90式戦車 90式戦車の概要

90式戦車

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/12 04:15 UTC 版)

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90式戦車
性能諸元
全長 9.80m
車体長 7.55m
全幅 3.40m(サイドスカートを含む)
全高 2.30m(標準姿勢)
重量 50.2t
懸架方式 ハイブリッド
(油気圧・トーションバー併用)
速度 70km/h
(加速性能0-200mまで20秒)
行動距離 350km
主砲 44口径120mm滑腔砲Rh120
副武装 74式車載7.62mm機関銃主砲同軸
12.7mm重機関銃M2砲塔上面)
装甲 複合装甲
(砲塔前面 及び 車体前面)
エンジン 三菱10ZG32WT
水冷2ストロークV型10気筒ターボチャージドディーゼル
1,500ps/2,400rpm(15分間定格出力)
最大トルク4,410N・m(450kgf・m)
排気量21,500cc
乗員 3名
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概要

北海道に着上陸侵攻してくるソ連軍の機甲部隊に対抗することを開発目標としており、世界の第3世代戦車トップクラスに比肩する性能を有する。

製造は、車体と砲塔三菱重工業120mm滑腔砲日本製鋼所が担当し、1990年(平成2年)度から2009年(平成21年)度までに61式戦車の全てと74式戦車の一部を更新するために341輌が調達された。価格は1輌あたり約8億円である。

120mm滑腔砲と高度な射撃管制装置により高い射撃能力を持つ。西側諸国の第3世代主力戦車では初となる自動装填装置を採用しており、乗員は装填手が削減され3名となっている。装甲には複合素材が用いられ、正面防御力は世界最高水準と評価されている。

北海道北部方面隊以外では教育部隊の富士教導団第1機甲教育隊武器学校にしか配備されておらず、本州以南の機甲部隊は74式を主力とする。

平成23年度以降は冷戦の終結、防衛方針の変化や防衛費の削減、東アジアの軍事バランスの変化など、世界、国内の情勢変化を受けて、全国的な配備を目指した後継の10式戦車が配備される。一方で、平成23年度以降に係る防衛計画の大綱で示された動的防衛力の方針から、90式戦車も北海道以外の地域で活動を行えるよう、訓練が実施されるようになっている。

開発

本車輌の開発は74式戦車が制式化された直後、1977年神奈川県相模原市にある防衛庁技術研究本部第4研究所が、新戦車の各種構成要素の研究試作をスタートさせている[1]。当時は米ソ冷戦下にあり、ソ連軍及びワルシャワ条約機構軍の質的向上、量的増大による東側陣営の軍事的脅威が高まっていた時期でもある[2]。同時期、ソ連軍は125mm滑腔砲を搭載させた戦車の配備を進めている[1]

1979年にシステム設計を開始し[3]1980年には開発要求書がまとめられた[1]1982年度-1983年度までに1次試作(その1)として日本製鋼所ダイキン工業などが主砲弾薬自動装填装置の試作を行った[1]。120mm滑腔砲向けの自動装填装置の開発は世界初となったが、当初から主砲に関してはドイツラインメタル社製44口径120mm滑腔砲Rh120ライセンス生産する方針になっていた[1](日本製鋼試作の120mm砲は性能面ではラインメタル製よりも若干優れていたがコストパフォーマンスの面でラインメタルに優位が認められた[要出典])。テスト用として、オリジナルのラインメタル社製120mm滑腔砲と弾薬も輸入されている[1]

陸上自衛隊広報センターに展示される試作車。
砲塔上面
手前側に車長12.7mm重機関銃M2を挟んだ反対側に砲手が乗車する
試作車のため旧型の74式60mm発煙弾発射機が装備され、自動装填装置上面のブローオフパネルが省略されている。
また、車長用照準潜望鏡の形状や設置位置など量産車と異なる点がある。

1983年-1985年にかけて三菱重工業が参画し、試作1号車と弾薬の試作が1次試作(その2)として1次試作(その3)として試作2号車と弾薬の試作が行われた[1]。この1次試作、2次試作で合計6輌(1次試作:2輌、2次試作:4輌)の試作車が製造され、各種試験に投入された[4]

1次試作の試作車による技術試験は1983年10月-1986年10月までに、機動性能・火力性能・防護性能などの試験が実施された[4]

試験中に1次試作の2輌は合計約11,000kmの走行試験、合計約1,220発の射撃試験を実施、また、1985年7月に実施された装備審査会議調整部会の決定により2次試作ではラインメタル社製120mm滑腔砲を採用することを決定した[5]

1987年9月-1988年12月までに行われた2次試作の試作車による試験は、1次試作の試作車の試験を受けた仕上げ作業に加えて、小隊行動試験も実施された[4]。この試験では、下北試験場にて試作車への射撃試験も行われている[4]1989年2月からは陸上自衛隊による実用試験が、同年8月まで実施された[6]。実用試験では潜水渡渉準備、NBC使用状況下の行動、重機関銃による対空射撃、弾薬補給などあらゆる事態を想定した試験が行われた[6]

試験中に2次試作の4輌は合計約20,500kmの走行試験、合計約3,100発の射撃試験を実施した[5]

実用試験の結果、陸上自衛隊は「部隊の使用に供し得る」との報告書をまとめ[6]、1989年12月15日に装備審査会議調整部会において陸自側の報告内容を追認し[6]、「制式の採用を適当と認める」との決定を下した[6]。翌1990年8月6日に新型戦車は「90式戦車」として制式化された[3]。同年、30輌の調達が開始された[6]

現在、この試作車のうちの1輌が陸上自衛隊広報センターで屋内展示されている。この車両は、元々日本原駐屯地に用途廃止車として屋外展示されていたものを、広報センター開設のために化粧直しをして移管したものである。これは初めて90式が公開されたときの写真と同じく、砲塔正面装甲をキャンバスで覆い隠している。また、車体前面には92式地雷原処理ローラ用の6箇所の取付け座がある。試作車は土浦駐屯地前川原駐屯地でも1輌ずつ屋外展示されており、後者にはストレートドーザが取り付けられている。


注釈

  1. ^ 後継の10式戦車では情報モニターの設置など、操作計器の簡素化も行われている
  2. ^ 各国の軍事機関を例に挙げても米軍のMIL規格、日本の防衛省規格NDSなど様々な基準・仕様・規格が存在する
  3. ^ 自己位置評定のみ
  4. ^ 特に日本共産党社民党などの一部護憲・革新系政党や革新系政治団体及び中核派等の過激派団体に関しては支持者向けイベント(赤旗まつり)などで戦車不要論の証明として引き合いに出されることが多い
  5. ^ JR・旧国鉄の在来線は横幅3メートル弱の車両を前提に設計されているが、74式以降はいずれも車幅が3メートルを超えている。なお、戦車以外では、在来線で施設科などの小規模な輸送が行われている。

出典

  1. ^ a b c d e f g 古是三春 & 一戸崇雄, p. 113.
  2. ^ 古是三春 & 一戸崇雄, p. 112.
  3. ^ a b 丸 2002, p. 72.
  4. ^ a b c d 古是三春 & 一戸崇雄, p. 114.
  5. ^ a b 防衛庁技術研究本部五十年史 II 技術研究開発 2.技術開発官(陸上担当). 防衛省. (2002-11-15). pp. 44-45. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_04.pdf?contentNo=4&alternativeNo= 
  6. ^ a b c d e f 古是三春 & 一戸崇雄, p. 115.
  7. ^ 自衛隊新戦車パーフェクトガイド 2011, p. 36.
  8. ^ 自衛隊新戦車パーフェクトガイド 2011, p. 34.
  9. ^ a b 丸 2002, p. 73.
  10. ^ a b 丸 2002, p. 74.
  11. ^ 丸 2002, p. 76.
  12. ^ 『月刊グランドパワー』2006年4月号では、記者が「ほぼ100パーセント」と表現している
  13. ^ コーエー刊『戦車名鑑1946〜2002 現用編』51頁
  14. ^ 『月刊グランドパワー』2006年3月号
  15. ^ a b c d e 丸 2002, p. 77.
  16. ^ 三菱重工(株)”. 活動報告 その他. 衆議院議員 坂本剛二 (2004年11月11日). 2006年1月5日時点のオリジナル[リンク切れ]よりアーカイブ。2016年9月28日閲覧。
  17. ^ http://i.imgur.com/EHxDs87.jpg
  18. ^ http://eaglet.skr.jp/MILITARY/90.htm
  19. ^ a b 『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊)
  20. ^ [1](2007年9月28日時点のアーカイブ)、[2](2012年6月12日時点のアーカイブ
  21. ^ 『世界のハイパワー戦車&新技術』(Japan Military Review『軍事研究』2007年12月号別冊p135、一戸崇雄)
  22. ^ テレビ朝日 『カーグラフィックTV』 1996年8月24日放映 No.564「陸上自衛隊の働くクルマ逹」より
  23. ^ http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23054E_0601.pdf MTU社MB873エンジン公式資料 (PDF)
  24. ^ http://www.mtu-online-shop.de/fileadmin/dam/download_media/import_print/D_23112E_0601.pdf MTU社MT883エンジン公式資料 (PDF)
  25. ^ 防衛庁技術研究本部五十年史 II 技術研究開発 9.第4研究所. 防衛省. (2002-11-15). p. 302. https://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_1283286_po_TRDI50_11.pdf?contentNo=11&alternativeNo= 
  26. ^ a b https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/13/jizen/honbun/17.pdf 平成13年度政策評価書 事前の事業評価(本文) (PDF)
  27. ^ 柘植優介「陸自期待のルーキー、10式戦車の姿」『PANZER』第470集、アルゴノート社、2010年9月、 22-33頁。
  28. ^ “「イーグル・アイ」 「玄武2010」で2師団 C4ISRで継戦能力保持”. 朝雲新聞. (2010年11月4日). http://www.asagumo-news.com/news/201011/101108/10110901.html 2010年11月17日閲覧。 
  29. ^ https://www.mod.go.jp/j/approach/hyouka/seisaku/results/21/jizen/honbun/02.pdf 平成21年度政策評価書 事前の事業評価(本文) (PDF)
  30. ^ Forecast International Re-evaluates Main Battle Tank Market
  31. ^ http://doc.danfahey.com/Tanks-ArmorMag.pdf ARMOR-July-August 1999 (PDF)
  32. ^ 平成20年度予算から初度費が一括計上されており、10式戦車の単価には初度費は含まれていない
  33. ^ JapanDefense.com
  34. ^ 防衛白書の検索
  35. ^ 新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会 - 第5回配布資料 「防衛生産・技術基盤」平成22年(2010年)4月(防衛省) (PDF)
  36. ^ 2005年の9月12日・9月19日に90式戦車と74式戦車が、2006年の8月31日・9月13日と2007年の8月31日・9月12日と2008年の9月2日・9月10日と2009年9月1日・9月9日に90式戦車が移動
  37. ^ 90式より5トンから10トン以上重い主力戦車を保有する欧米でもゴムパッド付きの履帯で、一般公道を自走しての移動が行われている
  38. ^ 上富良野駐屯地から上富良野演習場、鹿追駐屯地から然別演習場北千歳駐屯地または北恵庭駐屯地から北海道大演習場といった各駐屯地から演習場までの国道や道道・市道にはアスファルトでは無くコンクリート補強された道路が設置されており、当該路面を戦車が通常の履帯で走行する状態を確認する事ができる
  39. ^ レオパルト2の方向指示器(後部)が見える写真/ルクレールの方向指示器(前部)が見える写真
  40. ^ “戦車、民間フェリーで移動…北海道から大分へ”. 読売新聞. (2011年10月26日). http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20111026-OYT1T00596.htm 
  41. ^ “自衛隊、南西シフト鮮明=九州・沖縄で相次ぎ演習-鉄道、民間船で列島縦断”. 時事通信. (2011年11月3日). http://www.jiji.com/jc/c?g=soc_30&k=2011103100019&google_editors_picks=true 
  42. ^ 20170604 90式戦車と音楽隊の共同演奏@真駒内駐屯地 - Youtube





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