◆政治、戦争、ナショナリズム◆
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「伊田広行」の記事における「◆政治、戦争、ナショナリズム◆」の解説
政治へのスタンス: 権利は恩恵として与えられるものでなく、当事者が抵抗し闘いとっていくことで獲得できるものということを基本と考える。民主主義社会は、一人ひとりが自分の頭で考えて、主流秩序に対して不服従・抵抗することで成り立つと考える。そうした自分で考える主体的人間を「シングル単位社会を形成する“シングル”」とする。 トランプ、プーチン、安倍などの右派・ナショナリズム的なポピュリズムスタイルに反対。左派・リベラル・民主主義重視系で、連立政権ができたほうがいいというスタンス。一般論でいうと、政治は妥協であり、現実主義であり、結果論であり、権力闘争は暴力主義・謀略駆使・金権政治・汚い方が勝つことが多く、非暴力的でまじめで正直な人は勝ちにくいので、政治というものににナイーブにはなれない(理想を語れない、希望を持てない)という認識。しかし嘆いたり批判だけでは、現実は改善できないので、少しでもマシな状態にするために誰かが妥協的に政治闘争にかかわる必要があると考えている。 日本では、自民党や公明党、維新、みんなの党などを批判。しかし日本では、北欧型の社会民主主義で政治的に勝利するのが当面難しいと感じている。政治家個人としては、非常に素晴らしい政治家がいることは知っており、そういう政治家を支持・応援してきた。しかし自分は政治には向いておらず、政治自体にあまり期待できないと思ってかかわりは小さくしているスタンス。アナーキスト的に細部末端からの抵抗に当面の希望を持っている。社会全体を変えるのがむつかしくても、部分的には理想社会に近い状態が作れるという希望の持ち方。共産党、社民党、社会党、新社会党、民主党、立憲民主党などを基本的に支持。2009~2012年の民主党政権には自民党政権よりましな点が多かったので大きな意義があったと考えている。したがって民主党政権を失敗だったと批判するスタンスに反対。それが安倍政権をもたらしたと思うので、相対的にましな方を支持すべきと考える現実主義。 自民党に勝つために、野党共闘により候補者一本化に基本的に賛成。共産党と立憲民主党の選挙での対等協力を支持。選挙制度自体に問題が多いと考え、北欧型の、政党中心の選挙にしたほうがbetterと考えている。当面、中選挙区にして民意を多様に反映したほうが良いと考える。政治姿勢において、本質的特徴をつかむために、「左派」「右派」「左翼」「右翼」「国家主義者」といった分類には有効性があるとみている。主流秩序を基準に自分の判断基準を明確に持てない者が、判断軸を見失って「左翼」「右翼」という区分を嫌っている場合が多いとみている。 政治については、「ジェンダー重視時代の新しい政治」(畑山敏夫・平井一臣編『新 実践の政治学』法律文化社 2007年2月発行)、「政治家っていったい何をしているの?――地方政治を内側から調べる」(大阪経済大学地域政策学科編『フィールドワークのすすめ』法律文化社 2003年)などもある。 関連 「野党がふがいない」という決まり文句が間違いという指摘 混乱させたのは松井の方なのに、逆に弾圧、まさにファシズム 暴力・戦争へのスタンス: 非暴力主義の伝統から学び尊重するスタンス(伊田著『戦争に近づく時代の生き方について)。ただし暴力に抵抗するための暴力が必要な時もあると認める。DV論などで暴力概念をグレーゾーンまで拡大し、DVに早く気づき対処する社会になることを提唱。 戦争については、絶対反対の立場である。次の「反戦争」項目も参照。 「攻めてこられたらどうするんだ」への答えはすでに伊田は出しているという。ル=グィンに学んで、「マッチョ・男らしく祖国を守ろう」ではなく、『逃げよう』という路線である。逃げるがそれは暴力に屈するのでなく、真に「勝つ」ための路線である。とりあえず逃げて、そして時間の中で戦い勝利する道である(主流秩序への抵抗路線)。具体的に、ロシアのウクライナ侵攻についてはブログでコメントしている。 命を守るために逃げろ! ロシア・プーチンによるウクライナへの戦争について - ソウルヨガ (hatenablog.com) ウクライナのナショナリストに騙されるな 踊らされるな 命を捨てさせられるな いつからあなたは軍の司令部になったのか ロシアのウクライナ侵攻について 補足 「いいや、あなたたちは知っていた」2015-12-22 2015-12-21 戦争時代前夜 2015-12-12 九州大学 生体解剖事件 反戦争・反自衛隊: 戦争反対(反戦)のスタンス。したがって憲法9条維持のスタンス。安易な憲法改革の動きに反対。自衛隊反対で、自衛隊を解体し、災害救助隊に根本的組織改編するのがいいというスタンス。非武装中立をいって何が悪いかと思っている。伊田著『戦争に近づく時代の生き方について―――戦争/ナショナリズム/暴力に対する、非暴力/主流秩序の観点』(電子書籍 2016年3月、増補版・オンデマンド印刷書籍&電子書籍2020年9月)に戦争への見解がまとめられている。 2015-12-09 特定秘密保護法の正体――秘密だからと会計検査院の検査も拒否 ナショナリズム思想に反対: ナショナリズム・排外主義・ヘイトスピーチ・軍国主義に反対。言論の自由に対しては、人権侵害する自由はないとする立場。 これに関連する記事: 認識のゆがみ―――米朝会談と拉致問題とナショナリズム 2015-12-31 君が代斉唱起立で、またまたひどい判決 歴史修正主義に反対: 慰安婦問題をはじめとして、日本には歴史修正主義がはびこっていると考え、それを批判する立場を伊田はとっている。「反日」などという右翼が使ってきた表現を近年は日本の主要メディアが全部使っている状況がおかしいと主張。2022年にはNHKで「歴史戦」という表現まで使われた。歴史教科書問題(慰安婦、侵略などの削除)、佐渡金山問題、徴用工問題、南京大虐殺など、様々な問題で日本は、歴史に正しく向き合わず、日本は悪くなかったという歴史修正主義をばらまき始めている状況とみている。北朝鮮・韓国・中国を敵視するようなヘイト傾向にも反対。 朝鮮学校差別に反対 こんなにわかりやすく差別しておきながら差別とも感じないで、差別する自民党政権を容認するほど鈍感な人たちが多いことが信じられない。日本の恥だと思う。 参考: 安倍政権とともに北朝鮮差別を平気で行う日本の司法・メディア 朝鮮高級学校へのいやがらせ 修学旅行おみやげ取り上げ事件 [13] 朝鮮学校お土産没収いじめ その4 韓国弁護士団体、国連に日本国内の朝鮮学校差別実態報告書提出 [14] 朝鮮学校を「高校無償化」の適用外としていることに反対するの声明 への署名 [16] 外国人差別に反対: 研修制度に隠れた外国人労働者搾取に反対、入管の人権抑圧待遇・暴力・難民認定の低さに反対、在日外国人差別にも反対。在日外国人にも選挙権を保証するべきという考えに賛成。 入管行政のひどさに反対する立場 過去、多くの人が入管行政の中で異常ともいうべきひどい扱いをされてきた。したがって人員を入れ替え制度を改変するなど根本的に変えないと、同じレベルの人権意識の人が残っていては変わらないと考える。過去に適切な医療を与えず虐待したような“犯罪”を犯した者たちは厳重な処罰をなされるべきであると考える。隠ぺい体質をなくすためにも完全透明化が必要。すべての記録ビデオは全面開示すべき。 とりあえず、名古屋の入管施設で2021年3月に死亡したスリランカ人女性ウィシュマ・サンダマリさんへの虐待に加担した職員・医療関係者は懲戒免職とともに、刑事罰に処されるべきと考える。ウィシュマさんの妹、ポールニマさんが国に損害賠償を求め提訴した裁判を支持。国は争わず、すぐに謝罪・賠償すべき。 憲法改正に反対+反天皇制: 一般論でいえば憲法を変える場合があってもいいと考えるが、実際の政治においては、憲法9条を含め、自民党の右翼的な改悪案(家族単位も書かれている)に結果的に加担することになる危険性があるので、現状では憲法改正に反対。憲法改正に賛成という人は、結果的に右翼的な改悪におわったときに結果責任を取るべきと考える。その覚悟がなく、安易に憲法見直しを言うのんきな人の政治的センスに疑問。なお、天皇制自体に伊田は反対(将来的には廃止すべき)だが、当面、現行憲法の枠内にとどまる天皇制の維持には賛成する。女性天皇・女系天皇制への改革に賛成。天皇制と結びついた国民体育大会などに反対。伊田著「私の反天皇制的生き方――ジェンダー、“女性の貧困”、プレカリアートの反貧困運動」(『飛礫(つぶて)』64号09年秋発行 )には、主流秩序論と結び付けて天皇制的なものとは何かの見解が記してある。 参考:WAM 【アピール】天皇制に終止符を 非暴力的な社会改革: 過去の革命の意義も認めるが、現代においては暴力的な革命は不可能と考え反対する。市民革命、ロシア革命など現実的に歴史を進めた面があると思うが、現実として革命中やその後に、独裁体制的になり、非民主主義的な弾圧、粛清があったことには、まったく賛成できない。その時代や社会に生きていれば現実はむつかしいと思うが、今の日本にいる自分としては暴力的な闘争は選択しない。しかし、ミャンマーの軍事クーデーターやその後の傍若無人な弾圧に対して、非暴力的な戦いだけでなく、仕方なく武力をもって抵抗することは支持する。先制攻撃否定。敵基地攻撃否定。核禁止条約を批准すべきと考える。安倍政権の安保法に反対。集団的自衛権に反対。日米軍事同盟に反対。竹島などの領土で外国と対立することに反対。自国民と領土のために武力で戦うことに反対。米国との軍事同盟を破棄して、非武装で中立路線を選ぶ。 反監視社会: 監視社会に反対。スパイ防止法反対。監視カメラの無限拡大に反対。しかし、実際の犯罪防止のために、個人が防犯カメラを使うことには賛成。オリンピック・国民体育大会・万博開催などのイベントを契機とした監視強化に反対。しかし、犯罪防止のための利用には限定的賛成。性暴力加害者の監視には賛成。 表現の自由: 児童ポルノなどの規制には一定条件で賛成。論争があって議論が深まり認識が高まることが大事と考える。美術館の作品の評価が多様にあることはいいが、差別を拡大することに反対する立場。主流秩序に加担する作品に批判があってもいいじゃないかという立場。反対派を毛嫌いして対話しないのではなく、どういう思いで反対や賛成があるかを聞き合うことが大事という立場。ポルノ被害との関係で伊田が書いたものとして、「性暴力被害者の声に耳を傾けず主流秩序にいなおる森美術館」(ポルノ被害と性暴力を考える会編『森美術館問題と性暴力表現』不磨書房、2013年)がある。 世界の人権侵害に反対: 世界的な人権侵害に反対する。光州事件、香港弾圧、天安門事件、チベット弾圧、ウイグル弾圧などに反対。トランプやプーチンの敵対勢力罵倒・弾圧に反対。拉致にも当然反対だが、日本の拉致被害者の運動が右翼の緊張激化による戦争準備の機運を高めるための活動に利用されていることには批判的。北朝鮮への戦争・武力干渉・軍事的圧力強化には反対。日本の中の朝鮮学校差別に反対。 ************************* ◆スロー系◆ 環境運動、脱成長・スロー(ダウンサイジング)系、ワークライフバランス: 「大量生産、大量消費、大量資源破壊、大量廃棄物(ゴミ)排出」のシステムを批判するスタンス。経済成長主義(経済が成長しなければ、賃金も上がらないし雇用も増えない:安倍政権はその最たるもの)に反対し、人間らしく働ける短時間労働の中で環境問題も含めて、脱成長の持続可能な社会を志向する立場。ワークシェアと福祉や環境関係産業による雇用維持を目指す経済構造に転換していく指向。シングル単位でワークライフバランスを考えて行くことを主張。週休3日を広げることに賛成。グレタさんなど世界の環境活動家たちの運動に賛同するスタンス。SDGSを建前だけに終わらせない実質化が重要と考える。伊田著『これからのライフスタイル』(大月書店、2007年)は、短時間労働のスローな生活をイメージして提起。政府が進めたワークライフバランスを批判したものとして、伊田著「反貧困の視点から、お仕着せのワーク・ライフ・バランス論を斬る」(『職場の人権』09年5月/第58号)がある。 消費者市民社会; 消費者のあり方として、人権問題や安全性や環境問題なども考える責任を取って生きる、賢い消費者(コンシューマー)になることが望ましいと考える。その意味で消費者教育が重要と考えるスタンス。消費者が、自らの消費生活に関する行動が現在及び将来の世代にわたって内外の社会経済情勢及び地球環境に影響を及ぼし得るものであることを自覚して、公正かつ持続可能な社会の形成に積極的に参画する消費者市民社会になる方向を支持する。 脱原発: 環境破壊の危険性が大きい原発に反対。取り返しがつかない事故が起こる危険性。経済的に苦しい地方に危険なものを金の力で押し付けることにも反対【それは沖縄に米軍基地を押し付けるのと類似の構図)。事故が起こらなくても、あとの世代に危険な荷物(核廃棄物含む)を残す問題、核兵器のもとになる問題、末端労働者の被ばく、地域に分断をもたらす、など問題が多いので原発廃止を直ちに進めるべきという立場。福島の汚染水放出には反対。 アニマルライツ、ヴィーガン: 主流秩序の中のサブ秩序の一つが「人間中心主義、動物劣等化秩序」ーー人間を上位に置き人間のためには動物の苦悩は仕方ないとする動物を劣等化する秩序(伊田著『閉塞社会の秘密』)と主張。アニマルライツ(動物の権利)、アニマルウェルフェア(動物の福祉)を尊重するスタンス。環境問題やアニマルライツや健康なども併せての意識的なベジタリアン、ヴィーガンというスタイルに賛成。大学講義でこの話をすると抵抗が強いが、ウルストンクラフトがいたころ、女性の人権に主張が笑われたことに関して、「女性の人権などと言い出したらそのうち動物の人権なども言うようになる」と笑われた話を紹介。時代により意識は変わり、アニマルライツも今や世界の潮流であると説明。固定観念に縛られず、世界の実情を知り、日本社会の主流秩序の中にとどまるなと紹介。ジェレミー・ベンサムの動物もまた快苦を配慮されるべき存在という主張に共感し、その後のスピーシージズム(種差別)への批判運動にも共感。動物を「自分と同じ仲間」とみなさず「劣等存在」とみる点で、障がい者差別、性的少数者差別、異民族差別、封建身分制度の身分差別、非正規労働者差別、「ブス」差別などとつながるとみる。「知能の低さ」を理由に動物には何そしてもいいと思う感覚は、子どもや老人や知的障害者差別、優生思想とつながるとみる。 ただし、伊田自身は、自分は緩やかなベジ指向程度しかできない、しかし、ヴィーガンを批判することに反対し、ヴィーガンを尊敬するというスタンスであると述べている。 ***************************
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