Kh-35_(ミサイル)とは? わかりやすく解説

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Kh-35 (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/18 21:02 UTC 版)

Kh-35(AS-20 カヤック)
3M24 ウラン(SS-N-25 スイッチブレード)
3K60 バル(SSC-6 センナイト)
種類 空対艦ミサイル
艦対艦ミサイル
原開発国 ソビエト連邦
運用史
配備期間 1983年 - 現役[1]
開発史
開発者 ズヴェズダ・ステラロシア語版[2]
諸元
重量 520 kg (1,150 lb)[3]
610 kg (1,340 lb)[3](HELO ver.)
全長 385 cm (152 in)[3]
440 cm (173 in)[3](HELO ver.)
直径 42.0 cm (16.5 in)[3]

射程 130 km (70 nmi)[3]
弾頭 成型炸薬
炸薬量 145 kg (320 lb)[3]

翼幅 133 cm (52.4 in)[3]
誘導方式 INS+RA+ARH[2]
発射
プラットフォーム
戦闘艦航空機
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Kh-35は、ロシア連邦軍空対艦ミサイル(ASM)。DoD識別番号はAS-20、NATOコードネームはカヤック。艦対艦ミサイル(SSM)型は3M24 ウラン(NATOコードネーム:SS-N-25 スイッチブレード)、地対艦ミサイル(SSM)型は3K60 バル(「舞踏会」の意味[4]、NATOコードネーム:SSC-6 センナイト[5])。地上目標も攻撃でき、射程距離は地対艦ミサイル型で260キロメートル[1]

規模・性能がアメリカ合衆国ハープーンに類似していることから、ハープーンスキィとの俗称がある[2]

概要

ソ連海軍は、対水上火力として、長射程と短射程の2種の対艦ミサイルを整備する方針を採用していた。本機種は短射程艦対艦ミサイルの系譜に属しており、第1世代の短射程ミサイルであるP-15(SS-N-2)の後継として開発された。ソ連海軍では、既に第2世代の短射程ミサイルとしてP-270(SS-N-22)を開発していたものの、これは短射程のわりに大重量で、また、大威力ゆえに大規模な輸出も困難で、P-15を完全に代替するには至らなかった。このことから、P-270よりも軽量で、また、輸出市場に提供できる短射程艦対艦ミサイルとして開発されたのが本機種である。従来、長射程艦対艦ミサイルはチェロメイ設計局が、短射程艦対艦ミサイルはラードゥーガ設計局が設計していたが、本機種は、従来は空対地ミサイルを手掛けてきたズヴェズダ・ステラロシア語版によって開発されており、従来の艦対艦ミサイルとは大幅に異なる設計となった。

1983年に初の試験発射が実施されたものの、財政上の問題や発射失敗などで開発が遅れ、正式な開発完了は2003年のことであった[2]。ただし、1990年代には数か国に輸出が行われている[2]

Kh-35の基本設計は、アメリカ合衆国のハープーンに類似しているが、サステナーとしてはターボジェットエンジンではなく、ターボファンエンジンを搭載している。ブースターなしのASMモデルで480キログラム、ブースター搭載のSSMモデルで630キログラムと、大幅な軽量化に成功している。飛翔速度は亜音速で、巡航高度は10-15m、慣性誘導で飛翔し、終末航程においては高度3-5mに降下してアクティブ・レーダー・ホーミング誘導方式を使用する[2]。また、データ・リンクによって目標情報を中途アップデートすることもできる。成型炸薬弾頭を搭載している。

1990年代後半、米ボーイング社は、第1世代では対艦モードのみだったハープーンに対地攻撃モードを持たせるため、次世代モデル「ブロックII」のレーダーシーカー(目標捜索装置)に、GPS補強型慣性航法装置を追加した。ハープーンを意識して開発されたKh-35にも、対地攻撃モードがあり、対地攻撃に用いることも可能である。

2019年7月、サンクトペテルブルクで開催された国際兵器展示会において、3K60 バル‐Eの輸出モデルであるルベージュ-MEが公開された。このシステムは、8輪駆動車体にKh-35UE対艦ミサイルの4連装発射ユニット、レーダー、火器管制ユニットを搭載したもので、外部からの目標指示などを要しない自己完結型のシステムだとされている[5]

実戦投入

2022年ロシアのウクライナ侵攻において、ロシア連邦軍が地対地ミサイルとして配備および発射している[1]ウクライナ空軍の報道官は、小型でレーダー探知が難しいと語っている[1]

発射プラットフォーム

艦艇

インド
 ベトナム
  • BPS500級ミサイル艇
ソビエト連邦/ ロシア

航空機

脚注

注釈

出典

  1. ^ a b c d 露、地対艦ミサイル配備 西部国境 ウクライナ軍確認」『読売新聞』朝刊2023年6月19日(国際面)同日閲覧
  2. ^ a b c d e f 多田 2015, p. 31.
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n Rosoboronexport Air Force Department and Media & PR Service, AEROSPACE SYSTEMS export catalogue, Rosoboronexport State Corporation, p. 123, https://www.docdroid.net/h7fi/aircraft.pdf.html 
  4. ^ 「ロシアが北方領土に最新鋭ミサイルを配備 領土交渉への影響は」ニューズウィーク日本版(2016年11月29日)2023年6月19日閲覧
  5. ^ a b Nikolai Novichkov (2019年7月16日). “Russia unveils export-oriented Rubezh-ME coastal defence missile system”. janes.com. 2024年10月25日閲覧。

参考文献

  • 多田智彦「ロシア艦載兵器の現状」『世界の艦船』第635集、海人社、2004年12月、150-153頁。 
  • 多田智彦「世界の艦載兵器」『世界の艦船』第811号、海人社、2015年1月。 

関連項目

  • ネプチューン (巡航ミサイル) - ウクライナのルチ設計局は、ロシアの対艦ミサイル Kh-35をモデルにしてネプチューンを設計した。ネプチューンには最初からGPSが搭載されており、宇露戦争において、ウクライナはネプチューンを対地攻撃にも用いている。

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