『九垓天秤』
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[とむらいの鐘]の最高幹部たる九人の“王”。世界を放浪していたアシズに最初に付き従った者達で、組織の力の象徴。この呼称は、組織の保有する同名の宝具から採ったもので、宝具の方は九つの腕を持った上皿天秤(『Eternal song -遙かなる歌-』では上皿ではない吊り下げ型の天秤として描かれている)。能力は皿に乗った“徒”同士で“存在の力”をやり取りするもの。サイズの調整が可能で、SII巻『キープセイク』では人間ほどの大きさに、X巻ではイルヤンカが乗れるほどの大きさに変えられている。『都喰らい』の戦いでフワワが、『小夜啼鳥』争奪戦でニヌルタが討たれ、中世の『大戦』にてメリヒムを除く全員が戦死。残るメリヒムが数百年後、次代の『炎髪灼眼の討ち手』となった少女に倒されたことで、完全に壊滅した。 “虹の翼(にじのつばさ)”メリヒム[Merihim] 声 - 小西克幸 男性の“紅世の王”。炎の色は虹色(虹の色数は時代や文化によって異なるが、作中では七色とされている)。V巻およびX巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は[とむらいの鐘]が誇る力の象徴『両翼』の右。あだ名は「虹の剣士」。シャナの育ての親の一人で、彼女からは白骨の容貌から「シロ」と呼ばれていた。 銀髪の青年騎士の風貌をしており、『九垓天秤』中で唯一、その姿は人間のものと酷似している。ただし顕現の規模を抑えることで服装は襤褸に、体は肌や肉が削げ骸骨の姿へと近づく。なおこの状態でも『虹天剣』は使用可能。 自己中心的で傲慢な癇癪持ちだが、主への忠誠は堅く聡明かつ冷静な部分や一途な面も見せる。[とむらいの鐘]の宿敵であり、当代最強を誇ったフレイムヘイズ、マティルダ・サントメールを一途に愛し、恋敵であるアラストールを嫌っていた。ヴィルヘルミナには好意を抱かれていたが、最後まで振り返らず(気づかなかったわけではなく全て了解し、その上で無視していた)真っ直ぐにマティルダを愛し続けた。 一体一体が並のフレイムヘイズに匹敵する力を持つマティルダの『騎士団』を一瞬にして切り伏せる剣技に加え、「空を貫く七色の光」たる“虹の翼”の力である、距離による減衰が無い一直線の虹の破壊光線を剣尖から放つ、当代(中世の『大戦』当時)最強の破壊力を持つと称される自在法『虹天剣』の使い手(剣を使うのは照準を合わせる意味が大きく、白骨の状態では素手で放っている)。さらに『虹天剣』の反射・変質を行う、硝子の盾型“燐子”『空軍(アエリア)』を多数使役しており、空に無数舞わせることで自身の戦闘力の向上に加え、[とむらいの鐘]全軍を支える空中での強大な抑止力となっていた。これらは『小夜啼鳥』争奪戦でマティルダに殲滅されており、作戦立案段階でモレクを大いに嘆かせることになった。また、『虹天剣』の七色の内一色か二色のみを飛ばして威力を抑えたり、ある程度広範囲に放つ事や、切り札として七人に分身し相手を囲み、それぞれが放つ七色の光で虹の輪を作り破壊力を集中させ撃砕する技も持つ。 なお『虹天剣』は本来、光背状(要するにリング型)の虹の翼を背後に表し、それを収束させて剣尖から放つ自在法だが、『天道宮』でシャナと戦った際は消耗していたためか、翼は輪にならない双翼となり、それを剣に沿って屈折・収束させ、放つという流れになっていた。 アシズに付き従ったのは、『九垓天秤』の中では一番後だった。 中世の『大戦』ではイルヤンカと共に先代『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールと熾烈な戦いを繰り広げ、最終的に一騎討ちで敗北。敗れた後、彼女への愛を証明するため、マティルダから別れ際に託された三つの「誓い」を守り、“天壌の劫火”アラストール、『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメル、“夢幻の冠帯”ティアマトーと共に『天道宮』にて次代の『炎髪灼眼の討ち手』育成に携わった(X巻)。なお、後にシャナが御崎市に居着いた後、その過去に関して悠二達にも説明されているが、彼の存在は教えられていない(精々が人数で「他にも一人いた」ことを示唆する程度)。 数百年を経た後、日常となっていた不意打ちの鍛錬の中で、後にシャナと名乗る少女の落とし穴の罠に引っかかり、中に詰められていたトマトケチャップを浴びた際、マティルダが致命傷を負った際の光景とその死、アシズの敗北による『壮挙』の失敗がフラッシュバックして一時パニックを起こし、『虹天剣』を暴発させて『秘匿の聖室』を破ってしまう。その後、これを感知して現れた“琉眼”ウィネを足止めして戦っていたが、同じく現れた“天目一個”に両断されて湖に転落、一時戦闘不能に陥る。しかし、シャナがフレイムヘイズ『炎髪灼眼の討ち手』となった直後、マティルダとの「誓い」を果たすため、残された最後の力で“紅世の王”として顕現。肩慣らし代わりに目の前にいたオルゴンを『虹天剣』で消し飛ばし、その後この世を乱す“徒”の立場で全力を以ってシャナと戦い、身を持ってフレイムヘイズの戦い方を教えた。その決着は、『虹天剣』による一撃を命中させる直前、自らを弾丸と化したシャナの突撃を受け、胸郭を吹き飛ばされるという敗北(同時に、マティルダへの誓いの完遂)で終わった。倒された後、シャナに『最強の自在法』の存在を教え、自らの愛の完遂とシャナの成長に満足しながら『天道宮』の崩壊と共に消滅した(V巻)。しかし、マティルダの死が「彼女の生き様のただの結果」だという事には最期まで気づかなかったらしく、アラストールのことを未だ「愛する者を自分の思惑のために使い捨てにした奴」と認識していた。 アニメの設定では身長は187㎝。炎は色が次々と移り変わるように表現されている。また倒された後のシャナとの最後の別れのシーンは第1期では省かれ、第3期にてシャナの回想の形で描かれた。 雷と稲妻を齎す『空の軍勢』の君主たる悪魔デーモン、または地獄の九階級の第六位、アエリアエ・ポテスタテス(“空の軍勢”の意)の『メリジム(Merizim)』という似た名前の君主が存在する。つまり、『空の軍勢』が共通点であった。 “甲鉄竜(こうてつりゅう)”イルヤンカ[Illyanka] 男性の“紅世の王”。炎の色は鈍色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の一人で、役柄は[とむらいの鐘]が誇る力の象徴『両翼』の左。あだ名は「鎧の竜」で、カムシンには「鎧の竜王」と形容されていた。 体中が鈍色の鱗で覆われた、四足・有翼の巨竜の姿をしている(『Eternal song -遙かなる歌-』では四足ではなく、両腕を持った二足の竜として描かれている)。 自らを老人と称する、非常に古株の“王”。戦闘時は獰猛な面を見せるが普段は温厚かつ思慮深く、ともすれば激発しがちなメリヒムらの抑えにまわる、『九垓天秤』の長老格。チェルノボーグのモレクに対する想いや、ヴィルヘルミナのメリヒムへの好意にも気付いていた。人間に対する認識は、他の“徒”と同様「麦の穂」程度にしか見ていないため、『壮挙』に何の引け目も感じていなかった。 巨大の重量と全身を覆う鱗による高い防御力を併せた打撃や、口や全身から噴出し留まらせる事で強大な防御力を発揮する、「不変不壊の鎧を纏う竜」たる“甲鉄竜”の力、当代最硬の防御力を誇る鈍色の煙の自在法『幕瘴壁』を使い戦う。また、『幕瘴壁』は先端のみを硬化させることで強大な打撃力をもつ推進弾としても応用できる。これは連射が可能だが、原作X巻では単発でしか放っておらず、『Eternal song -遙かなる歌-』II巻でかく乱として放っている。 3000余年前に行われた『大縛鎖』の儀式に招待されていた模様で、“祭礼の蛇”が『久遠の陥穽』に放逐された『神殺し』の戦いにもオオナムチと共に参戦し、当時フレイムヘイズだったアシズとは敵同士だった。しかし、その後“王”として顕現し、世界を放浪していたアシズに真っ先に付き従ったのも彼である。 中世の『大戦』の折、メリヒムと共に宿敵マティルダとヴィルヘルミナと戦い、激闘の末にヴィルヘルミナの手によって形質強化を受けた尖塔の上に投げ落とされて致命傷を負い、討滅された。 ヒッタイト神話にイルルヤンカシュ(イルヤンカ)という同名の邪龍が登場する。 “大擁炉(だいようろ)”モレク[Molech] 男性の“紅世の王”。炎の色は黄色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は組織の運営や裁量を行う宰相。あだ名は「牛骨の賢者」。チェルノボーグからは「痩せ牛」とも呼ばれる。 豪奢な礼服を纏った、直立した牛骨の姿をしている。 役職上組織のNo.2であり、『九垓天秤』の実質的なリーダーだが、普段は控えめというより小心で、地位に伴う威厳は皆無である。「強者」ではなく「賢者」として恐れられた数少ない“王”であり、戦闘には向いていないため戦闘面では主に作戦の立案などを担当している。作戦案などが通った際は、相手が「従った」のではなく「提案を受け入れた」という考え方をする。 小心かつ臆病、という一面は見せかけではなく完全な素で、万事危機に配慮し常に慎重、という賢者としての側面の裏返しである。他の面々や組織外の者のような、いざとなれば自分で何とかする、という「強者の気楽さ」とは無縁の男。そのため、アシズの許に迎えられてからは戦い以外での敵の弱体化と組織の強化に努めてきた。また、究極的にはアシズ個人のためでしかない『壮挙』が“徒”達への新たな指針とまで受け取られたのは、モレクが喧伝したため。 同志に対しては穏やかで優しいが、人間は「自分達と同じ様な精神を持つが決定的に弱い種族」として、他の“徒”同様、「麦の穂」程度にしか思っていない。また、他人の自分への思いを察知するのにも疎く、最後まで周りからの密かな尊敬やチェルノボーグの好意にも気付けなかった。他人からの気遣いにも基本的に疎い。 また、ものを見る目や知識は並外れており、後にヨーハンも宝具について調べていた時に「会えればよかった」と述べている。 小心な性格に反して、その力の大きさは異常な程。自らを山をも覆う巨大な牛型の迷宮へと変質させ敵を閉じ込め、同時に取り込んだ味方を有利な戦場で戦わせサポートする、「抱いて守り閉じ込める」“大擁炉”の力、空間制御の自在法『ラビリントス』を使う。この『ラビリントス』は空間制御の自在法の中では特に秀でた範囲を持つが、形質強化は出来ないため破壊が容易に出来るという弱点を持つ。その反面、それを『ラビリントスという形』へ組み直すことで修復がいくらでも可能という利点をも持つ。発動にはモレクの体を構成する骨を一度火の粉に分解して効果範囲に浸透させ、それを自在法として再構築する必要があるため、時間がかかる。この力はモレクがアシズの許に迎えられて以来、彼の千年の放浪と、ブロッケン山脈に落ち着いてからの数百年を守り抜いた実績を持つ。 主たる“棺の織手”アシズが『壮挙』を成すための時間稼ぎに『ラビリントス』を展開、『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールと『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルの動きを封じるものの、一部を破壊されても修復できる『ラビリントス』を全域一挙に破壊するという二人の作戦により討滅された。 旧約聖書ではモレクという同名の古代中東の神が登場する。 “闇の雫(やみのしずく)”チェルノボーグ[Chernobog] 女性の“紅世の王”。炎の色は枯草色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』唯一の女性で、役職は隠密頭だが、『頭』とは言っても部下などはおらず、単独で行動する暗殺者である。あだ名は「黒衣白面の女」。 鉤爪を備えた巨大な右腕と獣の耳を持つ、黒衣を纏った黒髪で痩身の女性であり、顔と耳の白い毛以外は全てが黒く覆われている。 “大擁炉”モレクに好意を寄せ、彼から与えられた仕事をこなすこと、彼を守る事にこの上なく大きな充足感を覚えていたが、表面上は彼を「痩せ牛」と呼んで蔑むそぶりを見せ、いつもきつい態度で当たっていた。なお、これについてはアシズや、モレク以外の『九垓天秤』全員が(真意の計れないジャリはともかくとして)気づいている。モレクと自身、双方の炎の色を持つセイヨウタンポポを好む。 右の巨腕を織り交ぜた体術や爆破攻撃、「暗闇に滴る」“闇の雫”の力として、影に身体の一部や全体を潜り込ませ近距離へと転移する『影浸』という自在法を駆使し闘う。また両腕は自在に伸ばすことが出来、『影浸』を応用して腕だけを敵の下に伸ばすことも可能。 戦場に『炎髪灼眼の討ち手』マティルダ・サントメールと『万条の仕手』ヴィルヘルミナ・カルメルが現れた後、後続を断つべく『天道宮』へ突入、『天道宮』の主たる“髄の楼閣”ガヴィダを殺害。直後にモレクが討滅されたことを知り、最後に『九垓天秤』としてアシズのために行動すべく、要塞に一度戻って守備兵を集合・出撃させ、要塞周辺を包囲する形で配置。自身はマティルダに奇襲をかけて致命傷を負わせ、向かってきたヴィルヘルミナとの戦闘に入る。少なからぬダメージを与え片腕をもぎ取るも、常の冷静さを失っていたことから『戦技無双』に同じ手を二度使うというミスを犯して勝機を逃し、討滅された。 スラヴ神話にチェルノボグという似た名前の黒の神が登場する。 “凶界卵(きょうかいらん)”ジャリ[Jarri] 男性の“紅世の王”。炎の色は亜麻色。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は組織のための情報収集にあたる大斥候。あだ名は「奇妙な卵」。 魔物・老人・女の面が張り付いた人間大の卵の姿をしていて、その3つの面から、付き合いの長い仲間でさえもなんとなくしか意図が知れない意味不明な声を繋げて喚く。これらは基本的に大まかな意味を込めた出鱈目の羅列で、その意味を理解するには言葉尻と状況から察するか、かなり大回りな解釈が必要となる。まともな発言は現在の所、『Eternal song -遙かなる歌-』III巻における「御意!」と同I巻におけるニヌルタの最期に対する「命を賭し!」「使命を賭し!」「任務を全うした!」。 内心については全く描写されておらず、言動も意味不明なことが多いため精神面はまるで不明であり、「変人」と呼ばれている。[とむらいの鐘]の中でも古参の“王”で、アシズに付き従った年月はイルヤンカやウルリクムミに次いで長い。チェルノボーグのモレクに対する想いにも気付いているようで全く関係ないような、微妙な発言もした。あまりに意味の分からない言葉から、「ジャリの内心を図るのはフレイムヘイズを百屠るより難しい」とまで言われている。なお、アシズだけは彼の真意を明確に理解している模様。『九垓天秤』の共通項として、アシズには忠実。アシズに礼を取る際は卵の姿という都合上姿勢が取れないため、代わりに崇敬の意を込めた出鱈目を吐く。 戦闘向きの力は持たないが、絶大な規模で自在法を展開し制御することが出来る。「不吉を収めた卵」である“凶界卵”の力として、無数の蝿を統御して索敵・情報収集・攻撃を行う自在法『五月蝿る風』を使い、多くの情報を集める組織の枢要。一定以上の防御力を持つ相手には攻撃効果がないが、防御手段を持たないフレイムヘイズは蝿に喰われ、燃やされてしまうため、中世の『大戦』では戦場となった平原の空中に密集させることで、『空軍(アエリア)』を失ったメリヒムに代わり討ち手の大部分の飛行を封じていた。 最強の敵マティルダを前に最後まで主のアシズに付き従ったが、マティルダにより『天破壌砕』を行う際の生贄とされて消滅した。 ヒッタイト・小アジアに同名の疫病の神が存在する。 “巌凱(がんがい)”ウルリクムミ[Ullikummi] 男性の“紅世の王”。炎の色は濃紺。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は先陣を切って[とむらいの鐘]の軍を率いる先手大将。あだ名は「鉄の巨人」。 分厚い鉄板もしくは鉄塊を巨大な人型に組んだような姿で頭部は無く、胴体部分に双頭の白い鳥の絵が描かれている。言葉を発するのはこの鳥で、語尾を大きく震わせる特徴的な喋り方をする(原作では思考の際の心の中の声も同様だったが『Eternal song -遙かなる歌-』では普通)。背中側には四つの翼を持った何かの紋章が描かれている。 卓抜した戦術眼と統率力の持ち主であり、公明正大な人格者で、仲間からの信頼も厚い。また戦場を離れた常の状態では非常に慎み深い性格。 濃紺の炎を混ぜた竜巻を自身の周りに発生させて周囲の鉄を引き寄せて巻き込み、質量に速度と“存在の力”を加え強化された鉄による濃紺の激流を放つ、「勝鬨を上げる岩山」たる“巌凱”の自在法『ネサの鉄槌』を使う。原作では体の周囲を渦巻かせ、敵の頭上へ落とす形で使用していたが、『Eternal song -遙かなる歌-』では腕に力場を展開して鉄を引き寄せ渦巻かせ、それを横向きの奔流として放つ形で一貫している。 組織ではかなりの古参で、イルヤンカに続いてアシズに付き従っている。 中世の『大戦』では、先手大将として軍勢を率いて、ゾフィー率いるフレイムヘイズ兵団と戦い続け、終始フレイムヘイズ兵団と互角以上に戦った。アラストールの顕現により大勢が決した後はより多くの同胞を生かすため、生き残っていた全軍を[仮装舞踏会]へ任せ、自身はフレイムヘイズを足止めするために残り、ゾフィーに討滅された。 ヒッタイト神話に登場するウルリクムミという同名の巨人が存在する。“架綻の片(かたんのひら)”アルラウネ[Alraune] 女性の“紅世の徒”。炎の色は薄桃。X巻、S巻『キープセイク』に登場。名前が判明したのは『キープセイク』で、X巻では「妖花」名義で通されていた。 その姿は、美女の顔を中心に抱いた妖花。この顔は常に目を閉じており、開けることはない。 よく気の回る性格で、隠れた内心や表に出ない意図を素早く的確にくみ取り、対応する。これは、ウルリクムミという文字通りの鉄面皮にして不言実行の上官を持つことから身に着けた職能である。語尾を疑問系で結ぶ癖がある。 援護や補助の自在法を得意とする自在師で、“巌凱”ウルリクムミの副官を務めていた。常に疑問形で話す癖がある。最後まで先手大将としての使命を果たそうとするウルリクムミに付き添い続け、彼と共に散った。 アルラウネという同名の人の形をした植物が存在する。 “焚塵の関(ふんじんのせき)”ソカル[Sokar] 男性の“紅世の王”。炎の色は黄土。X巻、S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は“巌凱”ウルリクムミと同じく先陣を切って[とむらいの鐘]の軍を率いる先手大将。あだ名は「石の大木」。 木の葉一つ無い石の大木の姿をしており、洞から甲高い声で喋る。 見栄っ張りな性格で、ブロッケン要塞落成の式典の際には、入城の序列を巡って騒ぎを起こしたりもした。話が回りくどく、「つまり」を重ねるほどに論点が整理されなくなっていく。ウルリクムミいわく「陰険悪辣の嫌な奴」である為か、他の面々、特にニヌルタとは反りが合わない。“千変”シュドナイと知らぬ仲ではない模様。 「焼き尽くす門」たる“焚塵の関”の力、周囲一帯を覆い尽くす規模の石の木を多数生み出し操る防御の自在法『碑堅陣』の使い手。ソカル自身はこの中に潜み、入り込んだ敵を石の樹木で圧殺する、枝を伸ばして突き殺す、茨で縛り殺す、あるいは自身の手を巨大化させて握り潰すなどの直接攻撃を行う他、陣内の樹木に目を開いて様子を伺う、味方の姿を隠して潜ませるなど汎用性が高い。 名うての戦上手であったが、中世の『大戦』では、防御陣と性格の相性が悪いこともあってカール・ベルワルドの速攻を受けて序盤戦で討滅されてしまった。『Eternal song -遙かなる歌-』ではベルワルド集団の進撃を何度も阻んだが、突撃して来たカールを捕獲したのが仇となり、防御に転用された『グリペンの咆』で逃げられた上に右目を穿たれ、『グリペンの咆』と『ドラケンの哮』の斉射を受けて戦死した。 同名のメンフィスの墓地の神が存在する。 “天凍の倶(てんとうのぐ)”ニヌルタ[Ninurta] 男性の“紅世の王”。炎の色は黝(あおぐろ)。S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は全軍の中核となるアシズを守りつつ、[とむらいの鐘]の主力軍を統率する中軍首将。「氷の剣」と形容されていた。 その姿は槍や剣や棍棒など様々な武器が刺さったガラスの壷(中に刺さっているのではなく、外周部分に「突き刺さって」いる)で、戦闘時はこれらの武器に霜が降り始める。 謹厳実直な性格で、公正ならば文句は言わないが、自己顕示欲の強いソカルとはよく激突していた。 固有の自在法などは不明だが、『Eternal song -遙かなる歌-』の描写を見る限りでは刺さっている武器を展開・浮遊させて操る能力を持っていた模様。 中世の『大戦』直前の『小夜啼鳥』奪取の際に、フレイムヘイズらによって討滅された。対[とむらいの鐘]戦を描いた外伝コミック『Eternal song -遙かなる歌-』では、アシズたちの退路を守って戦い抜き、マティルダに討滅された。 同名のバビロニア神話の戦争の神ニヌルタが存在する。 “戎君(じゅうくん)”フワワ[Huwawa] 男性の“紅世の王”。炎の色は焦茶。S巻『キープセイク』に登場。『九垓天秤』の1人で、役柄は戦機に応じて動き、強襲や危険な任務を遂行する遊撃部隊の長・遊軍首将。 腹まで口が裂けた巨大な狼の姿をしており、「牙剥く野獣」と形容される。 戦いにしか関心のない性格で、自身を誇ることにはまるで興味がない。また、口も悪い。 中世の『大戦』以前の『都喰らい』発動後の戦いで、手勢を駆り、敗走するフレイムヘイズ達を殲滅しようと追撃していたが、マティルダによって討滅された。 バビロニア神話に登場する怪物フンババ(Humbaba)の古名に、似た名前が存在する。
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