◆労働、労働運動、貧困◆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/17 01:14 UTC 版)
「伊田広行」の記事における「◆労働、労働運動、貧困◆」の解説
労働運動: 労働者は自分の労働条件改悪などに声を出していくことが必要(労働運動)と考える。労働組合の交渉や運動が重要ととらえる。非非正規労働者差別に反対。差別解消のために、同一価値労働同一賃金にしていくスタンス。そのためには年功賃金体制、正社員中心主義を解体することが重要、正社員の賃金水準が下がっても平等になるほうがいいという立場。安易に、「対立でなく、ともに連帯」という美辞麗句でごまかすことに反対。 個人加盟ユニオン支持。「ユニオンぼちぼち」や「プレカリアートユニオン」などを高く評価。自分も組合員として関わる。一時は執行委員、副委員長など。大きくは労働運動重視。しかし現実的には、多くの労組が、企業に物申さず、むしろ加担した第二管理部になっている面を批判。主流秩序の上位に属して非正規労働者への差別解消に努力しない正社員中心主義、労働団体の利権主義に反対。政治的課題で組合員を引き回す赤色労働組合主義に反対。職場の民主主義を積み上げていくような熊沢誠のスタンスに賛同。竹中恵美子の女子労働論に賛同。吉村励の労働組合論に賛同。伊田著『主流秩序と労働―――高賃金、安定の正社員、結婚を目指すような労働運動ではなく』(kindle電子書籍、2017年8月発行、増補・オンデマンド印刷書籍&電子書籍2020年5月)に伊田の労働論がまとめられている。 パート労働・非正規労働問題 年功賃金制度批判・家族単位批判と結び付けて、パート労働・非正規労働問題について解決策を提起し続けている。「日本のパート労働の特徴とその劣悪状況の原因分析:欧州との比較および家族単位批判アプローチの観点から」『大阪経大論集』49巻第5号1999年や『21隻労働論』など。大学の非正規教問題については、自分が正規職教員であることの立場から考察した「専任の立場から」(大学非常勤講師問題会議編『大学危機と非常勤講師運動』こうち書房2000年)がある。 アンペイドワーク 「私にとってのアンペイドワーク論」(姫岡とし子・池内靖子・岡野八代・中川成美編『労働のジェンダー化――性による労働の再編成』平凡社 所収2005年)で、アンペイドワークの議論の視点の拡大、豊かに生きることの検討を提起。 感情労働: 見えにくい労働負荷を可視化する感情労働への配慮も必要と考える立場。伊田著「対価を得ない形も含めて、ケアの保障をしよう―――「感情労働」の社会的評価としてのワーク・ライフ・バランス」(「感情労働のマネジメントの調査研究事業」報告書)「ケアの仕事をする人のケア ――感情労働を問いなおす」)がある。 「職場の人権」活動: 関西中心にもたれた「研究会・職場の人権」に賛同し、初期は世話人に所属。 最低賃金: 最低賃金を早急に2000円以上にすることを目指す。それによって年間1500時間労働で年収300万円位になるので決して高すぎるわけではないと主張。従来の賃金が家族単位で、家長(夫)の年功賃金に依存して、その補助でいい水準とされていたことを見直して個人単位の賃金体系にすることをめざす。伊田著『21正規労働論』で、家族単位に基づいた賃金であった年功賃金制度の解体を主張し、同一価値労働同一賃金に向けた改革案を提唱。 労働者教育: 皆に労働者の権利の教育や実践的に有効な情報提供がなされることが良いと考える。個人加盟ユニオンなど現実的な戦い方、対処の仕方、身の守り方の教育が欠如していると考えている。教育の中身としては、伊田著「すべての子どもたちに『労働者の権利』教育を」(労働教育センター刊『女も男も』117号2011年5月、特集「新しい『キャリア教育・職業教育』を創る」)に記されている。また教材としては伊田・ほか著『新版 <働く>ときの完全装備──15歳から学ぶ労働者の権利』(解放出版社、2016年)がある。 均等法評価 伊田は、1985年の男女雇用機会均等法導入には反対の立場。その意味は非正規女性などジェンダー秩序の下の者の権利まで入れ込む努力をしてもっとましな雇用平等法的なものにするよう抵抗しつづけてそのうち成立させる、その意味で急がずともよかった、成立が遅れても良かったところを、運動を分断し安易な妥協で中途半端なものにした点で、現実の社会運動の視点が欠如した判断だったと思っているということ。 しかし、擁護する人は、小さく生んで大きく育てればいい、ないよりはましと、あそこで成立させないとずっと成立が遅れると「城東区」を言って、正当化。しかし、下手なものを導入するとそれこそ、そこで、改革(成立)エネルギーは焼失し、支配層はこれで「国際的な体面が保てた」として、それ以上のましな改革をしないようになる。よくある話。どの運動でもよくある対立。具体策がなく、精神だけを書く「基本法」レベルでごまかすこともよく行われてきた。 伊田は小さく生んで小さいままじゃないかと批判するスタンス。「均等法は現在から見れば、すべての働く女性にとって無ければ困る法律だったから、反対したのは間違いだったと総括する」のは、間違った議論とするのが伊田の立場。中途半端なもので妥協したことを批判せず、労働省官僚だった者たちをほめる感覚にも批判的。 反貧困: 反貧困運動、野宿者支援運動、生活保護制度改悪反対運動に賛成。各地の反貧困系のメーデーの動きに参加。松本哉などの勝ち組をめざさない運動に賛同。そうした流れの関係の一つとして、2011年 AIBO(大阪で市民活動応援プロジェクトAction Incubation Box Osaka)の活動に中心スタッフとして参加。約半年間 湯浅誠らと活動。集大成として2011年12月に「大阪ええじゃないか」フェスタを実施した。伊田は東京の反貧困フェスタに向けて、『反貧困企画・パンフ――DVと貧困のからみあいを暴く』2008年3月29日を作成し、「ジェンダーと貧困――DVを中心として 」(宇都宮健児・湯浅誠編『反貧困の学校――貧困をどう伝えるか、どう学ぶか』明石書店,2008年10月)でもその主張を示した。また反貧困運動の意義を「反貧困の視点から、お仕着せのワーク・ライフ・バランス論を斬る」(『職場の人権』09年5月/第58号)で示した。 反・ベーシックインカム(BI): 世界のBI追求運動の感覚には賛同する面はあるが、現実を考えて、基本的に伊田はBI論を進めることに反対のスタンス。日本では、生活保護制度等を権利として使いやすくする方向で既得権を守り拡大していく必要があるときに、安易に新自由主義者やリバタリアンも望むBI論の議論の展開にのってしまうことは、BI推進運動側の主観的願望とは裏腹に、結果的に、生活保護制度を解体し、生活保護水準などを切り下げるような福祉・社会保障破壊や「切り下げ」に手を貸すことになると考える。伊田の考えとして「ベーシック・インカムについて――生活保護制度の拡充型のベーシック・インカムへ」(『職場の人権』2010年5月/第64号)がある。 スクウォット運動・貧困者の住居占拠選挙運動に賛同 オランダなどでの空いている建物に無断で入居する、スクウォット(Squatting, kraken)の精神と運動に賛同。空き家や土地を占拠するという行為を通じて、人間が必 要とするあらゆる空間を再分配する運動に賛同。それを行う「解放の神学」のスタンス賛同。 「できることなら合法に、せねばならないなら不法にでも!」というアーティスト・金江 (きむ・がん)に共感。 大学・正規教員退職: 退職に対して、ええかっこしているとか、宝くじでも当たったのかとか揶揄・批判されたこともあるが、基本は、忙しすぎることや主流秩序への加担性など自分の生き方を考えた結果の行動であった。退職した当時には、なかなか理解されないのが分かっていたので、自分の本当の考えはほとんど言わなかった。文章としては、伊田著「私は大学組織・学者世界に「就社」したかったのではない―――私はどこで何を模索しているのか(僕が大学を辞めたわけ)」『季刊ピープルズ・プラン』第43号(2008年夏号)に書かれている。またより大きく自分の生き方を振り返って考察した点については、伊田著『主流秩序社会の実態と対抗―――続・閉塞社会の秘密』(Kindle、オンデマンド印刷書籍 2020年6月、電子書籍3分割版2015年12月)の第一部に詳しい。
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