電子攻撃とは? わかりやすく解説

電子攻撃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/10/15 20:54 UTC 版)

カバー妨害を受けているレーダー画面。90度から130度にかけて3つの妨害源がある
トーネード ECR電子戦機。機体下にHARM、左翼下にケルベロスECM装置を搭載している

電子攻撃英語: electronic attack, EA)は、敵が利用する電磁スペクトルを妨害するための活動のこと。下記のように細分化される[1][2]

電子対抗手段 (ECM)

電子対抗手段Electronic Countermeasure, ECM)は、単に妨害とも称される[1][2]。また、妨害を行う装置を電波妨害装置と称する。

妨害の手法は、おおむね4つの軸によって分類することができる。

  1. 信号方式 - レーダー信号であるか、通信信号であるか。
  2. 攻撃方式 - カバー妨害であるか、欺瞞妨害であるか。
  3. 妨害プラットフォームと対象の位置関係 - 自己防御方式であるか、スタンドオフ方式であるか。
  4. デコイ(囮)

信号方式

通信信号に対する妨害(通信妨害COMJAM)は、受信機が求める信号から情報を再生する機能を妨げるものである。通常、ノイズ変調によるカバー妨害という形態をとる[2]

一方、レーダー信号に対する妨害(レーダー妨害Radar jamming)は、レーダー装置が反射信号から目標の情報を得る機能を妨げるものであり、カバー妨害と欺瞞妨害の双方の攻撃方式が用いられる[2]。なお、プラットフォームにステルス技術を適用することにより、敵レーダー画面上でSN比を下げ、レーダー妨害をより有効化できることから、ステルス技術を受動的なECM技術として分類する場合もある[1]

攻撃方式

カバー妨害(ノイズ・ジャミング, 電力妨害[1])は、敵の被妨害受信機に対し、敵が求める信号を上回る出力で妨害電波を発することによってSN比を下げるという攻撃手法である。通信妨害の場合、これによって、敵が求める信号を再生できないか、少なくとも再生により得られる情報の品質を大幅に劣化させる。レーダー妨害の場合、レーダー反射波をノイズによって覆い隠し、その存在を覚知できないようにする[2]

欺瞞妨害は、敵が求める信号とともに偽の信号を受信させることで、誤った情報を与えるという攻撃手法である。この手法は、通常はレーダー妨害に用いられ、目標の位置や速度について誤った情報を与えることでレーダー処理を妨害する[2]。またレーダー以外にも、スプーフィングにより、衛星測位システムと同じ周波数帯、同じ信号フォーマットの妨害信号を送信することにより、取得する座標を誤らせる装置がある[3][4][5][6]

位置関係

自己防御方式の場合、レーダーの目標とされているプラットフォーム自身が搭載する妨害装置によって妨害が行われる[2]

一方、スタンドオフ方式の場合、レーダーの目標とされているプラットフォームを防護するため、他のプラットフォームに搭載された妨害装置によって妨害が行われる[2]

デコイ

デコイ(囮)は、敵を欺瞞して本物の目標と誤認させる目的で展開する装備である。その任務は下記の3つに分けられる[2]

  • 誘惑(seduction) - 敵の攻撃を真の目標からデコイに転換させる
  • 飽和(saturation) - 敵の防御を飽和させる
  • 輻射強制(detection) - 敵がデコイを攻撃しようとすることで、その姿を曝露するように仕向ける

チャフフレアは、もっとも古典的なデコイとして知られているが、これらはいずれも誘惑任務のデコイであり、前者は電波、後者は光波を目標帯域としている。

対電波放射源兵器 (ARW)

対電波放射源兵器英語: Anti-Radiation Weapon, ARW)は、電波送信機を物理的に無力化する兵器である。通常、敵防空網制圧SEAD)作戦において用いられる。

指向性エネルギー兵器 (DEW)

指向性エネルギー兵器英語: Directed-Energy Weapon, DEW)は、送受信機以外の敵資産を電磁波的に攻撃する兵器である。現在のところ、アクティブ・ディナイアル・システム(ADS)に代表されるような非致死性兵器が主流であるが、戦術高エネルギーレーザー(THEL)のように物理破壊可能な兵器も研究されている。

参考文献

  1. ^ a b c d 防衛技術ジャーナル編集部「第10章 電波電子戦」『防衛用ITのすべて (防衛技術選書―兵器と防衛技術シリーズ)』防衛技術協会、2006年、152-176頁。ISBN 978-4990029814 
  2. ^ a b c d e f g h i デビッド・アダミー『電子戦の技術 基礎編』東京電機大学出版局、2013年。 ISBN 978-4501329402 
  3. ^ 外部からの意図的な妨害
  4. ^ GPSのシステム障害
  5. ^ GPSはじめ他国の測位衛星が使用不可能になるケース(論点1-2)に関する考え方
  6. ^ 非意図的な干渉

電子攻撃

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 03:57 UTC 版)

電子戦」の記事における「電子攻撃」の解説

詳細は「電子攻撃」を参照 電子攻撃(英語: Electronic Attack, EA)とは、敵が利用する電磁スペクトル妨害するための活動のこと。下記のように細分化される。 電子対抗手段ECMジャミング 欺瞞妨害 デコイチャフ ステルス技術 対電波放射源兵器ARW指向性エネルギー兵器DEW多く近代的な電子攻撃の技術は高度な機密情報として扱われている。

※この「電子攻撃」の解説は、「電子戦」の解説の一部です。
「電子攻撃」を含む「電子戦」の記事については、「電子戦」の概要を参照ください。

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