日本で一般に石鹸が普及したのは1900年代に入ってからである[4]

銭湯では明治10年代から使用され始め、洗濯石鹸のことを「洗い石鹸」、洗面石鹸のことを「顔石鹸」と称していた[8]。また、艦上で真水が貴重だった帝国海軍ではそれぞれセンセキ、メンセキと呼んでいたという。

第二次世界大戦直前には、原料油脂の入手が困難となったことから石鹸の規格や価格の統一化が段階的に進み、結果的に1940年には各石鹸ブランドが一時的に消滅した。名称も化粧石鹸から浴用石鹸へ、さらに洗濯石鹸と統合されて家庭用石鹸となった。1943年には、ベントナイトを混入した戦時石鹸が登場。さらに翌1944年には2号石鹸としてカオリンの混入、3号石鹸として混和物を80%まで認めた石鹸が製造された。これらは泥石鹸と呼ばれたが、戦争終結後はさらに劣悪な石鹸が流通した[9]。なお、当時、混和材として用いられたベントナイトやカオリンは、戦後に登場したクレンジング用の洗顔石鹸などに敢えて利用されることがある。




  1. ^ 一般用語としての石鹸と化学用語としての石鹸は重なり合う事が多いが、化学的には石鹸じゃ無い物が一般的に石鹸であったり、その逆もある。
  2. ^ a b c d e f g 日本石鹸洗剤工業会
  3. ^ おふろ宇宙航空研究開発機構
  4. ^ a b c d e f 暮らしの中の石けん・洗剤”. 日本石鹸洗剤工業会. 2019年10月17日閲覧。
  5. ^ サポニンを多く含む、エゴノキムクロジなど。インドではリタ(reetha)、ソープナッツとも呼ばれ、現在も粉末が利用されている。
  6. ^ 石鹸洗剤の歴史日本石鹸洗剤工業会
  7. ^ シリア 千年の潤い|中東解体新書 - NHK
  8. ^ a b ティドビット〜水まわりのまめ知識〜”. TOTO. 2013年5月25日閲覧。
  9. ^ 石鹸業界における流通の変遷 : 石鹸業界の誕生から統制解除まで 宝子山 嘉一 2017年8月26日
  10. ^ 日本大百科全書. “薬用石ケン”. コトバンク. 2020年3月22日閲覧。
  11. ^ 日本石鹸洗剤工業会「石けん洗剤知識」を一部改変
  12. ^ Kawahara, Takayoshi; Akiba, Isamu; Sakou, Megumi; Sakaguchi, Takemasa; Taniguchi, Hatsumi (2018-09-27). “Inactivation of human and avian influenza viruses by potassium oleate of natural soap component through exothermic interaction”. PLOS ONE 13 (9): e0204908. doi:10.1371/journal.pone.0204908. ISSN 1932-6203. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0204908. 
  13. ^ シャボン玉石けん、天然石けん成分「オレイン酸カリウム」の高い抗ウイルス効果を実証” (日本語). 日本経済新聞 電子版. 2020年5月1日閲覧。
  14. ^ 50 雑貨工業品品質表示規定経済産業省
  15. ^ 洗濯用又は台所用の石けん消費者庁
  16. ^ 「2-611 飽和脂肪酸(C=8〜18、直鎖型)のナトリウム塩または不飽和脂肪酸(C=16〜18、直鎖型)のナトリウム塩」「2-611 飽和脂肪酸(C=8〜18、直鎖型)のカリウム塩又は不飽和脂肪酸(C=18、直鎖型)のカリウム塩」化審法データベース 独)製品評価技術基盤機構
  17. ^ 2-1.魚介類への毒性 - 洗浄・洗剤の科学
  18. ^ 初期リスク評価書NITE-化学物質管理分野
  19. ^ 海洋での原油流出事故後に発生する黒い塊と紛らわしいので、この項では白色固形物と記す
  20. ^ 下水道における白色固形物の成分組成変化調査 東京都下水道局
  21. ^ [https://www.nikkei.com/article/DGXKZO21807290S7A001C1LKB000/ 日本経済新聞「固形せっけん国内首位」牛乳石鹸共進社(関西企業のチカラ)」
  22. ^ [1]





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