タマネギ 食材としてのタマネギ

Weblio 辞書 > 同じ種類の言葉 > 食物 > 野菜 > ネギ > タマネギの解説 > 食材としてのタマネギ 

タマネギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/26 05:03 UTC 版)

食材としてのタマネギ

ハーリングの付け合わせとして添えられたタマネギのみじん切り

主に鱗茎を食用とするが、生では強い辛味、加熱すると甘味がある。一年中出回っているが、食材としてのは10 - 12月で、新タマネギは4 - 5月[45]。鱗茎の上部が締まっていて、ひげ根が延びておらず、切ったときに芽が上まで伸びていないものが良品とされる[45][33]

秋冬たまねぎは、皮がよく乾燥していてきれいなつやがあるものが良い[33]。一般的に食べられているタマネギは「イエローオニオン」(yellow onion)とも呼ばれる。日本ではエシャロットの代用[46]とされる場合もある。

辛みの強さは、品種によって違いがある。一般に早生の方が辛みが少なく、晩生になるにつれ辛みが強くなる。また保存状態によっては辛味が強くなるため、晩生の貯蔵用品種であっても葉が青いうちに収穫してすぐに利用すれば比較的辛味が少ない。

タマネギを切ると涙が出るのは、鱗茎に含まれるチオアルデヒド(別名:チアール)という成分の作用によるもので[10]、タマネギがスライスされた時に細胞が壊れ、放出された揮発性物質syn-プロパンチアール-S-オキシドが気化し、の中の水分と結合して硫酸が生じて粘膜を刺激し、これを洗い流そうとして涙腺に涙が作られるためである[47][48]涙の出ないタマネギも開発されてはいるが、遺伝子組み換え作物のため市場には出ていない。

加熱すると甘味が出るが、その理由はn-プロピルメルカプタンという成分が出来るからである[10]。生のタマネギの辛味成分は、ジアリル・ジサルファイドなどである[10]。生のタマネギの匂いは、主にジプロピルジスルフィドによるものである[49]

臭いや辛味の元になっている成分の硫化アリルは、タマネギを切るときに細胞が壊れて、アリシンという成分に変化する[45]。アリシンはビタミンB1の吸収を助ける働きがあり、ビタミンB1を含む他の食品と一緒に摂取すると吸収率を高める効果があり[33][32]、水溶性で加熱に弱いという性質がある[45]

タマネギ外皮には、抗酸化物質であるケルセチンが含まれている[50]

料理

ジャンルは問わず多様な料理に幅広く使われ、世界中で親しまれている[45]。スライスしてサラダマリネにするほか、煮込み料理ではカレーシチュー肉じゃがなど[32]と共に料理するオムレツ親子丼に用いるほか、ソースなどとしてデミグラスソーストマトソースタルタルソースサルサなどの素材としても欠かせない。刻んで炒めたものをハンバーグコロッケの具材に入れたり、炒め物、煮物、揚げ物、汁の実など幅広く利用できる[32]。日持ちがするため、大航海時代にはニンジンジャガイモと共によく食べられていた。

イギリスでは伝統的にレバー料理の臭い消しに、タマネギを合わせた料理が食べられている[51]インド風料理で今日カレーと呼んでいる煮込み料理は、通常タマネギを使い、他の香辛料と一緒に炒めてペースト状にしてから鍋に入れる[52]。インド・デラバード地域の郷土料理ドピアザは「タマネギを二度(使う)」という意味があり、タマネギを大量に使う香辛料が利いた料理で知られる[52]。フランスの伝統料理フレンチ・オニオンスープは、欧米人にとって最も有名な料理のひとつで、飴色に炒めたタマネギをビーフブイヨンで煮込んで、かりっとトーストしたパンと、溶けたチーズを載せた料理である[53]。タマネギの酢付けは、発酵が一般的な貯蔵方法だった東欧地域でよく食べられる食品である[54]

新タマネギと呼ばれる極早生のタマネギなどは、生の薄切り(オニオンスライス)や、みじん切りラーメントッピング用など)でも美味しく食べられる[55]。ペコロスのように小さなものは、切らずにそのまま煮物やグラッセにして、形も楽しむといった使い方をする[32]

タマネギの種は黒ごまに姿が似ており、インドやヨーロッパにおいてスパイスの一種としてそのまま、あるいは他のスパイスと合わせて料理の香り付けなどに用いられる。

調理法

秋冬タマネギと春に出回る新タマネギでは、同じ調理法を行っても旨さを上手に引き出せないので、それぞれ特性に合わせて調理法を変える。秋冬タマネギでは、じっくり加熱調理することで甘味と深い旨味を引き出せるので、大きめに切って、煮込み料理に使う方が向いている[34]。一方、新タマネギは水っぽいため、煮込んでも旨さが引き出せない。このため、生食するか、軽く炒めて食感を活かした食べ方に向いている[34]

タマネギには、辛味と甘味の両方の成分が含まれている。生のときは、辛味成分が強いため甘味を感じることが少ない[34]。炒めるなどの加熱調理することによって、辛味成分は分解されて甘味成分だけが凝縮して残されるので、タマネギ特有の甘味が出てくる[34][33]。さらに、茶褐色になるまで炒めると、甘味に旨味が加わり、カレーやシチューなどのベースになる濃厚なコクが出てくる[34]

生食の場合、切ってから水にさらすと辛味が和らぐ[32]。タマネギを切る前に、あらかじめ冷蔵して冷やしておいたり、切れのよい包丁で手早く切ると、涙が出てしまうことを抑えることができる[35][56]

栄養価

たまねぎ りん茎 生[57]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 155 kJ (37 kcal)
8.8 g
食物繊維 1.6 g
0.1 g
飽和脂肪酸 0.01 g
多価不飽和 0.03 g
1.0 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(0%)
1 µg
チアミン (B1)
(3%)
0.03 mg
リボフラビン (B2)
(1%)
0.01 mg
ナイアシン (B3)
(1%)
0.1 mg
パントテン酸 (B5)
(4%)
0.19 mg
ビタミンB6
(12%)
0.16 mg
葉酸 (B9)
(4%)
16 µg
ビタミンC
(10%)
8 mg
ビタミンE
(1%)
0.1 mg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
2 mg
カリウム
(3%)
150 mg
カルシウム
(2%)
21 mg
マグネシウム
(3%)
9 mg
リン
(5%)
33 mg
鉄分
(2%)
0.2 mg
亜鉛
(2%)
0.2 mg
(3%)
0.05 mg
マンガン
(7%)
0.15 mg
セレン
(1%)
1 µg
他の成分
水分 89.7 g
コレステロール 1 mg
水溶性食物繊維 0.6 g
不溶性食物繊維 1.0 g
ビオチン(B7 0.6 μg

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[58]。廃棄部位: 皮(保護葉)、底盤部及び頭部
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

タマネギの鱗茎部には水分が約90%含まれていて、可食部100グラム (g) あたり、炭水化物8.8 g、たんぱく質1.0 g、灰分0.4 g、脂質0.1 gが含まれている[32]。炭水化物が多めに含まれていて、野菜としては熱量が37キロカロリー (kcal) と高めで、微量栄養素のビタミンミネラル食物繊維はそれほど多くはない[32]。それでも、ビタミンB1B2Cや、カリウムカルシウムなどのミネラル、食物繊維がバランスよく含まれている[45]。タマネギの糖質にはブドウ糖(グルコース)、果糖(フルクトース)、蔗糖(スクロース)などが含まれ、低分子の糖として貯蔵する[32]

調理過程で水にさらすと、栄養成分が流れ出てしまうため、辛味成分が少ない新タマネギは水にさらさずにそのまま食べた方が栄養を効率よく摂取できる[45]。タマネギを加熱し、黄色、あめ色、茶色と褐変が進行するに従ってDPPHラジカル消去能が上昇するとの報告がある[59]。タマネギを炒めることによってメイラード反応が起こり、褐色物質のメラノイジンが生成する。メラノイジンは、in vitroでは抗酸化作用活性酸素消去活性、ヘテロ環アミノ化合物(発癌物質)に対する脱変異原活性などを有する可能性があるとして研究が続けられている[60][信頼性要検証]

保存

タマネギは収穫後、表皮を乾燥させておけば長期保存が可能であり、常温でも数か月は保存が可能な食材である。生産者は、極早生や早生の種は保存性がないため、機械乾燥してからすぐに出荷するが、貯蔵性に優れる晩生の種は、秋に収穫して施設で乾燥させたあと、貯蔵庫で翌年春まで保存できる[11]。CA(Controlled Atmosphere)冷蔵法[注釈 3]の導入により、薬剤や放射線照射に頼らず、萌芽を同時に防ぐ保存法も確立されている[11]

家庭などでは、湿気がこもらない、かつ乾燥しすぎない風通しのよい場所で、ネットや紙袋などに入れて、室温で保存できる[34][35]。暑い季節は、冷気にあたらないようにする[34]。調理で切って使い切れなかった玉ねぎは、切り口を食品用ラップフィルムなどで包んで、乾燥しないようにポリ袋などに入れて冷蔵保存する[34]


注釈

  1. ^ 日本では、生食用に軟白栽培されたラッキョウが「エシャット」や「エシャロット」の名で呼ばれている[34]
  2. ^ 遺伝子に欠損があるため、花粉ができない状態[37]
  3. ^ 庫内の温度と空気成分の調整によって、青果物の呼吸を最小限に抑え、鮮度の低下を防止するシステム[11]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium cepa L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月8日閲覧。
  2. ^ a b c ジェイ 2017, p. 12.
  3. ^ こぐれひでこの食悦画帳/葉タマネギ 玉のままうどんに『読売新聞』夕刊2018年12月8日(2面)。
  4. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 300. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358319 
  5. ^ a b c d e f 田中孝治 1995, p. 192.
  6. ^ 「玉ねぎ」はフランス語で?野菜に関するフランス語”. Bibliette(ビブリエット). 2020年7月9日閲覧。
  7. ^ 講談社編 2013, p. 158.
  8. ^ a b ジェイ 2017, p. 34.
  9. ^ 田中孝治 1995, p. 93.
  10. ^ a b c d e f g h i 田中孝治 1995, p. 193.
  11. ^ a b c d e f g h i j k 講談社編 2013, p. 159.
  12. ^ a b c d e ジェイ 2017, p. 13.
  13. ^ 国際連携で挑むタマネギゲノム解読‐経済的に重要な高等植物種の巨大なゲノムを読み解く (PDF) 山口大学(2021年8月20日)2021年9月17日閲覧
  14. ^ ジェイ 2017, pp. 11–12.
  15. ^ ジェイ 2017, pp. 20–21.
  16. ^ ジェイ 2017, p. 23.
  17. ^ ジェイ 2017, p. 26.
  18. ^ ジェイ 2017, p. 39.
  19. ^ a b ジェイ 2017, p. 40.
  20. ^ ジェイ 2017, p. 47.
  21. ^ ジェイ 2017, pp. 47–49.
  22. ^ ジェイ 2017, pp. 51–52.
  23. ^ ジェイ 2017, p. 68.
  24. ^ ジェイ 2017, pp. 65–66.
  25. ^ ジェイ 2017, pp. 66–68.
  26. ^ ジェイ 2017, pp. 95–98.
  27. ^ ジェイ 2017, pp. 105–111.
  28. ^ ジェイ 2017, pp. 112–113.
  29. ^ ジェイ 2017, p. 120.
  30. ^ ジェイ 2017, p. 114.
  31. ^ ジェイ 2017, p. 116.
  32. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 講談社編 2013, p. 161.
  33. ^ a b c d e f g 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 30.
  34. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 主婦の友社編 2011, p. 57.
  35. ^ a b c d e f g 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 31.
  36. ^ a b c d e f g h 講談社編 2013, p. 160.
  37. ^ a b c d e ジェイ 2017, p. 135.
  38. ^ a b c ジェイ 2017, p. 136.
  39. ^ 世界のタマネギ 生産量 国別ランキング・推移”. グローバルノート. 2020年7月12日閲覧。
  40. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 60.
  41. ^ a b 玉ねぎ(玉葱,タマネギ,たまねぎ)”. アプレス. 2020年7月12日閲覧。
  42. ^ 玉ねぎのランキング”. 野菜情報サイト 野菜ナビ. Yasainavi.com. 2020年7月12日閲覧。
  43. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 61.
  44. ^ 三澤知央、ネギ葉枯病の発生生態と防除に関する研究 北海道立総合研究機構農業試験場報告 = Report of Hokkaido Research Organization Agricultural Experiment Station (132), 1-90, 2012-10, NAID 120005332243
  45. ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 56.
  46. ^ 十時亨『フランス料理の基本』新星出版社 2005年
  47. ^ Eric Block (2009). “Chapter 4. Chemistry in a sallad bowl: Allium chemistry and biochemistry”. Garlic and Other Alliums: The Lore and the Science. Cambridge: Royal Society of Chemistry. ISBN 978-0854041909  Google ブックス
  48. ^ ジェイ 2017, pp. 144–145.
  49. ^ 長谷川香料株式会社 『香料の科学』講談社、2013年、93頁。ISBN 978-4-06-154379-9 
  50. ^ 塩谷 茂信ほか、「ケルセチン含有タマネギ外皮エキスの血小板凝集抑制作用」、 『日本食品科学工学会誌』2022 年 69 巻 2 号 p. 45-53、DOI:https://doi.org/10.3136/nskkk.69.45
  51. ^ ジェイ 2017, p. 50.
  52. ^ a b ジェイ 2017, p. 70.
  53. ^ ジェイ 2017, p. 79.
  54. ^ ジェイ 2017, p. 82.
  55. ^ 【食べ物 新日本奇行 classic】ラーメンのネギは白か青か いや、タマネギだってある 日本経済新聞社NIKKEI STYLE(2017年4月1日)2018年12月18日閲覧
  56. ^ ジェイ 2017, p. 148.
  57. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  58. ^ 厚生労働省日本人の食事摂取基準(2015年版) (PDF)
  59. ^ 下橋淳子「褐変物質のDPPHラジカル消去能」『駒沢女子大学研究紀要』 37,pp17-22,2004-03-03. NAID 110004678454
  60. ^ 明治大学農学部農芸化学科食品機能科学研究室 研究の概要
  61. ^ ジェイ 2017, p. 152.
  62. ^ 「健康食品」の安全性・有効性情報”. 国立健康・栄養研究所. 2021年7月7日閲覧。
  63. ^ 健康サポート通信 Vol.1 新玉ねぎ”. 一般財団法人 日本健康文化振興会. 2021年7月7日閲覧。
  64. ^ 大澤俊彦「がん予防と食品―デザイナーフーズからファンクショナルフーズへ―:—デザイナーフーズからファンクショナルフーズへ—」『日本食生活学会誌』第20巻第1号、日本食生活学会、2009年、 11-16頁、 doi:10.2740/jisdh.20.11ISSN 1346-9770NAID 130004493781
  65. ^ a b c ジェイ 2017, p. 73.
  66. ^ ジェイ 2017, p. 72.
  67. ^ ジェイ 2017, pp. 111–113.
  68. ^ ジェイ 2017, p. 154.
  69. ^ a b ジェイ 2017, p. 155.
  70. ^ a b 飼い主のためのペットフード・ガイドライン (PDF) 環境省(2020年4月29日閲覧)


「タマネギ」の続きの解説一覧




タマネギと同じ種類の言葉


英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「タマネギ」の関連用語

タマネギのお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



タマネギのページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアのタマネギ (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2022 GRAS Group, Inc.RSS