ユナニ医学とは? わかりやすく解説

ユナニ医学

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/21 20:26 UTC 版)

ユナニ医学(ユナニいがく)とは、現在もインドパキスタン亜大陸のイスラーム文化圏で行われている伝統医学であり[1]古代ギリシャ医学を起源とする。中国医学アーユルヴェーダ(インド伝統医学)とともに、世界三大伝統医学のひとつとされる[2]。ユーナニ医学、ユナニー医学、ユナニティブ、ギリシャアラビア医学、グレコ・アラブ医学、アラビア医学、イスラーム医学ともよばれる。「Yunan」ということばは、(アラビア語でもそうであるが[3]ペルシャ語で「ギリシャ」(Ionia)という意味で、「Yunani」とは「ギリシャの」(Ionian)または「ギリシャを源にするもの」という意味である[4]イスラム医学イスラーム医学と呼ばれることもあるが、イスラーム世界で発展したとはいえ、ネストリウス派キリスト教徒やユダヤ教徒など、多くの異教徒の学者も功績を残している。また、民族的にも非アラブ人であるペルシャ人(イラン人)やトルコ人、インド人、ギリシャ人、エジプト人、シリア人の医師たちも活躍したため[4]、厳密には「アラビア人の医学」でも「イスラームの医学」でもなく、広くアラビア世界、イスラーム文化圏で発展した医学を指す。10世紀に確立し、イスラームの拡大とアラビア語の普及に伴い、ヨーロッパやインドでも広く行われた[4]。ヨーロッパの大学では、15~16世紀には主にユナニ医学が教えられており、18世紀までイブン・スィーナー(Avicenna, 980-1037)の『医学典範』など、ユナニ医学の文献が教科書として使われていた[4]


  1. ^ WHO、R.バンナーマン、、J.バートン、陳文傑 責任編集 『世界伝統医学大全』 津谷喜一郎 訳、平凡社、1995年
  2. ^ 民族薬物資料館 富山大学 和漢医薬学総合研究所
  3. ^ パスポート初級アラビア語辞典
  4. ^ a b c d e f g h i j k l m サイード・パリッシュ・サーバッジュー『ユーナニ医学入門 イブン・シーナーの「医学規範」への誘い』ベースボールマガジン社、1997年。ISBN 978-4583034911
  5. ^ a b c d e f 梶田昭『医学の歴史』講談社、2003年。ISBN 978-4061596146
  6. ^ a b c d e f g h i 小松かつ子. “ユナニー医学とは”. Museum of Materia Medica, Univ. of Toyama. 2015年1月12日閲覧。
  7. ^ a b 吉村正和『図説 錬金術』河出書房新社、2012年。ISBN 978-4309761817
  8. ^ 久木田直江「中世ヨーロッパの食養生」『静岡大学英文学会会報』第28号、2009年2月、2014年4月1日閲覧。
  9. ^ a b 本多義昭「ユナニおよびアラブ伝統医療」『医療従事者のための補完・代替医療』今西二郎、金芳堂、2009年、改訂2版。ISBN 978-4765313759
  10. ^ 会報ヒューマンサイエンス(VOL.23) アラビアの様々な治療法”. Japan Health Sciences Foundation. 2015年1月22日閲覧。
  11. ^ a b c 橋本浩『なぜ生まれた!どう進化した?早わかり科学史』日本実業出版社、2004年。ISBN 978-4534038104
  12. ^ a b 前嶋信次『アラビアの医術』平凡社、1996年。ISBN 978-4582761481
  13. ^ a b ルチャーノ・ステルペローネ『医学の歴史』小川熙訳、原書房、2009年。ISBN 978-4562045143
  14. ^ デイビット・ウィンストン、スティーブン・メイム『アダプトゲン ―ストレス「適応力」を高めるハーブと生薬―』熊谷千津、法眼信子訳、フレグランスジャーナル社、2011年。ISBN 978-4894791923
  15. ^ 岡﨑桂二「『マカーマート』における医療のトポス-蘇生術、産婆術、預言者の医術-」『四天王寺大学紀要』第47号、2009年。
  16. ^ a b c 佐藤次高、嶋田襄平、板垣雄三、日本イスラム協会『新イスラム事典』平凡社、2002年。ISBN 978-4582126334
  17. ^ 酒井シヅ『医学史への誘い』診療新社、2000年。ISBN 978-4915917639
  18. ^ a b 服部伸『近代医学の光と影』山川出版社〈世界史リブレット82〉、2004年。ISBN 978-4634348202


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ユナニ医学

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脈診」の記事における「ユナニ医学」の解説

古代ギリシャに始まる西洋伝統医学ユナニ医学(ギリシャ・アラビア医学)は、体液バランス崩れ病気引き起こすという体液病理説四体液説であったため、体液の状態を知るために 尿診(英語版と共に脈診重視した東ローマ帝国のテオフィロス・プロトスパタリオス(英語版)(7世紀)は中国医学影響受けて脈拍についての論文書いたヨーロッパで近世までユナニ医学が大学教えられており、イスラム圏だけでなくヨーロッパで行われていた。

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