TOS-1とは? わかりやすく解説

【TOS-1】(てぃーおーえすいち)

ソ連/ロシア1980年代開発した自走ロケット砲愛称は「ブラチーノ」。
ソ連/ロシアでは「重火焔放射システム」と呼ばれる
西側存在確認されたのは1999年になってからである。

車体には中古T-72戦車から砲塔撤去したものを利用し上部に220mmロケット弾発射機初期型(TOS-1)の30連装後期型(TOS-1A)の24連装2つがある)と2名用の小型砲塔装備している。
T-72ベースにしているためNBC防護装置搭載されている。
使用するロケット弾燃料気化弾頭のみで、射程距離500m~3,500m正面数十メートル、縦深数百メートル範囲を完全に面制圧することが可能である。
2004年まで24両が改修されチェチェン紛争でも投入されている。

スペックデータ

乗員:3名
全長:9.53m
全高:2.226m
全幅:3.6m
戦闘重量:46t
エンジン:V-84MS 12気筒ディーゼルエンジン出力840hp)
最大速度:60km/h(路上
懸架・駆動トーションバー方式
航続距離:550km
発射速度30発/15秒
射程500~3,500m
兵装24連装または30連装220mmロケット弾発射機×1基(弾数24発/30発)

派生型


TOS-1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/03/05 22:03 UTC 版)

ТОС-1
TOS-1 ブラチーノ
「Army -2020」展での重火炎放射システム
種類 多連装ロケットランチャー
原開発国 ソビエト連邦
運用史
配備先 ソビエト連邦軍
ロシア連邦軍
関連戦争・紛争 アフガニスタン紛争 (1978年-1989年)
第二次チェチェン紛争
イラク内戦
ナゴルノ・カラバフ紛争(2016年)
2022年ロシアのウクライナ侵攻
開発史
開発者 Omsk Transmash Design Bureau
諸元
重量 45.3 t
全長 9.5m
全幅 3.6m
全高 2.22m
要員数 3名

口径 220 mm
発射速度 30発/15秒
有効射程 500mから3,500m(TOS-1)

エンジン V-84MS ディーゼルエンジン
行動距離 550 km
速度 60 km/h
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TOS-1「ブラチーノ」ロシア語: ТОС-1 - тяжёлая огнемётная система、重火力投射システム)は、サーモバリック爆薬弾頭ロケット弾を運用するために、T-72戦車の車体に220mmロケット弾発射器を装着した多連装ロケットランチャーである。

概要

24砲身仕様の多連装ロケットランチャーを搭載したTOS-1A

オリジナルのTOS-1は、搭載している30発の220mmサーモバリック弾頭ロケット弾を15秒で撃ち尽すだけの連射性能を持っており、射程は最小で500m、最大でも3,500mと比較的近距離である。ソビエト連邦の崩壊後のロシア連邦軍でも、チェチェン紛争でも使用されている。TOS-1では破砕弾頭などの、そのほかの各種弾頭のロケット弾は使用されない。このため現在唯一の火炎放射戦車と扱われることがある。

TOS-1は、軽量級の防御が施された車輌・輸送車や、防御物の内部、または開けた地形にいる兵員を撃破するために設計されている。最初の実戦テストは1988年から1989年に行われ、場所はアフガン紛争中のPanjshir峡谷である。TOS-1が最初に一般公開されたのは1999年のオムスクにおいてであった。

TOS-1はロシア連邦軍の砲兵部隊で使用されてはいないが、NBC防御部隊(ロシア語: войска радиационной, химической и биологической защиты (РХБЗ))で見ることができる[1]

開発

後方からの写真

1979年より始まったソ連のアフガニスタン侵攻にて、ソ連軍は自陣から比較的近距離のムジャーヒディーンを掃討するためにサーモバリック弾頭を運用する多連装ロケット砲を必要としていた。そこで、ソ連軍はT-72戦車の車体に二人乗りの砲塔を構成し、これに220mm30連装ロケット発射器を搭載したTOS-1を開発した。

オリジナルの車輌であるOb.634、またTOS-1は30本の砲身を備え、Ob.634BまたはTOS-1Aは24本の砲身を備えている。

焼夷剤としてサーモバリック爆薬を弾頭に充填したロケット、これらを放つための重量級短距離MRSという概念は、1970年代後半に生まれた。戦闘システムを構成する戦闘車輌、ロケット、および弾薬補給車は、1980年代の早期、オムスクに所在するKBTMにより開発され、TOS-1と命名された。この車輌は長年にわたり秘密兵器のままとされていた。

TOS-1は、兵員、装備、建造物および防御された構造物と交戦するよう企図したものである。この戦闘車輌は、歩兵や戦車からの攻撃指示により行動する。大口径で多砲身のロケット発射器の装備、また3,500m程度の近距離射程という理由から、高いレベルの防護性能が必要となり、これらからT-72主力戦車の車体の転用という決断を促すこととなった。TZMと呼ばれる弾薬補給車は、縦走能力を持つトラックであるKrAZ-255Bロシア語版英語版の車体を用いて作られ、発射器に装弾・抜弾するためのクレーンを搭載している。

改良されたTOS-1Aは2001年に配備された。

設計

TOS-1Aの「Solntsepyok」システムは以下の部品から構成される[2][3]

  • 「戦闘車輌」BM-1 (ロシア語: Боевая машина) (Ob.634B) はT-72Aの車体を基にしており、これに24基の非誘導型サーモバリックロケット発射器を搭載している。全てのロケットは6秒から12秒で発射することができる。戦闘車輌は、弾道コンピューター、追尾照準器、1D14レーザー測距儀からなる火器管制装置を備えている。他の標準装備としては車長用にTKN-3A照準器、GPK-59ナビゲーション装置、R-163-50U無線通信装置、R-174インターコム、4本の砲身を持つ902G発煙弾発射器が含まれる。3名の乗員は1挺のAKS-74自動小銃、RPKS-74軽機関銃、3基のRPG-26擲弾筒、また10個のF1手榴弾を持つ。BM-1にはT-72Aと同様のNBC防護、消火装置、観測機材などが装備された。なおイラクに輸出されたタイプではT-90ベースの車体が使用されている[4]
TZM-T 予備ロケット弾運搬車
  • 2輛の「弾薬補給車」TZM-Tロシア語版 (ロシア語: Транспортно-заряжающая машина) (Ob.563)には、10kNの出力を持つクレーンが装備された。またどちらの車輌も、BM-1の使用する2x12発の予備ロケットと400リットルの燃料を運ぶ。戦闘重量は39tである。TZM-Tは3名の乗員を要し、2挺のAKS-74、1挺のRPKA-74、5基のRPG-26、10個のF1手榴弾で武装している。
  • NURSロケット一式。(ロシア語: Неуправляемый реактивный снаряд)MO.1.01.04およびMO.1.01.04Mと呼ばれるこれらのロケットは3.3mまたは3.7mの長さであり、各ロケットの重量は173kgから217kgである。TOS-1A用のオリジナルのロケットは2,700mの射程しか持たないが、改善されたものは射程が6,000mとなっている。

実戦使用・配備

アフガニスタン紛争

TOS-1はアフガニスタン侵攻におけるパンジシール(Panjshir)渓谷での戦闘で初めて使用された。ロシア連邦になってからは、1999年グロズヌイの戦い英語版に投入されている。

チェチェン紛争

チェチェン紛争第一次チェチェン紛争(1994-1996)、第二次チェチェン紛争(1999-2009))で使用された[要出典]

ロシア・チェチェン共和国で使用された[5]

イラク・ISIL紛争

2014年10月3日、イラクは過激派組織ISILに対する切り札としてTOS-1Aを導入し[6]、10月24日、ISILからのイラク・バービル県Jurf Al Nasr解放戦にてTOS-1Aは初陣を飾った[7]イラク軍は都市ベイジでISILに対して使用した[8]

アゼルバイジャン

2016年4月4日、アゼルバイジャン陸軍はTOS-1Aをナゴルノ・カラバフ国防軍に対して投入した[9]

ロシア・ウクライナ紛争

TOS-1の残骸
ウクライナ独立記念日に撃破されたTOS-1(2022年8月21日 フレシチャーティク

2015年9月、欧州安全保障協力機構OSCE)はウクライナ東部の反政府軍訓練地域にTOS-1が配置されていることを報告した[10]2022年ロシアのウクライナ侵攻において、2022年2月26日、CNNがベルゴロド南方で目撃した[5]

使用国


ギャラリー

脚注

出典

  1. ^ http://www.otvaga2004.narod.ru/otvaga2004/caleidoscope/flamethrowers_1.htm
  2. ^ TOS-1A Heavy flamethrower system
  3. ^ Тяжёлая огнемётная система ТОС-1А
  4. ^ “Armed forces of Iraq have received Russian TOS-1A flamethrower mounted on T-90 MBT chassis.”. Army Recognition. (2016年2月21日). http://www.armyrecognition.com/february_2016_global_defense_security_news_industry/armed_forces_of_iraq_have_received_russian_tos-1a_flamethrower_mounted_on_t-90_mbt_chassis_tass_12102163.html 
  5. ^ a b “ロシア軍、ウクライナ首都に肉薄 燃料気化爆弾も目撃”. CNN. (2022年2月27日). https://www.cnn.co.jp/world/35184115.html 
  6. ^ Iraq focuses on swift delivery of Russian weaponry
  7. ^ Led by an Armored Bulldozer, Shia Militia Fought to Restore Their Credibility”. War is Boring. Medium.com. 27 November 2014閲覧。
  8. ^ “イラク軍が重火炎放射システムTOS-1Aを市街地で使用”. (2015年3月25日). https://news.yahoo.co.jp/expert/articles/de9b1c38a9a0fe07add0c8783cb4710ed1b01853 
  9. ^ For the first time Azerbaijan has used heavy flamethrower systems”. AZERI DAILY. 2016年4月4日閲覧。
  10. ^ “Ukraine rebels have powerful new Russian-made rockets - OSCE”. BBC News. (2015年10月2日). http://www.bbc.com/news/world-europe-34425454 
  11. ^ IISS 2024, p. 180.
  12. ^ bmpd”. 23 December 2014閲覧。
  13. ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 179. ISBN 978-1-032-50895-5 
  14. ^ Eugene Yanko. “TOS-1 Buratino Flamethrower | Russian Arms, Military Technology, Analysis of Russia's Military Forces”. Warfare.ru. 2012年7月22日閲覧。
  15. ^ Hier zerstört Putins Höllenkanone eine Festung der Rebellen” (ドイツ語). STERN.de. 2 February 2016閲覧。
  16. ^ TOS-1 multiple rocket launcher”. Bubblews. 23 December 2014閲覧。

参考文献

  • The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7 

関連項目

外部リンク


TOS-1

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/10 08:56 UTC 版)

火炎放射戦車」の記事における「TOS-1」の解説

T-72車体に多連装サーモバリックロケットランチャーを装備したもの。厳密に言えばロケット砲戦車(あるいは自走式ロケットランチャー)であるが、本車サーモバリック弾以外を装備することができないため、火炎放射戦車であるといえる英語版の項でも「Heavy Flame Thrower System」すなわち重火炎放射システムとされている)。現在唯一現用火炎放射戦車でもある。

※この「TOS-1」の解説は、「火炎放射戦車」の解説の一部です。
「TOS-1」を含む「火炎放射戦車」の記事については、「火炎放射戦車」の概要を参照ください。

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