宇多喜代子とは? わかりやすく解説

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宇多喜代子

宇多喜代子の俳句

《   》は水の育くむ水の塊
あきざくら咽喉に穴あく情死かな
いしぶみの表裏に雨意の百千鳥
いつしかに余り苗にも耳や舌
うたがえば近景に日の青鷹
かろがろゆく南無三楠木に揚羽
くちなわを跨ぎて運ぶ山の死者
すさまじき水のしむ歯に似非の神
たっぷりと冬芽や四十五本の木
たつぷりと泣き初鰹食ひにゆく
ねむりつつ深井へ落とす蝶の羽
ひえびえと来るものを知る黒髪の芯
ひとところ盛りあがりたり蛇の水
ひとりづつ呆けてゆけば初雪来
ひとを待つ間に猫の子に名を授け
ふところの鳥の重さを偽りぬ
またここへ戻ると萩に杖を置く
まっくろな目ゆえ鼠は殺される
もてあます首の長さや苗代寒
わかさぎは生死どちらも胴を曲げ
コカコーラ持つて幽霊見物に
サフランや映画はきのう人を殺め
セーターの胸に百日目の赤子
ベラの海大きな他人と並ぶかな
一束の百合好きなのか嫌なのか
一束の菊の近事を虚言と聞く
一柱の真直ぐに添うて霜柱
丘の木にまぎれて吃る夏鴉
乾坤に丈を縮めて那智の滝
人の死に菊と扉の多い家
仰山な桜吹き入る虎の檻
便り出てくる壺からも木槿からも
優柔な魚であるから尾はしろがね
元朝の足袋の真白をきゆつと穿く
冬空や鷗に白濁はじまりぬ
凸凹の多き顔かな雪降り積む
出奔の男にみえる九月の木
出欠を考へ考へ梅を漬け
初嵐壁にするどく棒の影
半身は夢半身は雪の中
厄介なひとも来てをり初芝居
君羨し晩涼の両手は天へ
嚔の巣臍の右とも左とも
夏の兎飢えたり夢を見ていたり
夏の日のわれは柱にとりまかれ
夏の暮騎手の美貌をみてゐたり
夏の母熟睡の蹠すさまじき
夏夕焼授乳の母を円心に
夕方の影あいまいに春障子
大神と触れ狼を売りにゆく
 

宇多喜代子

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/08/17 07:51 UTC 版)

宇多 喜代子
文化功労者顕彰に際して
公表された肖像写真
誕生 (1935-10-15) 1935年10月15日(87歳)
山口県徳山市
職業 俳人
言語 日本語
教育 短期大学士武庫川学院女子短期大学
最終学歴 武庫川学院女子短期大学
家政学科卒業
活動期間 1980年 -
ジャンル 俳句
代表作 『象』(2000年
『記憶』(2011年
主な受賞歴 現代俳句協会賞1982年
蛇笏賞2001年
詩歌文学館賞
俳句部門(2012年
現代俳句大賞2014年
日本芸術院賞2016年
俳句四季大賞2019年
デビュー作 『りらの木』(1980年)
所属 獅林
草苑
現代俳句
未定
大阪俳句研究会
船団
草樹
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宇多 喜代子(うだ きよこ、1935年(昭和10年)10月15日 - )は、日本俳人現代俳句協会特別顧問[1]日本芸術院会員文化功労者

「草苑」編集長、「草樹」会員代表、大阪俳句研究会理事、現代俳句協会会長などを歴任した。

来歴

生い立ち

山口県徳山市(現:周南市)生まれ。武庫川学院女子短期大学家政学科卒[2]1953年石井露月門下の遠山麦浪を知り俳句をはじめる。1962年、麦浪が没し前田正治主宰となった「獅林」に入会。1970年、「草苑」創刊に参加し、桂信子に師事、同誌編集長を務める。1976年から1985年まで坪内稔典編集の「現代俳句」に参加。1978年より「草苑」編集担当となり「獅林」退会。1981年「未定」に参加。

俳人として

1982年、第29回現代俳句協会賞受賞。1985年大阪俳句研究会創設に参加し同会理事。1986年、坪内代表の「船団」に参加。2001年、句集『象』にて第35回「蛇笏賞」受賞。2002年紫綬褒章を受章。2004年、桂が没し「草苑」終刊、あらたに「草樹」を創刊し会員代表となる。2006年現代俳句協会会長に就任(2011年退任)[3]2012年、『記憶』で第27回詩歌文学館賞俳句部門を受賞、2014年、第14回現代俳句大賞受賞[3]2016年日本芸術院賞受賞。2019年、第18回俳句四季大賞受賞、文化功労者[4]2020年、第61回毎日芸術賞受賞。

作風

「獅林」のなかで俳句の骨法をまなび、「草苑」で新興俳句の伸びやかさに育まれた。伝統、新興、前衛の良さを吸収し、また評価している。さらに『夏月集』では作家中上健次および熊野との出会いから句風に転換が起こった[5]。代表句に「天皇の白髪にこそ夏の月」(『夏月集』)、「いつしかに余り苗にも耳や舌」(『象』)などがある。農事や歳事に関心が深く、俳句史や俳句評論の分野の著作も多い。

著書

句集

  • 『りらの木』 草苑発行所、1980年
  • 『夏の日』 海風社、1984年
  • 『半島』 冬青社、1988年
  • 『夏月集』 熊野大学出版局、1992年
  • 『宇多喜代子 花神現代俳句』 花神社、1998年
  • 『象』 角川書店、2000年
  • 『記憶』 角川学芸出版、2011年
  • 宇多喜代子俳句集成』 角川学芸出版、2014年[注釈 1]
  • 『円心』 2014年9月 角川学芸出版 第七句集
  • 『森へ』 2018年12月 青磁社 第八句集

評論・エッセイ他

  • 『つばくろの日々』 深夜叢書社、1994年
  • 『ひとたばの手紙から』 邑書林、1995年(のちに角川ソフィア文庫)
  • 『イメージの女流俳句-女流俳人の系譜』 弘栄堂書店、1994年
  • 『篠原鳳作』 蝸牛社〈蝸牛俳句文庫〉、1997年 
  • 『私の歳事ノート』 富士見書房、2002年
  • 『私の名句ノート』 富士見書房、2004年 改題加筆『名句十二か月』角川学芸出版、2009年
  • 『里山歳時記田んぼのまわりで』 日本放送出版協会、2004年
  • 『古季語と遊ぶ-古い季語・珍しい季語の実作体験記』 角川学芸出版、2007年
  • 『旬の菜時記』(大石悦子茨木和生共著) 朝日新聞出版〈朝日新書〉、2009年
  • 『戦後生まれの俳人たち』 毎日新聞社、2012年 
  • 『俳句と歩く』 角川学芸出版、2016年

出典

注釈

  1. ^ これまでに刊行された句集に加え、『記憶』以後の作品168句を第7句集『円心』として収録している。

出典

参考文献

関連項目

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