【通報艦】(つうほうかん)
Dispatch Boat(英)、Aviso(仏)
かつて存在した小型戦闘艦艇の一種。
無線電信などの通信技術がまだ未熟だった時代、艦隊決戦において、外洋航行能力を持つ小型艦艇の一部に無線機を搭載して艦隊の前方海面に展開させ、来襲する敵艦隊の兵力・動向(隻数・種類・予想針路など)を探知して後方の旗艦や司令部へ報告させる、ということが行われていた。
この任務に当たる艦を「通報艦」と呼んでいた。
また、海外に多くの植民地を持つ国では、本国・現地間での命令・報告の授受や自国権益の警備にも投入されていた。
(万が一、敵に発見されたときは抵抗を排除しつつ逃げる必要があったことから)戦闘艦艇としての能力はコルベットやフリゲート艦に近いものとされたため、国によっては独立した「通報艦」という種別を設けず、これらの艦に通報艦の任務を負わせるところもあった。
20世紀初頭以後、通信技術の改良で他の艦船にも無線通信能力が備わるようになり、偵察任務も巡洋艦・駆逐艦や潜水艦、あるいは航空機が代替するようになったため急速に廃れ、現在ではフランス海軍の「デチエンヌ・ドルヴ」級のみが残っている。
通報艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/04 08:39 UTC 版)
通報艦(つうほうかん、スペイン語・ポルトガル語: Aviso、英語: Dispatch boat)は、情報の伝達を主目的とする小型の軍艦のこと。
概要
無線通信技術などの情報伝達手段が発達していなかった20世紀初頭まで、艦と艦との間や地上との間での命令・報告の伝達を担った。これらの通報艦のサイズ・能力は、水雷砲艦やコルベット、スループと同等であることが多いため、通報艦という独立した艦種を設けず、これらの艦に通報艦の任務を担わせることも多かった。その後、無線通信技術が発達したことにより、伝令任務については専任の艦艇を充当する必要性が無くなったため、フランス海軍・ポルトガル海軍以外からは姿を消した。
フランス海軍・ポルトガル海軍では、本国と海外領土・植民地との間の命令・報告の伝達を担い、その任務上海路を警備し、現地での権益と治安を保護する中型艦も通報艦(Aviso)[注 1]と呼び、その後伝達任務に関してはそれを終えたあとも同じ艦種名で運用された。
大日本帝国海軍では1898年(明治31年)から1912年(明治45年/大正元年)まで艦種区分として存在した。海戦では戦隊の非戦闘側を併走して旗艦の旗信号を各艦に伝える任務を負っていた。
20世紀以降の通報艦(Aviso)
20世紀以降、植民地・海外領土の海上治安活動については、イギリス海軍ではスループがその役割を担い、フランス海軍・ポルトガル海軍では通報艦(Aviso)、植民地通報艦(Avisos coloniais)として整備し続けていた。これらは英語文献では一般に sloop と訳され、日本語文献でもスループとなっていることが多い。
1950年代、冷戦構造の成立と海外領土の縮小を背景として、フランス海軍は、通報艦に護衛駆逐艦任務を兼任させた護衛通報艦(Aviso-escorteur)の整備を計画した。これによって配備されたのがコマンダン・リヴィエル級フリゲートであり、またポルトガル海軍も準同型艦であるジョアン・ベーロ級フリゲートを配備した。これによって、純粋な通報艦の系譜はいったん途絶えることとなった。
しかし1960年代後半、ポルトガル海軍のホジェリオ・ドオリヴェイラ設計官によって設計されたジョアン・コーチニョ級コルベットは、通報艦の原点に回帰したものとして開発された。これはポルトガルの植民地戦争を背景に、南大西洋・インド洋海域において限定戦争・低強度紛争に投入できる低コストな二線級戦闘艦として開発されたものである。1,500トン未満と小型の艦体に最低限の砲熕兵器および対潜兵器、センサー・システムを装備しているが、魚雷発射管や対艦ミサイル、個艦防空ミサイル、C4Iシステムなど、強力だが手のかかる新型装備は搭載されなかった。
コーチニョ級のコンセプトは成功したものと見なされ、同国海軍は引き続き発展型のバッティスタ・デ・アンドラーデ級コルベット[1]の整備に入り、またスペインもデスクビエルタ級コルベットを開発した[2]。また、フランスも同様のコンセプトによるデスティエンヌ・ドルヴ級通報艦を開発・配備した[3]。さらに、これらのコンセプトは第三世界諸国においても支持されることとなり、デスクビエルタ級はエジプトやモロッコ、デスティエンヌ・ドルヴ級はアルゼンチンやトルコに輸出され、またアルゼンチンはドイツ製のMEKO 140型フリゲートをエスポラ級コルベットとして配備した。
代表的な艦・艦級
- 第二次世界大戦前・戦中
- 第二次世界大戦後
- 護衛通報艦
/
- コマンダン・リヴィエル級フリゲート - フランス海軍
- ジョアン・ベーロ級フリゲート - ポルトガル海軍
- ウルグアイ級フリゲート - ウルグアイ海軍
- コーチニョ級シリーズ
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- ジョアン・コーチニョ級コルベット - ポルトガル海軍
- バッティスタ・デ・アンドラーデ級コルベット - ポルトガル海軍
- デスクビエルタ級コルベット - スペイン海軍, エジプト海軍, モロッコ海軍
- A69型
- デスティエンヌ・ドルヴ級通報艦 - フランス海軍
- ドゥルモンド級コルベット - アルゼンチン海軍
- B型コルベット - トルコ海軍
脚注
注釈
- ^ 「Aviso」はスペイン語・ポルトガル語であり、フランス海軍での名称はそれに由来した固有名詞。
出典
- ^ “NRP Baptista de Andrade”. 2009年2月13日閲覧。 (Portuguese text)
- ^ Miller, David (2004). The Illustrated Directory of Warships: From 1860 to the Present Day. Greenwich Editions. pp. 248–249. ISBN 0-86288-677-5
- ^ A Corveta Portuguesa dos anos 70, Operacional: 2009
参考文献
通報艦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/04 03:36 UTC 版)
「大日本帝国海軍艦艇一覧」の記事における「通報艦」の解説
※最終時の艦種類別には存在しない。通報艦の前型である水雷砲艦を含む 八重山 [I] 千島(水雷砲艦) 龍田 [I](→一等砲艦→雑役船(潜水艇母船)「長浦丸」→潜水艦母艇「長浦」) 宮古 千早 [II](→一等砲艦→雑役船) 淀型:淀(→一等砲艦→砲艦) - 最上 [I](→一等砲艦) 日露戦争戦利艦姉川(←ロシア海軍病院船アンガラ / →ロシアへ返還) 満州(←ロシア商船マンチュリア / →二等海防艦→海防艦) 鈴谷 [I](←ロシア海軍二等巡洋艦ノヴィーク / →二等海防艦)
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