パーンツィリ-S1とは? わかりやすく解説

【パーンツィリ-S/S1】(ぱーんつぃり-えすいち)

96K6 Pantsir-S1
ロシア開発した自走式低高度防空システム
NATOコードはSA-22『グレイハウンド』呼ばれる
2S6ツングースカ自走高射機関砲後継として1994年開発され1995年初め公開された。
2S6同様、砲塔機関砲地対空ミサイル組み合わせたハイブリッドシステムで、57E6地対空ミサイル左右チューブ発射機に6発ずつ計12発を搭載し、2A72 30mm単装機関砲2基搭載前期型と2A38M 30mm連装機関砲2基搭載後期型(主生産型)の装輪砲塔と、2A38M 30mm連装機関砲2基と57E6地対空ミサイル左右チューブ発射機に4発ずつ計8発搭載した装軌砲塔2系統砲塔存在し、各砲塔2S6同系列車体のGM-352M1E装軌車かBMP-3やKAMAZ-6560もしくはMZKT-7930重トラックなど既存車輌搭載される。

レーダーは、航空機搭載型のZhuk MSF系のレーダー技術転用した、新型のファザトロン製Xバンド・パッシブフェイズドアレイレーダーを搭載しており、RCS2㎡の目標探知可能である。
レーダー配置に関しては、車体後部捜索レーダー最大32~36km)と車体前方追尾レーダー最大24~28km、20目標同時補足し3目標に対して同時交戦が可能)を搭載しているほか、砲塔上には新たにガン・ミサイル複合CIWSCADS-N-1カシュタン」に似た電子光学捜索追尾装置EO)が配備されていおり、ECM時にはミサイル指向を行う。
輸出型に関しては、レーダー類は搭載され電子光学捜索追尾装置のみの搭載となっている。
捜索レーダー左右45度、垂直85度の範囲機械走査により全周カバーしている。

57E6地対空ミサイル9M311系列ミサイルで、前述電子光学捜索追尾装置による赤外線レーザー信号追尾レーダーによる第二世代コマンド誘導SACLOS)が使用でき、同時に2発のミサイルの誘導が可能と成っている。
ミサイルは、発射固体ブースターにより2秒で1,300m/sまで加速され目標交戦に入る。
9M311から最大速度毎秒1,100~1,300m交戦高度は5m15km有効射程は1,200m最大20km、有効高度6kmと性能大幅に向上させており、装輪型と装軌双方での走行中のSAM発射可能に成っている。
なお、ミサイル密閉され格納チューブによって15年保守点検不要である。

機関砲については、装輪搭載の2A72 30mm機関砲は、BMP-32A42 30mm機関砲同一だが、重量半分程度軽量化したベルト給弾方式機関砲で、3UBR徹甲弾使用場合交戦距離1,500mで殆どの歩兵戦闘車破壊できる威力持っている
装軌搭載の2A38M 30mm機関砲については、ツングースカM1と搭載砲と所元は同一であるが、搭載弾数に関しては、装輪型は750発、装軌型1,400発を搭載し、各発射レートも単装700連装1,250向上している。
機関砲同一有効所元は高度0~3,000m、射程200~4,000mである。

人員配置に関しては、砲塔車長砲手車体操縦手配置となっている。

総合性能については、固定翼機回転翼機UAVはもちろん、空対地ミサイル対レーダーミサイル含む)、精密誘導爆弾巡航ミサイル弾道ミサイルをも迎撃可能で、また軽装甲車両撃破可能である。
デジタルデータリンクによるネットワーク有しており、他の3~5基のグレイハウンドもしくは対空火器指揮下に連携攻撃可能であり、更に個別レーダーにより3目標EOにより1目標合計4目標に対して同時交戦可能な点とミサイル四発同時追尾可能な点は特筆値する
目標補足から交戦に関しては、4~6秒にて迎撃開始できる
最大対処数は一分間に10目標に対して迎撃可能であり、搭載電子装備より目標を全自動追尾出来る。
兵装に関しては、後期型ツングースカ互換性有している。
現在、UAEロシア防空軍にKAMAZ-6560重トラック搭載型が配備されているが、配備数はまだ少ない。
UAE24両の装軌型と26両の装輪型を発注し現在取得中であり、MZKT-7930やMAN SX45等の8×8トラック搭載され派生型がある。また、艦艇に対して搭載可能である。
その他、シリア導入済み、アルジェリア・リビア・ヨルダン・インドが導入予定/検討中である。

スペックデータ(57E6)

本体重量:90kg
全長:3.2m
直径:0.17m
弾頭:HE 連続ロッド(20kg)
推進装置固体燃料ロケットモーター
最大射程:20km
最小射程:1200m
最大飛行高度15,000m
最高速度:1,300m/s

関連:SA-19 M6 2S6


パーンツィリ-S1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/10/28 05:52 UTC 版)

96K6 パーンツィリ-S1
KAMAZ-6560ロシア語版型8輪トラックに搭載されたパーンツィリ-S1
基礎データ
乗員数 3
装甲・武装
主武装 95Ya6または9M335(57E6) 地対空ミサイル×12
副武装 2A38M 30mm連装機関砲×2(合計4門)
機動力
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96K6 パーンツィリ-S196К6 «Панцирь-С1» パーンツィリ・エース・アヂーン)は、ロシア連邦で開発された近距離対空防御システム(高射ミサイル砲複合:зенитный ракетно-пушечный комплекс)で、対空機関砲短距離対空ミサイルを併用している。NATOコードネームではSA-22 グレイハウンドSA-22 Greyhound)と呼ばれる。「パーンツィリ」とは「」「甲冑」の意。

概要

車両に搭載された機関砲と短距離対空ミサイルという兵装の組み合わせは、2K22 ツングースカと同様である。ミサイルはツングースカに採用されていた9M311の後継となる9M335(57E6)が使用されている。2A38M 30mm連装機関砲2基(合計4門)の火力は、射撃速度5,000発/分、射程4kmである。地対空ミサイル57E6は左右に各6発、計12発搭載する。誘導方式は指令誘導で、レーダーあるいは赤外線探知機からの位置情報を使用する。射程は1-20km。

ディスカバリーチャンネルテレビ番組『潜入!ロシア軍のすべて:ロシアの鎧「パーンツィリS1」』によると、固定翼機回転翼機(ヘリコプター)だけでなく、精密誘導爆弾巡航ミサイル弾道ミサイルをも迎撃可能で、レーダーで捉えにくい小型ドローンの撃墜実験にも成功した。「パーンツィリS2」「パーンツィリSM」「パーンツィリSA」といった発展・派生型も開発されている。

航空目標だけではなく、軽装甲車両などの地上目標も撃破可能である。

2K22 ツングースカと異なり基本的に車体には重トラックを使用しており、製造・運用コストの低減と高機動性の確保を図っている。

火器管制

パーンツィリ-S1の兵装部アップ。左右の機関砲の間にある円形アンテナが追尾レーダー。追尾レーダーの直上にあるのが赤外線探知機。赤外線探知機の上部(砲塔後部)に配置された四角形のアンテナが索敵用レーダー。

兵装の管制には、2基のレーダーと赤外線探知機が用いられる。

レーダーは索敵用・追跡用に分けられ、索敵範囲はそれぞれ30kmと24kmである。レーダーが作動している間も赤外線探知機は使用できるので同時に2個の目標と交戦できる。

なお、輸出用廉価版は、赤外線探知機のみを搭載することも可能である。

開発・製造

パーンツィリ-S1は、トゥーラにある連邦統合国家企業「制御システム開発設計局」で開発された。1994年に試作型が製作され、1995年に初めて一般公開された。ウリヤノフスク機械工場で製造されており、これまでに生産された数は200両を超えている。2000年にアラブ首長国連邦から最初の受注を獲得し、2007年に最初の納品を行った。アラブ首長国連邦の車両にはドイツ製のMAN SX英語版8×8トラックを使用している。

2005年には量産型が完成した。ロシア連邦軍では2K22 ツングースカ-M1をこれに転換する予定で、2008年よりロシア空軍に配備が始まった。また、ロシア海軍でも、パーンツィリ-S1を基にした海軍型であるパーンツィリ-Mが、2K22を基にしたコールチクの後継として採用された[1]

2019年には改良型であるパーンツィリ-SMと、その輸出型であるパーンツィリ-S1Mが発表された[2]。これはシリアでの経験を基にした改良型で、レーダーと対空ミサイルがアップグレードされたことで交戦距離が伸びている。

他にもアルジェリアイラクヨルダンオマーンなどに採用されている。

採用国

運用

GM-352英語版系列の車体に搭載されるパーンツィリS-1

シリア内戦で政府軍を支援するため派遣されたロシア軍により、首都ダマスカスに配備[3]またはシリア政府軍に供与されている。イスラエル国防軍によるシリアへのミサイル攻撃の迎撃で実戦投入された[4]。 

2020年5月、リビア内戦においてアルワティ空軍基地に展開中の2基がトルコが投入したUAVにより攻撃を受けた。内1基は破壊され、他方は鹵獲され調査するためトルコに運ばれつつあると伝えられている[5]

2022年3月、ウクライナ侵攻したロシア軍のパーンツィリ-S1が擱座し放棄され、ウクライナ軍に鹵獲されたと報告された[6]

脚注

  1. ^ 「海外艦艇ニュース ロシア海軍が新型近接防御システム採用へ」『世界の艦船』第748集(2011年10月号) 海人社
  2. ^ Mark Cazalet (2019年6月28日). “Army 2019: Russia unveils Pantsir-SM SAM vehicle”. janes.com. 2024年10月28日閲覧。
  3. ^ 「露 シリア作戦負担重く/軍事介入2年半/戦費4300億円 犠牲者も」「駐留主力 民間い傭兵か」『読売新聞』朝刊2018年4月21日(国際面)。
  4. ^ イラン・イスラム共和国放送(IRIB)系ニュースサイト「Pars Today」、シリアの対空防衛システムにより、イスラエルの最新鋭ミサイルが破壊(2017年12月5日)2018年5月16日閲覧。
  5. ^ リビア内戦、重大な転換点、トルコ勝利、ロシア敗北の代理戦争”. WEDGE Infinity(ウェッジ) (2020年5月26日). 2020年7月4日閲覧。
  6. ^ #Ukraine: The Russian forces lost another Pantsir-S1 AD system in the vicinity of #Mykolaiv Oblast. It seems to be in very good condition. Twitter投稿 2022年3月7日

参考資料

  • Тихонов С. Г. Оборонные предприятия СССР и России : в 2 т. — М. : ТОМ, 2010. — Т. 1. — 608 с. — 1000 экз. — ISBN 978-5-903603-02-2.
  • Тихонов С. Г. Оборонные предприятия СССР и России : в 2 т. — М. : ТОМ, 2010. — Т. 2. — 608 с. — 1000 экз. — ISBN 978-5-903603-03-9.
  • Савенков Ю. А., Сомков Н. И., Травкин А. А. Зенитный ракетно-пушечный комплекс «Панцирь» (рус.) // Армейский сборник : журнал. — 2014. — Ноябрь (т. 245, № 11). — С. 35—37. — ISSN 1560-036X.
  • Фимушкин Ф., Слугин В. ЗРК ближнего действия «Панцирь-С1-0» с оптико-электронной системой наведения (рус.) // Военный парад : журнал. — 2004. — Май-июнь (т. 63, № 03). — С. 12—14. — ISSN 1029-4678.



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