花かんむり
か‐かん〔クワクワン〕【花冠】
かかん〔クワクワン〕【花冠】
花冠
花冠
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/12/05 23:48 UTC 版)
花冠(かかん、英: corolla[1])とは、複数の花弁(花瓣、かべん、英: petal[1]、いわゆる「花びら」)からなる、花の器官のことである。被子植物の多くに見られる(ただし、イネ科植物の多くなど、花冠をもたない被子植物もある)。裸子植物には見られない。また、シダ植物、コケ植物は花を咲かせないので、これらの植物にも見られない。
花冠は花弁の集まりであるが、花として花粉媒介者の標的になるだけではなく、萼と同じく、雄しべ、雌しべを保護する役割をもっている。
花で作ったり、花を飾ったりした冠を花冠と呼ぶことがあるが、こちらは訓読みで「はなかんむり」と読む。
合弁花冠と離弁花冠
花冠は合弁花冠と離弁花冠に分けられる。合弁花冠か離弁花冠かは、科によってほとんど決まっているが、例外もしばしばある。
古い図鑑などで採用されている古い分類体系である新エングラー体系では、植物は離弁花から合弁花に進化したとされ、双子葉植物に属する科を、進化の遅れたとする離弁花類とより進化したとする合弁花類とに無理やり分類していた。そのため、所属する分類と実際の花冠の形態が一致していないことも多かった。Wikipediaで採用されている、ゲノム解析による最新のAPG分類体系ではこの分類は廃止されている。
- 合弁花冠
- それぞれの花弁と花弁が合着して花冠をなしているもの。
- 離弁花冠
- 花弁が離れて独立している花冠。
相称性
花冠を分類するにあたり、花の相称性も重視される。花の相称性は放射相称花と左右相称花と非相称花があるが、花冠では放射相称花のものを放射相称花冠、左右相称花を左右相称花冠として区別する。
なお、放射相称とは中心から2本以上の対称軸が引ける形、左右相称とは左右対称の形(1本の対称軸が引ける形)ことである。
用語
- 花弁(petal) - 花冠を形成する花の部分。萼と見分けがつかない場合は内花被と呼ぶ。
- 萼(sepal)- 花冠を形成しない花の部分。花弁と見分けがつかない場合は外花被と呼ぶ。
- 花冠筒(corolla tube) - 花が筒のように細長くなっている部分。萼が筒のようになっている場合は萼筒と呼ぶ。
- 爪と舷 - 筒状になった花の先端が広がっている場合、花の基部の筒状になっている部分を爪部、先端の広がっている部分を舷部と呼ぶ。
- 喉(throat) - 花の筒状の部分の入り口。
- 舌(Ligule) -
- 唇(labiate) - 花弁が深く裂けて唇のようになっているとき、上下のそれぞれを唇と呼ぶ。
- 距 (spur) - 花被の一部が袋状になった部分。
花冠の種類の例
- ナデシコ形花冠
- 離弁・放射相称花冠。花弁は萼筒の下位にある爪部と、上位の舷部からなる。ナデシコ科に特有。
- かぶと状花冠
- 離弁・左右相称花冠。花弁ではなく、後萼片がかぶと状になったもの。キンポウゲ科トリカブト属に存在する。
- 十字形花冠
- 離弁・放射相称花冠。4枚の花弁が一対ずつ十字形に対生する。アブラナ科に特有。
- バラ形花冠
- 離弁・放射相称花冠。ほぼ円形で無爪あるいはごく短い5枚の花弁が水平に開く。バラ科の花冠全般をさす。
- 蝶形花冠
- 離弁・左右相称花冠。上位の旗弁1枚、中位の翼弁2枚、下位の竜骨弁2枚からなる。マメ亜科(狭義のマメ科)の花冠を指す。
- スミレ形花冠
- 離弁・左右相称花冠。上位一対の上弁(2枚)、中位一対の側弁(2枚)、下位の唇弁(1枚)と呼ばれる距のある1個の花弁からなる。スミレ科スミレ属の花冠。
- 有距花冠
- 少なくとも一部の花弁が距をもつ花冠をいう。科としての共通性はない。キンポウゲ科オダマキ属、ケシ科エンゴサク属、ツリフネソウ科ツリフネソウ属に見られる。
- 壺形花冠
- 合弁・放射相称花冠。花冠の上部が壺のようにくびれ、くびれた部分から裂片が開出する。ツツジ科やカキの花冠。
- 高坏形花冠
- 合弁・放射相称花冠。平開する花冠裂片と、上下の太さが変わらない花冠筒からなる。サクラソウ科など。
- 漏斗形花冠
- 合弁・放射相称花冠。花冠筒が上部に向かって開き、円形の開出部分につながる花冠。ヒルガオ科のヒルガオ属やサツマイモ属など。
- ユリ形花冠
- 放射相称花冠。内花被3枚+外花被3枚。ユリ科の花冠。
- ラン形花冠
- 左右相称花冠。内花被の一枚が変形して、袋状または舌状になる。ラン科植物に見られる。
- キンチャク形花冠
- 左右相称花冠。花冠の下が袋状になる。ゴマノハグサ科カルセオラリア属の花冠。
- 唇形花冠
- 合弁・左右相称花冠。横向きで花冠裂片が上下に2深裂して唇状(上唇と下唇)になっている花冠。上唇と下唇の間の花冠筒部分を花喉とよぶ。シソ科、ゴマノハグサ科にみられる。シソ科オドリコソウ属の花冠は合弁、唇状であるが、上唇がかぶと状になるので、かぶと状花冠とされることもある。
- 一唇形花冠
- 合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、上唇が発達しないもの。シソ科キランソウ属など。
- 仮面状花冠
- 合弁・左右相称花冠。唇形花冠のうち、下唇が特に大きくせり上がって花喉をふさいで仮面状になっているもの。ゴマノハグサ科ウンラン属などに見られる。
- 車形花冠
- 合弁・放射相称花冠。花冠筒が短く、大きめの裂片が開出する。ムラサキ科やナス科、アカネ科、スイカズラ科などに見られる。
- 鐘形花冠
- 合弁・放射相称花冠。花冠は筒形または先端が少し膨れ、花冠長は直径の2倍以下。キキョウ科、ツツジ科にみられる。
- 筒状花冠
- 合弁・放射相称花冠。花冠筒が細長く、先端に小さな裂片が開出している頭状花序の中心花のことが多い。キク科(タンポポ亜科を除く)に特有。
- 舌状花冠
- 合弁・左右相称花冠。花冠筒が短く、大きな非対称の弁状部が広がる。頭状花序の周辺花となっていることが多い。キク科(アザミ亜科を除く)の多くに見られる。
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ナデシコ形花冠(ナデシコ、花弁は5枚)
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かぶと状花冠(トリカブトの一種)
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十字形花冠(アブラナ)
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バラ形花冠(ノイバラ)
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有距花冠(ツリフネソウ)
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壺形花冠(ドウダンツツジ)
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高坏状花冠(サクラソウ属の一種)
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漏斗形花冠(サツマイモ)
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ユリ形花冠(ヤマユリ)
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ラン形花冠(シラン)
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キンチャク形花冠(カルセオラリアの一種)
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唇形花冠(ヒメオドリコソウ)
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一唇形花冠(キランソウ)
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仮面状花冠(マツバウンラン)
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車形花冠(ワスレナグサ属の一種)
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鐘形花冠(ホタルブクロ)
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筒状花冠(モリアザミ)
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舌状花冠(タンポポ)
脚注
参考文献
- 清水建美『図説植物用語事典』八坂書房、2001年、323頁。ISBN 4-89694-479-8。
関連項目
花冠(ティアラ)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/09/23 08:22 UTC 版)
観用少女にのみ寄生する植物。開花本能が強く、一度根を張れば必ず咲く。十分に愛を受けて育った少女を栄養源にすると見事な珊瑚色の花を咲かせ、甘美な憂鬱を受けて育った少女を宿主にするとより稀少性の高い青い花をつける。しかし、少女は花に栄養を奪われ花冠の開花後まもなく枯れてしまうため、持ち主たちの多くは花冠を育てることを好まず、そのために幻と言われている。
※この「花冠(ティアラ)」の解説は、「観用少女」の解説の一部です。
「花冠(ティアラ)」を含む「観用少女」の記事については、「観用少女」の概要を参照ください。
「花冠」の例文・使い方・用例・文例
- 筒状花冠
- 萼および/または花冠で成る花被または花の外皮を持つ
- キンギョソウの花冠は両唇形である
- 部分的にあるいは全体的に、チューブや漏斗のような花冠形を形作る融合した花弁で構成された花冠
- 分離した、または別々の多くの花弁で構成された花冠を持つ
- 花冠の付け根に拡張物を持つ花の
- 短い拡張のある花冠の基部を持つ花の
- 頭に被って勝利を表すリースまたは花冠
- ひも状の花冠を持つ小さな花で、キク科の花の周縁に輪になって並んでいる
- 私たちは花冠を目的にその花を栽培する
- ラッパスイセンまたはスイセンの花冠のトランペットのようなまたはカップのようなものの成長
- 二唇の花冠または萼の2つの部分のうちのどちらでも
- 萼と花冠、雄蘂、雌蘂葉からなる、花の外側の部分の総称
- 波形であるか波型である花冠のある光沢のある葉と香りの良い夜開く花を有する熱帯低木
- 悪臭のある熱帯性植物で、朝顔の花冠に似た、直径数フィートにもなる仏炎苞を持つ
- 通常広い大きく開いた花冠の香りの良い一輪のマゼンタピンクの花があるヤチラン
- 縁取られた花冠のある乳白色の花を持つヨーロッパと中国のリンドウ
- 花冠の葉の縁をふちどっておいているタカネリンドウ属のさまざまなハーブの総称
- 多弁または合弁の花冠を持ち、しばしば胚珠が子房の壁に付いている、程度の差はあるが進化した木、低木、および香草の科のグループ
- 非常に長い花冠距を持つ、ヨーロッパのスミレ
花冠と同じ種類の言葉
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