世界貿易機関
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概説
GATT(ガット)ウルグアイ・ラウンドにおける合意によって、世界貿易機関を設立するマラケシュ協定(WTO設立協定)に基づいて1995年1月1日にGATTを発展解消させて成立した[3]。
本来GATTは、第二次世界大戦後の安定を見据え、国際通貨基金および国際復興開発銀行とともに設立が予定されていた国際貿易機関(ITO)の設立準備の際に、暫定協定として結ばれたものであった。国際貿易機関の設立が廃案となり、GATTがその代替として発展強化されていくうちに、再びこの分野の常設機関が求められ、WTOが設立されることとなった。発展解消であるため、GATTの事務局及び事務局長もWTOへと引き継がれることとなった[4]。
WTOはGATTを継承したものであるが、GATTが協定(Agreement)の締約国団(CONTRACTING PARTIES)に留まったのに対し、WTOは機関(Organization)であるのが根本的な違いである。
を基本原則としている。また、物品貿易だけでなく金融、情報通信、知的財産権やサービス貿易も含めた包括的な国際通商ルールを協議する場である。
紛争処理手続きにおいて、
- パネルの設置
- パネル報告及び上級委員会の報告の採択
- 対抗措置の承認
については、全加盟国による反対がなければ提案されたものが、採択されるというネガティブ・コンセンサス方式(逆コンセンサス方式)を採用した強力な紛争処理能力を持つ。これは国際組織としては稀な例であり、コンセンサス方式を採っていたGATTとの大きな違いで、WTOの特徴の一つといえる。
1999年のシアトル閣僚会議で新ラウンドの立ち上げを目指すも開発途上国や反グローバリズムを掲げる市民団体の反発で失敗し、2001年11月にカタールのドーハで行われた第4回WTO閣僚会議でようやく新多角的貿易交渉(新ラウンド)の開始を決定し、ドーハ・ラウンドと呼ばれた。2002年2月1日の貿易交渉委員会で新ラウンドがスタートした。しかし9年に及ぶ交渉は先進国と、急速に台頭してきたBRICSなど新興国との対立によって中断と再開を繰り返した末、ジュネーブで行われた第8回WTO閣僚会議(2011年12月17日)で「交渉を継続していくことを確認するものの、近い将来の妥結を断念する」(議長総括)となり事実上停止状態になり、部分合意等の可能な成果を積み上げる「新たなアプローチ」の採用が合意[5]された。
その後、2013年のインドネシア・バリ島における第9回閣僚会議で、貿易円滑化協定を含む、貿易円滑化・農業・開発の3分野からなる「バリ合意」が成立[5]し、2014年7月まで貿易円滑化協定をWTO協定に加える(附属書1Aに追加)するための文書を一般理事会で採択すべきとされた[6]。
しかしインドが、合意を蒸し返す状態で反対したため、期限までに採択できなかった[7]。その後、食糧備蓄への補助金の問題で先進国側が譲歩することで、ようやくインドが合意し、2014年11月27日の一般理事会で、貿易円滑化協定が採択された[7]。WTO加盟国の3分の2が改正を受諾した日に発効することになっており、2017年2月22日にこの要件を満たし、協定が発効した。
注釈
- ^ 。WTOにおいては、国連のように加盟国から選出(あるいは特定国が予め指定)されて機関の構成国になるということは、ほとんど行われていない。
- ^ 物品の貿易に関する理事会、サービスの貿易に関する理事会及び知的所有権の貿易関連の側面に関する理事会(以下「貿易関連知的所有権理事会」という。)を設置するものとし、これらの理事会は、一般理事会の一般的な指針に基づいて活動する。物品の貿易に関する理事会は、附属書一Aの多角的貿易協定の実施に関することをつかさどる。サービスの貿易に関する理事会は、サービスの貿易に関する一般協定(以下「サービス貿易一般協定」という。)の実施に関することをつかさどる。貿易関連知的所有権理事会は、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(以下「貿易関連知的所有権協定」という。)の実施に関することをつかさどる。これらの理事会は、それぞれの協定及び一般理事会によって与えられる任務を遂行する。これらの理事会は、一般理事会の承認を条件として、それぞれの手続規則を定める。これらの理事会の構成員の地位は、すべての加盟国の代表に開放する。これらの理事会は、その任務を遂行するため、必要に応じて会合する。
- ^ 理事会の構成員になることを希望すれば、構成員になるということ。
- ^ 閣僚会議は、貿易及び開発に関する委員会、国際収支上の目的のための制限に関する委員会及び予算、財政及び運営に関する委員会を設置する。これらの委員会は、この協定及び多角的貿易協定によって与えられる任務並びに一般理事会によって与えられる追加的な任務を遂行する。また、閣僚会議は、適当と認める任務を有する追加的な委員会を設置することができる。貿易及び開発に関する委員会は、その任務の一部として、定期的に、多角的貿易協定の後発開発途上加盟国のための特別な規定を検討し、適当な措置について一般理事会に報告する。これらの委員会の構成員の地位は、すべての加盟国の代表に開放する。
- ^ この委員会はWTOの機関ではないが、WTO協定に基づき設置されているためここに掲げた。
- ^ 関税評価協定の附属書2に定める任務(関税評価の技術的検討)を所管。この委員会は、関税評価協定第18条2に基づくものであるが、WTOではなく関税協力理事会(CCC)(現在では、通称名の世界税関機構(WCO)と一般的に呼ばれる)のもとに設置されている。
- ^ この委員会はWTOの機関ではないが、WTO協定に基づき設置されているためここに掲げた。
- ^ この委員会は、原産地規則に関する協定第4条第2項に基づくものであるが、WTOではなく関税協力理事会(CCC)(現在では、通称名の世税関機構(WCO)と一般的に呼ばれる)のもとに設置されている。
- ^ 申請した国毎に設置され、Working Party on the Accession of Liberia のように国名を付したのが正式名称である。
- ^ 作業部会設置の決定で“The Membership is open to all WTO Members indicating their wish to serve on the Working Party.”とする。
- ^ 閣僚会議の権限を代行する。
- ^ 同協定の各附属書が重複している。これはWTO協定第10条第5項の外務省訳をそのまま引用したものである。この部分の原文は“Parts IV, V and VI of GATS and the respective annexes “であり、「サービス貿易一般協定の第四部から第六部までの規定及びこれに関する附属書」とすべきものと思われる。
- ^ 漁業補助金協定以外は、実際にはすべて閣僚会議の権限を代行する一般理事会で採択。
- ^ この意味するところは、EUの受諾は、その加盟国である28か国(貿易円滑化協定の受諾時点の数)の受諾として発効に必要な受諾数を算定する(EU自体の受諾を1としてカウントはしない)ということである。
- ^ この意味するところは、EUの受諾は、その加盟国である27か国(漁業補助金協定の受諾時点の数)の受諾として発効に必要な受諾数を算定する(EU自体の受諾を1としてカウントはしない)ということである。
- ^ a b EUとして受諾した日
- ^ WTOに加盟できるのは、すべての国または独立関税地域であるため、外務省ウェブサイト[75]に準拠して、表題を「加盟国・地域」とする。WTO協定の英文(正文)ではmemberとしており、国と特定する表現を避けているが、協定の外務省訳では加盟国としている。
- ^ WTO発足時は欧州共同体。協定上、一般に関税同盟が加盟できる規定はなく、11条で欧州共同体に限り加盟できるとなっている。これは、欧州共同体以外の関税同盟は存在するが、それ自体で対外通商関係権限を有するものは、欧州共同体以外に存在せず、今後も見込まれないためである。
- ^ WTO協定上の正確な表現は、"separate customs territory possessing full autonomy in the conduct of its external commercial relations and of the other matters provided for in this Agreement and the Multilateral Trade Agreements" (対外通商関係その他この協定及び多角的貿易協定に規定する事項の処理について完全な自治権を有する独立の関税地域)WTO協定第12条。日本語はWTO協定の外務省訳による。なお、"separate customs territory"の外務省訳は「独立の関税地域」であって「個別の関税地域」ではない。
- ^ オランダは以前はWTOのリスト(WTO文書(WT/INF/43/Rev.10 18 July 2008)で“Netherlands - For the Kingdom in Europe and for the Netherlands Antilles”となっていたため、この表でも「オランダ領アンティルを含む。」していた。しかしオランダ領アンティルの地位の変更により現在のリスト(WTO文書(WT/INF/43/Rev.11 10 February 2012)では、単に”Netherlands"となったため、この表でも「オランダ領アンティルを含む。」という記載を削除した。
- ^ WTOにおいては、通常"Chinese Taipei"を使用し、正式な名称は“Separate Customs Territory of Taiwan, Penghu, Kinmen and Matsu”(台湾、澎湖諸島、金門及び馬祖から成る独立の関税地域)なお、日本語については、マルチチップ集積回路に対する無税待遇の付与に関する協定(平成18年条約第5号)における外務省訳による。
- ^ 2020年7月22日の一般理事会において、加盟申請を前提としてオブザーバーステータスを付与することが決定され、2021年11月24日加盟申請が提出された。
- ^ オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、チリ、コロンビア、コスタリカ、EU、グアテマラ、香港、アイスランド、メキシコ、ニュージーランド、ノルウェー、パキスタン、シンガポール、スイス、ウクライナ、ウルグアイ
出典
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