再生可能エネルギー 実用性に関する議論

再生可能エネルギー

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/06/05 03:23 UTC 版)

実用性に関する議論

再生可能エネルギーは温室効果気体を排出せずにエネルギーが得られるものが多く、新しいエネルギー源として、また地球温暖化への対策としても有効とされる。

設備の製造・稼動・管理・修理・廃棄や燃料の運搬などにはエネルギー(電力燃料等)を投入する必要があり、その過程で温室効果気体もある程度排出されるが、それら全てを考慮した上で

  • 設備が寿命を迎えるまでに生み出すエネルギーの方がどれだけ大きいか(エネルギー収支またはエネルギー収支比)
  • 化石燃料等に比して、生み出すエネルギー量あたりの温室効果気体の排出量がどれだけ少なくなるか

という点が性能を論ずる時に評価対象となり、多くがその有効性を認められている(スターン報告IPCC第4次評価報告書を参照)。

利用に当たっては、枯渇性エネルギー源とも比較して

  • 価格
  • 入手性
  • 安全性
  • 信頼性
  • 稼働率
  • 保守性
  • 供給の安定性(随意性)
  • 利用可能な国や地域、気候
  • 場所(冷却水の確保できる場所、日照や風況の良い所など)
  • 排出物(排気・排水・排熱、廃棄物など)、リサイクル性
  • 騒音、振動
  • 用途との整合性
  • 規模
  • 寿命
  • 建設や廃棄にかかる時間
  • 将来の見通し(価格変動や供給可能量、性能向上など)
  • 産業としての可能性

など、様々な点が評価の対象となり、性能の一部として論じられる場合もある。[50]

エネルギー収支

電力などのエネルギーを生産するための設備(タービン、発電機など)の製造・建設(原料採鉱、精製、土木工事など)や、解体・廃棄などを含めた投入エネルギーの「元が取れる」までの期間や、投入エネルギーに対する出力エネルギーの比率で性能を評価する目的で下記の指標が用いられる。

  • エネルギーペイバックタイム (Energy Payback Time:EPT)…出力エネルギーによって、投入されたのと同量のエネルギー消費を回避できるまでの時間で定義される。設備寿命に対してこれが短いほど性能が良いとされる。
  • エネルギー収支比 (Energy Payback Ratio:EPR)…一般的には(発電などにより回避される投入エネルギー)/(投入するエネルギー)で定義される。大きいほど性能が良いとされる。

上記のEPTやEPRは下記のような要因に影響を受ける。

  • 資源の分布状況…日照、風況、燃料作物の生産性、高温熱源の位置や種類(地熱)など
  • 設備の技術水準
  • 生産・流通・利用の規模…一般に、普及規模が大きくなるほど性能が向上する。
  • 設備等のリサイクル状況
  • 想定されている稼働率

現在実用化されているものでは、化石燃料以上の性能を持つものが多くあると見られている[54]。特に風力発電は性能が高く、EPTは1年未満とされる[55]。普及や技術開発が進むにつれ、この10~20年程度で数倍~十数倍変化しているものもある(例:[56])。

一部のバイオマス燃料など技術が未成熟なものでは、EPTやEPRで見た性能が低いものもあるとされる。[要出典]

計算条件を変えるなどして、他の検証可能な調査結果に比べて大幅に低い性能値を主張する例も見られる[57]。しかしこうした主張には信頼性のある出典が見当たらず、専門機関からも何らかの誤解に基づくものと指摘されている[58]

温室効果気体の排出量

製造や運搬、稼動、保守、廃棄などの際、エネルギー源や原材料の一部として化石燃料等が利用されることで、ある程度の温室効果気体の排出がある。この排出量は、主に設備(発電設備など)の製造・設置・稼動・保守・廃棄などで決まるものが多い。バイオマス燃料の場合、燃料の製造・運搬時の排出量が大きい(バイオマス燃料そのものからの炭素の排出については、燃料の育成時に環境中から二酸化炭素として吸収されるため、その分はカーボンニュートラルとみなされる)。

温室効果気体の排出量を生み出すエネルギー量あたりに換算して化石燃料等に比して十分に少ないかどうかが評価の対象となる。指標としては下記のようなものが用いられる。

  • 発電量あたりの温室効果気体排出量(発電の場合)…ライフサイクル中に排出される全ての温室効果気体を二酸化炭素または炭素量に換算して、g-CO2/kWh や g-C/kWh で表される(12g-C/kWh = 44g-CO2/kWh)。これが少ないほど性能が良い。
  • CO2ペイバックタイム (CO2 Payback Time:CO2PT)…化石燃料などと比較して全体的に温室効果気体の排出量が少なくなるまでの利用期間を言う。これが短いほど性能が良い。

温室効果気体の排出量もエネルギー収支同様に資源の分布状況、普及規模や技術水準の影響を受ける。 また、製造等に必要なエネルギー源や原材料を温室効果気体の排出量が少ないものに転換すると、さらに温室効果気体の排出量が減少するとされる。

出力の安定性

再生可能エネルギーの中でも風力発電太陽光発電は出力が不随意に変動するため、大規模な電力需要を賄うためには変動を抑制するための平準化手段が必要とされる。発電設備側の調整が不十分な場合に限られるが仮に系統側が変動を吸収しきれなければ、電圧や周波数の規定外の乱れや、最悪の場合は停電に繋がる場合が想定される。その一方、電力系統に接続できる限界容量の予測には不正確な見積もりや非現実的な想定が意図的に為されている場合が広く見られる(起きないとするものから数%と見積もっているものなどがある)([50]P.254、P.261など)。適切な対応を取れば、需要の数割程度の電力を問題なく供給可能とされる[59][60]。例えばデンマークでは2006年時点で国の電力の20%を風力発電で賄っており、さらに増やす予定である[61]。またスペインで風力発電による供給割合が瞬間的な需要の4割、数日間の平均でも約28%に達した例[62]など、既に多くの報告がある[59]

不随意に変動する電源を効率的に利用するために、下記のような制度的・技術的な工夫が実用、または開発されている。

  • 他の発電方法の小規模発電設備と連携する
    • マイクログリッド等
  • 制度的に発電量の1割程度までの天然ガス火力発電等の組み合わせを認め、供給の安定度に応じて電力の買い取り価格を優遇する([63]P.51-52)
  • 系統設備を強化する
    • 逆潮流への対応等
  • 設備側である程度の蓄積・蓄電をする(揚水・蓄熱・加圧等による蓄積、バッテリー・フライホイール等による蓄電等)
  • 需要側で需給バランスの平準化を図る
    • 電力単価の時間別調整
    • ピークシェービング(ピークカット)[64]、夜間電力の活用など)

電力供給に占める火力発電の割合の減少、太陽光発電風力発電などの変動する電源やマイクロ水力などの分散型電源の割合の増加、電気自動車などによる需要の変化に合わせて、電力系統の情報化や送電網の強化、蓄電池の追加などの系統側での対策を用いることが検討されている[要出典]。 こうした対策には相応のコストがかかる。風力発電の出力変動発電量の10%程度までは問題にならないが、20%を超えるとコストが顕著に増えてくるとされる。どの技術をどう用い、どれだけの不随意電源を導入するのが適切なのか、各国で検討が進められている。ドイツの金属産業連盟とベルリン工科大学による試算の場合、再生可能エネルギー導入に伴う間接経費は2020年で1kWhあたり0.6~0.7ユーロセントになると予想している[65]

日本でも導入に伴う影響や費用負担の検討が始まっている[66]。系統安定化の費用は日本全体で2030年までの合計で数兆円の単位になるとみられ、蓄電池や配電対策を含めた様々な形態が検討されている。たとえば資源エネルギー庁は電事連の試算の1.2~1.5倍の容量の蓄電池を導入を仮定し、この場合の費用を5兆円前後と試算している[67]

貯水式の水力バイオマスなど再生可能な燃料を用いた火力発電地熱発電などでは任意に出力を制御できる。また、太陽熱利用(太陽熱温水器など)や太陽熱発電の場合、蓄熱によって出力をより柔軟に制御可能である。

設備の信頼性

大規模集中型のエネルギー設備はシステムが複雑になるため、計画外の停止が発生する確率が高くなり、また老朽化の影響も大きくなりやすいとされる([50]P.42など。原子力発電所などでも比較的高い稼働率は可能[68])。小規模分散型の再生可能エネルギー設備は計画外停止の確率でみた信頼性が高くなり、老朽化の影響も少なくなる。上手に設計された数百~数千kW規模の風力発電所や太陽光発電所においては、100%近い稼働可能率も記録されている([50]P.241)。

供給コスト

各種発電所の設備容量あたりの建設単価(2010年)[69]
各種発電所の設備容量あたりの建設単価予測 (2050年)[69]
各種発電所の設備容量あたりの運転・保守費予測 (2050年)[69](再生可能エネルギーが普及して、化石燃料が現在よりむしろ安価になった場合の予測)

一般に、再生可能エネルギーの発生エネルギーあたりの費用(コスト)は既存の枯渇性エネルギーよりも高価なものが多い。しかし適切な普及促進政策により、許容できるコストで相当量を導入することも可能とされる。水力バイオマス地熱などは昔から実用されており、新しい技術も加わってそれぞれ利用形態が多様化している。風力発電バイオマス太陽光発電等の主立ったエネルギー源は、条件の良いところでは既に枯渇性エネルギーとコストで並び始めており[70]、今後もさらに競争力を増すと見られている。

今後の予想

再生可能エネルギーの開発普及状況は各国の政策等に大きく左右される。積極的に開発を続けた場合、枯渇性エネルギーと同等もしくはそれより安価なエネルギー源になると見ている。図にIEAによる電力コストに関する比較と楽観的予測 (BLUE Map) の例を示す[69]太陽光発電のコスト風力発電#費用対効果等も参照)。

コストが設備の価格に大きく左右されるエネルギー源(風力発電太陽光発電太陽熱発電など)の場合、市場規模の拡大に従ってコストが低減することが知られており、将来のコストの予測は比較的容易である([63]P.96, [71]など)。また一般にこうしたエネルギー源では、原油やウランなどの枯渇性エネルギーに比べてコストの不規則な変動も緩やかであり、コストの変動による財務リスクが小さくなる[50]

生産規模の拡大や新技術の投入を促すため、コスト低減に当たっては市場規模の拡大が重要視される。その一方で枯渇性エネルギーには供給安定化などを目的として直接・間接的に多額の公金が投入され、再生可能エネルギーのコスト的な競争力を削いでいる[63]。導入に際してはこの障壁を越えるためのコストが追加される場合が多いが、後述のfeed-in tariff (FIT) 制を用いて市場拡大に力を入れたドイツの場合、FITのコストを含めても、許容範囲内のコストで2020年までに電力の25%を再生可能エネルギーで賄うことが可能と見ている[72]

助成と経済効果

再生可能エネルギーの普及にあたっては、既存エネルギーに対するコストや技術面での不利の克服のため、国際的に何らかの助成が必要とされている[73]。欧州各国を対象とした分析では、この助成費用は既存産業に対してある程度の雇用減少の影響を与える[74]と同時に、再生可能エネルギーは運用・保守時における発電・発熱量あたりの雇用数が既存のエネルギー源に比べて大きいため[75]、全体的には雇用を増やせると見積もられている[74]。また各種再生可能エネルギーの中では、特にバイオマスが雇用創出効果が大きく[75][76]、地方の雇用確保にも大きく貢献し得ると指摘している[76]。。ドイツにおいては2009年時点でEEG法により年53億ユーロの費用をかける一方、204億ユーロの投資、設備設置で171億ユーロの付加価値、設備の運転で375億ユーロの付加価値を誘発している[77]。また2009年時点で、関連産業による雇用創出は30万人を超えている[78]

日本における普及費用と経済効果の試算は、環境省が行っている[79]。2020年までに年間5,824~8,358万t-CO2の排出量削減に相当する再生可能エネルギーを導入した場合、2011~2020年の間、系統対策費用や化石燃料火力発電への影響を含めて年平均で3.3~4.4兆円を投資する必要があると試算している[80]。その代わりに、生産誘発額が9.1~12.2兆円、直接投資を除く粗付加価値額が2.5~3.4兆円、雇用創出が45.8~62.7万人、エネルギー自給率が10~13%に向上(2005年は5%)等の便益が得られると見積もっている[80]




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注釈

  1. ^ 日本語の「再生可能」という語は、英語の「renewable」を翻訳してつくられた語である。日本語の「再生」には「リサイクル」の意味もあるため、「renewable」を「再生」と翻訳したことについて疑問を呈する者もいる[3][4][5]。しかし、原語の語に「リサイクル可能」の意味は無く[6]、その訳である「再生可能」も「リサイクル可能」の意味ではない。「森が再生する」のように、(自然環境等が)「更新できる、復活できる」等の意味で用いられる[6]
  2. ^ 再生可能エネルギーの割合を増やし、資源が偏在する化石燃料への依存を減らす事は安全保障の観点からも望ましい。
  3. ^ 機器が稼働できる状態の割合。実際に稼動する状態の割合を示す設備稼働率とは異なる。

出典

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  19. ^ 「前二号に掲げるものを除く。」として、「地熱」と「太陽熱」以外の自然熱である。
  20. ^ 「法第2条第2項に規定する化石燃料を除く。」として、「化石燃料(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される燃料(その製造に伴い副次的に得られるものであって燃焼の用に供されるものを含む。)」を除いている。
  21. ^ なお、電気事業者による再生可能エネルギー電気の調達に関する特別措置法2条4項各号のように、「太陽光」「風力」「水力」「地熱」「バイオマス(動植物に由来する有機物であってエネルギー源として利用することができるもの(原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品を除く。)をいう。)」「前各号に掲げるもののほか、原油、石油ガス、可燃性天然ガス及び石炭並びにこれらから製造される製品以外のエネルギー源のうち、電気のエネルギー源として永続的に利用することができると認められるものとして政令で定めるもの」として、政策的な理由から、限定的に列挙定義する例もある。
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  149. ^ 炭素税は対策として有効か?(国立環境研究所によるコラム)
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