タマネギ 薬用

タマネギ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/26 05:03 UTC 版)

薬用

漢方と民間療法

タマネギの薬用の歴史は古く、紀元前15世紀頃に書かれたエジプトの医学書とされる『エーベルス・パピルス』に名称が登場する[5]。古代ギリシアの本草書『ディオスコリデスの薬物誌』の中でも、タマネギの薬用について詳細に記述されている[5]。伝統中国医学では風邪喘息気管支炎にタマネギを推奨している[61]

民間療法では、風邪の初期症状のとき就寝前に、タマネギの鱗茎を細かく刻んで湯飲みに入れて、すりおろしたヒネショウガを少量加えて味噌で調味して、熱湯を注いでしばらく置いた後によくかき混ぜてから飲む方法が知られる[10]。咳止めには、細かく刻んだタマネギをタオルのような布の中央に入れてその部分に熱湯をかけて軽く絞り、のどに当てて温湿布する方法が知られる[10]

医学的知見

タマネギには辛味成分にもなっている多様な種類の硫化アリル類が豊富に含まれている[32]。その代表ともいえるアリシンには「血小板凝集を抑制する」「血圧が下がる」「コレステロールを下げて動脈硬化を予防する」などの効果が期待できると言われているが、現時点では、人において信頼できる十分な根拠は示されていない[62][63]

かつて、デザイナーフーズ計画のピラミッドで2群に属しており、チャターメリックと共に、2群の最上位に属する高い予防効果のある食材であると位置づけられていた[64]

文化

宗教による考え方の違い

インドのバラモン教ヒンドゥー教の学問や祭司を司るバラモンは、情欲と怒りを増大させて瞑想を妨げる野菜だとして、ニンニクとともにタマネギの摂取を禁じている[65]。ヒンドゥー教の分派スワミナラヤンの信者は、ニンニクもタマネギも食べない[65]カシミールに住む高位のヒンドゥー教徒であるカシミール・パンディットの人々も同様に食べない[66]ジャイナ教徒は、タマネギを含むネギ属の野菜は食べた人に悪影響を与え、収穫の際に土中の小さな生き物を傷つけると考えられているため、摂取を禁じている[65]

絵画の題材

フランス印象派の画家の多くは、都会を避けて田舎のプロヴァンス地方を仕事場に選び、質素で基本に立ち返った生活を表現する静物画を描いた。その題材にタマネギが描かれた作品が残されており、ポール・セザンヌの『玉ねぎのある静物』(1896年 - 1898年)、ルノワールの『玉葱のある静物』(1881年)のほかに、ファン・ゴッホは『赤キャベツと玉ねぎのある静物』(1887年)から『生姜の瓶と玉ねぎ』(1885年)まで、何度もタマネギを描いている[67]

祝祭

タマネギの祝祭が世界各地で催されている。数は減少したものの、古くはイギリスでは13世紀からオニオン・フェアが行われており、ハワイマウイ島、インドのムンバイなどでもオニオン・フェアが開催されている[68]。ドイツのエリスゲンでは、毎年8月にツヴィーベルフェスト(タマネギ祭り)が開催される[69]。毎年10月にはヴァイマルで行われるタマネギ祭りが有名で、住民はタマネギの花輪で自宅を飾る[69]

動物への影響

イヌネコがタマネギを食べた場合には、アリルプロピルジスルファイドにより血液中の赤血球が破壊され、血尿、下痢、嘔吐、発熱を引き起こす[70]。タマネギの加工食品やエキスも、イヌやネコなどの動物に影響を与えることがある[70]


注釈

  1. ^ 日本では、生食用に軟白栽培されたラッキョウが「エシャット」や「エシャロット」の名で呼ばれている[34]
  2. ^ 遺伝子に欠損があるため、花粉ができない状態[37]
  3. ^ 庫内の温度と空気成分の調整によって、青果物の呼吸を最小限に抑え、鮮度の低下を防止するシステム[11]

出典

  1. ^ 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Allium cepa L.” (日本語). BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2012年7月8日閲覧。
  2. ^ a b c ジェイ 2017, p. 12.
  3. ^ こぐれひでこの食悦画帳/葉タマネギ 玉のままうどんに『読売新聞』夕刊2018年12月8日(2面)。
  4. ^ Linnaeus, Carolus (1753) (ラテン語). Species Plantarum. Holmia[Stockholm]: Laurentius Salvius. p. 300. https://www.biodiversitylibrary.org/page/358319 
  5. ^ a b c d e f 田中孝治 1995, p. 192.
  6. ^ 「玉ねぎ」はフランス語で?野菜に関するフランス語”. Bibliette(ビブリエット). 2020年7月9日閲覧。
  7. ^ 講談社編 2013, p. 158.
  8. ^ a b ジェイ 2017, p. 34.
  9. ^ 田中孝治 1995, p. 93.
  10. ^ a b c d e f g h i 田中孝治 1995, p. 193.
  11. ^ a b c d e f g h i j k 講談社編 2013, p. 159.
  12. ^ a b c d e ジェイ 2017, p. 13.
  13. ^ 国際連携で挑むタマネギゲノム解読‐経済的に重要な高等植物種の巨大なゲノムを読み解く (PDF) 山口大学(2021年8月20日)2021年9月17日閲覧
  14. ^ ジェイ 2017, pp. 11–12.
  15. ^ ジェイ 2017, pp. 20–21.
  16. ^ ジェイ 2017, p. 23.
  17. ^ ジェイ 2017, p. 26.
  18. ^ ジェイ 2017, p. 39.
  19. ^ a b ジェイ 2017, p. 40.
  20. ^ ジェイ 2017, p. 47.
  21. ^ ジェイ 2017, pp. 47–49.
  22. ^ ジェイ 2017, pp. 51–52.
  23. ^ ジェイ 2017, p. 68.
  24. ^ ジェイ 2017, pp. 65–66.
  25. ^ ジェイ 2017, pp. 66–68.
  26. ^ ジェイ 2017, pp. 95–98.
  27. ^ ジェイ 2017, pp. 105–111.
  28. ^ ジェイ 2017, pp. 112–113.
  29. ^ ジェイ 2017, p. 120.
  30. ^ ジェイ 2017, p. 114.
  31. ^ ジェイ 2017, p. 116.
  32. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 講談社編 2013, p. 161.
  33. ^ a b c d e f g 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 30.
  34. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s 主婦の友社編 2011, p. 57.
  35. ^ a b c d e f g 猪股慶子監修 成美堂出版編集部編 2012, p. 31.
  36. ^ a b c d e f g h 講談社編 2013, p. 160.
  37. ^ a b c d e ジェイ 2017, p. 135.
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  40. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 60.
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  43. ^ a b c 主婦の友社編 2011, p. 61.
  44. ^ 三澤知央、ネギ葉枯病の発生生態と防除に関する研究 北海道立総合研究機構農業試験場報告 = Report of Hokkaido Research Organization Agricultural Experiment Station (132), 1-90, 2012-10, NAID 120005332243
  45. ^ a b c d e f g 主婦の友社編 2011, p. 56.
  46. ^ 十時亨『フランス料理の基本』新星出版社 2005年
  47. ^ Eric Block (2009). “Chapter 4. Chemistry in a sallad bowl: Allium chemistry and biochemistry”. Garlic and Other Alliums: The Lore and the Science. Cambridge: Royal Society of Chemistry. ISBN 978-0854041909  Google ブックス
  48. ^ ジェイ 2017, pp. 144–145.
  49. ^ 長谷川香料株式会社 『香料の科学』講談社、2013年、93頁。ISBN 978-4-06-154379-9 
  50. ^ 塩谷 茂信ほか、「ケルセチン含有タマネギ外皮エキスの血小板凝集抑制作用」、 『日本食品科学工学会誌』2022 年 69 巻 2 号 p. 45-53、DOI:https://doi.org/10.3136/nskkk.69.45
  51. ^ ジェイ 2017, p. 50.
  52. ^ a b ジェイ 2017, p. 70.
  53. ^ ジェイ 2017, p. 79.
  54. ^ ジェイ 2017, p. 82.
  55. ^ 【食べ物 新日本奇行 classic】ラーメンのネギは白か青か いや、タマネギだってある 日本経済新聞社NIKKEI STYLE(2017年4月1日)2018年12月18日閲覧
  56. ^ ジェイ 2017, p. 148.
  57. ^ 文部科学省日本食品標準成分表2015年版(七訂)
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  65. ^ a b c ジェイ 2017, p. 73.
  66. ^ ジェイ 2017, p. 72.
  67. ^ ジェイ 2017, pp. 111–113.
  68. ^ ジェイ 2017, p. 154.
  69. ^ a b ジェイ 2017, p. 155.
  70. ^ a b 飼い主のためのペットフード・ガイドライン (PDF) 環境省(2020年4月29日閲覧)






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