【艦対艦ミサイル】(かんたいかんみさいる)
巡洋艦や駆逐艦、潜水艦などから発射され、水上艦を攻撃することを目的とするミサイル。
発射された後は飛翔して目標へ突入し、多くは爆発することで被害を与える。
艦載砲や魚雷に比べて格段に射程と威力に優れるためそれらにとって代わり、現在では水上艦に対する攻撃手段の主力になっている。
東側では1960年代から本格的に艦対艦ミサイルの配備が進められており、1967年にイスラエルの駆逐艦「エイラート」がエジプトのミサイル艇から発射されたSS-N-2によって撃沈されたことで、西側に大きな影響を与えた。
他方、西側では艦対空ミサイルに一応の対艦攻撃能力があったことと、陣営の盟主であるアメリカが(フォレスタル級・キティホーク級・エンタープライズ・ニミッツ級といったスーパーキャリアーを多数擁する)空母機動部隊による強大な水上打撃力を備えていたことから開発・配備が進まず、本格的に艦対艦ミサイルの配備がされたのは1980年代以降だった。
艦対艦ミサイル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/14 02:46 UTC 版)
艦対艦ミサイル(かんたいかんミサイル、英語: ship-to-ship missile, SSM)は、水上艦艇から発射される対艦ミサイルのこと。
概要
対艦ミサイルはまず空対艦ミサイル(ASM)として実用化され、第二次世界大戦末期にはドイツ空軍が実戦投入していたほか、アメリカ海軍でも開発が進められていた[1]。一方、その艦載化という点ではソ連海軍が先行しており、まず短射程のP-15(SS-N-2)を先行して開発し、1959年よりミサイル艇に搭載して配備を開始した[2]。また翌1960年には、250海里 (460 km)という長大な射程を誇るP-6(SS-N-3)が登場し、こちらはアメリカ海軍の空母任務部隊への対抗策として、潜水艦やミサイル巡洋艦に搭載された[2]。1967年には、ソビエト連邦から提供されたP-15ミサイルを搭載したエジプト海軍のミサイル艇がイスラエル海軍の駆逐艦「エイラート」を撃沈する事件が発生し、西側諸国にSSMの脅威を強く印象づけた[3]。
これに対し、アメリカ海軍では当初艦対空ミサイル(SAM)で対艦兵器も兼用する方針であり、また大戦中に建造された砲装型巡洋艦などの強力な艦砲が多数残っていたこともあって[4]、艦上発射型の巡航ミサイルはまず対地用の戦略兵器として配備された[2]。一方、西側諸国のなかでも周辺諸国に対して海上兵力で劣勢にあった北ヨーロッパ諸国やイスラエルでは早くから艦対艦ミサイルに着目しており、1966年にはスウェーデンがRB 08を、また1972年にはイスラエルがガブリエル[5]、ノルウェーがペンギンを配備した[6]。1973年の第四次中東戦争では、イスラエルとシリアのミサイル艇同士の交戦(ラタキア沖海戦)が発生し、海戦のミサイル化を象徴する戦闘となった[3]。
これらは艦上発射を前提として開発されたものであったが、その後はハープーンなどASMと共通化したSSMが主流となっていった[1]。また、当初は単に小さく高速であるというだけで要撃を避けることができていたが、水上艦の側でもミサイルの脅威に対抗するため電子攻撃やCIWSなど対艦ミサイル防御(ASMD)の技術を発達させていったことから、後にはミサイルの側でも、超低空飛行(シースキミング)やレーダー反射断面積(RCS)の低減によって敵からの探知を避けたり、超音速化によって要撃のための余裕を与えないようにしたりといった策を講じていくことになった[1]。
なお、対艦ミサイルでは水上艦を標的とするために遠距離からの目標の探知・捕捉に困難が伴うが、特にSSMでは発射プラットフォームも水上にあり、自ら目標を探知・捕捉できる範囲が限られるため、電波水平線 (Radar horizon) 以遠の敵との交戦が問題となる[3]。このため、ラタキア沖海戦など初期のSSMによる交戦はいずれも比較的短距離で戦われており[3]、またエグゾセSSMの初期モデル(MM38)が開発された際には、その発射プラットフォームとして想定されていた小型艦艇のレーダーや電波探知装置での探知距離とマッチする程度の射程でよいと考えられて、あえて延伸は試みられなかった[7]。これに対し、初期から遠距離攻撃をも志向していたソビエト連邦では、航空機や衛星(レゲンダ)によるISRシステムの構築を図っていたほか、艦自身も簡易的なOTHレーダーを搭載した[3]。またNATO諸国でも、後にはSSMの射程延伸を図るとともに、LAMPSなど艦載ヘリコプターによって目標を捕捉する体制を整備した[3]。
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P-15 SSM
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ガブリエルSSM
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ハープーンSSM
主な機種
- マルテ
- オトマート
脚注
注釈
- ^ クウェート海軍のウム・アル・マラディム級が搭載。
- ^
インドと共同開発した派生型
- ^ 射程延伸版
出典
- ^ a b c Lake 2019.
- ^ a b c 岡部 2005.
- ^ a b c d e f Friedman 2016.
- ^ Gardiner 1996, pp. 551–552.
- ^ Friedman 1997, p. 230.
- ^ Friedman 1997, pp. 232–234.
- ^ Friedman 1997, pp. 226–227.
参考文献
- Friedman, Norman (1997). The Naval Institute guide to world naval weapon systems 1997-1998. Naval Institute Press. ISBN 9781557502681
- Friedman, Norman (2016). “Technological Review - Shipboard Antiship Missiles”. Seaforth World Naval Review 2017. Pen and Sword Books. ISBN 978-1473892781
- Gardiner, Robert (1996). Conway's All the World's Fighting Ships 1947-1995. Naval Institute Press. ISBN 978-1557501325
- Lake, Jon (2019). “Anti-Ship Missile Evolution”. Asian Military Review (6) .
- 岡部, いさく「対地対艦ミサイル (艦載ミサイルの発達と現況)」『世界の艦船』第639号、海人社、2005年3月、88-93頁、 NAID 40006607570。
艦対艦ミサイル(SSM:英: ship-to-ship missile)
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「ミサイル」の記事における「艦対艦ミサイル(SSM:英: ship-to-ship missile)」の解説
水上艦から発射される対艦ミサイル。明示的に艦対艦ミサイルとする場合は潜水艦から発射される対艦ミサイルは含まれない事が多い。
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