モリブデン モリブデンの化合物

モリブデン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/01/30 08:02 UTC 版)

モリブデンの化合物

同位体

入手について

モリブデンは融点が高いことから、工業的に溶融凝固というプロセスで製造することが困難であるため、大きな素材を作ることが難しく、多くは粉末冶金的製法で製造される。また、加工性に乏しく、常温での圧延は事実上不可能である。切削研磨も高度な技術を必要とするため、複雑な形状に加工することは困難である。粉末ではない金属モリブデンは主に小インゴットや板、線材の形で取引されるが、個人が入手することは難しく、専門の販売業者に限られる。

生体におけるモリブデン

モリブデンは、ヒトを含む全ての生物種で必須な微量元素である。人体には体重1 kgあたり約0.1 mg含まれていると見積もられており、皮膚肝臓腎臓に多く分布している。

モリブデン含有酵素

現在、植物動物をあわせて約20種類ほどのモリブデン含有酵素が知られている。その中で最もよく知られている酵素は、ニトロゲナーゼである。これは窒素固定における窒素アンモニアに変換する反応を触媒する。この酵素はマメ科植物の根に共生する根粒菌(リゾビウム属)の菌体内に含まれ、空気から取り入れられた分子状窒素をアンモニアに変換する。藻類も窒素固定にモリブデン酵素を利用している。また、藻類の窒素固定モリブデン酵素は、過剰な硫黄を揮発性の硫化メチルに変換して排泄させるはたらきも有する。

哺乳類においては、キサンチンオキシダーゼアルデヒドデヒドロゲナーゼおよび亜硫酸酸化酵素が知られている。キサンチンオキシダーゼ尿酸合成に関わる。この酵素の働きが強くなると痛風になるおそれがある。アルデヒドデヒドロゲナーゼアルデヒドカルボン酸に変換する。この酵素はアルコール代謝に必須な酵素で、代謝産物である酢酸は体内でエネルギー源の一つとして利用される。亜硫酸酸化酵素は毒性のある亜硫酸イオンを毒性の低い硫酸イオンに変換する。

栄養

2020年版の『日本人の食事摂取基準』では、推定平均必要量:成人男性20 ~25 µg/日、推奨量:30 µg/日、上限量:600 µg/日。推定平均必要量:成人女性20 µg/日、推奨量:25 µg/日、上限量:500 µg/日(成人とは18歳以上、授乳婦は更に3 µgの付加量)である。モリブデンを多く含む食材は牛や豚の肝臓であり、植物では豆類に多く含まれる。

モリブデンが欠乏すると亜硫酸毒性がみられ、頻脈頻呼吸頭痛悪心嘔吐昏睡の症状が見られたとの記録がある。過剰摂取による中毒は「モリブデノーシス (molybdenosis)」といい、アメリカ合衆国コロラド州のモリブデンを多く含む土地の草を食べた牛が中毒した例がある。症状は、体重の低下、食欲減退、貧血、授乳不良・不妊骨粗鬆症などである。

国別の産出量

2011年における国別の産出量は以下の通りである[5]

順位 モリブデン鉱の産出量(トン) 全世界での割合(%)
1 中華人民共和国 106,000 40.2
2 アメリカ合衆国 63,700 24.1
3  チリ 40,889 15.5
4 ペルー 19,141 7.3
5 メキシコ 10,881 4.1

注釈

  1. ^ モリブデンジチオフォスフェート(Molybdenum Dithiophosphate:MoDTP)とも呼ばれる。
  2. ^ モリブデンジチオカルバメートあるいはモリブデンジチオカーバメート(Molybdenum Dithiocarbamate:MoDTC)とも呼ばれる。
  3. ^ ただし、リンが触媒被毒の原因となるためエンジンオイル向けではMoDTPは使用されない。なお、同じくリンを含むジアルキルジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)は用途を限定したうえで使用される。

出典

  1. ^ Molybdenum: molybdenum(I) fluoride compound data”. OpenMOPAC.net. 2011年7月21日時点のオリジナルよりアーカイブ。2007年12月10日閲覧。
  2. ^ Magnetic susceptibility of the elements and inorganic compounds (PDF) (2004年3月24日時点のアーカイブ), in Handbook of Chemistry and Physics 81st edition, CRC press.
  3. ^ 医薬品原料モリブデン99 めざす国産/超電導加速器を利用」『日経産業新聞』2020年9月15日(16面)2020年9月23日閲覧
  4. ^ “中国のレアアース等原材料3品目に関する輸出税が廃止されます”. 経済産業省. (2015年5月1日). https://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/11181294/www.meti.go.jp/press/2015/05/20150501001/20150501001.html 2023年1月29日閲覧。 
  5. ^ 『地理 統計要覧』2014年版、ISBN 978-4-8176-0382-1、P96


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