コミュニケーション
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/09/22 00:27 UTC 版)
心理学的解釈
コミュニケーションを発信と応答という観点から見た場合、ある個体のアクション(発信)に応じて別の個体にリアクション(応答)が生じた場合、両者の間にコミュニケーションが成立していることになる[3]。コミュニケーション行動の機能は、たんに情報の伝達にとどまらず、情動的な共感、さらには相手の行動の制御をも幅広く含んでいる[3]。
コミュニケーションの成立は、そのための適切な発信行動が取られたというだけではなく、受け手が適切なシグナル・媒体に注意を向け情報を受信した上で、さらに的確な理解をしているかどうか、という点にもかかっている。記号の解釈にあたっては、相補的関係にあるコンテクスト(非言語的な文脈)とコード(言語的な約束)とが参照される[4]。定められたコードを参照するだけでは、メッセージが解読できないとき(たとえば子供のコミュニケーション)、コンテクストが参照され、受信者による推定が加わる事になる[注 2]。
コミュニケーションによって、受け取られる、または伝えられる 情報の種類は、感情、意思、思考、知識など、様々である。受け取るまたは伝える ための媒体としては、言葉、表情、ジェスチャー、鳴き声、分泌物質(フェロモン等)などが用いられている。動物の媒体[注 3]と人間の媒体を比較すると、人間の媒体には(身体の動作、表情、フェロモンなどの動物と共通の媒体に加えて)言語がある、という点が異なっている。
コミュニケーションは、その相互作用の結果として、ある種の等質性や共通性をもたらすことも少なくない[注 4]。人間の場合は特に、他者に対して自分の心の状態を伝えることで働きかけるだけでなく、他者から受け取った情報により、相手の心の状態を読み取ったり共感したりすることも含まれる(他者理解)[注 5]。
注釈
- ^ デジタル大辞泉では、わざわざ[補説]として次のような説明文を併記し、注意を促している。
- 『「コミュニケーション」は、情報の伝達、連絡、通信の意だけではなく、意思の疎通、心の通い合いという意でも使われる。「親子の―を取る」は親が子に一方的に話すのではなく、親子が互いに理解し合うことであろうし、「夫婦の―がない」という場合は、会話が成り立たない、気持ちが通わない関係をいうのであろう。』(出典:デジタル大辞泉)
- ^ 脳科学では、言語的な理解を主に担っている左大脳半球に障害を負ったウェルニッケ失語症の人々は、語られたことの意味を理解できない反面、それがどのように 語られたかという非言語的な理解(またそれによる他者の感情の理解)では、障害を負っていない人々よりも優れた理解を示す。これは、右大脳半球が主に非言語的な理解を担っていることによると考えられている。
- ^ 動物行動学では、相手の本能行動に影響を与えるための特定の信号は「リリーサー」ないし「解発刺激」と呼ばれ、コミュニケーションの手段として機能するP.J.B. スレーター(1994)『動物行動学入門』岩波書店。
- ^ そもそもコミュニケーション(Communication)という語は、ラテン語のコムニカチオ(communicatio)に由来し、「分かち合うこと」を意味するものである。
- ^ 他者理解の困難な自閉症の子どもは、ポテトチップスの筒の中にアイスバーが入っていることを知らされても、他の子どもであればその筒の中にはポテトチップスが入っていると答えるはずだ、ということが推測できないことがある(サリー・アン課題も参照)
- ^ ここで言う記号とは何かと言うと、C・モリスの定義のように「あるモノが眼のまえに存在していないにもかかわらず、それが存在しているかのような反応をおこさせる刺激」ということである(『人間関係 理解と誤解』p.71)
出典
- ^ a b c 広辞苑 第五版 pp.1004-1005 コミュニケーション
- ^ デジタル大辞泉
- ^ a b 『心理学』東京大学出版会 ISBN 4130120417
- ^ 池上嘉彦ほか『文化記号論への招待』有斐閣1983 ISBN 464102345X
- ^ 加藤秀俊 1966, p. 64.
- ^ 加藤秀俊 1966, p. 65.
- ^ a b c d e f 加藤秀俊 1966, p. 66.
- ^ a b 加藤秀俊 1966, p. 71.
- ^ 加藤秀俊 1966, p. 74.
- ^ a b 加藤秀俊 1966, p. 76.
- ^ a b 高橋正臣 1995, p. 22.
- ^ 高橋正臣 1995, p. 25-27.
- ^ 加藤秀俊 1966, p. 82.
- ^ 加藤秀俊 1966, p. 83.
- ^ a b 加藤秀俊 1966, p. 85.
- ^ a b c d Wood, J. T. (1998). Gender Communication, and Culture. In Samovar, L. A., & Porter, R. E., Intercultural communication: A reader. Stamford, CT: Wadsworth.
- ^ Tannen, Deborah (1990) Sex, Lies and Conversation; Why Is It So Hard for Men and Women to Talk to Each Other? The Washington Post, June 24, 1990
- ^ Maltz, D., & Borker, R. (1982). A cultural approach to male-female miscommunication. In J. Gumperz (Ed.), Language and social identity (pp. 196-216). Cambridge, UK: Cambridge University Press.
- ^ 水野由多加・妹尾俊之・伊吹勇亮『広告コミュニケーション研究ハンドブック』有斐閣 2015年
- ^ 山本武利責任編集『新聞・雑誌・出版 叢書 現代のメディアとジャーナリズム5』p.153、ミネルヴァ書房、2005年11月20日初版第1刷発行
- ^ 柏木博『日用品の文化誌』p.149、岩波書店、1999年6月21日第1刷
- ^ 『岩波生物学辞典 第四版』p.481【コミュニケーション】
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