ウサギ 利用

ウサギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/16 01:33 UTC 版)

利用

狩猟

「野ウサギと子羊の脚」ジャン=バティスト・ウードリーによる油彩(1742年)クリーブランド美術館所蔵[10]

野ウサギは昔から食料や毛皮、遊興などの目的で狩猟の対象とされている。特に欧米では、ウサギのハンティングは文化的なスポーツとして扱われている。

狩猟の際にウサギを追いかけるときは必ず斜面の上から追いかけると有利、逆に斜面を登る形で追いかけると不利とされている。なぜならウサギの身体的特徴として後ろ足が長く前足が短いため、ウサギは上り坂では体の傾き具合が水平になるため坂を上るのに強く、下り坂では前かがみのようになってしまうため坂を下るのは苦手だからである。

上野公園にある西郷隆盛像は、愛犬「ツン」をつれて趣味の兎狩りをしているときの姿である。

食肉

狩猟や養殖によって得られたウサギの肉は、食用として利用されてきた。古代、マンモスなどの大型の獲物が少なくなるにつれ、ウサギを始めとする小型ですばしっこい動物は、人類にとって重要な獲物となっていった。ネアンデルタール人は、このような小さな獲物を狩るための適応が出来なかったため、滅んだとの説がある[11]

ウサギのソテーとリゾット

ウサギは柔らかい食肉となる。ウサギのフィレ・ステーキという料理もあるが、1頭のフィレ部分はホタテ貝の貝柱程度の寸法しかなく数頭分のフィレ肉を使うことになる。挽肉にすると粘着性が高いので、ソーセージプレスハムに結着剤として使われることがある。

日本でも、古来より狩猟対象であり、食用とされてきた。縄文時代貝塚から骨が見つかることはそれを示唆するものであると考えられ、江戸時代徳川将軍家では、正月の三が日にウサギ汁を食べる風習があったという[12][13]日本の獣肉食の歴史#江戸時代および食のタブー#ウサギも参照)。秋田県の一部地域では「日の丸肉」と呼ばれ、旅館料理として出されることがある。この日の丸肉という名称は、一説によると、明治期に日本で品種改良されて定着した白毛に赤目の日本白色種が、あたかも日の丸の色彩を具現化したような動物であったことによるともいわれる。明治期に入り、兎の輸入が始まる。兎の種類は肉用(ベルジアン、バタゴニアン)、毛用(アンゴラ)、毛皮用(ヒマラヤン、シベリヤン)、愛玩用(ロップイヤー、ポーリッシュ、ダッチ)がある。ロップイヤーの平均体重は9(5.4kg)である。また秋田県の一部のマタギには、ウサギの消化器を内容物と共に料理して食べる「スカ料理」が伝わっている[14]

20世紀に入り、一般消費者がスーパーマーケットなどで豚肉や牛肉が手軽に購入できるようになっても、ウサギ肉が単独で店頭に並ぶ例はほぼないが、1960年代には豚挽肉にウサギ肉を混入する事例が横行した。1969年には農林省が原材料を明記するよう業界を指導したことがある[15]

欧州各地でも古来より食用とされ、フランス料理では、伝統的に一般的な料理に使用するラパン(Lapin)リエーヴル(Lièvre)という区別で食肉として愛好されてきた。ラパンはしばしばなどと同様に家禽類として扱われる。背肉から腿肉までが主要部位で、内臓肉としては腎臓、レバーなどを食べる[16]

北米では、ウサギ肉はフライ用(fryer)、ロースト用(roaster)、内臓(giblets)の3等級に分類されている。生後9週まで、体重4.5-5ポンドの肉はフライ用。体重5-8ポンド、月齢8ヵ月までの肉をロースト用と定めている。ロースト用はフライ用よりも肉が硬いとされている。肝臓や心臓なども食用にする。

ユダヤ教では、ウサギは「清くない動物」、すなわち非カーシェールכָּשֵׁר, Kāšēr)とされ、食べてはならない動物に定められている。日本でも一部の地域(埼玉県・群馬県など、後述)において、妊婦が兎肉を食べることを禁忌とする考え方がある(倉林正次 『11日本の民俗 埼玉』 第一法規 1972年 p.158. 武藤典 『群馬のたべもの』 みやま文庫 1979年 p.125.群馬県の俗信では、「妊婦が食すとミツ口=兎口の赤子が生まれる」とされ、食べさせない)。

毛皮

狩猟や養殖によって得られたウサギの毛皮は、服飾品としても利用されてきた。

防寒用として世界各地でその毛皮が用いられてきたほか、一種の装飾用としても用いられる。

また、毛皮としてではなく毛足の長いウサギの毛を羊毛のように刈り取って織物用の繊維として利用することも行われてきた。アジア原産のアンゴラ山羊やアンゴラ兎をつかったモヘヤが知られているが、欧州ではアンゴラウサギ (Angora rabbitという繊維利用専用の品種も作られた。日本でも、明治から太平洋戦争の時代にかけて軍需毛皮を生産する目的からウサギの飼育が盛んになり、日本アンゴラ種という品種が作られた。

西洋では、ウサギの足や尾は幸運のシンボルとして剥製化されて使用される。

ウサギの革を煮込んで得られるは、テンペラ画地塗りに用いられてきた。アクリル絵具が発達した21世紀初頭でもなお、古い絵画の修復に欠くことのできない材料である。

実験動物

家畜化されたアナウサギカイウサギ)が、実験動物として広く使われる(ドレイズ試験)[17][18]

税金

明治時代のウサギブーム」「ウサギバブル」も参照。

日本では明治時代に入り、ウサギの売買や飼育が盛んになったことから、1873年(明治6年)に東京府より「兎取締ノ儀」が布達された。ウサギ一頭につき、1円を科せられ、無許可で飼育すると2円の罰金を科せられた[19]


注釈

  1. ^ 例えば、フランスのベビー&キッズ向け木製玩具メーカーJANOD(ジャノー)や、日本のベビー&キッズ&マタニティ服飾雑貨販売メーカー西松屋など。
  2. ^ 嫦娥を参照。
  3. ^ 続日本紀大宝元年(701年)正月乙亥朔の条に「天皇御大極殿受朝。其儀、於正門樹烏形幢。左 日像、青竜、朱雀幡。右 月像、玄武、白虎幡。」 とある。文武天皇は大極殿で朝賀の挨拶を受け、その儀式では、正門に烏の形をした幢(どう)を立て、左側に日像(じつぞう)、青龍、朱雀の幡(ばん)を立て、右側に月像(げつぞう)、玄武、白虎の幡を立てたというものであった。烏の形をした銅製の飾りのついた長い棒のようなものを立て、その左側に、太陽を表す円盤に三本足の鳥を描いたものをつけた長い棒のようなもの、青龍を描いた板をつけた長い棒のようなもの、朱雀を描いた板をつけた長い棒のようなものの計三本を立て、右側には、月を表す円盤にウサギを描いたものをつけた長い棒のようなもの、玄武を描いた板をつけた長い棒のようなもの、白虎を描いた板をつけた長い棒のようなものの計三本、全部で七本の棒を立てたのである。
  4. ^ 一方ノウサギの発情期は春先から秋であり、発情の始まった3月頃のオスのウサギが落ち着かなくなる様を指して「三月ウサギ」というイギリスのことわざが生まれた。
  5. ^ ウサギには“快活で、遊び心や茶目っ気がある”というイメージから、「ユーモラスであり、セクシーさの象徴」としてウサギをマスコットに選んだと、マークをデザインしたデザイナーは語っている[要出典]

出典

  1. ^ subfamily Leporinae Trouessart 1880 (rabbit)” (英語). fossilworks. 2019年5月19日閲覧。 - Paleobiology Database
  2. ^ a b 今泉吉晴 (2009), “ウサギ”, in 下中直人, 世界大百科事典, 2009年改定新版, 平凡社 
  3. ^ 兎・兔(う)とは”. 大辞林 第三版(コトバンク). 2017年10月25日閲覧。[出典無効]
  4. ^ フランク・B・ギブニー, ed. (1993), “ウサギ”, ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典, 第2版改訂版, ティービーエス・ブリタニカ 
  5. ^ 山本脩 (1993), “ウサギ”, in フランク・B・ギブニー, ブリタニカ国際大百科事典, 第2版改訂版, ティービーエス・ブリタニカ 
  6. ^ 繁殖 ウサギについて”. 岩崎動物病院. 2017年10月25日閲覧。
  7. ^ 2.ウサギの生理・解剖 (PDF)”. エキゾチックペットクリニック. p. 7. 2017年10月25日閲覧。
  8. ^ a b Evidence of rabbits in UK in Roman times, say academics(BBC)
  9. ^ 24匹が8億匹に! ウサギで豪大陸を侵略した英国人”. ナショナルジオグラフィック日本版. 2021年5月3日閲覧。
  10. ^ Jean-Baptiste Oudry (1742年). “A Hare and a Leg of Lamb”. クリーブランド美術館. 2019年5月19日閲覧。
  11. ^ “ネアンデルタール人、兎が狩れず絶滅?”. ナショナルジオグラフィック. (2013年3月12日). http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/7690/ 2016年6月13日閲覧。 
  12. ^ レファレンス事例詳細(Detail of reference example) ウサギを一羽、二羽と数えるのはなぜか。[1]
  13. ^ 探検コム ウサギ文化史[2]
  14. ^ 太田雄治 『秋田たべもの民俗誌』秋田魁新報社、1972年、37-42頁。 NCID BN11283886 
  15. ^ 「ヒキ肉に原料名を 農林省ウサギ入りで通達」『朝日新聞』昭和44年(1969年)9月5日朝刊、12版、15面
  16. ^ 辻調グループ辻静雄料理教育研究所 2012, pp. 153–156
  17. ^ 化粧品の動物実験とは”. 2020年9月18日閲覧。
  18. ^ 美しさのために失明させられるウサギたち”. 2020年9月18日閲覧。
  19. ^ 高嶋修一「明治の兎バブル(石井信之名誉教授記念特集号)」『青山經濟論集』第64巻第4号、青山学院大学女子短期大学、2013年3月、 13頁、2017年10月25日閲覧。
  20. ^ 動物を犠牲にしない代替法”. 2020年9月18日閲覧。
  21. ^ 2014年5月13日放送『有吉弘行のダレトク!?
  22. ^ 昭和20年代/250余年のあゆみ(歴史)”. エスエス製薬. 2017年10月25日閲覧。
  23. ^ 協会の活動・事業内容・組織図”. 公益社団法人 全日本不動産協会. 2017年10月25日閲覧。
  24. ^ East 2007, p. 66
  25. ^ ウサギは寂しいと死んじゃうって本当?「ウソ。ただし12時間以上絶食で胃腸の動きが停滞」 - マイナビウーマン、2013年9月17日
  26. ^ a b うさぎは寂しいと死ぬって本当?なぜそう言われるようになったの?/毎日雑学 - ダ・ヴィンチニュース、2021年1月3日
  27. ^ ウサギは寂しいと死んじゃう・・・というのは都市伝説?!むしろ構われすぎる方が嫌い?”. 2021年6月6日閲覧。
  28. ^ 兎に角(とにかく)- 語源由来辞典”. Lookvise.Inc. 2017年10月25日閲覧。
  29. ^  孫武. 孫子兵法#九地第十一. - ウィキソース. 
  30. ^ 兎角|生活の中の仏教用語|読むページ”. 大谷大学. 2017年10月25日閲覧。
  31. ^  劉向. 戰國策/卷11. - ウィキソース. 
  32. ^  司馬遷. 史記/卷092. - ウィキソース. 
  33. ^  韓非. 韓非子/內儲說下六微. - ウィキソース. 
  34. ^  韓非. 韓非子/五蠹. - ウィキソース. 
  35. ^ 飯野 2010
  36. ^ 山城智洋. “カランコエ 月兎耳”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2022年8月23日閲覧。






ウサギと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「ウサギ」の関連用語

1
100% |||||

2
100% |||||

3
100% |||||

4
100% |||||

5
98% |||||


7
98% |||||

8
98% |||||

9
98% |||||

10
98% |||||

ウサギのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



ウサギのページの著作権
Weblio 辞書情報提供元は参加元一覧にて確認できます。

  
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのウサギ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS