エネルギー収支と地球の気候
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/26 08:57 UTC 版)
「地球のエネルギー収支」の記事における「エネルギー収支と地球の気候」の解説
前述の「失うエネルギー」とは、地球の大気が得たエネルギーが長い時間をかけて必ず宇宙へ放射されることを前提としており、「失うエネルギー」から除いた地熱や潮汐によるエネルギーもやがて宇宙へ放射されるため、結局は収支は0となる。 大気が「得るエネルギー」が「失うエネルギー」を上回れば、エネルギーのうち熱に変わる量も相対的に増えて、地表付近の気温や海面温度の上昇という形で現れることとなる。逆に、「得るエネルギー」が「失うエネルギー」を下回れば、同様にエネルギーのうち熱に変わる量が相対的に減り、温度が低下すると考えられる。このような収支バランスの崩れは「放射強制力」という言葉で定義される。得るエネルギーが失うエネルギーを上回れば正(+)、逆の場合は負(-)の放射強制力が働いていると表現される。 長い地球の歴史でみれば、「得るエネルギー」の変化をもたらす原因としては、太陽活動の変化が最も大きい。過去には太陽活動の大規模な変化があり気候の変化をもたらしたことがあると考えられている。近年の地球温暖化の原因は人為的な要因によって放射強制力が変化し、地球のエネルギー収支の均衡が崩れたのが大きな原因とされる。11年周期での太陽活動の変化は微小なものであり、その影響は人為的要因に比して数%程度しか無いとされる(AR4)。 「失うエネルギー」の変化をもたらすのは、アルベドの変化が大きい。氷はアルベドが大きいので、氷床面積が広くなるとその分反射する(失う)エネルギーが増えることになる。従って地球のエネルギー収支の均衡は不安定解を持つ。すなわち、ある程度以上平均気温が下がると氷床が拡大して失う(反射する)エネルギーが増大して更に気温が下がり、下がった気温が更なる氷床の拡大につながると言う正帰還により、全地球が氷床に覆われるまで気温が下がり続けると言うのが全球凍結仮説の根拠である。逆にある程度以上平均気温が上がると、氷床の減少→反射するエネルギーの減少→気温の上昇→氷床の減少として気温上昇を加速度的に増幅すると考えられている。 温室効果は、温室効果ガスが熱に変わりやすい赤外線などの電磁波を吸収して大気や地球表面が得たエネルギーをより長く環境中に留めるように働き、平衡状態における大気や地球表面の平均温度が上昇することを指す。温室効果ガスが増加すると、一時的に放射の量が減少し、大気や地球表面の温度が上昇し、放射が再び増えることで安定する(放射強制力の項を参照)。 石油や石炭、木材などの化石燃料の燃焼や、陸地の土地利用・海面の状態の変化(砂漠化や海氷面積の減少など)などの人為的原因も、エネルギー収支の総量に影響する。IPCCの調査(リンク)によれば、2000年のエネルギー収支の総量は、1750年に比べて約2.4 W m-2(太陽放射により地球の大気が得るエネルギーの1%弱に当たる)増加したとされる。人為的な影響の中では特に二酸化炭素やメタンなどの影響が大きいとされている(地球温暖化の原因参照)。
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