【61式戦車】(ろくいちしきせんしゃ)
陸上自衛隊が1961年に制式採用した主力戦車。
2000年に退役するまでの39年間に560両が生産された。
戦後初の近代的国産戦車であり、旧陸軍の三式中戦車・四式中戦車、およびアメリカ軍のM47/M48「パットン」を参考として設計されている。
また、地形に起伏が多く、平地が少ないという日本の国情に合わせて、待ち伏せを主戦法とする戦車駆逐車的な思想が設計に取り入れられていた。
車体は溶接・砲塔は鋳造という、当時としてはごく一般的な構造で、車体・砲塔共に避弾径始を考慮して丸みを帯びている。
照準装置はステレオ式照準器。弾道計算機が無いため夜戦には対応できず、主砲にスタビライザーが搭載されていないため行進間射撃も行えない。
1950年代当時の日本の鉄道・道路状況などを考慮して、小型軽量に作られているのも特徴だが、それに比例して装甲や生存性にやや難があったようである。
変速機に欠陥があるなど操縦性も悪く、当時の隊員に「世界一操縦の難しい戦車」と言わしめた。
信地旋回は出来るが超信地旋回は出来ない。
このように、設計・技術のあらゆる面で未成熟な部分が多く、純粋に性能面のみを考慮した場合の評価は良くない。
とはいえ、日本国産初の主力戦車としての歴史的・戦略的意義には大なるものがある。
本車の派生型には自走架橋「67式戦車橋」、故障した車両を牽引・回収する「70式戦車回収車」がある。
また、87式自走高射機関砲の開発時にもシャーシの転用が検討されていたが、性能不足により74式戦車に変更された。
スペックデータ
製作 | 三菱日本重工業(三菱重工) |
乗員 | 4名(車長・砲手・装填手・操縦手) |
全長 | 8.19m |
車体長 | 6.03m |
全幅 | 2.95m |
全高 | 2.49m |
戦闘重量 | 35t |
懸架方式 | トーションバー |
エンジン | 三菱重工12H21WTディーゼルエンジン (4ストロークV型12気筒 空冷ターボチャージド 出力570hp) |
登坂力 | 60% |
超堤高 | 0.68m |
超壕幅 | 2.48m |
最小旋回半径 | 10m |
最高速度 | 45km/h(路上) |
航続距離 | 200km |
装甲 | 46~55mm(車体前面) 102~114mm(砲塔前面) |
兵装 | 61式52口径90mmライフル砲×1門(携行弾数50発) M2 12.7mm重機関銃×1挺(リモコン式) ブローニングM1919A2 7.62mm機関銃×1挺(同軸機銃) |
派生型
映像作品での扱いについて
本車は、制式化されてから約40年もの長きに渡って全国各地の部隊に配備されていた、戦後日本を代表する戦車であった。
そのことから、日本製の映像作品に登場する機会も多い。
1970年代後半に製作されたSF映画「戦国自衛隊」の製作に当たり、ブルドーザーを改造した実物大可動模型が製作されている。
この模型車両はその後も様々な映画・ドラマに大道具として登場している。
また、「ゴジラシリーズ」や「ウルトラシリーズ」など特撮怪獣映画・テレビドラマなどでも頻繁に登場する。
これらの作品では砲撃によって怪獣などを打ち倒す事はまずなく、多くは怪獣に蹴散らされるシーンを最後に出番を終える。
更にTVアニメ「機動戦士ガンダム」にも、本車と同名の車両が「未来における架空の軍隊」が保有する戦車として登場している。
(元々は特に設定のない無名の戦車であったものを「61式」と仮称した所、その呼び名で定着してしまったのだという)
なお、日本の娯楽作品に登場する戦闘車両(61式に限らず)の大半には「弱い」「地味」「鈍い」「すぐ撃破される」などといった奇妙な共通項がある。
戦闘機は、しばしば英雄的活躍を見せたり非常識な超兵器として描写されるが、戦闘車両にそのような活躍の場面はほとんど見受けられない。
61式戦車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/12 05:21 UTC 版)
61式戦車(ろくいちしきせんしゃ[注 1])は、日本の陸上自衛隊が運用していた戦後第1世代戦車に分類される戦後初の国産戦車である。
注釈
- ^ 通常、自衛隊では時刻にある数字の1を「ひと」と読む[2][3][4][5][6]。装備品の制式年についても同様で、10式戦車は「ひとまるしきせんしゃ」[7]、16式機動戦闘車は「ひとろくしききどうせんとうしゃ」と読む。これに準ずれば、61式戦車は「ろくひとしきせんしゃ」となるが、「ろくいちしきせんしゃ」と読まれる場合が多い。
- ^ 更新すべき戦車はアメリカ軍とヨーロッパ同盟国への供与で数千輌になり、日本への供与が可能になるのは当分先と判断された。
- ^ 25トン級戦車については、第二次防衛力整備計画においてM41軽戦車225輌がアメリカの無償援助によって計画され、1963年(昭和38年)までに147輌が導入された。
- ^ L7 105ミリ戦車砲を搭載した戦後第2世代戦車であるレオパルト1やM60パットンなどはまだ完成しておらず、入手可能な最も強力な砲を選択したと言える。
- ^ 当時各社から発売されたプラモデルでは、61式をアメリカ軍風に表記したM-61(ニットー)やM61(フジミ)などの名称とした物や、M-3(三和)の様に完全オリジナルの名称にした物なども存在した。
- ^ 90式より高腔圧に対応
- ^ 2008年度予算から初度費が一括計上されており、10式の単価には初度費は含まれていない。
- ^ 平成元年度防衛白書中の資料「平成元年度主要事業の経費」によれば、56両に対し22,175百万円。
- ^ 1965年と2022年の物価を消費者物価指数で換算。
出典
- ^ 『仮制式要綱 61式戦車 XD9001』付図
- ^ 齋藤雅一 (2015年5月). “自衛隊百科(5月放送内容) テ-マ:自衛隊の専門用語の解説”. 東北防衛局. 2022年8月8日閲覧。
- ^ “時刻の読み方”. MAMOR-WEB. 株式会社扶桑社. 2022年8月8日閲覧。
- ^ 自衛隊福岡地方協力本部 [@fukuoka_PCO] (2020年5月4日). "「投票ありがとうございました。 自衛隊では・・・ ひとよんにーまる ひとよんふたまる 通常、陸上自衛官は「にー」、海上・航空自衛官は「ふた」を使いますよ😊」". X(旧Twitter)より2022年8月8日閲覧。
- ^ “20式5.56mm小銃、9mm拳銃SFP9 自衛隊新小銃と新拳銃の名称決定! 実銃解説”. ハイパー道楽 (2020年5月18日). 2022年8月8日閲覧。
- ^ たいらさおり(漫画家/デザイナー) (2021年11月23日). “【マンガ】「待ち合わせはヒトロクマルマル」キター!! 自衛隊独特の“数字の読み方”にご注意?”. 乗りものニュース (株式会社メディア・ヴァーグ) 2022年8月8日閲覧。
- ^ 貝方士英樹 (2021年10月9日). “陸上自衛隊:最新世代戦車「10式戦車」の性能①、ヒトマルの機動力に注目する”. Motor-Fan.jp (株式会社 三栄) 2022年8月8日閲覧。
- ^ 林磐男 2005, p. 119.
- ^ 林磐男 2005, p. 101.
- ^ 軍事研究 2007, p. 135.
- ^ a b 古是三春 & 一戸崇雄, p. 62.
- ^ 早すぎたデジタル迷彩!? 七色の61式戦車が誕生したワケを“生みの親”に聞いた - 乗りものニュース (2021年9月16日). 2023年11月27日閲覧。
- ^ 丸 2017, p. 86.
- ^ a b c d e 丸 2017, p. 87.
- ^ 『陸上自衛隊 機甲科全史』p. 173.
- ^ 古是三春 & 一戸崇雄, p. 36.
- ^ a b 古是三春 & 一戸崇雄, p. 37.
- ^ この細長い受像器を、砲塔前面右側の直接照準孔に繋がる、砲塔内の砲の右側にある砲手用61式直接照準眼鏡(テレスコープ)と交換した。
- ^ 従来は、「暗視照準眼鏡」と、間違って解説されてきた。
- ^ 規正板とは、夜戦用装備ではなく、(白と黒のチェックが入った)10cm四方の板が両端についた、全長1mの(足付きの)棒であり、61式車上1m測遠機の照準の修正に用いられる。本来、規正板収納箱は、砲塔バスル内左側に収納されていたが、そこに代わりに、細長い「砲手用暗視装置受像器」を収納したために、規正板収納箱を砲塔外に出さざるを得なくなった。
- ^ 従来は、「交流発電機」や「交流変換器」と、間違って解説されてきた。61式戦車は「直流-交流 変換器(インバーター)」を備えていない。
- ^ 61式戦車のエンジンには元より発電機が2基付いており、暗視装置用に発電機を新たに搭載することも無く、暗視装置用の電源は車体側から供給された。ゆえに箱の中身は発電機ではない。
- ^ 古是三春 & 一戸崇雄, p. 68.
- ^ 古是三春 & 一戸崇雄, p. 29.
- ^ 古是三春 & 一戸崇雄, p. 42.
- ^ a b c d e f g h 丸 2017, p. 88.
- ^ a b 丸 2017, p. 89.
- ^ 61式戦車のヨルダン王立戦車博物館への無償貸付及びヨルダンからの装甲車の寄付の受領 - 外務省 (2019年8月5日). 2023年11月27日閲覧。
61式戦車
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/15 10:16 UTC 版)
実在する戦車。防御力はそこそこあるが攻撃力は低く、対地攻撃能力しか持たないなど全体的な性能は低い。
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