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じだい‐しょうせつ〔‐セウセツ〕【時代小説】

読み方:じだいしょうせつ

古い時代事件人物など題材をとった小説


時代小説

作者筒井康隆

収載図書代表作時代小説 28(昭和57年度) 〔新装版
出版社東京文芸社
刊行年月1988.6

収載図書時代小説―自選短篇集
出版社中央公論社
刊行年月1994.11


時代小説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/05/26 15:38 UTC 版)

時代小説(じだいしょうせつ)は、過去の時代・人物・出来事などを題材として書かれた日本の小説。現代の日本では、明治時代以前の時代(主に江戸時代)を対象とすることが多い。歴史小説との違いについては、歴史小説を参照されたい。

かつては大衆文学はすなわち時代小説であり、広く庶民に受け入れられた。一般に歴史小説との境界は曖昧であるが、過去の時代背景を借りて物語を展開するのが時代小説であり、歴史小説は歴史上の人物や事件をあつかい、その核心に迫る小説である。

歴史

明治の中頃、村上浪六塚原渋柿園は撥鬢小説や髷物小説と呼ばれる時代物を発表。これが後の大衆小説の先駆とされる。大正2年、その出発点とされる中里介山の『大菩薩峠』の連載が開始。また翌年には吉川英治がデビュー(筆名・吉川雉子郎)。大正14年には初めて吉川英治の筆名を使った「剣難女難」で人気を得た。大正15年には『大衆文藝』が創刊され、同人に直木三十五長谷川伸などの作家がいた。さらに『キング』『オール讀物』といった大衆雑誌が相次いで創刊され、大衆小説はブームを迎えた。なお、「大衆小説」という言葉が定着するのは昭和の初めとされるが、当時、大衆小説といえばすなわち時代小説を指した。

昭和10年からは吉川英治が『宮本武蔵』の連載を開始。剣禅一如の境地を求める主人公を描いたこの作品は戦争下において広く受け入れられ、大衆文学の転機となった。また大佛次郎の『鞍馬天狗』はアラカンこと嵐寛寿郎主演で映画化され、高い人気を博した。一方、「捕物帳」というジャンルで岡本綺堂陣出達朗らが活躍。このジャンルは時代小説の主流となった。戦時中は股旅、探偵小説が禁止され、綺堂『半七捕物帳』、達朗『伝七捕物帳』などの捕物帳が盛んであった。ほかにも子母沢寛の『勝海舟』、山本周五郎の『日本婦道記』などが読まれた。

戦後、時代小説は封建的であるとしてGHQの監視対象とされるものの、山手樹一郎の明朗もののほか、捕物帳が依然高い人気を保った。その後、村上元三の『佐々木小次郎』を皮切りに昭和30年代には剣豪を主人公とする「剣豪小説」ブームが起きた。その流れの中で五味康祐柳生武芸帳』、柴田錬三郎眠狂四郎無頼控』などの名作が生み出された。さらに山田風太郎による『魔界転生』や「忍法帖」ブーム、南條範夫による「残酷」ブームが起きた。このほか、池波正太郎藤沢周平は時代小説の代表的な書き手として活躍し、池波は『鬼平犯科帳』『剣客商売』『仕掛人・藤枝梅安』、藤沢は『蟬しぐれ』『たそがれ清兵衛』などを書いた。

平成に入ると峰隆一郎が作品を単行本を経ずにいきなり文庫本で刊行するという「文庫書き下ろし」という出版形式で作品を量産した。その後も宮城賢秀佐伯泰英らが時代小説を文庫本で書き下ろすという形で作品を発表。特に佐伯泰英はほぼ一月に一作のペースで作品を刊行し、多くの読者を獲得した。こうした文庫書き下ろしの形で発表される作品のほとんどがシリーズもので、近年は推理小説界からの参入や女性作家の活躍など、ジャンルの広がりがみられる。

ジャンル

捕物帳

主に江戸時代を舞台とした推理小説[注 1]。江戸市中で起きる様々な事件を解決していくもので、江戸町奉行所に勤めている与力同心、また彼らから十手を預かる岡っ引(御用聞き)が主人公である場合が多い。時代小説の主流ジャンルの一つ。

岡本綺堂の『半七捕物帳』を嚆矢とし、佐々木味津三の『右門捕物帖』、野村胡堂の『銭形平次捕物控』、陣出達朗の『伝七捕物帳』、『新五捕物帳』、城昌幸の『若さま侍捕物手帖』など。『人形佐七捕物帳』の横溝正史は、作品に本格ミステリを配した点に特徴がある。シャーロック・ホームズを原書で読み構想したという岡本、クラシック音楽評論の草分けでもあった野村についても作品によっては本格趣味濃厚なものがあり、初期の捕物帳は江戸文化とともに欧米文化にも通暁した人々(岡本、横溝、城には翻訳の業績もある)によって拓かれてきた。これらのうち『半七――』『右門――』『銭形平次』を“三大捕物帳”、“三大”に『人形佐七――』『若さま侍――』を加えて“五大捕物帳”という[1]。戦後は池波正太郎鬼平犯科帳』が代表的だが、近年は女性作家の活躍が目覚しい。

1949年(昭和24年)、野村胡堂が中心となり「捕物作家クラブ」が結成。のちに、日本作家クラブ日本文芸家クラブとなった。

『半七捕物帳』はシャーロック・ホームズを意識して書かれたものであるが、その後に追随した作品の多くでは、推理小説的な要素よりも人情話やユーモア小説、伝記小説などとしての側面が強調された[2]。こうした点から、1950年ごろには推理小説のファンから格下に見られていたという[3]。ただし、久生十蘭顎十郎捕物帳』や都筑道夫『なめくじ長屋捕物さわぎ』など、本格推理小説的な側面の強い作品も書かれている[2]

伝奇小説

中国の伝奇小説に範を取り、時代背景や実在の人物を借りながら、架空の人物を登場させ現実離れした活躍を描くもの。白井喬二国枝史郎や初期の吉川英治など。

山田風太郎は、歴史を題材にする以上史実の改変は許されないとして、資料の欠陥部を補う想像力で多数の優れた作品を発表した。SFとの融合を果たした伝奇ロマンと呼ばれる分野は半村良が開拓。このほかSF作家の高橋克彦夢枕獏らが独自の世界を築いた。

また戦前の立川文庫の路線は「忍者小説」と呼ばれ、風太郎が発表した「忍法帖」で知られる。

剣豪小説

剣豪を主人公とした小説。いわゆるチャンバラシーンを骨格にして、宮本武蔵柳生十兵衛のほかに、架空の剣士を活躍させる。実在の人物を題材にしたものには、吉川英治宮本武蔵』、村上元三佐々木小次郎』、五味康祐柳生武芸帳』など。架空の人物を題材にしたものでは、中里介山の『大菩薩峠』、柴田錬三郎の『眠狂四郎無頼控』などが代表的。

市井小説

武士や公卿やアウトローではなく、都市に住む平民、すなわち職人や商人、あるいはその日暮らしの下層の人々を主人公とした作品。庶民の人情を描いたものが多く、山本周五郎伊藤桂一藤沢周平らが代表作家。

股旅物

主人公を渡世人侠客とし、アウトローの世界を描いたもの。長谷川伸子母澤寛が開拓。国定忠治清水の次郎長が代表的な主人公。戦後は笹沢左保の『木枯らし紋次郎』が注目される。

三度笠」「股引」「草鞋脚絆」「合羽(カッパ)」「ドス・長ドス」などが特徴づけるもの又はキーワードとして用いられる[4]。なお、小説に限らず、そのような人々が旅の途中で遭遇するエピソードなどを描いた演劇講談浪曲映画等映像作品やそれらの主題歌他物語をモチーフとした楽曲などの総称でもある。

関連書籍

以下はブックガイド(各品切、絶版)
各<別冊宝島宝島社、過去は毎年ブックガイドを発行していた
  • 『時代小説ベスト100』ファーザーアンドマザー編、ジャパン・ミックス、1996年、新版1998年
上記と、「別冊宝島」はムックMOOK>本
239編を取り上げている、1984年、新版1986年。

脚注

注釈

  1. ^ 例外的ではあるが、明治時代を舞台としながら「捕物帖」を名乗る坂口安吾明治開化 安吾捕物帖』のような作品も存在する。

出典

  1. ^ 大隈三好『捕物の歴史』雄山閣〈雄山閣歴史選書〉、1973年10月10日、253頁。 
  2. ^ a b 新保博久「捕物帳」『日本ミステリー事典』新潮社〈新潮選書〉、2000年2月20日、216頁。 ISBN 4-10-600581-6 
  3. ^ 都筑道夫 「安吾流探偵術」 『日本探偵小説全集 10 坂口安吾集』 東京創元社〈創元推理文庫〉、1985年10月25日、754頁。ISBN 4-488-40010-8
  4. ^ 橋幸夫著『シオクルカサ(潮来笠)の不思議な世界:エピソードで綴る波乱の歌手伝説』ISBN 978-4-87969-106-4 日刊現代(東京)2007/4 159頁

関連項目

外部リンク


時代小説

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/11/20 15:05 UTC 版)

西村寿行」の記事における「時代小説」の解説

怨霊孕む』は南北朝戦乱期の武将の、時代流れ内面狂気向き合う凄絶生き様描いている。『秋霖』は尼子一族遺児奔放な姿と、尼子再興賭け山中鹿之介らの戦い対比され描かれる。『虚空の影落つ』『牛馬解き放ち』は、いずれも幕末から明治初期にかけての混乱期権力翻弄される人間反抗描いたもので、岩倉具視対立する謎の虚無僧虚空」が両作品活躍する。『曠野』『ユーコン河』は明治開拓期北海道第二次大戦中アラスカでの日系人強制収容題材に、戒能兵馬という人物を軸にした物語。『血の翳り』では、江戸時代から明治にかけての血の繋がり物語と現在が交錯する作品リスト怨霊孕む講談社 1980年秋霖』(上・下実業之日本社 1981年虚空の影落つ徳間書店 1981年牛馬解き放ち太政官布告第二九五号』双葉社 1982年(「小説推理1981年8月-1982年1月号) 『ユーコン河』光文社 1983年曠野光文社 1986年

※この「時代小説」の解説は、「西村寿行」の解説の一部です。
「時代小説」を含む「西村寿行」の記事については、「西村寿行」の概要を参照ください。

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