ラクダ 牧畜

ラクダ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/10 20:36 UTC 版)

牧畜

ラクダは乾燥地帯において主に飼育される家畜の一つである。もっとも、遊牧においてラクダのみを飼育することは非常に少なく、ヒツジヤギウシなどといった乾燥地域にやや適応した他の家畜と組み合わせて飼育されることが一般的である。これは、飢饉や疫病などによって所有する家畜が大打撃を受けた時のリスク軽減のためである。また、ラクダは繁殖が遅く増やすのが難しい。 オスは6歳にならないと交尾が可能とならず、発情期は年に1回しかない[15]。メスも他の家畜と比較して成熟に多くの時間が必要であり、妊娠期間は12ヶ月近くに及ぶ[15]

反面、寿命は約30年と長く、乾燥に強いために旱魃の際にも他の家畜に比べて打撃を受けにくい。このため、ヒツジやヤギが可処分所得として短期取引用に使用されるのに対し、ラクダは備蓄として、長期の資産形成のため飼養される[16]。一方、ラクダとヤギやウシを同じ群れとして放牧すると食物を巡って争いを起こしやすいため、ラクダの群れはほかの動物と分けて放牧するのが通例である。

野生における個体群

ラクダ科の祖先はもともと北アメリカ大陸で進化したものであり、200万年から300万年前に陸橋化していたベーリング海峡ベーリング地峡)を通ってユーラシア大陸へと移動し、ここで現在のラクダへと進化した。北アメリカ大陸のラクダ科は絶滅したが、パナマ地峡を通って南アメリカ大陸へと移動したグループは生き残り、現在でもリャマアルパカビクーニャグアナコの近縁4種が生き残っている。

ヒトコブラクダとフタコブラクダの家畜化はおそらくそれぞれ独立に行われたと考えられている。ヒトコブラクダが家畜化された年代については紀元前2000年以前、紀元前4000年、紀元前1300 - 1400年などの諸説がある。おそらくはアラビアで行われ、そこから北アフリカ東アフリカなどへと広がった。フタコブラクダはおそらく紀元前2500年頃、イラン北部からトルキスタン南西部にかけての地域で家畜化され、そこからイラクインド、中国へと広がったものと推測されている[17]

ヒトコブラクダ

ヒトコブラクダの個体群はほぼ完全に家畜個体群に飲み込まれたため、野生個体群は絶滅した。ただ、辛うじてオーストラリアで二次的に野生化した個体群から、野生のヒトコブラクダの生態のありさまを垣間見ることができる。また、2001年には中国の奥地にて1000頭のヒトコブラクダ野生個体群が発見された。塩水とアルカリ土壌に棲息していること以外の詳細は不明で、遺伝子解析などは調査中である。この個体群についても、二次的に野生化したものと推測されている。したがって、純粋な意味での野生のヒトコブラクダは絶滅した、という見解は崩されずにいる。

フタコブラクダ

野生のフタコブラクダの個体数は、世界中で約1000頭しかいないとされている[18][19]。このため、野生のフタコブラクダは2002年に、国際自然保護連合(IUCN)によって絶滅危惧種に指定され、レッドデータリストに掲載されている。

生息域

2010年には全世界で1400万頭のラクダが生息しており、その90%がヒトコブラクダであった。ヒトコブラクダとフタコブラクダの生息域は一部では重なり合うものの、基本的には違う地域に生息している。

ヒトコブラクダは西アジア原産であり、現在でもインドやインダス川流域から西の中央アジア、イランなどの西アジア全域、アラビア半島、北アフリカ、東アフリカを中心に分布している。中でも、特にアフリカの角地域では現在でも遊牧生活においてラクダが重要な役割を果たしており、世界最大のラクダ飼育地域となっている[20]。世界で最大のラクダ飼育頭数を誇るソマリア[21]や、エチオピアにおいてラクダは現在でも乳、肉、移動手段を提供し続けている[22][23][24][25]

フタコブラクダは中央アジア原産である。トルコ以東、イランやカスピ海沿岸、中央アジア、新疆ウイグル自治区モンゴル高原付近にまで生息している。頭数は140万頭程度で、ラクダのうちの10%程度である[26][27][28]。家畜として飼育する場合は通常どちらかの種しか飼育しないが、両種の雑種は大型となるため荷役用として価値が高く、中央アジアでは両種をともに飼育して常に雑種を生み出し続けるようにしていた(後述)。

また、ヒトコブラクダは砂漠の広がるオーストラリアに人為的に持ち込まれ、現在では野生化して繁殖している[29]。植民地としてオーストラリア内陸への入植を進めたイギリスが、同じく英領であったインドやパキスタン、その北隣のアフガニスタンから、約2万頭のラクダと約2000人のラクダ使いを送り込んだ。オーストラリア大陸鉄道自動車が普及し、ラクダの必要性が低下した。当局から殺処分を求められたラクダ使いは、ラクダを野に放った[30]。こうして、ラクダの個体群は19世紀から20世紀にかけて持ち込まれたものが野生化した。オーストラリア中央部の砂漠地帯にかつては約70万頭が生息していた[31][27][32]。この数字は年間8%ずつ増大した[33]。この野生ラクダはオーストラリアで盛んなヒツジの牧畜用の資源を荒らすため、オーストラリア政府は10万頭以上を駆除している[34]。その結果、2018年時点で約30万頭が残っている。一方で、輸送用ではなくラクダ乳を入手を目的とした牧場も運営されている[30](「食用」も参照)。


注釈

  1. ^ らくだ (落語)を参照。

出典

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