たいき‐ちょうせき〔‐テウセキ〕【大気潮×汐】
大気潮汐
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/02/28 03:40 UTC 版)

大気潮汐(たいきちょうせき)とは、太陽の放射や月の潮汐力などの影響で発生する、周期的な地球の大気の運動のこと。特に大気中層の成層圏や中間圏・熱圏などでは、顕著な気圧変動や風の変化として観測されるため、潮汐風とも言う。同様の周期で起こる海陸風とは異なり、大陸規模であること、主に1日2回周期で昇圧と降圧を繰り返すことが特徴。
メカニズム
大気潮汐には、大きく分けて3つの成分がある。
1つ目は、1日2周期の半日潮汐で、赤道地上付近で平均約1.2hPaの振幅がある。2つ目は、1日1周期の1日潮汐で、約0.5hPaの振幅がある。3つ目は、月の引力による1日約2周期の太陰潮汐で、振幅は約0.1hPaくらいである。
半日潮汐と1日潮汐は、太陽の日射により大気が加熱されることに起因し(このことから2つを総称して熱潮汐という)、太陽が天頂に来る地域では大気が膨張して気圧が低下する。降圧のうち、成層圏や中間圏でオゾンが紫外線を吸収することに起因するものが全体の3分の2、対流圏で水蒸気が赤外線を吸収することに起因するものが残りの3分の1を占める。
大気による加熱量はなだらかな正弦波ではなく、日の出・日没とともに急増減する形をとることが原因で、気圧の波に高調波が生じ、熱潮汐は1日周期のほかに、半日(12時間)周期、8時間周期、6時間周期などの変動が生まれる。高調波の中では、第2次高調波である12時間周期が最も大きい。また、加熱による大気上空でのもともとの気圧変動幅は、1日周期が半日周期の5倍もあるが、地上ではそれが逆転している。これは、1日周期の変動は鉛直方向にほとんど伝播しないことで、上空の大変動が地上へは小変動として伝わってしまうためである。
一方、太陰潮汐は月の引力に起因するが、振幅が小さいためほとんど表れない。
また、大気潮汐は主に慣性重力波であり、慣性重力波は低緯度では鉛直伝播しやすいが、中高緯度では鉛直伝播しにくいという性質がある。これにより、地上では赤道に近いほど大気潮汐の気圧変動幅は大きく、極に近づくほど小さくなる。
地上の緯度φにおける、半日潮汐と1日潮汐の振幅は以下の相関式による。
大気潮汐
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/04/28 22:27 UTC 版)
詳細は「大気潮汐」を参照 最も振幅の大きい大気潮汐は、日中に水蒸気とオゾンが太陽放射を吸収するため、対流圏と成層圏で大気が周期的に加熱されるときにほとんど生じる。生じた潮汐は、その後生じた領域から離れて伝搬し、中間圏と熱圏に上ることができる。大気潮汐は、風、温度、密度、圧力における規則的な海洋潮汐は多くの共通点を持っているが2つの重要な分け隔てる特徴がある。 1) 大気潮汐は主に太陽による大気の過熱により起こるが、海洋潮汐は主に月による重力場により起こる。このことは、ほとんどの大気潮汐が太陽日の24時間に関連する振動周期を持つが、海洋潮汐は約24時間51分の太陰日(連続する月の通過間の時間)に関連するより長い振動周期を持つ。 2) 大気潮汐は高さにより密度が大きく変化する大気中を伝搬する。この結果として、潮汐が徐々に大気の薄い領域に上昇するため振幅が自然に指数関数的に増加する(この現象の説明については以下参照)。対照的に海洋の密度は深さによりわずかしか変化しないため、潮汐は必ずしも深さによって振幅が変化するわけではない。 (注)太陽による過熱は最大振幅の大気潮汐の原因であるが、太陽と月の重力場も大気における潮汐を引き起こし月の重力大気潮汐効果は太陽のものよりもずっと大きい。 地表の高度では、大気潮汐は24時間および12時間の周期的ではあるが小さい表面圧力の振動として検出できる。最大気圧はその地の午前10時と午後10時に起き、最小はその地の午前4時と午後4時に起こる。しかし、高さが高くなると潮汐の振幅が非常に大きくなることがある。中間圏(高さ約50~100km)では、大気潮汐が50 m/sを超える振幅に達することがあり、しばしば大気の運動の最も重要な部分となる。
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