超大型空母とは? わかりやすく解説

超大型空母

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/08 22:56 UTC 版)

初の超大型空母「フォレスタル

超大型空母(ちょうおおがたくうぼ、英語: Supercarrier)は、特に大型の航空母艦に対する俗称[注 1]アメリカ海軍では当初、核戦略の一翼を担いうるように大型の艦上攻撃機を運用可能な艦として構想された[2]

概要

単語としての初出は、1938年に発行されたニューヨーク・タイムズにおいて、イギリス海軍の「アーク・ロイヤル」を指して用いられた例であるとされる[3]

一方、第二次世界大戦後のアメリカ海軍では、仮想敵としての大日本帝国海軍の消滅と核兵器の台頭を受けて、核戦略の一翼を担いうるように大型の艦上攻撃機を運用可能なCVB-X計画艦(基準排水量70,000トン)を計画しており、その1番艦「ユナイテッド・ステーツ」は1948年度計画で建造が開始された。これが初の超大型空母となるはずだったが[4]戦略爆撃機の優位性と大型空母の非効率性を主張する空軍の意向を受け、ルイス・A・ジョンソン英語版国防長官は起工後9日にして建造中止を命令した[5]

その後、同艦の建造中止を巡る「提督たちの反乱」に関連して開かれた公聴会朝鮮戦争での実績を通じ、空母の存在意義が広く認められるようになったことから、1952年度予算でフォレスタル級の建造が開始され、超大型空母の端緒となった[6]。続いて1956年度からは、発展型のキティホーク級の建造が開始された[6]。この間、1958年度では初の原子力空母として「エンタープライズ」も建造されたものの、あまりに高価であり、その後しばらくはキティホーク級に準じた通常動力型の建造へと回帰していた[7]

その後、原子力推進技術の成熟を受け、1967年度計画以降では原子力空母としてのニミッツ級の量産が開始された。同級は順次に改良を重ねつつ長く建造されたが、2007年度からは大規模に改設計したジェラルド・R・フォード級へと移行した[8]

左から
ジェラルド・R・フォード
遼寧
アドミラル・クズネツォフ
クイーン・エリザベス
ヴィクラマーディティヤ
シャルル・ド・ゴール

比較表

超大型航空母艦(スーパー・キャリアー)の比較
CVN フォード級 CVN ニミッツ級 CVN エンタープライズ
(最終状態)
CV キティホーク級
(最終状態)
CV フォレスタル級
(最終状態)
船体 満載排水量 101,605 t[9] 91,400 - 102,000 t[10] 83,350 t[11] 75,200 t - 83,000 t[12] 75,900 t - 76,000 t[13]
全長 332.8 m[9] 332.0 m[10] 341.3 m[11] 319.3 m - 326.9 m[12] 316.7 m - 319.0 m[13]
水線幅 / 最大幅 41.8 m / 78 m[9] 40.8 m / 76.8 m[10] 38.5 m / 78.3 m[11] 39.6 m / 76.8 m[12] 38.5 m / 76.8 m[13]
機関 方式 原子炉 + 蒸気タービン[9][10][11] ボイラー + 蒸気タービン
出力 280,000 hp[10][11][12][13][注 2]
速力 30 kt以上[9][10] 36 kt[11] 35 kt[12] 34 kt[注 2][13]
兵装 砲熕 ファランクスCIWS × 2–3基[9][10][11][12][13]
ミサイル ESSM 8連装発射機 × 2基[9] シースパロー 8連装発射機 × 2–3基[10][11][12][13]
RAM 21連装発射機 × 2基[9]
航空運用機能 形式 CATOBAR
発艦装置 電磁式カタパルト × 4基 蒸気式カタパルト × 4基
JBD 4基
着艦帯 アングルド・デッキ配置
制動索 3索 4索[注 3]
エレベーター 3基 4基
航空用ガソリン 363 kL[14] 192 kL[14] 353 kL[14]
ジェット燃料 不明 10,220 kL[14] 9,382 kL[14] 4,439 kL[14] 6,955 kL[14]
航空機用兵器 不明 2,970 t[14] 1,800 t[14]
搭載機数 常時70機前後 常時70機前後 / 最大90機
同型艦数 1隻 / 10隻予定
(1隻艤装中、1隻建造中)
10隻 1隻(退役) 4隻(退役) 4隻(退役)


脚注

注釈

  1. ^ なおアメリカ海軍では、俗称としての"Supercarrier"とは別に、公式の類別として「大型航空母艦」 (Large aircraft carrier) が存在した時期もあった。これは異例の大型艦であるミッドウェイ級の建造に伴って、従来の空母(CV)と区別するために1943年7月15日付けで制定されたもので、CVB船体分類記号が付与された。その後、1952年10月1日に従来のCVとCVBを統合して「攻撃空母」 (Attack aircraft carrier) の類別が設けられ、CVAの船体分類記号が制定されて、CVBは廃止された[1]
  2. ^ a b フォレスタル」のみ出力260,000 hp、速力33ノット[13]
  3. ^ ニミッツ級9番艦以降は3索式。

出典

  1. ^ 中名生 2014.
  2. ^ Polmar 2008, ch.3 Atomic Bombs Aboard Ship.
  3. ^ “Reich's Cruise Ships Held Potential Plane Carriers”. The New York Times: p. 32. (1 May 1938). オリジナルの24 February 2018時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20180224173246/https://www.nytimes.com/1938/05/01/archives/reichs-cruise-ships-held-potential-plane-carriers.html 17 May 2015閲覧。 
  4. ^ Polmar 2008, appx.C Aircraft Carrier Characteristics.
  5. ^ Friedman 1983, ch.11 The Super-Carrier United States.
  6. ^ a b Friedman 1983, ch.12 The Forrestal Class and Its Successors.
  7. ^ Friedman 1983, ch.14 Nuclear Carriers.
  8. ^ Polmar 2008, ch.26 Into the 21st Century.
  9. ^ a b c d e f g h 大塚 2014, pp. 170–174.
  10. ^ a b c d e f g h 大塚 2014, pp. 156–169.
  11. ^ a b c d e f g h 大塚 2014, pp. 146–155.
  12. ^ a b c d e f g 大塚 2014, pp. 132–145.
  13. ^ a b c d e f g h 大塚 2014, pp. 118–131.
  14. ^ a b c d e f g h i Friedman 1983, appx.E Carrier Characteristics.

参考文献


超大型空母

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/12 22:10 UTC 版)

宇宙戦艦ヤマト2」の記事における「超大型空母」の解説

彗星帝国主力空母。艦体上下2つずつ、計4つ飛行甲板を持つ。

※この「超大型空母」の解説は、「宇宙戦艦ヤマト2」の解説の一部です。
「超大型空母」を含む「宇宙戦艦ヤマト2」の記事については、「宇宙戦艦ヤマト2」の概要を参照ください。

ウィキペディア小見出し辞書の「超大型空母」の項目はプログラムで機械的に意味や本文を生成しているため、不適切な項目が含まれていることもあります。ご了承くださいませ。 お問い合わせ



固有名詞の分類


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「超大型空母」の関連用語

超大型空母のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



超大型空母のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの超大型空母 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。
ウィキペディアウィキペディア
Text is available under GNU Free Documentation License (GFDL).
Weblio辞書に掲載されている「ウィキペディア小見出し辞書」の記事は、Wikipediaの宇宙戦艦ヤマト2 (改訂履歴)、さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち (改訂履歴)、白色彗星帝国の戦闘艦 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS