駆逐艦
「駆逐艦」とは、高速で移動する重装備の戦闘艦のことを意味する表現である。
「駆逐艦」とは・「駆逐艦」の詳しい解説
「駆逐艦」は、海上戦闘において、高速で移動する軍艦を指す言葉だ。大きさは全長100m前後であり、100人から400人程度が乗員する。駆逐艦は、第二次世界大戦よりも前に存在していた軍艦であり、第二次世界大戦の前後で役割が大きく異なる。第二次世界大戦以前の駆逐艦は、軍艦の中でも序列が低く、戦艦など、規模の大きな軍艦のサポートを行うものであった。第二次世界大戦よりも後の時代では、ミサイル兵器を搭載することで、駆逐艦は海軍における主力の立ち位置となった。対空戦闘や対潜水艦戦闘など、様々な戦闘に導入されることが多い。「駆逐艦」の特徴
現代の駆逐艦は、比較的小型であり、重装備と高速移動を両立した軍艦を指す。基本的な装備としては、魚雷やミサイル、機雷、中口径の砲塔などが挙げられる。そして、高速移動を実現するために、装甲は薄いのが特徴だ。航行するために必要な、最低限の装甲のみ備えた駆逐艦も少なくない。「駆逐艦」の語源・由来
「駆逐艦」の「駆逐」には、追い払うという意味がある。そして、機雷や魚雷などの水雷兵器を使用する敵の水雷艇を、戦場から追い払う軍艦という意味で、駆逐艦という名前となった。「駆逐艦」と「巡洋艦」と「フリゲート」の違い
「駆逐艦」に似た意味を持つ言葉としては、「巡洋艦」と「フリゲート」が挙げられる。巡洋艦は、駆逐艦よりも航続力があり、サイズが大きいものを指す。フリゲートは、駆逐艦よりもサイズが小さい軍艦である。どちらも重装備であり、なおかつ高速移動ができる点は、駆逐艦と共通だ。「駆逐艦」「巡洋艦」「フリゲート」は非常に似ている軍艦であり、どういった条件で区別するのかは、国や組織によって異なる。そのため、製造した国が駆逐艦として扱う軍艦が、別の国では巡洋艦やフリゲートと呼ばれることもある。「駆逐艦」の類語
「駆逐艦」の類語としては、「軍艦」や「艦艇」が挙げられる。いずれも海軍で使用される船のことであり、駆逐艦はその中に含まれる。また、「水雷艇」という類語もある。第二次世界大戦中に使用された、駆逐艦よりも小さい船を指す言葉だ。場合によっては、水雷艇と駆逐艦は同一のものとして扱われる。日本の代表的な「駆逐艦」
「雪風」とは
「雪風」は、太平洋戦争で使用された駆逐艦である。16回以上の戦闘に加わりながら、大きな損傷を受けることがなかったため、奇跡の駆逐艦と呼ばれた。終戦後は、賠償艦として中国に渡り、丹陽という名前で使用された。
「蕨」とは
「蕨」は、1927年の訓練中に、衝突事故を起こして沈没した駆逐艦である。蕨の船体の一部は、現在でも海底に残っているのが確認されている。
「島風」とは
「島風」は、速度40.698ノットという、当時の駆逐艦記録を打ち出した軍艦である。1940年には、警備や迎撃を行う哨戒艇に変わり、駆逐艦ではなくなっている。
「雷」とは
「雷」は、1932年に作られた駆逐艦である。作られてから10年が経過した後、ガダルカナル島の戦いに加わっている。ガダルカナル島の戦いでは大きな損害を受けたが、帰投に成功している。その後、商船の護衛の任務を行っているところ、アメリカ軍の潜水艦に見つかり、魚雷によって沈没させられた。
「島風」とは
「島風」は、1943年に作られた駆逐艦である。40.698ノットの記録を打ち出した島風にあやかり、2代目として、島風の名前が付けられている。その名前の通り、40.9ノットという高速移動を実現した。
「竹」とは
「竹」は、太平洋戦争中に、量産型として作られた駆逐艦である。主に輸送や他の軍艦の護衛任務に当たり、終戦まで生き残っている。
「響」とは
「響」は、1933年に作られた駆逐艦である。太平洋戦争中の護衛任務を行っている際に、機雷によって損傷したことで、レイテ沖の海戦には不参加となっている。そして、終戦まで生き延び、賠償艦としてソ連に渡った。
「神風」とは
「神風」は、1905年に作られた駆逐艦である。1945年にマレー半島沖で、アメリカの潜水艦ホークビルと戦ったことで知られている。神風とホークビルはそれぞれ高度な技量で戦い、神風は撃沈されずに終戦を迎えている。
アメリカの代表的な「駆逐艦」
アメリカの駆逐艦としては、ズムウォルト級ミサイル駆逐艦が代表的である。ステルス性能を高めてあり、特徴的な見た目となっている。ただ、製造コストが、1艦当たり45億ドルと高額であり、専用ミサイルの発射コストが非常に高い。そのため、コスト削減によって、仕様が大きく変わったという経緯がある。電磁力を使用した兵器、レールガンを搭載する予定であったが、頓挫している。また、アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦も、代表的な駆逐艦である。防空システムのイージスシステムを搭載した、イージス艦としても有名な軍艦だ。世界最強の「駆逐艦」
世界最強の駆逐艦としては、アメリカ海軍のズムウォルト級が挙げられることが多い。コストパフォーマンスの面では失敗作として扱われることが少なくないが、コスト以外の装備面や性能面が、最強と評価されることはよくある。また、中国海軍の055型が、世界最強の駆逐艦だとする説もある。そして、ズムウォルト級はコストを含めると最強とは言えない、055型は駆逐艦ではなく巡洋艦であるなど、世界最強の駆逐艦を巡って議論されることは珍しくない。「駆逐艦」の使い方・例文
「駆逐艦」を使用して例文を作ると、「先日、博物館で、駆逐艦が展示されているのを見た」「来週、横浜にアメリカの駆逐艦が来るそうなので、見物に行くことにする」「現代では、海戦を有利に進めるために、どの国も駆逐艦の開発に力を入れている」といった表現になる。【駆逐艦】(くちくかん)
Destroyer
艦艇の一種。アメリカ海軍では"DD"の略号(Destroyerの頭文字であるが、1文字だけの場合はその文字を重ねるため)で表記される。
「水雷艇駆逐艦」を略したものが語源であるが、現代における定義は後述のとおり曖昧である。
一般には巡洋艦より小さく、明白に軍事衝突を想定して武装した戦闘艦を指す。
ただし、中には往時の(前ド級)戦艦や巡洋艦にも匹敵する満載排水量10,000トン以上の艦もある。
また、ヘリコプター空母を「ヘリコプターの母艦機能を持つ駆逐艦」として扱う、という極端なケースもある。
重量の下限についても、フリゲート並みかそれ以下という例が多々あり、こちらも明確な国際基準はない。
関連:護衛駆逐艦
ルーツとその発展
元々「駆逐艦」とは、その名の通り「水雷艇を駆逐(撃破)する艦艇」として開発された艦である。
水雷艇は、小型の船体と高い機動力を活かし、艦船の死角から雷撃を行う事を任務とする艦艇であり、大型で鈍重な巡洋艦・戦艦にとっては重大な脅威であった。
これに対する対抗戦術として設計・開発された、「一定の機動力と、水雷艇を容易に駆逐する武装」を備えた艦艇が駆逐艦であった。
その後間もなく、外洋航行能力に欠ける水雷艇は海戦兵器の座から退き、その役割は駆逐艦へと引き継がれた。
これに伴い、爆雷や高射砲を搭載するなどして、その任務は様々に多様化していった。
最盛期の駆逐艦に割り振られていた任務は主として以下のようなものである。
駆逐艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/02/01 16:19 UTC 版)
駆逐艦(くちくかん、英語: destroyer)は、多様な作戦任務につく重装備・高速の水上戦闘艦。当初は主力艦を護衛して敵の水雷艇を駆逐するための大型水雷艇として登場したが、まもなく水雷艇の代わりにそれ自体が敵艦隊への水雷襲撃を行うようになり、また潜水艦に対する攻撃や偵察・哨戒、船団護衛など、多岐にわたる任務に酷使される便利な艦種に成長していった[1]。
注釈
- ^ a b スペイン海軍からの発注でトムソン・クライド造船所が建造し、1886年に進水させた「デストラクター」(348トン)は[2]、水雷艇を拡大した設計を採用して海上公試では20.6ノットを記録しており、TBDの先駆者とも称されるが[3][4]、公称艦種としては水雷砲艦とされていた[5]。
- ^ 例えばフランスとイタリアが共同で行ったFREMM計画の場合、イタリア海軍向けのカルロ・ベルガミーニ級は艦種呼称・記号ともに「フリゲート」とされているが[11]、フランス海軍向けのアキテーヌ級は、呼称は「フリゲート」とされている一方で記号は駆逐艦を意味する「D」とされている[12]。またカルロ・ベルガミーニ級を元にアメリカ海軍向けに開発されたコンステレーション級は、満載排水量7,291トンまで大型化しつつも、艦種呼称・記号ともに「フリゲート」とされている[13]。
- ^ 史上初の実戦投入は、この前年にイギリス海軍の装甲蒸気フリゲート「シャー」がペルー反乱軍の装甲艦「ワスカル」に対して発射したものであったが、このときは命中しなかった[14]。
- ^ アメリカ海軍のミサイル巡洋艦が艦対空ミサイルを主兵装とした防空艦であったのに対し、これらのソ連海軍のミサイル巡洋艦は、むしろ艦対艦ミサイルを主兵装として、対水上戦を主任務としていた[45]。
出典
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駆逐艦(トゥール・デトレル級)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/16 18:52 UTC 版)
「超時空騎団サザンクロス」の記事における「駆逐艦(トゥール・デトレル級)」の解説
船体長は約350mと、我々の水上艦艇の基準で 原子力空母 ほどの寸法と質量を持ち、艦首の周囲に 4 門 配置されている触角のような形状の主砲粒子砲は、惑星グロリエはおろか、惑星リベルテの主力艦艇をも一撃で撃破する。(16話)
※この「駆逐艦(トゥール・デトレル級)」の解説は、「超時空騎団サザンクロス」の解説の一部です。
「駆逐艦(トゥール・デトレル級)」を含む「超時空騎団サザンクロス」の記事については、「超時空騎団サザンクロス」の概要を参照ください。
駆逐艦
「駆逐艦」の例文・使い方・用例・文例
- 二隻の駆逐艦が我々の方に向かって猛スピードで突進して来た
- 駆逐艦が機械水雷に触れて中断された
- 速力は駆逐艦の命だ
- 駆逐艦は日露戦争に初めて異彩を放った
- 駆逐艦は三十五海里の快速力を出す
- 駆逐艦隊
- 速力は駆逐艦の生命だ
- 彼は駆逐艦付きを命ぜられた
- 駆逐艦付きの候補生
- 駆逐艦より小さい軍艦
- 米国の戦艦で、駆逐艦より大きく、巡洋艦より小さいもの
- 駆逐艦を表す俗語
- 最新の駆逐艦の前身であった小型駆逐艦
- 総駆逐艦
- 駆逐艦という,高速力をもち動きの軽快な小型の軍艦
- すぐに米海軍の駆逐艦ベインブリッジが現場に派遣される。
- 駆逐艦の船長フランク・カステラーノ中佐(ユル・ヴァスケス)は海賊と交渉を始める。
駆逐艦と同じ種類の言葉
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