目
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/02/04 07:31 UTC 版)
眼の進化
生物がいつ視覚的な能力を獲得したのかは定かでなく、一説には21億年以上前の単細胞生物が光を感知できたというが定かではない[12]。これは柔らかい構造である目は化石として残りにくいためである。それでも先カンブリア時代以前から、生物は光を捉える表面細胞を備えていたと考えられる。これが爆発的な進化を遂げたのがカンブリア紀(約5億2000万年前)のいわゆるカンブリア爆発である。浅瀬の海を舞台に、視力を持てば捕食のためまたは敵から逃れる上で非常に有利に働く。カンブリア紀は、目が生存に有利な機関として進化と多様化を進めたと考えられ、これを「光スイッチ説」と言う[12]。
チャールズ・ダーウィンは、複雑な目の構造が自然にできあがるという考えは合理的でないように思われると述べたが、それでも自説を放棄せず、目も生物は進化の中で獲得したという説を堅持した[12]。近年のシミュレーションでは、生物の世代交代を1年とした場合、単純な目がカメラ眼に進化するまでに必要な時間は40万年以下という結果も得られた[12]。
進化論にまつわる議論の歴史として、「脊椎動物の複雑な眼の構造の、どれか1つでも要素が欠けると正常な視力が得られないと考えられるとし、また「最初から完全な状態で作られていなければ眼は眼たりえない」、「すると自然選択で有利とならないので、目が発生したことが説明困難」とするような説が、繰り返し指摘され、進化論をめぐる難問のひとつとみなされてきた歴史がある。上記のように最近では「現実には各種動物において様々な型の眼が見られ、それらの性能もまた多様である。高度なものではヒトと同様かそれ以上の情報を提供するとされるものもあり、逆に簡単な明暗程度しかわからないであろうものもある」ともされ、“完全な眼”を想定するのは困難であり、また、不完全な視力では役に立たないとの論旨も根拠を持たないと言える。
注釈
出典
- ^ a b c d e f g h i j k 解剖学第2版、p.148、第9章 感覚器系 1.視覚器
- ^ 解剖学第2版、p.135-146、第8章 神経系 4.末端神経系
- ^ a b c d e f 佐藤・佐伯(2009)、p.245-247、第12章 感覚、2.視覚visual sensation、1)眼球の構造と働き
- ^ "The size of a human adult eye is approximately 24.2 mm (transverse)" Bekerman, et al. (2014) Variations in Eyeball Diameters of the Healthy Adults.
- ^ "Transverse (s-s) 24.156 ± 1.9 Max 26.8 Min 21.5" Bekerman, et al. (2014) Variations in Eyeball Diameters of the Healthy Adults.
- ^ "The average corneal diameter was 11.71 ± 0.42 mm." Rufer et al. (2005). White-to-White Corneal Diameter.
- ^ "males was 11.77 ± 0.37 mm, whereas in females it was 11.64 ± 0.47 mm. ... the mean values of males and females were not significantly different" Rufer et al. (2005). White-to-White Corneal Diameter.
- ^ 医学大辞典(医学書院、ISBN 4-260-13651-8)
- ^ 目の愛護デー(日本眼科医会)
- ^ a b c d e f g h 岩堀修明著、『感覚器の進化』、講談社、2011年1月20日第1刷発行、ISBN 9784062577
- ^ “Scallops’ amazing eyes use millions of tiny, square crystals to see” (英語). Science News (2017年11月30日). 2022年3月31日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t ニュートン (2012-6) p.94-99 知られざる眼のヒストリー
- ^ 佐藤・佐伯(2009)、p.249-251、第12章 感覚、2.視覚visual sensation、3)視覚の性質と調整
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