R-77_(ミサイル)とは? わかりやすく解説

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R-77 (ミサイル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/30 03:26 UTC 版)

R-77

R-77は、ロシア製のアクティブ・レーダー・ホーミング誘導の中距離空対空ミサイルDoD識別番号はAA-12 NATOコードネームアッダーAdderマムシの意)。

アメリカAMRAAM(アムラーム)と運用形態や性能が似ていることから、西側のジャーナリストから「アムラームスキー」と呼ばれた。設計はアムラームとは全く関係なく、「アムラームスキー」は嘲笑的な呼び方である。また、形状的にも末尾に四翔ある「スノコ状」の舵翼など、アムラームとの差異は大きい。

概要

このミサイルヴィーンペル科学製造連合によって設計・製作されたミサイルで、AIM-120同様のアクティブ・レーダー・ホーミング誘導による撃ちっ放し能力を有する。1982年より開発を開始したが、1991年のソビエト連邦の崩壊に伴うウクライナの独立によりコンポーネントを供給していたアルテムとルーチウクライナ語版[1] が別の国の企業となったことを考慮して、1992年モスクワ航空ショーで公開したものの、少数生産ののち量産を停止した。

量産再開後、インドや中国をはじめとする国々がR-77の採用・購入を決め導入を開始したが、ロシア空軍は長らく導入しなかった。しかし、2009年に改良型であるR-77-1の受領テストを完了し調達を開始した[2]

設計

R-77のシーカー

R-77は、高い機動性を有しており35Gの機動が可能であり、最大速度はマッハ3-4.5、角速度は150°毎秒に達する[3]。射程に関して、高高度の機動していないターゲットにヘッドオンで発射した場合、80km。改良型のR-77-1では110kmとなり、ラムジェット型のR-77-PDでは150kmに達するとされている。

これには、尾部の特徴的なフィンが影響している。これはグリッドフィン英語版と呼ばれるもので通常のミサイルの十字翼と尾部制御デバイスを掛け合わせたものに値し、大迎え角時に気流の剥離が少ないほか軽量であり従来のフィン機構に比べて大幅に短い翼弦長で表面積を大きく取れるためアクチュエータトルクを大幅に小さくできる。R-77のグリッドフィンは45度×135度の交差角で取り付けれられており、全遊動式である[4]。一方でRCSが大きく、遷音速における抵抗が大きいという欠点があり[5]、発展型のK-77Mでは通常のフィンに戻されている。推進は1段階の固体燃料ロケットエンジンであるが、K-77Mでは2段階となり、K-77MEやR-77M-PDではラムジェット推進となっている。

シーカーはアガトによって開発された9B-1348多機能ドップラーモノパルスアクティブレーダーシーカーを装備している。これには2つの操作モードがあり、短距離では撃ちっ放しモードを起動、長距離では慣性/電波修正航法を併用しを使用し、ターゲットとの距離が16km以内になるとアクティブレーダーモードが自動で起動する[6]。もしターゲットからロックオンが外れても、ホストレーダーシステムがターゲット情報を保持するようになっている。対ECMとしては、仮にシーカーがジャミングを受けた場合、自動的に逆探知モードに切り替わり、ジャミング電波の発信源に向かって飛翔するホームオンジャム機能を持つ。R-77-1ではシーカーがR-37MR-27AEに採用されたものと同系統の9B-1103M-200となり、ロックオン距離が20kmとなり、ECCM能力も向上、重量も減少(16kg→14.5kg)している[7]。開発がすすめられているK-77Mではアクティブフェーズドアレイとなり、ロックオン距離は60km以上に増加しているとされている[8]

弾頭は、マルチ成型炸薬ロッド型で、レーザー近接センサーが装備されている。運用はAKU-170Eランチャーから行われる。陸上発射型もあり、これは輸送発射コンテナに保管されている。

派生型

上からR-77、R-77-PD、R-77-SPK、K-77M、K-77ME
R-77
基本型。開発コードはIzdeliye 170。
RVV-AE
輸出型。開発コードはIzdeliye 190。
R-77T(RVV-TE)
赤外線誘導[9]。計画のみ。
R-77P(RVV-PE)
パッシブ誘導型。搭載するシーカーは25km先の目標を捕捉できるとされる[10]。計画のみ。
R-77PD(RVV-AE-PD)
推進方式をラムジェットに変更した射程延伸型。弾体を太くし、中央部に4ヶ所のエアインテークを備えており射程は160km。R-77PDに採用された技術の一部は、ヴィーンペルとマトラ(現:MBDA)の秘密のコラボレーションに由来しており、これは1994年に終了した。予算不足により計画の進行は遅れたが、1995年にラムジェットモーターの新たな試験が始まり、ミサイルの完全な飛行試験は1998年に開始されたことがいくつかのソースにより示唆されている[11]1999年に完成したが[12]、量産や配備は確認されていない。型式のPDはPovyshenoy Dalnosti(ロシア語で射程の改良の意)から取られている。
R-77-1(RVV-SD)
2009年に発表された改良型。全長を11cm伸ばし、レドーム形状を変更、中央の安定翼および尾部の制御フィンを短くすることで抵抗を減らし射程を110kmに延長している。内装する電子機材の面では、慣性航法装置が改良型となったほか[13]、データリンクによる目標の補正[14]ECCM能力が向上した9B-1103M-200シーカーへの変更を行っている[3]。これらにより固定翼機やヘリコプターだけでなく、巡航ミサイルや無人航空機(無人偵察機)などへの攻撃も可能となった[14]。開発コードはIzdeliye 170-1
K-77M
R-77-1に続くR-77近代化の2段階目となる発展型。AIM-120C-7より良く、その後継型に等しい性能を持つことが期待されている[15]。特徴的であった後部フィンは空気抵抗およびRCS低下のため通常のミサイルと同じフラットフィンとなっている。フィンはステルス機でのウェポンベイへの収納を想定して折り畳めるようになっており、モーター点火、射出時に展開される。エンジンには射程延伸のために燃焼パターンを2段階で変更できる2段推進方式を採用している。これにより最大射程範囲は、発射高度に応じて、R-77-1の2-3.5倍になるとされる[15][16][17]
搭載するシーカーはアクティブフェイズドアレイとなっており、対ジャミング性能・ルックダウン・シュートダウン性能の向上が図られている[18]。開発名称はIzdeliye 180。
K-77ME
射程延長型。全長を伸ばし、推進方式をラムジェットに変更している。開発名称はIzdeliye 180-PD[17]
R-77-SRK
地対空ミサイル型。
R-77-ZRK(RVV-AE-ZRK)
VLSからの発射に対応した艦対空ミサイル型。推力偏向装置を搭載し、搭載燃料を増加させている。

対応機種

採用国

仕様

R-77

出典[30]

R-77(RVV-AE)

R-77-1

出典[30]

  • 長さ:371cm
  • 発射時重量:190kg
  • 直径:20cm
  • 全幅:42cm
  • 翼幅:68cm
  • 射程:110km[31]
  • 目標探索装置:9B-1103M-200
  • 弾頭重量:22.5kg

R-77-PD

出典[32]

R-77-PD(RVV-AE-PD)

脚注

  1. ^ 尾部のフィンを生産。現在も生産を続けている。
    Control systems and servo electric control surface actuators
  2. ^ Новинки корпорации «Тактическое ракетное вооружение» на МАКС-2009
  3. ^ a b РВВ-СД – будущее тактической авиации России
  4. ^ 世界の名機シリーズ MiG-29 フルクラムP.48
  5. ^ Fleeman, Eugene L. Technologies for Future Precision Strike Missile Systems 2001
  6. ^ MULTIFUNCTIONAL MONOPULSE DOPPLER ACTIVE RADAR HOMING HEAD 9B-1348E
  7. ^ MULTIFUNCTIONAL MONOPULSE DOPPLER ACTIVE RADAR HOMING HEAD 9B-1103M
  8. ^ New Air Defence Missile from Russia
  9. ^ R-77T
  10. ^ R-77P
  11. ^ RVV-AE-PD (R-77M-PD) (Russian Federation), Air-to-air missiles - Beyond visual range
  12. ^ Р-77ПД, РВВ-АЕ-ПД
  13. ^ 軍事研究 2015年10月号「空自AWACSを脅威にさらす長距離ミサイル 中国、ロシアと日米の2020年代空対空対決 急げ!ロシアに勝る空対空ミサイルの開発」
  14. ^ a b RVV-SD - deagel.com
  15. ^ a b Butowski, Piotr. Russia and CIS Observer. 17 June 2007.
  16. ^ Barrie, Douglas and Pyadushkin, Maxim. "R-77, R-73 Missile Upgrades Emerge". Aviation Week. 13 August 2009
  17. ^ a b T-50 completes early flight and bench tests
  18. ^ ‘Absolute killer’ air-to-air missile readied for Russian 5G fighter jet”. 2014年1月1日閲覧。
  19. ^ a b R-77
  20. ^ Russia Sells Advanced MiG-29 Fulcrums To Sudan And Yemen
  21. ^ IISS 2024, pp. 269–270.
  22. ^ Портфель экспортных заказов КТРВ
  23. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. pp. 179-180. ISBN 978-1-032-50895-5 
  24. ^ Russia helps keep Syria's MiG-29s flying - IHS Jane's 360”. 2014年12月23日閲覧。
  25. ^ Syrian MiG-29 Fighter Jets Performing Sorties with R-77 Missiles
  26. ^ Russia Sells Advanced MiG-29 Fulcrums To Sudan And Yemen”. 2014年12月23日閲覧。
  27. ^ Thủ tướng kiểm tra tên lửa cho Su-30MK2”. 2014年12月23日閲覧。
  28. ^ Gobierno eliminaría misiles rusos R-77”. 2014年5月18日閲覧。
  29. ^ Russia Signs $35-Mln Missile Contract with Malaysia”. 2012年10月28日閲覧。
  30. ^ a b メーカー公式より。外部リンク参照
  31. ^ 「エアワールド」2011年1月号 エアワールド
  32. ^ К-77ПД / РВВ-АЕ-ПД

参考文献

関連項目

外部リンク


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