鳳寿司
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関口将太(せきぐち しょうた) 北海道は小樽の寿司屋「巴寿司」の長男。連載版は小樽市立北陽中学3年生として登場し、笹寿司の妨害で荒れた生活を送る父・源治を気に掛けて自分には何ができるのか深く悩んでいたが、街中のポスターで知った「小樽寿司握りコンテスト」へ笹寿司の謀略で重傷を負った父親の代わりに出場し、家業を継ぐ決心を固め、コンテスト終了後の鳳征五郎のスカウトもあり中学卒業と同時に東京の「鳳寿司」へ修業に入る。同級生の渡辺久美子に好意を抱いており、卒業後は遠距離恋愛の仲となる。源治や征五郎を非常に尊敬している。一人称は「僕」。 スポ根ものに通じる努力の才能を持っており、技術や知識の習得に余念がなく、経験の浅さを創意工夫と努力で補うことを信条とする負けず嫌いな性格である。源治からは大学進学を嘱望され、笹木以外のクラスメイトからも慕われる優等生タイプでもあり、何度となく中学の同窓生に助けられている他、笹寿司の横暴に苦しむ人々にとって彼の存在は希望となっている。修業入り後は家族・同級生や慎吾以外とはタメ口は使わず敬語で話している。 『全国大会編』では東京代表として参加し、数多くの寿司職人達と誇りを賭けた戦いに勝ち抜き、終盤でついに優勝を果たす。鳳寿司での修業を終えて巴寿司へ錦を飾り、大団円を迎えた。 『全国大会編』の3年後を描いた2008年の読み切りでは、久美子と結婚し巴寿司の若旦那として切り盛りしている。久美子とは夫婦水入らずの仲で妊娠(後の将太朗)が告げられて父親になる予定。『全国大会編』最終話で和解した笹木との関係も北海道に進出する東京のチェーン寿司店の手口を「汚い」と評する彼に対し「お前が言うな」と的確なツッコミを入れている辺り、連載時の険悪な関係は感じられない。 『2』では40歳の落ち着いた中年。顔に多少皺はあるがかつての面影を残している。巴寿司2代目として将太朗を巴寿司のツケ場に入れて育てていたが、佐治を伝って鳳寿司へ修業に行かせた。また、佐治ともども日本寿司協会の会長職を要請されていたが固辞している。20年以上の寿司職人人生で未だに「これだ!」と思う寿司が握れていないとの事で、更なる高みを目指している。 マガジンSPECIAL版では、陸上競技に打ち込む恋愛感情に鈍感な東京に住む高校2年生だったが、父親が倒れ家計を支えるために高校3年目前で中退し、鳳寿司で働き1年が経過した19歳。追い回しで手一杯の日々を送っていたが、好意を伝えられずに別れた恋人の藤原美智子との再会により寿司作りに奮起する。一人称は「オレ」。 ドラマ版では、北陽高校卒業後に小樽から上京して寿司の世界に入るという設定であり、多少やんちゃな性格で血の気が多い部分があり、鳳寿司に入ってから親方が病気で倒れたり笹寿司の嫌がらせが始まった為に佐治からは一方的に敵視されていた。「日本一!」を決め台詞にもつ。 小畑慎吾(シンコ/おばた しんご) 鳳寿司の追い回し(雑用係)で、将太よりは半年ぶん先輩。将太にとっては苦しい修業の中、苦心を分かち合える盟友である。「コハダになっていない」という意味合いで、名前をもじって「シンコ」と先輩や将太からは呼ばれている(作中でシンコを下魚とみなすシーンがあるが、実際には超高級寿司ダネ)。山口県の農家出身。追い回しとしての仕事には手抜きがなく誠実だが、精神的に脆い面があり、将太に対する劣等感や失敗を佐治に咎められたことを気に病んで逃亡したり、お客に出すためのウニの管理を誤り、結果上得意客を失うという失態を晒し、(あくまで親方にクビを告げられた場合ではあるが)店を辞めようとしたことがある。将太の説得により鳳寿司に復帰した後は職人になるため一層の努力を行っている。その仕事ぶりと心意気は征五郎に「上得意のお客様を失うよりも慎吾を失うことのほうが遥かに辛い」と言わしめるほどで『全国大会編』ではその成果を見せ、コンクールにも出場。1回戦で溶けたウニを使うというハンデの中で溝口の柏手を出させる寿司を作り、満点トップ通過するも2回戦で敗退した。連載の最終回ではその仕事が実を結んで、ツケ場に立った。 「ゴゴゴゴゴ」の擬音と共に飛男が驚愕する巨根らしい。 『2』では第一線の寿司職人として鳳寿司のツケ場に立っており、若手のホープとして期待されている。20年が経過して「GENESIS(ジェネシス)」に敵愾心を持つほどの意地っぱりになった。 ドラマ版では半人前扱いされて辛い思いをするシーンが増えた一方、必死の努力の末に笹切りを作る包丁技術を披露した。 吾子飛男(あこ とびお) 将太の後に入ってきた鳳寿司の追い回し。素行不良で高校を中退し、母親からの要望で鳳寿司に入ってきた。甘やかされて育ったために当初は自分勝手でこらえ性がなく、ジャンクフード漬けで寿司の味が分からない、隠れて煙草を吸う、失敗にふて腐れて飲酒をするなど、問題の多い少年であったが、煙草については母親の命を掛けた説得で改心。その後も将太のフォローや叱咤などの様々な出来事によって真っすぐな性根を取り戻し「天下の鳳寿司のパシリ」を自認するようになる。『全国大会編』では将太の助手を務めることが多かった。 タレントとして芽が出ずにやさぐれていた先輩・北岡を「叩いて香りを立てた紫蘇の実と歯ごたえがよくなるように切った刺身のツマ(大根)をシソの葉で巻いた」物を食べさせて「努力すれば普段は大したことなくても直に芽が出る」と立証させて立ち直らせるなど、将太や大政からも「いい刺身のツマになった」と褒められるほどになった。最終回では親方となった佐治のマンツーマンの指導で雷を落とされながら、魚の捌き方の特訓中の様子が見受けられた。 『2』ではツケ場に立っており、慎吾共々若手のホープとして期待を寄せられている。お調子者の性格は相変わらず。「GENESIS(ジェネシス)」の経営に同調して慎吾からタコ殴りにされた。 鳳征五郎(おおとり せいごろう) 当代の名人と言われた鳳寿司の親方。創業者ではなく婿入りして店を継いだ。話によって五代目だったり六代目だったりしている(いずれにせよ創業70年の店で五代目ないし六代目であることから代替わりが多かったことが窺える)。妻は病弱のため店には出てこない。征五郎本人も身体の衰えによって既に一線を退いており、将太がツケ場に立ってからはほとんど寿司を握らなくなる。ただし、その握りは今なお岩崎民次が褒め称えるほどのもの。 将太が初めて作ったマグロ尽くしに感動し、自身の店への入門を勧めた。当時の鳳寿司は少々客入りが悪く、新しい従業員を雇う余裕はなかったため大政小政の反対を押し切ってのスカウトだった。その後は、厳しくも温かく将太を鍛えていくこととなる。 基本温厚な性格で、将太に限らず鳳寿司の面々を厳しくも暖かく見守り、指導するが、初期には責任を取って店を辞めるという慎吾の頭を(軽く)拳で叩いたり、将太と佐治の勝負で大政に賭けを持ちかける小政を(ギャグシーンだが)タコ殴りにするシーンも見られた。無印終盤の鳳寿司慰安旅行では、風呂場で女湯を覗こうとした飛男に桶を投げ付けて轟沈している。 『全国大会編』にて右手の痺れから白魚の尾を折ったことで引退を決意し、大政小政の独立に合わせて店を畳む予定だったが、鳳寿司に戻ってきた佐治を親方へ迎え入れたことにより安心して隠居生活を送る一方、岩崎民次の熱望により本人の後を継いで「全日本寿司協会会長」の職につく。その初仕事は、佐治と将太の決勝戦の審判をすることであった。 『2』では全日本寿司協会会長を退任して隠居生活を送っている。現役時代に患った病は回復していないが足腰は問題ないらしく、妻と自由気ままに旅行をするなど今の生活を楽しんでいる。 ドラマ版では厳しさが強くやや頑固なイメージがある。 マガジンスペシャル版では本編よりも厳つい顔つきの頑固職人で、将太に対してもよく手が出ていた。コンクールで優勝した大政に「政寿司」の暖簾を贈っている。 藤田政二(大政/ふじた せいじ) 親方に次ぐ年長の職人。「大政(おおまさ)」または「政(まさ)」と呼ばれている。年齢は、マガジンスペシャル版と設定が同じなら35歳。作中ではあまり料理の腕を振るうシーンは無いが、鳳寿司での「盛り込み」(いわゆる職人お任せの寿司の盛り合わせ)の制作が許されている職人は征五郎以外では彼だけであるなどその腕は確か。体が大きく厳ついため怖く思われがちだが普段の性格は温和そのもので、本編の10年前に、ある客が苦境から子供を道連れに自殺を考えている事を見抜き、自身で作った鮭とイクラの親子丼をサービスとして出し、鮭の親としての偉大さを語って自殺を止めたこともある(このエピソードはその客が立ち直って再び自前の工場を持つ事ができ、子供たちも立派に成長したお礼もあって来店したところから始まる)。既婚で娘が1人いる。『全国大会編』の最終回にて「下北沢 鳳寿司」としての屋号を引き継ぎ下北沢で独立。 前述のように温和な性格だが、一旦怒り出すと凄まじい剣幕で周囲を震え上がらせる。将太の出場したコンクールで、観客席から将太を馬鹿にしていた「船津」と「渋田」に制裁を加え、時には会場の外まで殴り飛ばすというシーンもある。 『2』では娘・みのりの夫を婿に迎え入れて二人で「下北沢 鳳寿司」を繁盛させている。 マガジンスペシャル版後半は彼の鮨大会出場がメインとなっている。また、片手一回だけで鮨を握る「小手返し一手」も実は習得しているが、鳳寿司入店直後に親方の前で披露したところ怒られ、「今度やったらクビだ」と釘を刺されているため将太の前でこっそり一度披露しただけ。 ドラマ版では動物園とダジャレが好きな設定が追加されている。終盤で一度独立するも、資金提供者の独断で開業した店を笹寿司のチェーン店にされていたことで店を辞め、再び鳳寿司に戻っている。 岡村秀政(小政/おかむら ひでまさ) 大政と並んで鳳寿司を支える職人。「小政(こまさ)」または「秀(ひで)」と呼ばれる(ドラマでは「小政」は会話の中で一度登場しただけで、他は一貫して「秀」)。やや女好きで、将太と初対面の時に姉か妹がいるか尋ねて征五郎に窘められたり、キャバクラの話題を度々出している。また、将太と佐治の寿司勝負を賭けの対象にしようと大政に持ちかけたところを親方に見つかって(ギャグシーンではあるが)タコ殴りにされた事もある。追い回し時代、自身が参加していたコンクールの東京大会決勝ではかんぴょうを使った海苔巻きを締めに使って優勝した(審査員だけでなく、世間のかんぴょうの扱いに絶望してかんぴょう作りを辞めると言っていた職人の心をも揺さぶった)。大政もそうだが、その後の全国大会でも、優勝には至らなかったものの「いいところまで行った」という。鳳寿司内部での勝負(社員旅行の余興での寿司勝負、鳳寿司で新しく売り出す大政、小政、将太3人の弁当勝負等)では大政と共に将太の閃きにしてやられる事もあるが、実際は現在の将太では及びも付かない腕前であり、それは魚の目利き(後述の高山信一郎との勝負)や、将太がとても捌き切れないペースのツケ場での注文も冗談交じりに軽々とこなしてしまうシーンからも伺える。 時には忙しさにかまけて将太や慎吾に対し、時期尚早な仕事を任せ、それが失敗してしまうと強い口調で𠮟りつける一面も。 売られたケンカは必ず買う熱い性根と仕事に対する真摯な態度を併せ持つ。第1部終盤で雅子の財産目当てで近付いてきた高山信一郎と婚約者の座を賭けての寿司対決を見せた。このときはあくまで「雅子を高山と結婚させないために婚約者を演じる」立場であったにもかかわらず、雅子の父親が経営する豆腐料理店まで出向き、父親の人柄、仕事ぶりを勉強した上で、父親が作る豆腐を使ったサバ寿司を作り出し、オレンジを使った高山のサバ寿司に勝利した。それをキッカケに雅子と付き合うようになる。 『全国大会編』の最終回にて雅子と結婚し、「谷中 鳳寿司」として屋号を引き継いで谷中の雅子の実家の隣に「谷中 鳳寿司」として独立。 『2』では5人の子供の父親となったが、店の売れ行きは上々である。 ドラマ版では、江戸っ子を名乗る大阪人として登場。短気で、何か問題があると責任放棄してまで店を飛び出してしまうことがあった。一度母親の強引な勧めで見合いさせられそうになったこともある。終盤では剛志が雇った二人のチンピラから将太を庇い負傷する。 佐治安人(さじ あんと) 将太より5年先輩だがツケ場には入っておらず、材料の仕込みや米炊き、卵焼きを担当していた。 当初はかなりの自信家で将太のことが気に食わず、勝手の分からぬ将太にいきなり米炊きを命じて放置する、小樽からの将太への手紙を勝手に処分するなど、見下すように陰険な嫌がらせを繰り返すが、寿司に関しては情熱を持って修業に励んでおり、2年かけてアナゴのツメを作りあげるなど征五郎や兄弟子達も認める腕前を身に付けている。将太との激闘を繰り広げていくうちに将太を一人の寿司職人として認めるようになり、新人寿司職人コンクールの出場権を賭けた三番勝負での敗北を契機に鳳寿司を去る。その後は各地を放浪したのち(北海道で将太の父関口源治とも会っている)京都へ流れ着き、ここから改めて京都市代表として新人寿司職人コンクールへ出場する。 『全国大会編』の終盤からは、塩一粒の差異も見逃さぬ「絶対味覚」を習得し、将太の前へ再び立ちはだかる。また、決勝戦間近で味覚だけでなく寿司職人に必要な五感の鋭さも増して、さらには鱧の寿司というまったく新しい寿司を作る事にも成功する。 実家は千葉で海苔の生産業を営んでおり、既に死亡した父・重人(なお、叔父に高人がいる)とは母の死をきっかけに絶縁したままであったが、勝負をきっかけに父を理解する。『全国大会編』では海岸に漂着したアサクサノリを絶対味覚で選び分けて精製したこともある。 コンクール終了後は、征五郎や職人達の強い要望により鳳寿司に復帰、親方となる。 『2』では親方歴が20年になり、腕は全く錆びついていない。5年連続でミシュランの3つ星をもらうなど、鳳寿司を名実共に日本を代表する寿司屋にした。鳳寿司に転がり込んできた「隠し子」(安人自身はその存在すら知らなかった)の佐治将太を鳳寿司で雇っており、若い頃の自分を重ねて見てしまうため彼の問題行動に余り強く言えていない。また(関口)将太のことも「関口」と呼ぶようになっていた(一応「全国大会編」でも「関口」と呼ぶシーンはある)。 その激しい性格から、慎吾によると「サージェント(軍曹)」の綽名を持つが、初登場時の紹介以外では、ごく小さいコマにて一度しか使われておらず、それ以降は専ら「安(ヤス)」と呼ばれている。 なお、作中での名前の読み表記に揺れが多く、「やすと」だったり「あんと」だったりと一定していない。 ドラマ版では悪役らしさが強調されており、時には店の迷惑も厭わずに将太、慎吾に嫌がらせを行うことがあった(将太が店に入ってから親方の病気や笹寿司の妨害などトラブルが続発したことも一因)。しかし、「寿司では嘘をつかない」という信念を持ち、将太との三番勝負でも鯛対決で事前に妨害工作(将太が注文した鯛を彼の名を騙って受け取る、誤った保存法を慎吾に教えて鯛を傷ませる)をした以外は妨害や不正は行っていない。 富山雅子(とみやま まさこ) 配膳係の女性。はっきりと物を言う気っ風のいい性格をしている。 実家は谷中にある老舗の豆腐料理屋。第1部の終盤にて実家の財産目当てで近付いてきた高山信一郎との婚約を父親に迫られ、断る口実を作るために小政を引き合いに出した(ドラマでは逆の立場でのエピソードが描かれている)。 小政の高山との寿司対決勝利後、互いに妙な雰囲気になって付き合うようになったとのことで、『全国大会編』の最終回では小政と結婚する。 『2』では5人の子の母親として「谷中 鳳寿司」を小政と二人で支えている。 ドラマ版では、昔火事で家が焼けて思い出の品が燃えてしまったことで、ことあるごとに記念写真を撮るのを趣味にしている。そして、それを知らぬ者が理由を尋ねると錯乱する。 女将さん 先代の親方の娘。確執のある寿司玄の嫌がらせに苦しむ夫征五郎のために、寿司の屋台を引いて助ける健気な気質を持つが、その時の無理のせいで病弱になりめったに店には出てこない。ドラマ版では活発でまた天然なキャラクターで、名前は「八千代」である。 鳳さゆり ドラマオリジナルキャラクター。親方夫婦の娘だが、実際は海外に渡った征五郎の兄弟子夫婦の娘で、両親が飛行機事故で他界した為征五郎夫妻に引き取られていた。征五郎夫妻はその事実を隠していたが、当人は既に知っており、そのこともあり最初のうちは寿司が嫌いだと言い、前半は一生懸命頑張る将太に対して冷めた意見を連発していた。
※この「鳳寿司」の解説は、「将太の寿司」の解説の一部です。
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