時計 時計の概要

時計

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/11/23 08:42 UTC 版)

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置き時計
山田訓氏所蔵「MADE IN JAPANの置時計 1960年代を中心に」展より
懐中時計

概説

時計は時刻を指示する機器で、タイムカウンター(時間を測定するだけで時刻は指示しない機器)とあわせて計時装置(time measuring instrument)と呼ばれる[2]。時刻の指示だけでなく時間の測定もできる時計にクロノグラフ(chronograph)がある[2]

古くは日常生活の中で時刻を知る方法は太陽の動きなどであった[3]。紀元前1500年頃には日時計が発明された[4]

11世紀以降、機械によって駆動される時計が実用化されていったが、近世に至るまでは極めて大型の装置であり、庶民にとっては値段が高く一般的なものではなかった[3]。また、初期の機械時計はそれほど正確ではなく定期的に時刻の調整をしなければならなかった[4]。近代以後、より正確な機械時計が普及しても無線やラジオ放送などが普及するまで正確な時刻をもとに機械時計の時刻を合わせることも容易でなく、機械時計の時刻の調整には南中を知るのに特化した正午計(日時計の一種)なども用いられた[3][4]

機械時計には、動くための力、一定の速度で動かすための調速機、計った時を外部に伝える部分の三要素がある。動力としては、錘を引く重力がもっとも古くから存在したが、その後、近世に実用化された鋼製のぜんまいばね(ゼンマイ)が時計に適した蓄力装置として20世紀後期まで広く用いられた。また20世紀以降は電気が用いられ、動力のみならず調速のエネルギーとしても主流となっていった。調速機としては、17世紀に実用化された振り子が定置式時計に広く用いられ、振り子の役割を小型部品のひげゼンマイに置き換えたテンプも追って実用化、携行可能な時計(懐中時計)が作られるようになった。以後の電気駆動時代の調速には、音叉、電力線、水晶、原子などが利用されている。外部に時刻を伝える手段としては、一般的には針(アナログ)や文字(デジタル)による視覚が基本で、これと併用する形で鐘や鈴、アラームなどの音が用いられる。

1970年代頃までは、腕時計や置時計では動力にぜんまいを使った機械式、掛時計では電気(トランジスタ)式がほとんどであったが、1980年代以降、現在のほとんどの時計は、動力に電気、調速機に水晶振動子を使ったクォーツ時計となった。但し、機械式時計が完全に廃れたわけではなく、その完成度の高さから機械式時計の愛好家は多い。

市販のクォーツ時計の多くは 1 秒間に 32,768(2の15)回振動する (32.768kHz) 水晶振動子を用いて時を刻む。必ずこの数値でなければならないわけではないが、時計に組み込むのに適切な大きさの振動子で発生しやすい周波数であり、また、簡易な回路で分周を行い周波数を半分にする操作を繰り返して1秒を得る為に、2のべき乗の値であると都合が良いことからこの周波数がよく用いられる。他の周波数の水晶振動子が用いられることもある。

また、近年はセシウム原子の振動 (9,192,631,770Hz=9.19263177GHz) を用いた原子時計の時刻を基に発信された電波(標準電波JJY)を受信し、クォーツ時計の時刻を自動修正する電波時計も利用されている。日本での標準電波の発信基地(電波送信所)は、福島県田村市都路地区(大鷹鳥谷山、40kHz)と佐賀県佐賀市富士地区(羽金山、60kHz)の2か所。更に進んで、地球上どこでも受信できるGPSの電波により時刻修正を行う衛星電波時計も出現している。

一方、動力については、電池交換の手間を省くため、腕時計の分野では手の動きから力を取り出して発電機を駆動して (AGS) 電気を得る方法や、文字盤や盤面以外の部分に組み込まれた太陽電池などにより発生した電気を、二次電池もしくはキャパシタに充電しながら作動するタイプが出てきている。

また時計は電子機器の多くにも内蔵されている。これは、ビデオの録画予約や、電子レンジの加熱時間など、タイマーとして使われる。

英語で時計を指して「クロック」(clock)と言うが、同じ語はデジタル回路論理回路)のクロック同期設計における同期のための信号(「クロック信号」)を指しても使われる。クロックの記事を参照。パソコンなどではそれより他にリアルタイムクロックという、時刻を刻む「時計」も持っていることも多い。またオペレーティングシステム内では通常、さらにそれらとは別のタイマーを利用した時刻管理系を持っている。

時計の歴史

砂時計で一定の時間を計ることができる。機械を使用しない、初期の計時器具のひとつである

有史以前より人類(おそらく他の動物にも)は太陽の位置などにより、朝-昼-夕程度の曖昧で不明確な時の概念を持っていたと考えられる。太陽の位置を知る方法に「固定された適当な物の影を見る」というのがあり、これはいわゆる紀元前約2000年頃に発明されたといわれる日時計である。

しかし日時計は晴天の日中しか利用することができない欠点がある。そのため、別の物理現象を使って時間の流れを測定する時計が考えられた。例えば特定の大きさで作った蝋燭線香、火縄が燃える距離を使う(燃焼時計)、が小さな穴から落ちる体積を使う(水時計砂時計)などであり、紀元前1400年 - 紀元前700年頃の間にエジプトイタリア中国などで考案された。なかでも水時計は流速を一定とした水を使用することから、それを動力とした機構を発達させ、かなり複雑な機構を使用するものへと変化し、やがて機械式時計を生み出すこととなった[5]

北宋時代、より正確に時間を計るため駆動軸の動きを制限する脱進機が発明され、1092年蘇頌によって世界初の脱進機つき時計台である水運儀象台開封に建設された[6]。水運儀象台は時計台であると同時に天文台でもあった。同時期、イスラム世界においても水時計の進化は進み、その機構の多くはヨーロッパへと伝播した[7]

14世紀にはヨーロッパで、定期的に重錘を引き上げ、それが下がる速度を棒テンプと脱進機で調節する機構が発明された。また1510年頃、ニュルンベルクの錠前職人ピーター・ヘンラインゼンマイを発明し携帯できるようになった。

1583年ガリレオ・ガリレイは、振り子の周期が振幅によらず一定であること(正確には振幅がごく小さい場合に限られる)を発見し、振り子時計を思いついた。1656年クリスティアーン・ホイヘンスは、サイクロイド曲線を描く振り子および振り子に動力を与える方法を発明し、振り子時計を作った[8]

1654年ロバート・フックはひげゼンマイの研究を行い、それが振り子と同じく一定周期で振動することを発見し、1675年、ホイヘンスはこの原理を利用した懐中時計を開発した。18世紀初頭に入ると時計技術の進歩はさらに進み、ジョージ・グラハムによってシリンダー脱進機が発明され、彼の弟子であるトーマス・マッジはレバー式脱進機を発明した[9]

ジョン・ハリソンの開発したクロノメーターH5

中世ヨーロッパでの時計の意義は主に宗教目的で、神に祈りを捧げる時を知るためのものであった。しかし大航海時代に入り、天測航法および計時によって現在位置の経度を知るためには、揺れる船内に長時間放置しても狂わない正確な時計(クロノメーター)が必要となった。時刻にして1分の誤差は、経度にして15(1/4、赤道上で28km)もの誤差となり、時計の狂いが遭難や座礁につながるという事故が多発したためである。

1713年、イギリス政府は「5か月間の航海で誤差1分以内」という懸賞条件に2万ポンドの賞金をかけ[10]1736年ジョン・ハリソンが懸賞条件に見合う時計を完成させた。しかし、ハリソンが単なる職人だったためか、イギリス議会はいろいろと難癖を付けて賞金を払わず、40年に渡って改良を重ねさせた。ハリソンはジョージ3世の取りなしがあってようやく賞金を手に入れられたが、それは彼の死の3年前であった。

アブラアム=ルイ・ブレゲが1795年頃に製作した置時計(チューリッヒバイヤー時計博物館所蔵)

時計制作の歴史に革命を起こしたのが天才時計師として名高いアブラアム=ルイ・ブレゲであり、彼によって時計の進歩は200年早まったとされる[11]。ブレゲはスイスのヌシャテルで生まれたのち、フランスを中心に時計制作を行い、トゥールビヨン、永久カレンダー、ミニッツ・リピーターなど、現代の機械式時計にも用いられている画期的な発明を数多く行った。ブレゲの顧客にはフランス国王ルイ16世ナポレオン・ボナパルトイギリス国王ジョージ3世ロシア皇帝アレクサンドル1世などがおり、当時の最高権力者たちはこぞって彼に時計制作を依頼していた。ブレゲがその生涯に制作した時計は約3,800個と言われ、数々の傑作を生み出したが、そのなかでも最高傑作として名高い逸品が、王妃マリー・アントワネットの注文に応じて制作された懐中時計「マリー・アントワネット」である。

その後、機械式時計は、精度や携帯性を求めて様々な改良が施された。また、この17 - 19世紀初頭は、職人の徒弟チームによる手工芸的な少量生産から、いかに大量生産で高精度の時計を作れるか・定期的な保守を誰でもできるかという要求により改良がなされていった時代である。ぜんまい動力の掛かる駆動部の歯車は、なるべく均一な力がかかるように歯車の歯数を互いに割り切れないようにする工夫もなされた。気温によって振り子の長さやひげゼンマイの弾性が変化することも精度に影響するため、20世紀初頭に熱膨張率の小さなインバー合金、温度による弾性率の変化が小さなエリンバー合金が発明され、大きな貢献を与えた。各種あった脱進機も、現在のアンクル脱進機にほぼ絞り込まれていった。

20世紀に入ると、動力として電動機が使われるようになった。当初は調速機構を在来機械式時計と同じくしながら、動力源をぜんまいの代わりに電動機としたのみであった。更に第二次世界大戦後には、小型置時計や腕時計の分野で、電気の安定にトランジスタを使ったトランジスタ時計、調速機にRC発振回路を使った時計、音叉を使った音叉時計などが開発されたが、一般向けの実用時計としては水晶振動子を使ったクォーツ時計、実験施設等の高度な計時装置としてはセシウム原子の振動を利用した原子時計等、新たな高精度な時計の出現によりほとんど姿を消した。

クォーツ時計は廉価で小型化が可能で、1か月の誤差が15秒ほどと実用上十分の精度があるため、現在では一般的に使われている。一方原子時計は、2000万年に1秒くらいの狂いという高精度を持つものの、21世紀初頭の段階では廉価・小型化が難しい。そこで、原子時計による時報を適当な頻度で電波によって受信し、クォーツ時計の時刻を自動修正する電波時計も利用されている。また科学技術用途など、これ以上に正確な時刻を知る必要がある場合、GPSにより、10億分の1秒オーダの正確な時刻が、地球上どこでも容易に得られるようになったことも特筆に値する。

クォーツ時計が一般化する前の電気式時計では、アナログ式では電源周波数に同期して回転するサーボモータを使ったり、デジタル式では電源周波数より1秒毎のパルスを得て駆動していた(後者は現在でもビデオテープレコーダなどのタイマー予約用時計に使われることがある)。このため商用電源(日本では50/60Hz)は、長時間で誤差が累積されないように、進み遅れの制御がなされている。

一方機械式時計の新しい発明として20世紀末には、ジョージ・ダニエルズによるコーアクシャル脱進機が提案されている。これはアンクル脱進機以来の発明といわれている。また、セイコーによるスプリングドライブの発明は、機械式時計とクオーツ式時計の融合として革命的である。




  1. ^ [https://kotobank.jp/word/%E6%99%82%E8%A8%88%E3%83%BB%E5%9C%9F%E5%9C%AD-341394 時計・土圭とは - コトバンク
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al 時計用語”. 一般社団法人日本時計協会. 2020年6月24日閲覧。
  3. ^ a b c 山本光正「村に時計がやってきた」郵政博物館 研究紀要 第9号 郵政博物館、2019年10月3日閲覧。
  4. ^ a b c 押田榮一「“What is time?”」日本日時計の会会報 第14号 日本日時計の会、2019年10月3日閲覧。
  5. ^ 「図説 時計の歴史」p13 有澤隆 河出書房新社 2006年1月30日初版発行
  6. ^ 『世界文明における技術の千年史 「生存の技術」との対話に向けて』p66 アーノルド・パーシー 林武監訳、東玲子訳、新評論、2001年6月。ISBN 978-4-7948-0522-5
  7. ^ 『世界文明における技術の千年史 「生存の技術」との対話に向けて』p77 アーノルド・パーシー 林武監訳、東玲子訳、新評論、2001年6月。ISBN 978-4-7948-0522-5
  8. ^ 「図説 時計の歴史」p17 有澤隆 河出書房新社 2006年1月30日初版発行
  9. ^ 「図説 時計の歴史」p37 有澤隆 河出書房新社 2006年1月30日初版発行
  10. ^ 『ジョージ王朝時代のイギリス』 ジョルジュ・ミノワ著 手塚リリ子・手塚喬介訳 白水社文庫クセジュ 2004年10月10日発行 p.125
  11. ^ 「図説 時計の歴史」p36 有澤隆 河出書房新社 2006年1月30日初版発行
  12. ^ 「図説 時計の歴史」p35 有澤隆 河出書房新社 2006年1月30日初版発行
  13. ^ http://www.fhs.jp/jpn/origins.html 「原点から現在まで」スイス時計協会 2016年7月9日閲覧
  14. ^ 森田安一『物語 スイスの歴史』中公新書 p138-139 2000年7月25日発行
  15. ^ 「図説スイスの歴史」p70 踊共二 河出書房新社 2011年8月30日初版発行
  16. ^ 「興亡の世界史13 近代ヨーロッパの覇権」p183-184 福井憲彦 講談社 2008年12月17日第1刷
  17. ^ http://www.jcwa.or.jp/etc/history.html 「時計の歴史」一般社団法人日本時計協会 2016年7月9日閲覧
  18. ^ http://www.jcwa.or.jp/etc/history01.html 「日本の時計産業概史」一般社団法人日本時計協会 2016年7月9日閲覧
  19. ^ http://www.fhs.jp/jpn/watchindustrytoday.html 「今日のスイスの時計産業」スイス時計協会 2016年7月9日閲覧
  20. ^ a b 時計の針の呼び方には長針短針、秒針時針など同じ針でも別の言い方ある” (日本語). SUNDAY LIFE/時計のブログ. 2020年10月14日閲覧。
  21. ^ a b syohbido. “GMTの便利な使い方” (日本語). 懐中時計 スイス時計専門店 正美堂新着ブログ. 2020年10月14日閲覧。
  22. ^ GMT機能とその使い方について - Chrono24マガジン” (日本語). www.chrono24.jp. 2020年10月14日閲覧。
  23. ^ 時計の針(はり)は、どうして右回りなの?
  24. ^ 時計の針はなぜ右回りになったのですか?
  25. ^ 原題 Paul Owen Lewis (1989). P. Bear's new year's party!. : A Counting Book. Berkeley, CA: Tricycle Press. ISBN 978-1-58246-191-5. OCLC 671817083 
  26. ^ 同名の歌大きな古時計を絵本にしたもの。
  27. ^ 古い版の楽譜は3種類。『尋常小学読本唱歌』1912年発行(明治43年)、『尋常小学唱歌 第二学年用』1913年発行(明治44年)、『新訂尋常小学唱歌-第二学年用』1932年発行(昭和7年)
  28. ^ 初演の題名は「大きな古時計」ではなかった。ミミー宮島は吉本興業(東京吉本)所属の子供歌手兼タップダンサー。
  29. ^ 2000年代初頭の出版例。たのしい・えいごのうた ABCのうた・おおきなふるどけい (スーパーセレクション) (CD). 日本クラウン. September 2005.
  30. ^ NHKラジオの幼稚園・保育園むけリズム遊び番組「あそびましょう」で初演






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