駆逐戦車との違い
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/03 14:54 UTC 版)
ドイツ国防軍の装備した装甲戦闘車両として、回転砲塔を持たず、固定式の戦闘室に比較的大口径の長砲身砲を装備する、突撃砲に類似した形態を有する車両があるが、これは「駆逐戦車」と呼ばれるものである。駆逐戦車とは、当初は「戦車駆逐車」の名称であったことからも判るように、歩兵の支援を第1目的とせず、戦車を遠距離から攻撃することを主任務とした車両であり、言うなれば「対戦車戦闘のみに特化した戦車」ということである。一方で、後述のようにIII号突撃砲自体が第二次世界大戦の開戦前に対戦車威力を強化した長砲身砲搭載の計画が立ち上がっていたことからもわかるように、開発当初から突撃砲の任務の一つとして対戦車戦闘が考慮されていた。また、駆逐戦車そのものが実戦において「突撃砲は包囲されない限り通常の戦車より高い対戦車戦闘能力を持つ」と分析されたことから開発されているように、突撃砲と駆逐戦車との差は明確ではない。 突撃砲と駆逐戦車との区別については多分に兵科間の縄張り争いの一面を持ち、実態として両者の相違は曖昧なもので、事実エレファントやヤークトパンターなどの重駆逐戦車は、当初は重突撃砲に分類されていた。これら駆逐戦車の照準器は接眼鏡内の目盛こそ直射を前提とした移動目標に対する狙いが付けやすい物となっているものの、突撃砲と同じく野戦砲に準じた潜望鏡式の物のみで、回転砲塔式の戦車のような、主砲と同軸に装備される直接照準器を持たない。 同様の理由(所属兵科や運用される部隊の主任務に応じて呼称を対応させる)で、砲兵と対戦車砲兵を区分することには突撃砲以外にも例がある。ドイツ国防軍においては、大戦後半になると、砲の半分の数しか牽引車両を持たない部隊が編成され「Artillerie-Pak-Abteilung(bo.)=砲兵科対戦車砲大隊(半固定)」と呼称されている。ドイツ以外でも、日本軍は歩兵大隊に配属された迫撃砲のことを「曲射歩兵砲」と呼び、戦車兵科に属する自走砲を「砲戦車」と呼んでおり、アメリカ軍においては機甲部隊や機械化歩兵部隊において、榴弾砲を主砲とし直射火力支援を主任務とした戦車や自走砲を部隊編成表などでは“Assault Gun(アサルトガン)”と呼称していた。
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