時事通信社 歴史

時事通信社

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/02 21:26 UTC 版)

歴史

戦前の国策通信社であった同盟通信社には終戦後GHQから圧力が加えられていた[6]。GHQが日本政府へ「日本政府のニュース統制の排除、各国の外電通信提供の自由及び政府の助成機関たる同盟通信社の特権剥奪」(昭和21年9月24日)の指令を出したのをきっかけとして[6][7]、同盟通信社は1945年昭和20年)10月31日解散、共同通信社との2社に分割した。主に経済ニュースを民間企業向けに配信する部門と『世界週報』(同盟時代の『同盟世界週報』)をはじめとする出版業務を引き受けたのが時事通信社で、一般報道部門は共同通信社に移った。共同通信社とは異なり、設立当初から株式会社組織である。

同盟の目ぼしい遺産は共同が引き継ぎ、さらに時事は外地から引き揚げて来る元同盟社員の受け皿とされたために人件費がかさみ、船出が設立当初から順調には進まず、苦難の道を歩まざるを得なかったのである[8]

1949年(昭和24年)には日本商業通信社(もとは1887年発足の東京急報社)と統合。また、AP通信ロイター(のちのトムソン・ロイター)、AFPといった海外の大手通信社とも発足初期より提携関係を結び、戦後直後の混乱期において、海外情報の情報源としての役割を果たしていた。

共同通信社とは分割時から再統合を視野に入れていたため、当初はニュース分野で棲み分けていたが1964年(昭和39年)に開催された東京オリンピックをきっかけに時事がマスメディア向けニュースサービスに進出、両社とも互いの分野を侵食し合う競合関係となって再統合構想は消滅した。

同盟解散時、古野伊之助は将来時事と共同が再合同することを期していた。一般ニュース分野と経済通信分野とに分割して棲み分けを図ったのも、両社の無用な衝突を避けるためである。そして「時事は、一般ニュースを必要とする場合は共同から無料で供給してもらえばよい。専用線も共同のものを無償で使用すればよい」としていたが、実際に分社化するとそのようにはいかなかった。一般ニュースの自主取材は「覚書」によって厳しく制限され、また、敗戦後間もない日本経済は著しく疲弊しており、経済通信での収入も芳しくなかった。

このため、1949年(昭和24年)7月14日に社長の長谷川才次が共同常務理事の松方三郎(松方正義の末子)と直接交渉し、両者は「覚書」の撤廃に合意した。以後、共同から時事へのニュース供給は途絶し、古野の意図に反して両社の本格的な抗争が始まった[9]

民間の通信社がマスコミから得られる収入はわずかで、大半の社は金融機関向けの情報サービスを稼ぎ頭としている。この収入構造は時事通信も同じだが、1971年(昭和46年)に大蔵省(現財務省)の指導のもと、日本経済新聞社が子会社「株式会社市況情報センター (QUICK) 」を設立して、金融機関向けに開始した経済情報サービス専用端末「ビデオ-I」で経済情報サービス分野に参入した為、急速に市場を奪われ、新たな脅威の出現により、時事の経営が悪化[10]、さらなる苦境に陥った。大手報道機関の社員待遇が他の業界に比べて恵まれている中で、業界内では「産経残酷、時事地獄」と社員待遇の悪さを揶揄された。さらに日本経済の国際化が進み、イギリスのロイターやアメリカブルームバーグなど国際通信社が日本市場に本格参入したことで、時事通信社の役割は薄れた。

1971年は時事にとって、もう1つの意味で特別な年であった。この年の6月、初代社長の長谷川が退陣したのである[11]

「独裁的」とも評される長谷川の経営方針や、政財界寄りの態度に不満を覚えた社員らは1968年(昭和43年)、実質的には機能していなかった「時事通信社労働組合」(1950年発足)に代わる組織として「時事通信労働組合」を結成し[12]、待遇改善などを要求する運動を展開。組合には約120人が参加した。1971年(昭和46年)3月26日と4月28日、組合は全日ストに突入し、機動隊が出動する異常事態となった[13]

労使の対立は、1971年5月の第51回定期株主総会で頂点を迎える。席上、組合員による質問が突如打ち切られ、提出議案が強行採決されたことに組合側が猛反発し、総会は紛糾した。こうした一連の混乱の責任を取って、長谷川ら経営陣は辞職した[14]

1990年代には経営再建をかけてロイターと提携した。ロイターによる時事買収の布石と見られたが、2000年頃にはロイター自身の経営も悪化し2006年(平成18年)現在ではこの提携が効果を上げているとは言えない状況である。また、共同通信社との再統合の話もたびたび浮上するものの、実現には至っていない。

1996年平成8年)の三菱銀行東京銀行の合併のスクープを日本経済新聞とほぼ同時に流した。両行の合併はこの年の最大のニュースで、時事、日経の両社とも、その年最大のスクープを表彰する「新聞協会賞」の候補として日本新聞協会に申請した。しかし、時事通信の経営陣は顧客である日経を差し置いて受賞できないと判断し、申請を取り下げた。これに反発した当時の取材チームの1人は退社し、TBSに転職した。さらに別のメンバー・堺祐介も時事に残留したものの、同年に不整脈のため33歳で死去した。堺は当時、日銀クラブの記者として住専問題などの取材で月100時間程度の残業が続いており、東京・中央労働基準監督署労災と認定した。それに前後して、大量の社員が退社、民放や外資系へ転職するという事態に経営失策と社内からの批判が強まり、2005年(平成17年)榊原潤社長が任期途中で退任に追い込まれた(対外的には「健康悪化」が理由とされた)。

その後、2005年から2008年は若林清造、2008年から2012年は中田正博、2012年から2016年は西澤豊が社長を務めた。2016年から2020年は大室真生[15][16]、2020年からは境克彦[16] が、それぞれ社長を務めている。


  1. ^ a b c d e f g h i j k 基本情報 - 時事ドットコム
  2. ^ a b c 決算情報(2021年3月期) - 時事通信社
  3. ^ 決算情報(2020年3月期) - 時事通信社
  4. ^ a b 国際地域研究センター『世界のメディア』p90
  5. ^ 商品・サービス情報 - 時事通信社
  6. ^ a b 時事通信社 1985, p. 29.
  7. ^ 川島高峰 時事通信占領期世論調査 全10巻
  8. ^ 時事通信社50年史49頁
  9. ^ 時事通信社50年史65頁
  10. ^ 沿革 - 株式会社QUICK
  11. ^ 時事通信社50年史116〜117頁
  12. ^ 時事通信社50年史106頁
  13. ^ 時事通信社50年史113頁
  14. ^ 時事通信社50年史115頁
  15. ^ 「関弁連がゆく」株式会社時事通信社 代表取締役社長 大室真生さん”. 関東弁護士会連合会 (2018年10月). 2020年7月5日閲覧。
  16. ^ a b 時事通信社長に境取締役 大室社長は相談役に”. 時事ドットコム. 時事通信社 (2020年4月21日). 2020年7月5日閲覧。
  17. ^ a b c 時事通信社 1985, p. 337.
  18. ^ 組織・ネットワーク - 時事通信社
  19. ^ 時事通信社50年史572頁
  20. ^ 時事通信社50年史576頁
  21. ^ a b 時事通信社50年史578頁
  22. ^ 海外支局一覧 - 時事ドットコム
  23. ^ 世界週報の休刊について
  24. ^ a b c d e 時事通信社 1985, pp. 481-488.
  25. ^ AKB48専門サイトを開設=姉妹グループ情報も-時事通信”. 時事ドットコムニュース. 時事通信社 (2015年11月25日). 2016年4月26日 (UTC)時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年10月24日閲覧。
  26. ^ 「AKB48グループ ニュースワイヤー」TOPページ.時事ドットコムニュース
  27. ^ a b “時事通信が陳謝の記事配信 オリンパス元社長に直接取材せず”. 共同通信社. 47NEWS. (2011年12月3日). オリジナルの2011年12月3日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20111203083303/http://www.47news.jp/CN/201112/CN2011120201002135.html 2017年1月30日閲覧。 
  28. ^ “「報道機関としての信用大きく失墜」時事通信社長退任コメント”. MSN産経ニュース (産経新聞). (2012年6月18日). オリジナルの2012年6月19日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20120619031453/http://sankei.jp.msn.com/economy/news/120618/biz12061817300015-n1.htm 2017年1月30日閲覧。 
  29. ^ “時事通信、記者を注意 沖縄巡る質問で「不適切な表現」”. 朝日新聞デジタル. (2015年7月13日). オリジナルの2016年3月4日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160304200824/http://www.asahi.com/articles/ASH7F67GGH7FUTFK01R.html 2017年1月30日閲覧。 
  30. ^ “時事通信、記者を配置換え 「不適切な表現で遺憾」”. 朝日新聞デジタル. (2015年7月14日). オリジナルの2016年3月11日時点におけるアーカイブ。. https://web.archive.org/web/20160311014611/http://www.asahi.com/articles/ASH7G5DZVH7GUTIL03R.html?iref=com_alist_6_03 2017年1月30日閲覧。 
  31. ^ “時事通信が「俳人の金子兜太さん死去」と誤報記事を配信 1時間後に取り消し”. 産経新聞. (2018年2月19日). http://www.sankei.com/life/news/180219/lif1802190024-n1.html 2018年2月19日閲覧。 
  32. ^ “「金子兜太さん死去」誤報の記者を出勤停止処分に 時事”. 朝日新聞. (2018年2月27日). https://www.asahi.com/articles/ASL2W56HLL2WUTIL02W.html 2018年2月28日閲覧。 
  33. ^ “金子兜太さん死去前に訃報、時事記者ら懲戒処分”. 読売新聞. (2018年2月28日). http://www.yomiuri.co.jp/national/20180227-OYT1T50087.html 2018年2月28日閲覧。 [リンク切れ]
  34. ^ 株式の状況・株主構成 - 株式会社電通グループ
  35. ^ 時事通信社 - 異動ニュース






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