世界貿易機関の設立
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国際貿易を進展させるための多国間交渉は、貿易ラウンドと呼ばれている。1986年に多角的貿易交渉としてウルグアイ・ラウンドが実施され、その合意を実施する機関として1995年に世界貿易機関(WTO)が設立された。これによりGATTはWTOへと発展的解消をとげ、WTOでは機能が強化された。正式な国際機関となり、取り扱う分野にはサービスの貿易に関する一般協定(GATS)や、知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS)も含まれた。貿易をめぐる紛争解決のためにはWTO紛争解決機関(英語版)が設立された。 しかしWTO参加国が増えるにつれて、交渉の長期化や参加国の対立が問題となる。ウルグアイ・ラウンドは1986年から1994年までかかり、基本合意書は補足資料を合わせると2万2000ページに及んだ。また途上国は、貿易拡大や経済成長が見込めるという先進国の主張によってウルグアイ・ラウンドの合意を受けいれたが、先進国と途上国の経済格差は拡大を続けた。合意内容を実施するコストの大きさや、少数の国によるWTOの意思決定プロセスも途上国の不満となり、1999年のシアトルでの第3回世界貿易機関閣僚会議で途上国は新ラウンドに抵抗して、新ラウンドの立ち上げは断念された。2001年に始まった新ラウンドのドーハ・ラウンドは難航を続け、2003年のカンクンの第5回世界貿易機関閣僚会議(英語版)では交渉が決裂して、2011年のジュネーヴの第8回世界貿易機関閣僚会議(英語版)において近い将来の合意が断念された。多国間の交渉に代わって、友好国や利害が共通する国家間の自由貿易協定(FTA)が増加した。
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