アームストロング砲とは? わかりやすく解説

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アームストロング‐ほう〔‐ハウ〕【アームストロング砲】

読み方:あーむすとろんぐほう

W=Gアームストロング1855年発明した速射砲米国南北戦争日本戊辰(ぼしん)戦争などで使用


アームストロング砲

作者司馬遼太郎

収載図書アームストロング砲
出版社講談社
刊行年月1988.11
シリーズ名講談社文庫

収載図書剣鬼らの饗宴新選代表作時代小説 2
出版社光風出版
刊行年月1998.6
シリーズ名光風文庫

収載図書アームストロング砲 新装版
出版社講談社
刊行年月2004.12
シリーズ名講談社文庫

収載図書司馬遼太郎短篇全集 第10巻
出版社文藝春秋
刊行年月2006.1


アームストロング砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/09/26 04:07 UTC 版)

110ポンド(7インチ)アームストロング砲

アームストロング砲(アームストロングほう、英語: Armstrong gun)は、イギリスウィリアム・アームストロング1854年に発明した大砲。初めて大規模に実用化された後装式ライフル砲である。

沿革

開発に至る経緯

アームストロングは水力関連機器の製造業者として成功していたが、クリミア戦争中、インカーマンの戦い英語版においてイギリス軍が重砲を射撃位置に進入させるのに難渋していたという報道を読んで、軽量かつ高性能な火砲の開発を決意した[1]。この時期、ヨーロッパでは前装式から後装式へ、また滑腔砲からライフル砲への移行が試みられており、アームストロングの設計はその最初期の試みの一つであった[2]

従来の砲身鋳造製であったのに対し(鋳造砲)、アームストロングは砲腔にあたる中子のまわりに砲身を少しずつ組み立てていくという製造法を採用した[1]。これは、鋼鉄で作った中子を砲身の内側表面として、その外側から可鍛鉄の帯を巻きけたり、短い円筒を前後に並べたりするというものであった[1][注 1]。この工法による砲身では、外側の帯は内側の層をきつく締め付けることになり、均質な鋳造砲身よりも軽量でありながら強靭となったほか、注文に応じて砲の大きさを比較的自由に変更できるというメリットもあった[1]。一方、閉鎖機としては鎖栓式と螺栓式の混合型にあたる与圧式が用いられた[2]。これは鎖栓式の閉鎖機の後方にネジ込み式の螺栓式閉鎖機を併設したものだが、螺栓式閉鎖機は内径が薬室とほぼ同じ太さのパイプ状のネジになっている。このネジを緩めて鎖栓を抜きとり、ネジのパイプ内を通して砲弾と装薬を装填し鎖栓を装着、ネジを締めて鎖栓を密着させて射撃準備が完了する構造になっていた。

薬嚢の前部には、ブリキのプレートで獣脂と亜麻仁油を挟み込んだ潤滑器が装着されていた。プレートの後ろには蜜蝋でコーティングしたフェルト束と厚紙があった。砲弾が発射されると潤滑器もその後を追うが、この際にプレートの隙間から潤滑油が搾り出され、フェルト束が砲弾から剥がれて内腔にこびりついた鉛を拭きとり、次弾の発射前に内腔が掃除されることになる[4]

アームストロング砲は1855年イギリス海軍で部分的に導入されたのち、1857年に勃発したインド大反乱の影響もあってイギリス軍への採用が決定され、1859年にはアームストロングは「ライフル砲専任技師」という官職に任命されるとともに爵位を受けた[1]。この公務員としての立場で、アームストロングはエルスウィック社(Elswick Ordnance Company)という会社を新設し、イギリス政府との専属契約のもとでアームストロング砲を納入した[1]

初期の実戦投入

艦砲モデルは、1863年薩英戦争において実戦投入された[2]。この際、アームストロング砲の発射速度の速さとともに、着発信管を装着した榴弾の破壊力が高く評価されたが、この砲弾も後装式ライフル砲という方式を採用したことで使用できるようになったものであった[2][注 2]。一方で与圧式の閉鎖機には強度面の問題があり[2]、しばしば火門鉄を破損したほか、特に旋回砲として用いられていた110ポンド砲では砲架の強度不足も露呈した[6]

このような構造上の問題のほか、特に大口径砲では操砲困難となる問題があり、この時点では装甲貫徹力や照準精度も前装式より劣っていた[1]。当時、装甲艦の登場に伴って対艦兵器貫徹力が重視されるようになり、砲の大口径化・大重量化が進んでいたことから、これは重大な問題であった[1]。このためイギリス海軍では一時的にアームストロング砲が艦から降ろされることになり[2]、前装砲との折衷案にあたる前装式ライフル砲が開発されて、1864年にはこれが艦砲として採用されることになった[7][1]。薩英戦争の直前にあたる1863年2月、アームストロングは官職を辞し、それとともにエルスウィック社の専属契約も解除されたため、イギリス国外への輸出の道が開かれた[1]。この時期、アームストロングのライバルでもあったジョセフ・ホイットワースも後装砲の設計を行っており[1]、両者の砲は南北戦争において広く用いられた[8]

改良型の開発

野に下ったアームストロングは閉鎖機の改良を進め、螺栓式をもとにした隔螺式の採用を着想した[2]。本方式そのものの発明はフランスのボーリューによるといわれるが、アームストロングが実用化を進めたことで洗練されていった[2]

1879年には、イギリス海軍も再び後装砲の装備へと転換した[9]。これは上記のような閉鎖機の設計改良によって後装砲の実用性が向上したことに加えて、貫徹力向上の要求および装薬(発射薬)の進歩によって長砲身化が進み、前装砲への装填作業などが非実用的になったことによる決定であった[9]。以後、アームストロング社はプロイセンクルップ社とともに、世界中に後装式ライフル砲を輸出していくことになった[10]

種類

種類 口径
6ポンド軽野砲 2.5 インチ (64 mm)
9ポンド騎兵砲 3 インチ (76 mm)  
12ポンド野砲 3 インチ (76 mm)
20ポンド野砲 3.75 インチ (95 mm)
40ポンド攻城砲 3.75 インチ (95 mm)
110ポンド海軍砲 7 インチ (180 mm)
100トン砲 17.76インチ (450mm)

脚注

注釈

  1. ^ Holleyは、鋼鉄製の中央チューブを錬鉄製のコイルで圧縮する方法は、ダニエル・トレッドウェル (Daniel Treadwelが最初にパテントを取ったとしている。アームストロングはチューブを錬鉄製としてこの特許を回避したが、この特許の本質は素材ではなく外部コイルによる締め付けにあるため、実際にはアームストロングの方法はこれと同一である[3]
  2. ^ 前装式滑腔砲では、装填の必要から球形の砲弾を使わざるを得ず、この場合、砲弾が着弾するときにどの方向を先端としているかが確定できないため、着発信管を用いることが困難であった[5]

出典

  1. ^ a b c d e f g h i j k McNeill 2014, pp. 41–49.
  2. ^ a b c d e f g h 岩堂 1995, pp. 547–554.
  3. ^ Holley 1865, pp. 863–870.
  4. ^ War Office 1877, pp. 166–167.
  5. ^ 岩堂 1995, pp. 539–547.
  6. ^ 岩堂 1995, pp. 711–714.
  7. ^ 青木 1983, pp. 69–73.
  8. ^ 岩堂 1995, pp. 524–527.
  9. ^ a b McNeill 2014, pp. 97–104.
  10. ^ McNeill 2014, pp. 104–114.

参考文献

関連書籍

  • 司馬遼太郎『アームストロング砲』講談社文庫、1988年 ISBN 978-4061843295
  • 幕末軍事史研究会『武器と防具 幕末編』新紀元社、2008年
  • 横井勝彦『大英帝国の「死の商人」』講談社〈講談社選書メチエ〉、1997年

外部リンク


アームストロング砲

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/01/02 15:21 UTC 版)

幕末」の記事における「アームストロング砲」の解説

鋼鉄製の後装式ライフル砲装薬充填され信管取り付けられている尖頭砲弾使用した後装式であるため、従来比べて装填時間大幅に短縮できた。肥前佐賀藩使用した

※この「アームストロング砲」の解説は、「幕末」の解説の一部です。
「アームストロング砲」を含む「幕末」の記事については、「幕末」の概要を参照ください。

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アームストロング砲

出典:『Wiktionary』 (2021/08/11 08:44 UTC 版)

名詞

アームストロング (アームストロングほう)

  1. 英国アームストロング製造大砲1854年ウィリアム・アームストロング後装施条砲創案し以降、その会社製造する連射砲および鋼線砲の呼び名になる。

翻訳


「アームストロング砲」の例文・使い方・用例・文例

  • アームストロング砲という大砲
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