安西水丸とは? わかりやすく解説

あんざい‐みずまる〔‐みづまる〕【安西水丸】

読み方:あんざいみずまる

19422014イラストレーター作家・漫画家東京生まれ本名渡辺昇都会的温かみのある画風人気集めた村上春樹との共著村上朝日堂シリーズでも知られる。他に、小説アマリリス」、漫画青の時代」、絵本「がたんごとんがたんごとん」など。


安西水丸

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/07 06:17 UTC 版)

安西 水丸(あんざい みずまる、本名:渡辺 昇(わたなべ のぼる)、1942年7月22日 - 2014年3月19日)は、日本のイラストレーター漫画家エッセイスト作家絵本作家、風俗評論家。 日本スノードーム協会会長。

来歴

東京都港区赤坂生まれ。7人兄弟の末っ子で姉が5人いた。一番上の姉とは7つ離れている。生家は祖父の代から建築設計事務所を営んでいた[1]

1945年、重い喘息を患い、母の郷里である千葉県千倉町(現・南房総市)に移住[1]。幼少期を千倉で暮らす。その頃の体験や思い出は、初期の漫画作品、エッセイ、小説など多くの作品に登場している。「千倉」は彼にとって重要なキーワードとなっており、すべての心象のルーツであるように描かれている。

1949年、千倉町立七浦小学校に入学[1]。1961年、日本大学豊山高等学校卒業。日本大学藝術学部美術学科造形コースに入学。1965年、同大学を卒業。

電通アートディレクターとして就職。1969年、同社を退社して渡米。現地でADアソシエイツ(N.Y.のデザインスタジオ)に就職[2]

1971年、帰国。平凡社のADとなり、そこで当時雑誌『太陽』の編集をしていた嵐山光三郎に誘われたのをきっかけに、デザイナーからイラストレーターへと転向。ペンネームの「安西」は、嵐山から「あ」がつく名前がいいと言われ、祖母の苗字「安西」から取った。また「水丸」は、子どもの頃から「水」という漢字が好きだったことから。

また、嵐山の紹介で、『ガロ』等で多数の漫画も発表していた。

1979年、「パレットクラブ」発足。メンバーは、ペーター佐藤原田治、当時「ポパイ」のアートディレクターの新谷雅弘の4人。パレットクラブから派生した東京築地にあるイラストの学校「パレットクラブ・スクール」に於いては、講師にも就いている。※講師としては、東京築地のパレットスクールより京都のインターナショナル・アカデミーのイラスト教室が先である。メンバーはパレットクラブの4人で、ペーター佐藤は講師に就いていた当時に逝去。

1981年、安西水丸事務所を設立し、本格的にフリーのイラストレーターとなる。その後イラストレーターと平行して日藝の講師を1991年から2003年まで務める。

1987年3月、エッセイ集『青インクの東京地図』を刊行。以降、エッセイや小説、風俗体験記も発表する。小説の代表作に『メランコリー・ララバイ』『バードの妹』『アマリリス』など。

1989年、『キネマ旬報』に連載した「シネマ・ストリート」により、キネマ旬報読者賞を受賞する。

2005年、東京イラストレーターズ・ソサエティの理事長に就任。

2013年1月、個展「1984 〜 2013 vol.1 : MIZUMARU ANZAI ORIGINAL WORKS」と「1987 〜 2013 vol.2 : MIZUMARU ANZAI SILK SCREENS」をスペースユイにて開催。

2014年3月17日、神奈川県鎌倉市にて執筆中に倒れ、病院に搬送されて治療を受けていたが、3月19日の21時7分、脳出血のために死去した[3]。71歳没。

同年8月19日、玄光社よりムック『イラストレーション緊急増刊 安西水丸 青空の下』が刊行される。

同年10月17日から11月20日まで、「安西水丸展」が銀座のクリエイションギャラリーG8で開かれる[4]

エピソード

  • 村上春樹の小説にたびたび登場する「渡辺昇」あるいは「ワタナベノボル」は、安西水丸の本名が元となっている[6][7]
  • スノードームのコレクターとしても知られる。「日本スノードーム協会」会長(事務局長:百瀬博教)であり、コレクションを本にしている。また、ブルーウィローの絵柄の陶器もコレクションしている。
  • 自身をフェミニストと称したが、性風俗遊びを本にして出版したので、首を傾げる向きもある。

著書

  • 『ピッキーとポッキー』(あらしやまこうざぶろう, あんざいみずまる、福音館書店) 1976.3
  • 『安西水丸ビックリ漫画館』(ブロンズ社) 1977.5
  • 『ふりかえりおじさん』(あんざいみずまる、コーキ出版) 1979.11
  • 『ピッキーとポッキーのかいすいよく』(あらしやまこうざぶろう, あんざいみずまる、福音館書店) 1980.8
  • 『ハナクロ探検隊』(けいせい出版) 1981.4
  • 『バスにのりたかったおばけ』(あんざいみずまる、好学社) 1981.7
  • 『東京エレジー』(青林堂) 1982.5
  • 『普通の人』(JICC出版局) 1982.12
    • 『平成版 普通の人』(南風社) 1993.4
    • 『完全版 普通の人』(クレヴィス) 2021.8
  • 『食卓のプラネタリウム』(山本益博、安西水丸画、講談社) 1984.5
  • 『のりものおばけのんのん』(矢玉四郎、安西水丸え、PHP研究所) 1984.9
  • 『新日本漫遊記』(松木直也、安西水丸画、CBS・ソニー出版) 1984.11
  • 『水玉全集』(小玉節郎、安西水丸絵、JICC出版局) 1985.3
  • 『安西水丸vs.奥村靫正』(安西水丸, 奥村靫正共著、小学館) 1985.10
  • 『東京こちょこちょ物語』(松木直也、安西水丸画、若林出版企画) 1985.10
  • 『ぷーぷーぷー』(嵐山光三郎、安西水丸絵、あすなろ書房) 1986.10
  • 『青インクの東京地図』(講談社) 1987.3
  • 『青の時代』(青林堂) 1987.4
  • 『がたんごとんがたんごとん』(福音館書店) 1987.6
  • 『春はやて』(筑摩書房) 1987.12
  • 『黄色チューリップ』(角川書店) 1988.6
  • 『アマリリス』(新潮社) 1989.6
  • 『青山の青空』(PHP研究所) 1989.8
  • 『70パーセントの青空』(角川書店) 1989.10
  • 『シネマ・ストリート』(キネマ旬報社) 1990.2
  • 『Mysteric restaurant A to Z』(架空社) 1990.7
  • 『朱色の島バリ』(稲越功一, 安西水丸、扶桑社) 1990.8
  • 『冬の電車』(徳間書店) 1990.10
  • 『手のひらのトークン』(新潮社) 1990.10
  • 『リヴィングストンの指』(マガジンハウス) 1990.10
  • 『エンピツ絵描きの一人旅』(新潮社) 1991.10
  • 『十五歳のボート』(平凡社) 1992.3
  • 『エンピツ画の風景』(日本文芸社) 1993.7
  • 『シネマ・ストリート part2』(キネマ旬報社) 1993.9
  • 『荒れた海辺』(新潮社) 1993.12
  • 『草のなかの線路』(徳間書店) 1994.1
  • 『ガラスのプロペラ』(誠文堂新光社) 1994.4
  • 『空を見る』(PHP研究所) 1994.7
  • 『町の誘惑』(安西水丸, 稲越功一、宝島社) 1994.9
  • 『ぼくの映画あそび』(広済堂出版) 1995.3
  • 『ストローハウスからの手紙』(毎日新聞社) 1995.5
  • 『丘の上』(文藝春秋) 1995.11
  • スノードーム』(安西水丸, 百瀬博教、日本スノードーム協会) 1996.2
  • 『青山の青空 2』(清水書院) 1996.4
  • 『普通の食事』(山本益博, 安西水丸、マガジンハウス) 1996.9
  • 『アトランタの案山子、アラバマのワニ』(安西水丸文、小平尚典写真、小学館) 1996.8
  • 『スケッチブックの一人旅』(JTB) 1997.11
  • 『青山へかえる夜』(マガジンハウス) 1998.1
  • 『カレーを食べに行こう』(安西水丸とカレーの地位向上委員会編、平凡社) 1998.3
  • 『メランコリー・ララバイ』(日本放送出版協会) 1998.5
  • 『夜の草を踏む』(光文社) 1998.7
  • 『ぼくのいつか見た部屋』(KSS出版) 1998.8
  • 『バードの妹』(平凡社) 1998.9
  • 『たびたびの旅』 (フレーベル館) 1998.10
    • 『たびたびの旅』(田畑書店) 2022.7
  • 『安西水丸の二本立て映画館』 前・後篇(朝日新聞社) 1998.11
  • 『安西水丸が見た建設の世界』(安西水丸, 増田彰久大成建設広報部) 1999.3
  • 『三月の魚 岸田ますみ画集』(岸田ますみ画、安西水丸詩、新潮社) 1999.8
  • 『ニッポン・あっちこっち』(家の光協会) 1999.11
  • さるとかに 日本昔話』(蘭巴文、安西水丸絵、小学館) 2000.3
  • 『4番目の美学』(心交社) 2000.6
  • 『東京美女 2』(小沢忠恭写真、安西水丸文、モッツ出版) 2000.7
  • 『おんなの仕種』(中央公論新社) 2001.3
  • 『メロンが食べたい』(実業之日本社) 2001.10
  • 『魚心なくとも水心』(ぴあ) 2002.3
  • 『サボテンの花』(実業之日本社) 2002.6
  • 『美味しいか恋しいか』(光文社) 2002.8
  • 『No idea』(安西水丸, 和田誠、金の星社) 2002.10
  • 『青豆とうふ』(安西水丸, 和田誠、講談社) 2003.9
  • 『あげたおはなし』(中山千夏ぶん、安西水丸え、自由国民社) 2005.5
  • 『彼はメンフィスで生まれた アメリカン・ジャーニー』(安西水丸文、小平尚典写真、阪急コミュニケーションズ) 2005.7
  • 『クッキーのおべんとうやさん』(ポプラ社) 2005.7
  • 『テーブルの上の犬や猫』(安西水丸, 和田誠、文藝春秋) 2005.7
  • 『りんごりんごりんご・りんごりんごりんご』(主婦の友社) 2006.1
  • 『クッキーのぼうしやさん』(ポプラ社) 2006.1
  • 『おばけのアイスクリームやさん』(教育画劇) 2006.6
  • 『大衆食堂へ行こう』(朝日新聞社) 2006.8
  • 『はるのどきどきマジック! きむらゆういちのしかけクイズえほん』(きむらゆういち作、安西水丸絵、教育画劇) 2007.2
  • 『おさるのケーキやさん』(教育画劇) 2007.6
  • 『水丸劇場』(世界文化社) 2014.6
  • 『ちいさな城下町』(文藝春秋) 2014.6、のち文春文庫 2016.11月
  • 『イラストレーション緊急増刊 安西水丸 青空の下』(玄光社) 2014.8
  • 『地球の細道』(エーディーエー・エディタ・トーキョー) 2014.8
  • 『東京美女散歩』(講談社) 2015.3
  • 『イラストレーター 安西水丸』(クレヴィス) 2016.6
  • 『嵐山光三郎セレクション 安西水丸短篇集 - 左上の海』(中央公論新社) 2016.6
  • 『鳥取が好きだ。 - 水丸の鳥取民芸案内』(河出書房) 2018.5
  • 『青の時代』(クレヴィス) 2021.4
  • 『一本の水平線 安西水丸の絵と言葉』(クレヴィス) 2022.8
  • 『安西水丸 東京ハイキング』(淡交社) 2023.5
  • 『安西水丸が遺した最後の抒情漫画集 陽だまり』(講談社ビーシー) 2023.8
  • 『1フランの月』(小学館) 2024.3

村上春樹との共著

村上春樹の短編小説「中断されたスチーム・アイロンの把手」が収録されている。

翻訳

  • 『ハリーズ・バー 世界でいちばん愛されている伝説的なバーの物語』(アリーゴ・チプリアーニ、にじゅうに) 1999.2
  • 『真夏の航海』(トルーマン・カポーティ、ランダムハウス講談社) 2006.9

脚注

  1. ^ a b c 村上春樹、安西水丸『夢のサーフシティー』朝日新聞社、1998年7月。「安西水丸の宝箱」ホームページ展より。
  2. ^ 『イラストレーション緊急増刊 安西水丸 青空の下』玄光社、2014年8月、110-111頁。
  3. ^ “安西水丸さん死去 イラストレーター・作家 71歳”. 朝日新聞. (2014年3月24日). http://www.asahi.com/articles/ASG3S44BRG3SUCFI005.html?iref=comtop_6_02 2014年3月24日閲覧。 
  4. ^ 安西水丸展 リクルートの2つのギャラリー
  5. ^ 『夢のサーフシティー』に収録された対談のタイトルは「南青山『愛人カレー』対談」。『スメルジャコフ対織田信長家臣団』に収録され対談のタイトルは「『人妻・愛人スポーツクラブ』対談」。
  6. ^ 和田誠『仕事場対談―和田誠と27人のイラストレーター』河出書房新社、2001年12月。
  7. ^ 安西の本名である「渡辺昇」が村上春樹の小説に使われたのは以下の8作品。「象の消滅」、「ファミリー・アフェア」、「双子と沈んだ大陸」、「ねじまき鳥と火曜日の女たち」、「中断されたスチーム・アイロンの把手」、そしてショートショート集『夜のくもざる』に収められた「鉛筆削り (あるいは幸運としての渡辺昇①)」、「タイム・マシーン (あるいは幸運としての渡辺昇②)」、「タコ」。

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