速射砲とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 文化 > 武具 > > 速射砲の意味・解説 

そくしゃ‐ほう〔‐ハウ〕【速射砲】

読み方:そくしゃほう

砲弾迅速に装塡(そうてん)・発射できる砲。特に、発射速度速い中・小口火砲をいう。転じて早口まくしたてることを形容していう語。


【速射砲】(そくしゃほう)

  1. Rapid Fire Gun.
    比較的高い(一分間に数十発程度の)連続発射能力を持つ砲の事。
    現在の水上艦搭載されている艦載砲は、基本的にこのタイプである。

  2. 旧日本陸軍においては世界的に言うところの対戦車砲の事をそう呼んでいた。
    単純に弾丸発射速度が(他の砲に比べて)高い」ところから由来である。

速射砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/23 06:14 UTC 版)

速射砲英語: rapid fire gun)は、短い間隔で続けざまに発射可能な火砲[1]現代防衛省規格(NDS)では艦砲に限定した用語とされているが[2]近代においては野戦砲に対しても用いられていた[3][4]

野戦砲としての速射砲

当初、火砲に対する発射速度の要求は比較的緩やかなものだったが、兵器の発達と戦術思想の変化とともに発射速度の向上が要求されるようになっていた[1]イギリスウィリアム・アームストロングは、クリミア戦争においてイギリス軍砲兵隊が重砲の移動に難渋していたという報道を読んで、軽量かつ高性能な火砲の開発を決意、1857年アームストロング砲の試射を行った[5]。従来の火砲が滑腔砲だったのに対し、アームストロング砲は砲身内に施条(ライフリング)を有するライフル砲とすることで射撃精度を向上させ、また従来の火砲が前装式であったのに対して、アームストロング砲は後装式とすることで発射速度も向上していた[5]

初期のモデルは尾栓の開放不良などの問題を抱えていたためイギリス陸軍での採用は遅れたものの、輸出用としては人気を博し、またプロイセンクルップ社も同様の火砲を開発するなど[5]19世紀後半の欧米諸国は速射砲の開発・装備に鎬を削ることとなった[4]日露戦争では、大日本帝国陸軍三十一年式速射砲ロシア帝国陸軍プチロフ式速射砲を装備しており、速射砲を装備した軍同士が交戦した初の例となった[4]。三十一年式速射砲と異なり、ロシア側の速射砲は砲身後座機構を備えている点で優れていたが[6]、既にフランスで登場していた砲身長後座式の砲と比べると、こちらも過渡期的な設計であった[7]

このフランスのM1897 75mm野砲駐退復座機を搭載しており、砲身長後座式の嚆矢となった[8]1900年代中盤には、ヨーロッパでは既に砲身長後座式野砲が主流となりつつあり、日本も1905年三八式野砲を採用して、これに追随した[7]。また戦車が発達すると、速射砲はこれに対抗する対戦車砲としても用いられ、大日本帝国陸軍では1936年に九四式三十七粍砲を仮制式化した[9]

艦載砲としての速射砲

速射砲が登場した当時、艦砲においては、敵艦の砲をアウトレンジするとともに装甲艦を撃破する必要から大口径化・重砲化が進められていたが、射程と破壊力の向上と引き換えに発射速度や旋回・俯仰速度が低下し、当時登場し始めていた水雷艇との交戦が困難になっていた[10]。このことから、高速軽快な水雷艇との交戦において速射砲の存在意義が認められて、主砲としての重砲に加え、ホッチキス QF 3ポンド砲など中・小口径の速射砲も併載されるようになった[11]

イギリス海軍では、特に薬莢を使用する後装砲(莢砲)を速射砲(Quick-firing, QF)と称して、薬嚢を使用する後装砲(嚢砲; Breech-loading, BL)と区別した[12]。時代が下ると速射砲も大口径化が進み、203 mm (8.0 in)口径の速射砲が装甲巡洋艦の主砲として搭載されるようにもなった[13]。しかし大口径化が進むと人力での装填作業が困難になり、速射砲といっても速射の効果を発揮できなくなるという問題があって、口径を妥協する例もあった[13]

航空機が発達すると、これに対抗する対空兵器として、速射砲を高角砲架と組み合わせて用いるようになったが、小口径では破壊力が低い一方、あまりに大口径では速射の効果を発揮できなくなることから、3インチ口径程度の砲が多く用いられた[14]。航空機の性能向上とともに更なる発射速度の向上が求められ、装填作業を機力化した半自動砲が登場すると[14]、こちらが特に速射砲と称されるようになった[15]。例えば海上自衛隊では、同じ50口径3インチ砲でも、手動で装填を行っていた戦中世代のMk.22は緩射砲(スロー・ファイア)と称されたのに対し、半自動化した戦後世代のMk.33は速射砲(ラピッド・ファイア)と称された[16]

このように高性能化した速射砲は、時限信管VT信管)や火器管制レーダーと組み合わされることで、一時は機関砲にかわって近距離防空の主役を担った時期もあった[17]。また対艦ミサイルの脅威を受け、CIWSとして機関砲が復権した後でも、更に自動化を進めて機関砲と同様に全自動化した速射砲は、艦対空ミサイルやCIWSとともに防空網の一端を担っている[17]

脚注

出典

  1. ^ a b 猪口修道「速射砲」『日本大百科全書株式会社DIGITALIOコトバンクhttps://kotobank.jp/word/%E9%80%9F%E5%B0%84%E7%A0%B2-898672022年10月19日閲覧 
  2. ^ 防衛省 2009, p. 27.
  3. ^ 原田 1918, p. 300.
  4. ^ a b c 横山 2005.
  5. ^ a b c McNeill 2014, pp. 41–49.
  6. ^ 金子 2013, pp. 154–159.
  7. ^ a b 佐山 2008, pp. 58–70.
  8. ^ 佐山 2008, pp. 250–252.
  9. ^ 佐山 2008, pp. 338–341.
  10. ^ McNeill 2014, pp. 97–104.
  11. ^ McNeill 2014, pp. 125–126.
  12. ^ Friedman 2011, pp. 12–16.
  13. ^ a b 高須 1996b.
  14. ^ a b 高須 1996.
  15. ^ 高須 1979.
  16. ^ 香田 2015, pp. 32–33.
  17. ^ a b 堤 2006.

参考文献


速射砲(D0)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/17 15:52 UTC 版)

パワーローダー (パワードール)」の記事における「速射砲(D0)」の解説

対戦車対空両用砲転用した、独立戦争末期導入され始めた装備初速が高いため、徹甲弾威力は高いが、榴散弾では近接信管反応間に合わないという事態を生み出し、対PLD能力低下している。独自の3バースト射撃機構を持つため、重量反動増大しており、砲弾消費激しい。

※この「速射砲(D0)」の解説は、「パワーローダー (パワードール)」の解説の一部です。
「速射砲(D0)」を含む「パワーローダー (パワードール)」の記事については、「パワーローダー (パワードール)」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「速射砲」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ

「速射砲」の例文・使い方・用例・文例

Weblio日本語例文用例辞書はプログラムで機械的に例文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。



速射砲と同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「速射砲」の関連用語

速射砲のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



速射砲のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
デジタル大辞泉デジタル大辞泉
(C)Shogakukan Inc.
株式会社 小学館
航空軍事用語辞典++航空軍事用語辞典++
この記事はMASDF 航空軍事用語辞典++の記事を転載しております。
MASDFでは航空及び軍事についての様々なコンテンツをご覧頂けます。
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの速射砲 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaのパワーローダー (パワードール) (改訂履歴)、アルカディア号 (改訂履歴)、ノモンハン事件 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。
Tanaka Corpusのコンテンツは、特に明示されている場合を除いて、次のライセンスに従います:
 Creative Commons Attribution (CC-BY) 2.0 France.
この対訳データはCreative Commons Attribution 3.0 Unportedでライセンスされています。
浜島書店 Catch a Wave
Copyright © 1995-2025 Hamajima Shoten, Publishers. All rights reserved.
株式会社ベネッセコーポレーション株式会社ベネッセコーポレーション
Copyright © Benesse Holdings, Inc. All rights reserved.
研究社研究社
Copyright (c) 1995-2025 Kenkyusha Co., Ltd. All rights reserved.
日本語WordNet日本語WordNet
日本語ワードネット1.1版 (C) 情報通信研究機構, 2009-2010 License All rights reserved.
WordNet 3.0 Copyright 2006 by Princeton University. All rights reserved. License
日外アソシエーツ株式会社日外アソシエーツ株式会社
Copyright (C) 1994- Nichigai Associates, Inc., All rights reserved.
「斎藤和英大辞典」斎藤秀三郎著、日外アソシエーツ辞書編集部編
EDRDGEDRDG
This page uses the JMdict dictionary files. These files are the property of the Electronic Dictionary Research and Development Group, and are used in conformance with the Group's licence.

©2025 GRAS Group, Inc.RSS