ステゴビルとは? わかりやすく解説

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捨小蒜

読み方:ステゴビル(sutegobiru)

ユリ科多年草


捨小蒜

読み方:ステゴビル(sutegobiru)

ユリ科多年草

学名 Caloscordum inutile


ステゴビル

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/29 18:43 UTC 版)

ステゴビル
保全状況評価[1]
絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: キジカクシ目 Asparagales
: ヒガンバナ科 Amaryllidaceae
亜科 : ネギ亜科 Allioideae
: ネギ属 Allium
: ステゴビル A. inutile
学名
Allium inutile
Makino

ステゴビル(捨小蒜、Allium Inutile)は、ヒガンバナ科ネギ属多年草本州中央部および四国香川県の限られた場所にのみ自生する日本固有の希少種[2][3][4]

生態

日の当たる草地に生える[5]

最大直径13ミリメートルの球形から卵型の球根状の鱗茎を作る。

秋の末に、鱗茎から、幅2-2.5mm、長さ20-30cmほどの細長い葉を2,3枚伸ばす。葉は多少厚みを持ち、表面は平で、裏は丸みを帯びている[6][7]

翌年の夏に葉は枯れて、初秋の頃、入れ替わるように鱗茎から花茎が伸び始める。花茎は最長で30cmほどの高さとなり、花径の頂から数本の花軸が散形状に分かれ、それぞれの花軸に小さな花を付ける[7][2][8]

花径の頂から出た花軸の長さは2-3cm。その先につく花は、薄紫色から白色で[9]、時に紅色をおび、長さ11mmほどの披針形の6枚の花蓋の中心に6本の黄色い雄しべに囲まれた雌しべが見える[6][7]

果実はやや丸く、3稜があり、頂が少し凹み、熟して3裂し、逆さ卵円形で小さい種子を散らす[10]

分類

名倉誾一郎1896年9月30日三河八名郡愛知県豊橋市)の石巻山で採集した標本をもとに、牧野富太郎1898年ユリ科ネギ(アリウム)属のAllium Inutileとして発表した[7]

和名については、飯沼慾斎(長順)が1856年発刊の草木図鑑に図説し、自身がステゴビルと命名したと述べている[8]

学名は、牧野が「ステゴビル」を「無用(inutile)で見捨てる小さな蒜」の意と解釈したことによる[11]

1946年に、花被の基部が癒合している特徴から、ハタケニラ属(Nothoscordon)とされたが[12]1970年に、類縁関係にあるが別属となっていたハナビニラ属(Caloscordum)の特徴により近いため、ハナビニラ属に移行された[13]

APG分類体系の3版以降では、ハナビニラ属も含めてネギ属に統合され、ユリ科からヒガンバナ科へと移動になったため、ヒガンバナ科ネギ属と分類されている[14]

ネギ属でありながらタマネギニンニクの特徴的な香りのもととなるアリナーゼを持たない[15]

保護

自生地の分布は局所的で、環境省レッドリストでは「絶滅危惧Ⅱ類(VU)」に指定され[16]、生息の可能性のある18都道府県・地域でも絶滅危惧種に指定されている[17]

埼玉県では、県指定天然記念物となっている[18][19]

脚注

  1. ^ ステゴビル”. 環境省いきものログ環境省第5次絶滅危惧種検索. 2025年4月5日閲覧。
  2. ^ a b ステゴビル”. 京都府レッドデータブック2015. 2025年4月5日閲覧。
  3. ^ T. Makino (1898). “Plantæ Japonenses novæ vel minus cognitæ.”. 植物学雑誌 12 (141): 104. doi:10.15281/jplantres1887.12.103. 
  4. ^ Allium inutile Makino”. GBIF. 2025年4月5日閲覧。
  5. ^ 季節の花(東京都薬用植物園) ステゴビル - 東京生薬協会
  6. ^ a b 岡田善敏 (1954), 東海の植物 第1集, 名古屋鉄道, p. 126 
  7. ^ a b c d 奥山春季 (1959). 原色日本野外植物図譜 第4 (夏から秋の植物 第2). 誠文堂新光社. p. 120 
  8. ^ a b 飯沼長順 (1856). 草木図説前編草部六. 出雲寺文治郎. doi:10.11501/2558240 
  9. ^ 飯沼慾斎生誕二百年記念誌編集委員会 (1984-05). 飯沼慾斎. 飯沼慾斎生誕二百年記念事業会. p. 174 
  10. ^ 奥山春季 (1984). 原色日本野外植物図譜 3 (秋から冬) /〔本編〕 新訂増補. 誠文堂新光社. p. 132 
  11. ^ 牧野富太郎 (1940). 牧野日本植物図鑑. 北隆館. "和名ハ捨小蒜ニシテ其草賤劣人之レヲ顧ミザルひるノ意ナリ。" 
  12. ^ 北村四郎 (1946). “植物分類新知見”. 植物学雑誌 59 (695-696): 35. doi:10.15281/jplantres1887.59.35. 
  13. ^ 北川政夫 (1970). “学名変更 5 件”. 植物研究雑誌 45 (5): 123. doi:10.51033/jjapbot.45_4_5918. 
  14. ^ Qin-Qin Li (2010-01-01). “Phylogeny and biogeography of Allium (Amaryllidaceae: Allieae) based on nuclear ribosomal internal transcribed spacer and chloroplast rps16 sequences, focusing on the inclusion of species endemic to China”. Ann Bot. 106 (5): 709–733. doi:10.1093/aob/mcq177. "After Fay and Chase (1996), Friesen et al. (2000) and Chase et al. (2009), Allium (including Caloscordum Herb., Milula Prain and Nectaroscordum Lindl.) is the only genus in tribe Allieae." 
  15. ^ 渡辺正 (1970). にんにく : モーレツ食品の王者. 文研出版. p. 40-41 
  16. ^ ステゴビル”. 環境省いきものログ環境省第5次絶滅危惧種検索. 2025年3月19日閲覧。
  17. ^ 環境省都道府県絶滅危惧種検索”. 2025年4月5日閲覧。
  18. ^ 埼玉県指定天然記念物「ステゴビル」”. 坂戸市. 2025年4月5日閲覧。
  19. ^ 久那のステゴビル”. 秩父市. 2025年4月5日閲覧。

関連項目

外部リンク



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