駆逐艦
英語:destroyer
「駆逐艦」とは、ある程度の攻撃力と機動力を備えた、比較的小型の艦艇のことである。一般的には全長100m前後の、「巡洋艦よりは小型の高速戦闘艇」を指して駆逐艦という。
現代の駆逐艦は、比較的小型ながら魚雷、機雷、中口径の砲塔やミサイルなどを装備し、かつ、高速に移動する性能も備えた軍艦である。対空戦闘や対潜水艦戦闘など、さまざまな戦闘局面に対応する能力がある。攻撃力と高速移動を実現するため、装甲は薄い傾向がある。
駆逐艦は、水雷艇(魚雷を主装備とする小型高速艇)として登場し、水雷艇が魚雷以外の重武装を搭載する形で「駆逐艦」として発展した。19世紀イギリスで登場した当初は、艦隊において戦艦などをサポートする役割が主だった。次第に重武装となり、現代ではミサイル兵器も搭載されて海軍の主戦力のひとつとなっている。
「駆逐艦」の語源・由来
「駆逐艦」は英語では「destroyer」という。destroy は破壊、殲滅、駆除、といった意味の単語である。日本語の「駆逐」に相当する意味もある。つまるところ、駆逐艦は、機雷や魚雷などの水雷兵器を使用する敵の水雷艇を戦場から追っ払うための艦艇というわけである。「駆逐艦」と「巡洋艦」と「フリゲート」の違い
「駆逐艦」と「巡洋艦」と「フリゲート」は、いずれも攻撃力と機動力を兼ね備えた艦艇である。一般的には、大きさが「巡洋艦 > 駆逐艦 >フリゲート」の順で異なる。巡洋艦は駆逐艦よりも大きく、航続力がある艦艇である。フリゲートは駆逐艦よりも小さく、哨戒や偵察などを主に行う艦艇を指す場合が多い。
駆逐艦・巡洋艦・フリゲートを区別する基準や条件は、時代や国・組織によって異なる。そのため、駆逐艦として建造された艦艇が、別の国では巡洋艦やフリゲートとして扱われる、といった状況も生じる。
日本の代表的な「駆逐艦」
「雪風」とは
「雪風」は、1940年に竣工した駆逐艦であり陽炎型駆逐艦の8番艦の名称である。太平洋戦争において十数回にわたって戦闘に加わり、それなりの戦果を上げながら、大きな損傷を受けることなく終戦を迎えたことで知られる。戦後「雪風」は賠償艦として中華民国に引き渡され、「丹陽(タンヤン)」と改称され、同国の海軍旗艦として使用された。1960年代半ばに老朽化により退役。後に解体された。
「蕨」とは
「蕨(わらび)」は、1921に竣工した樅型駆逐艦20番艦の名称である。1927年、島根県の日本海沖で訓練中に衝突事故を起こし、沈没した。2020年に蕨の船体の一部が海底で発見され話題となった。「島風」とは
「島風」は、1920年に竣工した峯風型駆逐艦の4番艦、および、1943年に竣工した島風型駆逐艦の1番艦の名称である。「艦これ」に登場する艦娘「島風」のモデルは太平洋戦争に投入された2代目(島風型駆逐艦1番艦)の方である。初代島風は、海上公試運転において、当時の日本製駆逐艦としては最速となる40ノット超の速度を記録した艦艇として知られている。2代目島風も海上公試運転で40ノット超の速度を記録している。
2代目島風は太平洋戦争のさなかに登場した。戦局の変化に伴い他の型式の艦艇が優先的に建造されたため、建造された島風型駆逐艦は「島風」1隻のみである。
「雷」とは
「雷(いかづち)」は、1932年に竣工した吹雪型駆逐艦の23番艦の名称である。太平洋戦争には第六駆逐隊としてスラバヤ沖海戦(1942年)やガダルカナル島の戦い(1942年)に参加した。スラバヤ沖海戦は、日本軍が連合軍の駆逐艦「ポープ」と「エンカウンター」を撃沈して完全勝利した。このとき「雷」と僚艦「山風」は、沈没した連合軍艦艇に搭乗していた生存者400余名を救助している。
ガダルカナル島の戦いでは「雷」は大きな損害を受けたが、帰投に成功している。
その後「雷」は主に商船の護衛などの任務にあたった。1944年にアメリカ軍の潜水艦に見つかり、魚雷を受けて沈没した。
「竹」とは
「竹」は、1919年に竣工した樅型駆逐艦の6番艦、および、1944年に竣工した松型駆逐艦の2番艦の名称である。艦娘のモデルは後者の2代目である。樅型駆逐艦の初代「竹」は、太平洋戦争の開戦前に除籍され、戦時中は練習艦として使用された。
松型駆逐艦の2代目「竹」は、いわゆる量産型の駆逐艦である。性能はそれなりに良かったとされる。戦中は主に輸送や他の軍艦の護衛任務に当たり、航行可能な状態で終戦を迎えた。
「響」とは
「響」は、1906年に竣工した神風型駆逐艦21番艦、および、1933年に竣工した吹雪型駆逐艦22番艦の名称である。後者は「雷」の姉妹艦であり、同じ第六駆逐隊の僚艦であり、艦娘のモデルである。太平洋戦争では「響」は第六駆逐隊として多くの海戦に参加しており、何度かにわたり甚大な損傷も受けている。しかし偶然の妙により、敵方の魚雷を受けずに済んだり、レイテ沖海戦のように決定的損害に至った海戦への出撃を免れたりして、航行可能な状態で終戦を迎えた。吹雪型駆逐艦「響」は、終戦後は賠償艦としてソ連に渡った。
「神風」とは
「神風」は、1905年に竣工した初代神風型駆逐艦1番艦、および、1922年に竣工した2代目神風型駆逐艦の1番艦の名称である。1945年、マレー半島沖で敵国アメリカの潜水艦「ホークビル」と交戦し、両者ともに高度な技量をぶつけ合ったことで知られている。双方ともに無事なまま終戦を迎え、戦後は両艦の艦長が称え合うなどしている。アメリカの有名な駆逐艦
現代アメリカ海軍の駆逐艦の主力はすでに70隻あまり建造されている「アーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦」などであるが、知名度は「ズムウォルト級ミサイル駆逐艦」の方が上かもしれない。「ズムウォルト級ミサイル駆逐艦」は高いステルス性能を特徴とし、そのステルス性のため凹凸の極端に少ない外観をしている。1番艦「ズムウォルト」は2016年に就役している。
「ズムウォルト級ミサイル駆逐艦」は製造コストもかなり高く(1隻あたり約45億ドル ≒ 5~6千億円)、専用ミサイルの発射コストも非常に高い。そのため建造計画を巡っては紛糾し、コスト削減のため仕様も建造予定数も大幅に変更されている。
世界最強の「駆逐艦」は
「世界最強の駆逐艦」として候補に挙がる駆逐艦の筆頭は、やはりアメリカ海軍の「ズムウォルト級ミサイル駆逐艦」が挙がることが多い。建造費がバカ高いだけあって性能も恐ろしく高いのである。ズムウォルト級ミサイル駆逐艦は、いわゆるコストパフォーマンスの面から失敗作のように扱われることが少なくないが、コストを度外視して装備や性能を評価すれば「最強」といってもあながち過言ではない。
【駆逐艦】(くちくかん)
Destroyer
艦艇の一種。アメリカ海軍では"DD"の略号(Destroyerの頭文字であるが、1文字だけの場合はその文字を重ねるため)で表記される。
「水雷艇駆逐艦」を略したものが語源であるが、現代における定義は後述のとおり曖昧である。
一般には巡洋艦より小さく、明白に軍事衝突を想定して武装した戦闘艦を指す。
ただし、中には往時の(前ド級)戦艦や巡洋艦にも匹敵する満載排水量10,000トン以上の艦もある。
また、ヘリコプター空母を「ヘリコプターの母艦機能を持つ駆逐艦」として扱う、という極端なケースもある。
重量の下限についても、フリゲート並みかそれ以下という例が多々あり、こちらも明確な国際基準はない。
関連:護衛駆逐艦
ルーツとその発展
元々「駆逐艦」とは、その名の通り「水雷艇を駆逐(撃破)する艦艇」として開発された艦である。
水雷艇は、小型の船体と高い機動力を活かし、艦船の死角から雷撃を行う事を任務とする艦艇であり、大型で鈍重な巡洋艦・戦艦にとっては重大な脅威であった。
これに対する対抗戦術として設計・開発された、「一定の機動力と、水雷艇を容易に駆逐する武装」を備えた艦艇が駆逐艦であった。
その後間もなく、外洋航行能力に欠ける水雷艇は海戦兵器の座から退き、その役割は駆逐艦へと引き継がれた。
これに伴い、爆雷や高射砲を搭載するなどして、その任務は様々に多様化していった。
最盛期の駆逐艦に割り振られていた任務は主として以下のようなものである。
くちくかんと同じ種類の言葉
- くちくかんのページへのリンク