エネルギー収支比とは? わかりやすく解説

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エネルギー収支比

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/08 13:33 UTC 版)

EROIのグラフ

エネルギー収支比(エネルギーしゅうしひ、Energy Payback Ratio, Energy Profit Ratio, EPR, Energy Return on Investment, EROI, Energy Returned on Energy Invested, EROEI)とは、発電発熱などのエネルギー生産設備の性能を表す指標の一種である。エネルギー投資効率とも呼ばれる。

概要

発電所などのエネルギー設備において、電力などのエネルギーを生産するには、資源の調達(採鉱、運搬など)や、設備(タービン、発電機など)の製造・建設や解体・廃棄などのためにエネルギーを投入する必要がある。こうした投入エネルギーに対して、そのエネルギー設備からのどれだけのエネルギーが生産されるかを「生産エネルギー / 投資エネルギー」の倍率で示したものがエネルギー収支比である[1][2]。当然、この値が大きくなるほどエネルギー設備としての性能が良いことを示す[1]

後述するように、投資エネルギーをどこまで考慮するかでEPRにはある程度揺らぎが発生するが、近年の発電施設のEPRは概ね以下の値程度と言われている[3][4] [5] [6][要検証][7][8]

発電方式 資源・要因 EPR 備考
原子力 ウラン 10~76 時間の経過に伴う下降は無い。発電所の事故リスクへの対応を投資エネルギーに加えるとEPRは激減する[要出典]
火力 石油、石炭 5~25 時間の経過と共にEPRは下降する。発見直後の油田の石油の場合は100を越えることも珍しくない。
天然ガス、LNG 2~4 時間の経過と共にEPRは下降する。シェールガスは地域によっては10を超えることもある。
水力 10~50 時間の経過に伴う下降は無い。
風力 5[要検証]~54 時間の経過に伴う下降は無い。
太陽光 太陽光 10~21 時間の経過に伴う下降は無い。最新の技術ではEPRは10数倍~30倍程度に達すると見積もられている。

なお、風力や太陽光などの再生可能エネルギーのエネルギー収支比に関しては、一部の主張において、結果が不利になるような値(ライフサイクルアセスメントで一般的に定義されている値)が計算に使われているとの指摘もある[9][8]

投入エネルギーの考慮範囲

投入するエネルギーの考慮範囲は、下記のような点で異なる場合がある[1][2]

  • 運用中のある時点までの収支をみるか、ライフサイクル全体を見るか
  • 運転用の燃料を含めるかどうか(枯渇性エネルギー源の場合)

投入エネルギーの算出方法

投入エネルギーの算出方法としては、積み上げ方式と、産業連関分析の2通りの手法がある[1]

二次エネルギーの換算

エネルギー生産設備から産出されるエネルギー(電力や水素)を二次エネルギーと呼ぶが、投入エネルギーには一次エネルギーと二次エネルギーの両方が含まれる。二次エネルギーをそのままもちいるか、一次エネルギーに換算してもちいるかでエネルギー収支分析の結果は異なる[1]

一次もしくは二次に揃える場合

発電設備の分析では通常[9]、二次エネルギー(電力)はその国の電力事情を反映した換算係数を用いて、すべて一次エネルギーに換算して計算される(例:[1])。発電量あたりの一次エネルギー(燃料)の投入量や、火力発電に対する化石燃料の節約量などを比較的正確に評価でき、再生可能エネルギー源と枯渇性エネルギー源の比較などに用いられる[3]

この定義の場合は、一般的にライフサイクルアセスメントで用いられる[9]エネルギーペイバックタイムとも互換性を持つ。投入エネルギーの算出の際にライフサイクル全体を考慮(#投入エネルギーの考慮範囲を参照)すれば、EPRとエネルギーペイバックタイム(EPT)との関係は EPR = (想定寿命)/EPT で表される[2]

一次と二次を区別しない場合

換算基準を揃えず、一次/二次エネルギーの別を考慮せずに出力エネルギーを入力エネルギーで除算する例も見られる。入力と出力のエネルギー量を単純に比較する方法である。二次エネルギー(電力)を得るには通常その数倍の量の一次エネルギー(熱)が必要なため、同じエネルギー量でも実際に消費する一次エネルギーの量が異なるが、この方法では電力も等価に扱う。このため、一次もしくは二次エネルギーに揃えて計算した場合と比べて下記のような違いが生じる[1][9]

  • 発電量あたりの燃料の投入総量や、燃料の節約効果を正確に比較できない。
  • 投入エネルギーに占める二次エネルギーの割合が多ければ有利、少なければ不利となる。
  • 化石燃料の節約手段としての評価の場合、実際には節約になるものでもEPR<1と算出される場合がある。
  • 熱よりも電力の方が価値が高いことが計算に反映されない。

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ a b c d e f g 内山洋司、山本博巳、発電プラントのエネルギー収支分析、電中研報告書 No.Y90015
  2. ^ a b c EPT/EPRの定義産業技術総合研究所
  3. ^ a b 再生可能エネルギー源の性能産業技術総合研究所
  4. ^ 太陽光発電のエネルギー収支(一般財団法人 高度情報科学技術研究機構)
  5. ^ 再生可能エネルギー源の性能産業技術総合研究所
  6. ^ 天野治 「石油ピーク後のエネルギー EPRから資源の有効利用を考える」 - 愛智出版 ISBN 978-4-87256-020-6
  7. ^ 総合資源エネルギー調査会電気事業分科会コスト等検討小委員会報告書 2004年1月
  8. ^ a b NEDO成果報告書 みずほ情報総研、NEDO、太陽光発電システムのライフサイクル評価に関する調査研究、No. 20090000000073
  9. ^ a b c d 太陽光発電のEPT/EPRについて産業技術総合研究所

関連項目


エネルギー収支比

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/02 15:53 UTC 版)

太陽光発電の環境性能」の記事における「エネルギー収支比」の解説

エネルギー収支比(EPR)とは、生産から廃棄までのライフサイクル中に外部から投入されるエネルギーと、発電により回避されエネルギー消費の比を言う。ライフサイクル全体対象とした計算ならば、寿命上記EPT割って求めることができる。日本における一般的な値は、稼働期間20年で8 - 14倍、30年12 - 21倍と見積もられている。これは海外における調査結果も同様である。 なお、日本ではエネルギー収支比を「2」や「5 - 9」などとする文書一部散見されるが、これは12 - 16年上前見積もりに基づく値である(1995年3月電力中央研究所研究報告Y94009や、1991年報告書Y90015)。生産方式技術水準設定条件古く太陽光発電現在の性能整合していない。例え上記報告書Y90015で多結晶シリコンウエハ生産必要な電力設備容量1.1MW分で6250MWh(すなわち約20MJ/W)と設定している(P.65)が、これは現在の技術による値(P.173など)よりも数倍大きく、上記諸外国における調査結果とも全く整合しない。こうした値を出典計算条件明記せずに用いる例がみられ、これにより「太陽光発電エネルギーペイバックタイム10年以上」などとする誤った情報流れたため、誤りである旨が専門機関によって公的に指摘されている。また、別定義計算されて他よりも数倍低いEPRの値が主張される例もある。

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